2017年3月31日金曜日

筋肉のタンパク質合成とグリコーゲン合成における運動後の栄養管理の役割(2010年レビュー)

The role of post-exercise nutrient administration on muscle protein synthesis and glycogen synthesis

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24149627

J Sports Sci Med. 2010 Sep 1;9(3):354-63. eCollection 2010.

Poole C, Wilborn C, Taylor L, Kerksick C.

3/29日の記事が2015年のレビューですので、

より新しいものとなっています。

新しいレビュー記事は古いレビューで書いてある点をそのまま記載し、

最初の研究をちゃんと読んでいなかったりしますので、

レビューを読んで出てきたレビューをさらに遡る作業は大事です。

その間に考え方、捉え方が変わって理解が異なるということも起こりますので、

注意が必要です。

2017年3月30日木曜日

炭水化物とタンパク質の摂取が運動直後の筋グリコーゲンの回復を高める

Early postexercise muscle glycogen recovery is enhanced with a carbohydrate-protein supplement
http://jap.physiology.org/content/93/4/1337

J Appl Physiol (1985). 2002 Oct;93(4):1337-44.

Ivy JL, Goforth HW Jr, Damon BM, McCauley TR, Parsons EC, Price TB.

筋グリコーゲンは中~高強度の運動においては必須のエネルギー源である。

(1,2,9,11)の研究で示されているように、筋グリコーゲンが不足することは中~高強度運動の制限要因となる。

運動後の筋グリコーゲンの回復については多くの研究がなされており、

摂取タイミングを検討したもの(13,18)や摂取する頻度を検討したもの(10)、

摂取する量(3,12,14,15)、摂取するサプリの種類(6,21,24、30,32)など、

様々な角度から調査されている。

(32)の研究では炭水化物とタンパク質の同時摂取が4時間後の回復を高めることを示した。

(7,15,27,29,30)など同時摂取について調べた研究は増えている。

しかし、これらにはカロリー摂取量が一致しないなどの問題もあるので、

今回の実験では同等のカロリー摂取量として実施した。

被験者は7人のトレーニングを積んだ若い男性の自転車選手。

夕食で統一された食事を摂取して、

翌朝に何も食べない状態で2時間の自転車運動を実施。

最大酸素摂取量の65~75%になるように運動中に負荷を調整。

運動後に摂取したのは以下の3種類。

炭水化物240kcal、タンパク質84kcal、脂質54kcal
炭水化物324kcal、脂質54kcal
炭水化物240kcal、脂質54kcal


これらを472mlの液体に溶かして運動直後と2時間後の2度摂取。

結果、炭水化物とタンパク質を含んだものが他の二つよりも有意に回復が促された。

4時間後の筋グリコーゲンの回復は
46.8%
31.1%
28.0%

となった。

今回の実験では頻度が高くないため、

運動後15分毎や30分毎などより高い頻度で摂取させた過去の実験と同様にすると、

今回の結果で出たタンパク質のメリットは期待できなくなる可能性もある。

(30,32)の研究では運動後の筋グリコーゲンの回復はインスリンの分泌を促すことが重要であるとした。

しかし近年行われた(4,16,20,25)の研究ではインスリンが不要である可能性を示している。

(31)の研究ではアルギニンを炭水化物に添加することで筋グリコーゲンの貯蔵速度を高めるとしている。

今回の研究から炭水化物とタンパク質の同時摂取の有用性は認められる。


Free

過去には炭水化物を摂取することでインスリンを分泌させるのが大事とされていましたが、

この論文が出された2002年の時点で”近年”では否定される、

となっているわけですね。

そんなインスリンが分泌されることで筋グリコーゲンの回復が~、

という話が未だにしっかりと残っているというのも如何なものかな、というところです。

2017年3月29日水曜日

持久的な運動やレジスタンストレーニングにおけるグリコーゲンの利用可能量と筋肉の適応(レビュー)

Glycogen availability and skeletal muscle adaptations with endurance and resistance exercise

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26697098

Nutr Metab (Lond). 2015 Dec 21;12:59. doi: 10.1186/s12986-015-0055-9. eCollection 2015.

Knuiman P, Hopman MT, Mensink M.

運動は大まかにレジスタンスなものと持久的なものに分類される。

持久的な運動はさらに高負荷なインターバルトレーニングのようなものと、

長時間の低負荷運動に分類される。

レジスタンストレーニングは筋肥大と筋力向上を目的とし、


持久的なトレーニングは骨格筋の酸素利用量を高めて運動の継続時間を長くすることを目的とする。


運動中のエネルギー源としては炭水化物と脂肪が主に用いられる。

(9,10)の研究のように近年ではグリコーゲンが少ない状態でのトレーニングが研究されている。

(17,18) では低グリコーゲンの状態での持久的なトレーニングはパフォーマンスの向上に有効であるとしている。

(19)の研究ではレジスタンストレーニングにおける低グリコーゲン状態はミトコンドリアの生成シグナルを増やすという結果を見せているが、

(20)の研究ではグリコーゲンレベルは関係ないとしている。

(21)の研究では筋グリコーゲン量の低下がカルシウムイオンの小胞体からの放出を抑制し、

筋力の低下を引き起こすとされている。

(25)では低グリコーゲンの状態で持久的な運動を開始すると、

早期に筋小胞体からのカルシウムイオンの放出が抑制されると示した。

最大酸素摂取量の30~65%程度の段階ではエネルギー源として脂質の利用が多いが、

(28)の研究にあるようにグリコーゲンの貯蔵量が一定レベルを下回ると、

脂質などのエネルギー源があっても運動における筋肉の活動は制限されるようになる。

(30)にあるように、低グリコーゲンはアミノ酸の全身への放出を増やし、

脂質の酸化を増加させ、運動強度を低下させる。

(10)の研究にあるように、低グリコーゲンの状態は脂肪の代謝を活性化し、

ミトコンドリアを生成するための刺激を増加させるとされているが、

多くの研究がなされているわけではない。

(17)の研究ではトレーニングをしていない被験者では運動時間の増加や、

クエン酸シンターゼの活性の増加を見つけた。

(12,16)ではトレーニングをしている被験者での実験結果を示した。

その結果、大きな効果は特に認められなかった。

最大酸素摂取量の70%程度での運動中の脂肪利用の増加は、

低グリコーゲン群で認められた。

これらの結果から、低グリコーゲン状態でのトレーニングは脂肪の利用を高めることは言えそうである。

(18)の実験では1日に2回の運動の間における炭水化物の摂取は、

短時間の高強度インターバルトレーニングに大きな違いを生じさせないことを示した。


レジスタンストレーニングは筋肉の大きな収縮が行われるが、

この時に筋グリコーゲンがエネルギー源となる。

(38)にもあるように大部分のATPの産生はグリコーゲンの分解によるものである。

レジスタンストレーニングによるグリコーゲンの減少は(37、39,40,41)の研究にあるように、

およそ24~40%ほどとされるが、運動の強度や時間などの要素によって決定される。

レジスタンストレーニングにおける低グリコーゲンは、

持久的な運動における低グリコーゲンに比べると研究が少ない。


持久的な運動によってPGC-1αが活性化する。

PGC-1αはミトコンドリアのサイズや酸化能力に影響するが、

この活性化はAMPKによって調整される。

(55)にあるように持久的な運動はATPを多量に用いるためADPやAMPを増加させる。

その結果、(56,57)のようにATPを回復させる(利用を減らし産生を増やす)ためにAMPKが活性化される。

運動時に筋グリコーゲンが減少するとAMPKが活性化する。


ミトコンドリアの増加にはp53も関与していると考えられる。

(66,67)からミトコンドリアの遺伝子発現に刺激を与えるとされる。

(68)の実験から低グリコーゲンの状態での運動はp53を上方に制御すると考えられるが、

この実験はグリコーゲンだけでなくカロリーも制限しているものなので、

さらなる調査が必要である。


レジスタンストレーニングは酸素利用を高めないと過去の研究ではされていたが、

近年の研究結果からは酸素の利用もある程度高めることが示されている。

これには年齢による違いなどはない(73,74)。


持久的な運動後のグリコーゲンとタンパク質の合成に関する研究は少ない。

(80)によると筋グリコーゲンの低下はNOの利用を倍以上に減らし、

筋肉の分解とアミノ酸の酸化を増加させる。

(82)の研究では低グリコーゲン状態で運動を開始すると、

運動中の筋肉合成が減少し分解が増加することを示した。

持久的な運動にとって低グリコーゲンによってミトコンドリアの増加が期待できるが、

筋肉の分解が増加するのは問題である。

(83,84)の研究では運動中や運動後のアミノ酸やタンパク質の補給により、

筋肉の分解を抑制できるとしている。


レジスタンストレーニングにおける筋肉の合成や分解は複雑である。

Akt-mTOR-S6Kは筋肉の合成経路の一つであるが、

多くの研究がなされている(85,86)。

(87)の研究ではグリコーゲンの利用が低いと安静時や運動時のAMPK活性が高まるとしている。

(88)では低グリコーゲンが筋肥大に関する遺伝子を活性化させないとしている。

(89)の研究ではmTORの活性は示すものの筋肉合成にはグリコーゲンの貯蔵量が影響しないことを示した。

この結果は(90)の研究でエネルギーの減少が筋肉合成を最大で19%ほど弱めるという結果が出たことと比べると興味深い。


持久的な運動とレジスタンストレーニングを同時に行うことが、

両方の効果を高めるわけではないことが多くの実験で示されている(91~96)。

しかし(97,98)の研究では持久的な運動だけを行うよりも効果が高いとしている。

この辺りはまだまだ研究が必要と考えられる。

近年では多くの実験が絶食後に行われているため、

実際に運動を行う状態とは異なっているという指摘がなされている。


Free

適度につまんだので、

興味のある方は全文をどうぞ。

いくつかの論文から言えそうなことは、

筋肉を増やしたい人は筋グリコーゲンが多い状態でレジスタンストレーニングをするべきであり、

持久力を高めたい人は少ない状態でもトレーニングすると効果が高いが、

筋グリコーゲンが多い状態でもトレーニングしないとダメ、

ということでしょう。

2017年3月28日火曜日

短期間の炭水化物制限と従来の低エネルギー食とレジスタンストレーニングが筋厚と筋力向上に与える影響

Effects of Short-Term Carbohydrate Restrictive and Conventional Hypoenergetic Diets and Resistance Training on Strength Gains and Muscle Thickness

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5131210/

J Sports Sci Med. 2016 Dec 1;15(4):578-584. eCollection 2016.

Meirelles CM, Gomes PS

食事で摂取するエネルギーを制限することと運動をすることは体重を減らすための基本となる。

Westmanらの2007年の研究では150g以下に炭水化物を制限した食事は、

従来の低エネルギーな食事よりも体重の減少を促すとした。

炭水化物を制限した食事では持久的なパフォーマンスが下がるというデータもあれば、

そうならないといったデータもある。

レジスタンストレーニングに対する炭水化物制限の研究は少ないが、

肥満の男女を対象にした実験では筋力の向上を損なわないという結果が見られる。

炭水化物を制限する食事が人気となっているのに、

レジスタンストレーニングと炭水化物を制限した食事の調査は不十分である。

この研究はBMIが25以上で3か月以上のレジスタンストレーニングの経験がある男女で実施。

炭水化物を制限群では最初の1週間は一日30g以下、翌週からは10gずつの炭水化物を増加させ、

実験後に通常の生活に戻れるようにした。

低エネルギー食群では必要と推測されるエネルギー量の75%の摂取とし、

タンパク質15%、脂質30%、炭水化物55%で構成した。

レジスタンストレーニングは週に3日、連続での実施にならないようにした。

内容は11種目で8~10回を8~10RMの負荷でそれぞれ2set実施。

結果、どちらの群でも体重と体脂肪が減少した。

筋厚はtable2にあるように一致した増加などは見られず、有意な差も無い。

筋力はFig2にあるように低エネルギー食の方がやや高い増加が見られるが有意な差は無い。


Free

この内容ですと炭水化物を制限したと言えるのか、

という疑問が残りますね。

カロリー制限でも糖質制限でも大差は無いと言えるかもしれません。

2017年3月27日月曜日

ストレングストレーニング中の炭水化物摂取がパフォーマンスに与える影響

Effects of acute carbohydrate ingestion on anaerobic exercise performance.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27843418

J Int Soc Sports Nutr. 2016 Nov 10;13:40. eCollection 2016.

Krings BM, Rountree JA, McAllister MJ, Cummings PM, Peterson TJ, Fountain BJ, Smith JW.

持久的な運動中における炭水化物の摂取の重要性は多くの研究により示されている。

レジスタンストレーニングと炭水化物の調査としては、

(2)がフリーウエイトでのトレーニングにより40%も筋グリコーゲンが減少することを示している。

(3,4)の研究でも同様な結果が出ている。

一方で、レジスタンストレーニングの前や最中の炭水化物の摂取では、

(6,7,8,9)においてパフォーマンスが改善されているが、

(10,11)では特に変化が見られていない。

この違いはトレーニング内容や目標部位の違い、時間によって生じたものと考えられる。

今回の研究ではスプリント、ジャンプ、レジスタンストレーニング、シャトルランといったトレーニングの最中における炭水化物の摂取による栄養を調べた。

被験者は7人のよくトレーニングされた若い男性。

一時間あたりで15g、30g、60gの糖質摂取を実施する群を設定。

結果、ダンベルベンチプレスでは最後のsetで明らかな違いを示した。

シャトルランでは多くの摂取が効果的など、

トレーニング種目によって効果のある摂取量は異なるとも考えられる。

レジスタンストレーニングやジャンプトレーニングでは大きな効果は無さそう。

15~30gの糖質を含む500mlの液体を摂取することは、

アミノ酸のみの液体よりもパフォーマンスが高まる可能性があると言える。

実験の問題点として、運動前の筋グリコーゲン量の調整などが出来ていない点などがあるので、

より多くの実験がなされる必要がある。


Free

ストレングストレーニングなのでレジスタンストレーニング以外も試しています。

まぁ運動中よりも運動前、それこそ24時間ほど筋グリコーゲンの完全回復には必要、

といった点からすれば、運動中はそこまで大きな効果が無いというのも納得はいきますが、

少し長くなる時やシャトルランなど全身運動になる時は効果がありそう、

というところでしょうか。

2017年3月26日日曜日

2時間のレジスタンストレーニング中の炭水化物摂取がサイトカインの発現に与える影響

Influence of carbohydrate ingestion on immune changes after 2 h of intensive resistance training

http://jap.physiology.org/content/96/4/1292

Journal of Applied Physiology Published 1 April 2004 Vol. 96 no. 4, 1292-1298

D. C. Nieman, J. M. Davis, V. A. Brown, D. A. Henson, C. L. Dumke, A. C. Utter, D. M. Vinci, M. F. Downs, J. C. Smith, J. Carson, A. Brown, S. R. McAnulty, L. S. McAnulty

持久的な運動中に炭水化物を摂取することでサイトカインや遺伝子発現に影響を与えることは、

多くの研究によって調査されている。

(20)の研究では最大酸素摂取量の70%で3時間走る実験中に炭水化物を摂取することで、

IL-6やIL-10などの血中レベルで減少することが確認されている。

筋グリコーゲンでの違いはプラセボ群と無いので、

血中グルコースがサイトカインのmRNAの発現を抑制したと推測される。

(29)の実験でも筋グリコーゲンの差異は摂取でもプラセボでも無く、

IL-6の血中レベルが低下した。

近年のデータ(17,30)では筋グリコーゲンが少ない状態での運動はIL-6の放出を増加させるとしている。

(28)のデータによるとレジスタンストレーニングは筋グリコーゲンの著しい減少を引き起こす。

しかし、レジスタンストレーニングによるサイトカインへの影響を調べた研究はほとんど知られていない。

13人の少なくとも半年以上のレジスタンストレーニングを実施している若い男性で実験。

バックスクワットを体重の1.25倍をこなせるレベル。

炭水化物摂取群は6%もしくが60g/lを含むドリンクを摂取。

これは(20,21,22,25)の先行研究にあるようなゲータレードによって提供された飲料。

結果、運動量は特にどちらでも変化は無かった。

炭水化物の減少は摂取群で38%、プラセボ群で44%で有意な差は無かった。

そして持久的な運動と比較すると炭水化物摂取群でもプラセボ群でもサイトカインの発現に差は無かった。


Free

サイトカインに関しては炎症性マーカーなどとも呼ばれますが、

これがどのような刺激で出てくるのかというのを調べた2004年の論文です。

持久的な運動によってIL-6が多く産出され、それによって鉄の体内での取り込みが抑制されて貧血になる、

ということが現在では分かっています。

直接的にトレーニング効果を高めるかどうかは不明な点も多いですが、

体内で生じる様々なシグナルを抑制したりしているものなので、

知っておくことで役に立つものではあるかと思います。

ただ、何だか小難しい話になっていくので、知らないでも何も問題は無いでしょう。

2017年3月25日土曜日

高脂肪食とスポーツパフォーマンスを再考する(2016年のレビュー)

Re-Examining High-Fat Diets for Sports Performance: Did We Call the 'Nail in the Coffin' Too Soon?

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4672014/

Sports Med. 2015 Nov;45 Suppl 1:S33-49. doi: 10.1007/s40279-015-0393-9.

Burke LM

長年続いた高脂肪食を競技者に適応させる試みの失敗は、

2006年に(1)の研究が発表され、これが調査された結果、

持久的な競技者に対して高脂質食がパフォーマンスを高めるという考えは、

削除することが出来ると考えられる。

この10年間で(3,4,5,6)の論文や(7)の文献などから、低炭水化物高脂肪(LCHF)の話が出てきたが、

これらが本当にアスリートに効果的なのかを再考するべきである。

パフォーマンスは競技種目ごとに目指すものが異なるが、

ATPの生産を効率よく最大化するという点は重要である。

持久的な種目ではグリコーゲンの利用を減らすために脂質をエネルギー源とするための戦略が立てられ、

食事での摂取などを実施したが失敗した。

(31,32)の実験では85%の脂質と15%のタンパク質という食事を一か月近く実施した結果、

最大酸素摂取量の65%程度の運動では能力が維持されたが、

これより負荷の高い運動は無理であろうと指摘している。

この実験ではケトン体が明らかに増加していたと考えられる。

また、この実験では一人の著しい結果によって平均値が良い方に歪められたと言える。

ケトーシスを達成しない程度の炭水化物摂取を行った実験としては(34,35,36,37)がある。

(38,39)は25%未満の炭水化物の摂取か60%以上の脂質の摂取をしていないものである。

上記のようなプロトコルが行われたりもしているが、

パフォーマンスの向上に最適なものはよく分からない。

これらの研究の問題点としては運動中にグリコーゲンが減らずに脂質が多く使われたということが言えない点にある。

それが言えないことには、炭水化物の利用が抑制されたとは言えない。

また、低炭水化物食への適応は以前に言われていたほど長い期間は必要でなく、

5日程度で大丈夫ということも言える。

ある程度鍛えられた状態であれば、適応は容易に行われるのかもしれない。

(1)の研究では自転車競技で実験したが、

1kmのスプリントが明らかに低下した。

この原因としては炭水化物の酸化能力が低下したことなどが挙げられている。

(46,47)の研究結果からは低炭水化物食による高出力な部分における抑制が起こる理由が説明されると思われる。

2006年以降の研究を見ていくと、

体脂肪の減少といった点での利点は認められるが、

これが競技者に適応できるかとなると疑問が残る。

60~80%程度での運動ならば低炭水化物な食事は有効であるが、

トップの持久的な選手たちは既に低炭水化物高脂質な食事はやめている。

このレビューで白か黒をつけるのではなく、

良い点を上手く利用してパフォーマンスの向上につながれば良いと思います。


Free

そこそこの長さがあるのを適度に訳しました。

興味のある方は無料ですので全文をどうぞ。

最後のまとめ部分で炭水化物が良いとか脂質が良いとかでは無い、

と指摘しているように、どちらにも利点があるという所を忘れずに、、

適応期間などを上手く利用して最適なパフォーマンスの向上が出来るように役立てられれば、

という感じですかね。

まぁでも、瞬発的な種目にはほとんど低炭水化物高脂質な食事は役に立たない、

というのは言えそうです。

持久的な種目を行っている人の中でも、

フルマラソンを完走したいというレベルのランナーや、

ジョギングだけで疲労抜きの週という選手が短期的に用いるのは良さそうです。

ただ、80%を超えるような負荷になってくると炭水化物を利用するので、

どうにもパフォーマンスは下がるので炭水化物を摂取しましょう、

となりますかね。

この辺りは何か別の形で持久的なパフォーマンスの栄養学的な感じでまとめたい所です。

2017年3月24日金曜日

ケトジェニックな低炭水化物食と身体パフォーマンス(2004年レビュー)

Ketogenic diets and physical performance
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC524027/

Nutr Metab (Lond). 2004; 1: 2.Published online 2004 Aug 17

Stephen D Phinney

多くの医者や栄養士は炭水化物が主要なエネルギー源でなければならないとしている。

高負荷な運動とグリコーゲンの貯蔵を調べた長年の研究などが根拠となっており、

軽度の頭痛や疲労しやすさの原因を炭水化物が不足していることと説明したりもする。

1930年までには北米の先住民族にも炭水化物食が広まったが、

炭水化物を摂取しない食生活を送っていたアラスカやカナダに住むイヌイットへの調査は、

幸いにも科学者によって事前に行われていた。

木の実などの採集や農作物の栽培など、

この5000年ほどで炭水化物を摂取できる環境が形成されてきたが、

日常生活を送るには狩猟による肉や魚といった栄養源よりも、

農作物の栽培などによる環境の方が安定している。

20世紀から栄養学の研究が多く行われるようになった。

1939年に行われたChristensen and Hansen(2)の研究では、

低・中・高の炭水化物食群に分けて食事を摂取させたところ、

高炭水化物群が最も長く自転車運動を継続することが出来た(低炭水化物の2.5倍)。

1960年代に入って筋バイオプシーによる研究が開発され、

(5)のような高強度の運動においては炭水化物が多く利用され、脂肪には利用の限界がある、

炭水化物が不足している人は身体的に損なわれている、

というコンセンサスを出す研究が行われた。

ケトジェニックな食事について書かれた初期の文献は、

1878年~1880年にSchwatkaらが行った北米の探索のものである。

1879年4月から始まった探索では翌年の3月に戻ったが、

途中は食料不足のために狩猟によって食料を得ていた。

この日記は1965年に発見されたが、

その中にはトナカイの肉だけでは疲れている感じがあったが、

2~3週間ほどで慣れたといった記述がある。

1970年代に入ると低炭水化物食に注目が集まった。

1980年に出された(13)の研究では8週間のケトジェニックな低炭水化物の食生活を実施し、

最初の1週間は適応のためにパフォーマンスは下がるが、6週間あたりでベースラインに戻った。

ここから、タンパク質やミネラルが十分であれば最大酸素摂取量などの機能は衰えないことを示した。

1983年の自転車選手を用いた実験などでも(14,15)、

脂質83%、タンパク質15%、炭水化物2%で構成された体重を維持する量の食事により、

同様の結果が見られた。

ケトジェニック食のパラドックスとして挙げられる研究の問題点としては、

研究デザインの問題がある。

4週間に満たない程度の研究や、カリウム・ナトリウムの不足が見られる。

イヌイットの食事は海水(脱塩しているが)を用いているため、

カリウムやナトリウムは豊富に含まれる。

タンパク質が体重あたり1.2g未満になる食事を摂取した場合、

最大酸素摂取量は減少する。

また、エネルギー消費量の25%を超えるとケトンの生成量が抑制される。

ケトジェニックな食事はミネラルとタンパク質の摂取量に注意すれば、

危険は伴わない。

しかし、筋グリコーゲンが低いレベルとなるため、ウエイトリフティングやスプリント種目など、

競技レベルでスポーツを行う人にとってはパフォーマンスを低下させるであろう。


Free

大雑把ではありますので、興味がある方はgoogle翻訳でもご利用ください。

文章が何行か翻訳されていないという雑な翻訳をされたのは確認しましたが。

まぁケトジェニックな食事、低炭水化物、高脂質、そこそこ高タンパク質な食事(ミネラルに注意)は、

適応するのに1週間ほど必要として怠さなどを感じるが、

そこを抜けて6週間もすると最大酸素摂取量はベースラインまで戻るが、

競技的なレベルで行う瞬発種目には不向き、

ということで。

ミネラルという点は忘れている人も多そうな気がしますね。

2017年3月23日木曜日

持久的な運動によって引き起こされるAMPKの活性化はレジスタンストレーニ ングによる筋肥大の反応を邪魔しない。が…

Exercise-induced AMPK activation does not interfere with muscle hypertrophy in response to resistance training in men

http://jap.physiology.org/content/116/6/611

Journal of Applied Physiology Published 15 March 2014 Vol. 116 no. 6, 611-620

Tommy R. Lundberg, Rodrigo Fernandez-Gonzalo, Per A. Tesch

持久的な運動をレジスタンストレーニングを同じ日に行う場合、

間に6時間の回復をおくとレジスタンストレーニング単独で行うよりも筋肥大した(42)。

持久的な運動によって筋グリコーゲンが減少するため、

直後にレジスタンストレーニングを行うことは筋力とパワーの減少が起こると考えられる。

持久的な運動はAMPKを活性化し、PGC-1αを増加させる。

レジスタンストレーニングはmTORの経路を活性化して筋肥大を促す。

ラットでの実験(60)では先に行った持久的な運動によるAMPKの活性化は、

mTORの伝達を抑制し4E-BP1やP70S6Kなどの下流因子の調節により筋肥大を抑制すると考えられる。

(41)や(42)の研究結果では、持久的な運動の後に筋機能が回復してからレジスタンストレーニングを行うと、

筋肥大が確認された。

では、持久的な運動の直後に行うとどうなるか、実験してみた。

週に3日程度運動を行う若い男性10人で実施。

片足での自転車運動を40分行った後、15分の回復時間を挟んで、

座った状態での膝伸展を4×7セット実施。

結果、持久的な運動を組み合わせた場合、

筋グリコーゲンやPGC-1α、VEGFのmRNAはレジスタンスだけ群よりも有意に増加し、

ミオスタチンmRNAは有意に減少した(Fig5)。

しかし4E-BP1やP70S6Kなどは特に変化が無かった(Fig6)。

持久的な運動が筋肥大を抑制せず、むしろ肥大を促したが、、

これが競技を行う選手に導入されることは悪影響を及ぼすと考える。

AMPKの活性は運動後1時間に明確に高まる(11,20,46)ので、

レジスタンストレーニングが打ち消した可能性がある。

ミオスタチンが減少しPGC-1αが増加したことは筋肉の増加や分解を抑制すると考えられ、

これが持久的な運動を組み合わせた群で高まったことは興味深い。

今回の結果で筋肥大は持久的な運動の組み合わせの方がより大きくなっているが、

これにはミトコンドリアや筋グリコーゲンの増加が大きく寄与していると推測される。

持久的な運動との組み合わせの方が筋力の向上が低かったことなどから、これは言える。

今回の実験では片足での運動を行っているが、

今後は他のやり方での比較が必要と思われる。


Free

とても面白い論文でした。

持久的な運動を組み合わせることがミオスタチン(筋肉の肥大を抑制する)の発現を弱める。

その点から考えると筋肥大には適度な持久的な運動を行うことは良さそうですね。 

ただ、見た目のデータだけから都合の良いことを言わず、

この結果からすると筋肥大や筋力向上には持久的な運動の直後に行う組み合わせは効果的では無いと思う、

と言っていますので。

最大出力の向上を狙う人であれば、

少し考えた方が良い、見た目の変化を狙う人ならば、持久的な運動も組み合わせると良い、

ということは言えるかと思います。






2017年3月22日水曜日

筋線維のタイプとサイズのパラドックス

The muscle fiber type-fiber size paradox: hypertrophy or oxidative metabolism?

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20602111/

Eur J Appl Physiol. 2010 Nov;110(4):665-94.

van Wessel T, de Haan A, van der Laarse WJ, Jaspers RT

1980年のHicksonの研究で持久的な運動とストレングストレーニングを同時に行うと、

それぞれを単独で行うのに比べてトレーニングによる反応が弱まることが確認された。

持久的な負荷は筋内での酸化能力を高めることが知られており、

ストレングストレーニング(高負荷なトレーニング)は筋肉を肥大させるのに効果的であるとされる。

どうしてこれらの能力は同時に向上していかないのか。

以下、何点か面白かった話を。

・TYPEⅠやTYPEⅡという筋肉の分類の仕方は筋線維の酸化能力とは一致しないことを理解しておく必要がある。TYPEⅠとTYPEⅡaの間には酸化能力や筋肉の太さに差があるとされるが、女性においてはTYPEⅠがTYPEⅡよりも大きいことがよくある。ラットの骨格筋ではTYPEⅠの酸化活性がTYPEⅡより低かったり、TYPEⅠ線維の方が筋サイズが大きかったりする。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/14617264/
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10596950/
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/2529775/
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19429822/

・図1から考えるに、筋肉の酸化能力は筋線維タイプの違いよりも筋のサイズに大きく影響される
・高い酸化能力を有する筋肉はタンパク質の合成も高い(それならば遅筋の方が肥大しやすいはず...???)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10424883/

・その他、酸化能力が高い方が筋肥大に効果的とされるはずだが、遅筋は肥大しにくいのは何故か。酸化能力が高すぎることでターンオーバーが働き過ぎて抑制されるのでは?


長いので結論部分を見てもらいますと分かるように、AMPKとmTORの活性による作用によって肥大が抑制されたり刺激されたりする、ということが書かれています。この辺りが把握できるようになったら、持久的なトレーニングに近いものをウエイトトレーニングなどにも入れていくことで、より筋肥大を高められるのかな、という気がします。かなり長いですが、なかなか面白い内容でした。

2017年3月21日火曜日

鍛錬者と非鍛練者におけるドロップセット法と逆ドロップセット法での筋活動と筋内の酸素動態の違い

Effects of the Drop-set and Reverse Drop-set Methods on the Muscle Activity and Intramuscular Oxygenation of the Triceps Brachii among Trained and Untrained Individuals

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27928200

J Sports Sci Med. 2016 Dec 1;15(4):562-568. eCollection 2016.

Goto M1, Nirengi S2, Kurosawa Y3, Nagano A4, Hamaoka T3.


Van Wesselらのレビューによるとレジスタンストレーニングによって生じる筋内の酸化能力は、

筋肥大において負の影響を与えることを示している。

また、Adamsらの研究では、トレーニングをしていない人では運動単位の動員が低下していることが報告されている。

筋肉の力と肥大の向上に機械的、代謝的なストレスがどのように影響を与えているかを調べることが必要である。

ドロップセット法は徐々に負荷を下げていく、

逆ドロップセット法は徐々に負荷を上げていくトレーニング方法である。

ドロップセット法の効果はGorassiniらの研究Schoenfeldらのレビューで説明される。

Schoenfeldのレビューでは、ドロップセット法は筋肉による負荷で血流が制限され一次的な低酸素状態になる。

これに機械的負荷が加わることで、より強い筋肥大が誘発されると示している。

過去の研究で鍛練者と非鍛練者での比較などは行われていないので実験をしてみた。

ウエイトトレーニング実施者と特に何もトレーニングしていない人それぞれ16人。

トレーニングプロトコルはfigure1にある通り。

ドロップセット法   95%×2 reps + 85% × 2reps +75% ×10reps
逆ドロップセット法 55%×3 reps + 65% × 3reps +75% ×10reps

間はそれぞれ3分のrest。

結果、鍛練者のドロップセット法が筋肉の活動や筋肉内の低酸素化をより大きく示した。

鍛練者は酸素の回復が素早く見られたが、

これはFryerらの研究によりトレーニングによる結果として知られている、

しかし、トレーニングしている人がより太い血管を有することなども分かっている点からすると、

鍛練者の血流は十分に制限されていなかったことも考えられる。

また、上半身と下半身のトレーニングでは結果が異なるとZhangらは示しているので、

今回の結果が下半身にも言えるかは不明である。


Free

ドロップセット法が効果的である、ということで。

逆ドロップ方は疲れた感じはするかもしれないけれども、

トレーニング効果は低いですよ、と。

あとは筋肥大の原因はイマイチよく分からない、ということで。

次回はここで一番最初に出てきた

The muscle fiber type-fiber size paradox: hypertrophy or oxidative metabolism?

筋肉のタイプとサイズのパラドックス

こちらのレビューを少々。

2017年3月20日月曜日

肥満男性の睡眠前カゼインタンパク質摂取と脂質代謝

The Effect of Casein Protein Prior to Sleep on Fat Metabolism in Obese Men

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27472361

Nutrients. 2016 Jul 27;8(8). pii: E452. doi: 10.3390/nu8080452

Kinsey AW, Cappadona SR, Panton LB, Allman BR, Contreras RJ, Hickner RC, Ormsbee MJ

深夜の高カロリーな食事は体重増加や心血管代謝の悪化を引き起こすとされる(1~5)。


寝る30分前に150kcal以下でタンパク質が豊富な食事を摂取することは、

食欲の減少や体組成に有益であるとされる(7~13)。

カゼインタンパク質を摂取した(8)の研究では女性の場合、翌朝の満腹感を高め、

翌朝の安静時代謝は(9)の研究では高まっていたことが観察されている。

こうしたことからカゼインタンパク質の摂取が肥満男性に良い影響があると考えられるので実験してみた。

BMIが25以上、体脂肪率が25%以上の18~45歳の男性12人。

平均BMI36、平均体脂肪率が36%であった。

就寝前のタンパク質はカゼインを30g。

普段の食事などはtable2を参照。

結果、特に大きな変化は見られなかった。

ただ、筋肉の分解抑制などを考えると効果はあると思われる。


Free

女性では変化が見られた先行研究に対して男性では特に効果が無かった。

考察をいろいろとしていますが、体重の違いや睡眠の質が悪かったなど、

多くの要因が関係してくると推測されます。

肥満となっている時間が長くて健康的に悪化している面が多いのかな、

ということも考えられますし。

まぁサプリメントを摂取した程度で健康な身体にはならない、

というオチとも言えますかね。

普段の食事などもタンパク質多めにするなどをしたら、

また違いが大きくなるかとも思われますが。

2017年3月19日日曜日

運動をした後、就寝前にタンパク質を摂取すると夜間の回復が促進される

Protein ingestion before sleep improves postexercise overnight recovery

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22330017

Med Sci Sports Exerc. 2012 Aug;44(8):1560-9. doi: 10.1249/MSS.0b013e31824cc363.

Res PT, Groen B, Pennings B, Beelen M, Wallis GA, Gijsen AP, Senden JM, VAN Loon LJ.

レジスタンストレーニングは筋肉の合成と分解を刺激する(6,31,37)

合成の方が分解よりも刺激されるが(6,8,31)、バランスは負の状態である。

このタンパク質のバランスを改善するために運動だけでなく栄養の摂取が必要となる。

炭水化物の摂取は分解が進んでいくのを抑制するが(11,28)、

合成速度には影響を与えない(10,21,28)。

タンパク質の摂取はバランスを正の状態へと改善する(8,12,23,28,32,36)

多くの先行研究は一晩の絶食に対する反応を見ている。

(4)の研究では夜に運動を実施しタンパク質を投与した後の一晩での回復を調べた。

この研究では予想よりも夜間での回復は低く、通常の値よりも低くなった。

これには血中アミノ酸の上昇やインスリンの分泌が無かったことなどが関係していると思われる。

今回の研究では夜に運動をし寝る直前にタンパク質を摂取するとどうなるかを調べた。

15人のレクリエーション程度の活動を行っている若い男性を被験者とした。

16時45分に管理された夕食を食べ始めて実験の準備をし、

20時からレジスタンストレーニングを開始。

水平方向のレッグプレスとレッグエクステンションを8×8set、

55%を1set、65%を1set、75%を6set実施。

間の休憩は2分で、エクササイズを変える際の休憩は5分。

45分程度で終わらせて21時に採血などを実施し60gの炭水化物と20gのホエイタンパク質のドリンクを摂取。

23時30分にも採血を実施して同じドリンクを摂取して就寝。

結果はグラフなどを参照。

血中のロイシンは朝までコントロール群と比較して高かった。


Free

寝る前のタンパク質の摂取だけを評価していない点に注意ですかね。

夜にトレーニングをしたことで高まっていた筋肉の合成を、

トレーニング後のタンパク質摂取と就寝前のタンパク質摂取で高く維持させた、

となるかと思います。

学生や社会人でトレーニングをしている人にはよくあるパターン化と思います。

学校に行って、仕事して、終わってからのトレーニングをしてタンパク質を摂取して寝る。

先に食事をしている点も異なりますが、

まぁ運動をしてタンパク質を摂取して寝る前にもタンパク質を摂取してというのは、

かなり効果的だろうと推測されます。

カゼインの方が就寝時には分解を抑制するという話もありますが、

この辺りは組合せ次第ではホエイの方が効果的と言えるのでは?

という気もします。

継続して観察していきたいところですね。

2017年3月18日土曜日

高負荷なレジスタンストレーニングと高タンパク質な食事は身体組成を改善する(追跡調査)

A high protein diet (3.4 g/kg/d) combined with a heavy resistance training program improves body composition in healthy trained men and women – a follow-up investigation

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4617900/



J Int Soc Sports Nutr. 2015; 12: 39.

Jose Antonio, Anya Ellerbroek, Tobin Silver, Steve Orris, Max Scheiner, Adriana Gonzalez, and Corey A Peacock

国際スポーツ栄養学会(ISSN、筆頭者が創設者の1人)は身体的に活動的な人々は、

1日に体重あたり1.4g~2.0g程度のタンパク質の摂取がトレーニングによる適応を高めるとしている。

持久的なトレーニングや負荷の高いトレーニングを実施している人ではそれ以下でも良いというデータもある。

高タンパク質という言葉は定義が曖昧な点があり、

高タンパク質と言っているがエネルギーに対してやカロリーに対しての比率などがある。

この実験では体重あたり3g以上のタンパク質の摂取を行うとどうなるかを調べた。

被験者は73人のレジスタンストレーニング経験のある若い男女。

最終的には25人が途中離脱(table3)。

週に5日、土日をrestにした高負荷なレジスタンストレーニングを8週間実施。

日々のトレーニング部位はスプリットルーティン(table1、2)。

過去の実験ではトレーニング内容を固定しているものがあるが、

今回の実験では週ごとに変化をさせている。

結果、table4にある通り。

体重は通常のタンパク質摂取群で有意に増加。

除脂肪体重は両群ともに有意に増加。

脂肪は両群ともに有意に減少。

体脂肪率は両群とも有意に減少。

パフォーマンスは両群ともに上昇(table5)。

食事はカロリーの大きな増加が高タンパク質群で見られる(table6)。

血液データには大きな変化は無し(table7)。

先行研究ではタンパク質の利用効率が高まるから多くのタンパク質は不要というものもあるが(10)、

推奨量よりも多いタンパク質の摂取をさせた今回の実験によって体組成は大きく変化している。

MPS(筋肉のタンパク質合成)の短期的な変化は、

除脂肪体重の長期的な変化の予測には効果的でないことが示されている(11)。

https://tf-ver3.blogspot.jp/2017/03/blog-post_13.html

(12)の卵20gのタンパク質の研究は一食当たりのタンパク質量の制限の根拠とされるが、

ミルクやホエイなど他のタンパク質でのデータは無いし、

1日に60gしかタンパク質を摂取しないとなると、1日に消費される量よりも少なくなる。

そのため、時間経過で考える研究を行う必要があると考えられる。

体水分量は除脂肪体重量などに大きな影響を与えるものであるが、

今回の実験ではデータを取らなかったので除脂肪体重の変化には脱水が影響しているかもしれない。

この点は今後の課題となる。

体脂肪量が減った理由として考えられるのは(14)の論文にあるように、

タンパク質を多く摂取すると睡眠時と安静時のエネルギー利用量が上昇したというものがある。

しかし、この(14)の実験ではエネルギー消費と脂肪量の間に関係がなかったので、

他の要因があるかもしれない。(14)は運動を行っていないので。

高タンパク質で負荷の高いトレーニングをしている群は、

(17,18)にあるようなNEAT(非運動性熱産生)が高まるかもしれない。

この高タンパク質の結果、腎機能に異常が見られたということは無い。

より長い期間での摂取などについてはさらなる研究が必要であろう。

結論として、

今回の実験から一日あたりに必要なタンパク質量は体重あたり2g以上であろうと考える。

コントロール群でもタンパク質の摂取量が増えてしまったという問題があった。

食事の管理は一般の人に任せるのは難しい面がある。

今後の研究としてはよりトレーニングされるエリート選手での実験を行うべきである。


Free

タンパク質はどれくらい摂取すればよいのかという話です。

論者のJose Antonioは一貫して高タンパク質を摂取すべきと言っています。

実際にそれで腎機能にも問題は起こっていないので。

取りあえずは8週間では問題なしということが分かりましたし、

一日に体重あたりで3g以上のタンパク質を摂取することのメリットは多そうなので、

しっかりとタンパク質を摂りましょう、と言えそうです。

あとはどのタイミングで摂取したのかが疑問として残る、

というところですかね。

その点でも異なりそうです。

2017年3月17日金曜日

ホエイプロテインはカゼインやカゼイン加水分解物よりも食後の筋肉合成を高める

Whey protein stimulates postprandial muscle protein accretion more effectively than do casein and casein hydrolysate in older men

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21367943

Am J Clin Nutr. 2011 May;93(5):997-1005. doi: 10.3945/ajcn.110.008102. Epub 2011 Mar 2

Pennings B1, Boirie Y, Senden JM, Gijsen AP, Kuipers H, van Loon LJ.

高齢者では筋肉の合成量が下がると考えられるが、これにより筋肉が不足する状態になる。


アミノ酸やミルク、牛乳などは骨格筋のタンパク質合成を刺激する。

この刺激はタンパク質の量や種類によって異なる。

こうした知見を用いて高齢者ではどうなるかを実験してみた。

被験者は平均年齢74歳の男性48人。

深夜の絶食を経て朝の8時に集合して実験。

結果、フェニルアラニンはカゼイン加水分解物が最も高くなった。

血中のロイシンはホエイ、カゼイン加水分解物、カゼインの順に高かった。

血中のEAAはホエイが最も高く、カゼイン加水分解物は高くなるも120分後にはカゼインと同じに、

その後はカゼインよりも低くなった。

筋肉のタンパク質合成速度はホエイが最も高く、ロイシンとの間に相関が見られた。

これはホエイに最も多くロイシンが含まれていることも影響すると考えられる。

高齢者においてはホエイが筋肉を刺激するのに効果的であり、

食事その他を考えるのが良いであろう。


Free


2011年の論文です。

この辺りから適量はどれくらいなのか、という話にシフトしていった感じですかね。

筋肉の合成が弱っている高齢者の場合はホエイが良いと考えられるわけで、

分解を抑制したいという考えよりは増やしたいという考えに基づいているという言い方をするなら、

若者であってもホエイの摂取が効果的であると言えそうですが、

その点は食事やらトレーニングやらとの兼ね合いで変化するであろうから、

何とも明確なことは言えない、となります。

個々人の条件に当てはめる実験は難しいので、

この辺りの論文を大量に読んで推測していくしかないと思います。

そのためには最新のレビューの活用です。

2017年3月16日木曜日

カゼインとホエイによるタンパク質合成の違いをラベルしたロイシンで調査

Whey and casein labeled with L-[1-13C]leucine and muscle protein synthesis: effect of resistance exercise and protein ingestion

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21045172

Am J Physiol Endocrinol Metab. 2011 Jan;300(1):E231-42

Reitelseder S, Agergaard J, Doessing S, Helmark IC, Lund P, Kristensen NB, Frystyk J, Flyvbjerg A, Schjerling P, van Hall G, Kjaer M, Holm L.

ホエイとカゼインの違いは知られているが、

レジスタンストレーニングの後に与える効果が違うのかはよく分かっていないので実験してみた。

除脂肪体重(LBM)で体重あたり0.3gのタンパク質を摂取。

結果、バリンとアルギニンはカゼインの方が60分以降も有意に高い傾向がある。

EAAに関しては180分後だけカゼインの方が有意に高いが、摂取後のピークは有意に低い。

p70S6kの変化などはカゼインの方が高かったが、この辺りには不明な点もある。

結論として、カゼインもホエイも含まれるミルクがベストなのでは?と。


Free

2011年の論文ですが、ホエイが良いかカゼインが良いかというのを決着するには至りません。

運動を組み合わせていますが、早朝に実施していますし夜間の絶食明けです。

この辺りがどのような影響を与えているのかというのが不明です。

また、conclusionでも触れているように筋肉の合成を調べているのであって分解は見ていません。

なので結論が合成に良いとされるホエイと分解を抑制するとされるカゼイン、

この両方が含まれるミルクの摂取が高齢者などには良いのでは、となっています。

まぁ現実的に、どちらが良いとは言いきれないので、

両方を上手く摂取するのが良いのだろうな、と思う所です。

2017年3月15日水曜日

カゼインとソイのタンパク質を与えた時の代謝の違い

Differential metabolic effects of casein and soy protein meals on skeletal muscle in healthy volunteers

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20685015

Clin Nutr. 2011 Feb;30(1):65-72. doi: 10.1016/j.clnu.2010.06.012. Epub 2010 Aug 3.

Luiking YC, Engelen MP, Soeters PB, Boirie Y, Deutz NE.

カゼインの方がアミノ酸の動態で素早い上昇などが見られたが、

タンパク質の分解などに関しては特に大きな違いが見られない。

と、これを眺めようとClin Nutrのサイトに行ったら関連した論文として、



Intraileal casein infusion increases plasma concentrations of amino acids in humans: A randomized cross over trial

http://www.clinicalnutritionjournal.com/article/S0261-5614(16)00034-0/fulltext

こちらがopen accessで出てきたのでそちらを。

エネルギー摂取を抑制することは肥満の予防につながる。

脂質だけでなくスクロースやカゼインの摂取でも回腸ブレーキ(満腹感の信号を出す)が起こる(3)。

強制的に減らす方法として胃バイパスが行われるが、

二型糖尿病や体重減少に効果的であるとされるもメカニズムは不明確な点がある。

胃から腸への排出が素早く進むことで吸収不良が起こって体重減少しているならば、

健康面への悪影響が心配される。

(10)ではカゼインの消化とアミノ酸の吸収の促進が指摘されている。

実験結果(直接投与とかつらそうと思うので手順はパス)としては、

消化が素早く行われ(カゼインとしては速い方?)、かなり高い率の吸収が見られた。

食後に上がるとされる(12)炎症性マーカー(IL6など)の著しい上昇は確認されなかった。

これらの点に関してはdiscussionで研究プロトコルに関しての問題点を指摘していますので、

そのまま受け取るべきではないでしょうが、なるほどという参考意見としては良さそうです。

この感じでいくと、プロテインの摂取もカプセル式のでやった方が効果的と言えそうな気がしますね。

今後、そうした研究や所品開発が行われるかもしれませんが、

30gのプロテインをカプセルで摂取...

何個の摂取で済むんですかね...

まぁなかなか面白い研究でした。

2017年3月14日火曜日

複数のタンパク質を混ぜたものは筋肉の合成を促進する

Protein blend ingestion following resistance exercise promotes human muscle protein synthesis.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23343671

J Nutr. 2013 Apr;143(4):410-6. doi: 10.3945/jn.112.168021. Epub 2013 Jan 23.

Reidy PT, Walker DK, Dickinson JM, Gundermann DM, Drummond MJ, Timmerman KL, Fry CS,

Borack MS, Cope MB, Mukherjea R, Jennings K, Volpi E, Rasmussen BB

ホエイやソイは摂取直後に血中アミノ酸濃度を高めることが知られている。

カゼインはホエイやソイに比べて摂取後のアミノ酸のピーク値は低いが、

長時間に渡って血中のアミノ酸濃度がやや高めに維持される。

これらをブレンドしたタンパク質の摂取がどのような効果があるのかは、



動物での実験はあるが(34)、人間での実験は無いので実施した。


カゼイン50%、ソイ25%、ホエイ25%のブレンドでした19gのタンパク質を摂取。

レッグエクステンションを実施した直後にタンパク質を摂取。

結果、混合したものはホエイよりも効果的と言える。


Free

何とも言えない感じはありますが、ホエイやソイ、カゼインを単独で摂取するよりは、

長時間を見ても効果があると言える気もしますが、

これならホエイを3時間ごとに摂取するのでも良いのかな、

という気はします。

仕事や睡眠時など長時間食事ができない場合を想定するならば、

混合の方がより効果が高まるという程度のような気もします。

2017年3月13日月曜日

運動直後のタンパク質合成の数値はレジスタンストレーニングによる長期的な筋肥大と相関が無い

Acute post-exercise myofibrillar protein synthesis is not correlated with resistance training-induced muscle hypertrophy in young men.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24586775

PLoS One. 2014 Feb 24;9(2):e89431. doi: 10.1371/journal.pone.0089431. eCollection 2014.

Mitchell CJ1, Churchward-Venne TA1, Parise G1, Bellamy L1, Baker SK2, Smith K3, Atherton PJ3, Phillips SM

運動後に筋肉の合成が高まることは知られているが、




これが長期的なトレーニングによる筋肥大に関係しているかを明確にした研究は無い。

23人の健康な男性でレジスタンストレーニングの経験が一年以上ない被験者。

結論、

多くの実験で1時間後から6時間後のMPSを測定しているが、

そこで出た数値が16週間後の筋肥大を予測するわけではない。

トレーニングを継続しているうちに数値は変わってくるので。


Free

引用している論文に面白いものが多いので、

そこをしっかりと読み込むのが良いでしょうね。

よくある基本的なタンパク質合成の実験は、

だからどうした?その時点ではそうかもな、トレーニングしたら分からんよ、

という当たり前の結果とも言えそうです。

トレーニングによって反応がより高くなる人、

変化しない人など様々なパターンがあると思われますし。

反応がよりよくなって筋肥大しやすくなる人が才能のある人となるのでしょうが、

じゃあどういう人がそうなるのか、というのは引用にもあるmTOR関連の話だと思いますが、

まだまだ未解明ということで。


2017年3月12日日曜日

運動の様式によって血中のサイトカイン分泌は異なる

Dynamic and Static Exercises Differentially Affect Plasma Cytokine Content in Elite Endurance- and Strength-Trained Athletes and Untrained Volunteers
http://journal.frontiersin.org/article/10.3389/fphys.2017.00035/full

Front. Physiol., 30 January 2017

Leonid V. Kapilevich, Anna N. Zakharova, Anastasia V. Kabachkova, Tatyana A. Kironenko and Sergei N. Orlov

運動によってサイトカイン(IL-6など)が分泌されることは広く知られている。

ランニングによってIL-6が増加することは知られている。

運動の形態での違い、被験者の特性での違いを調べた。

若い男性でウエイトリフティング・トラック&フィールド(10人のよくトレーニングされた中距離選手)のトレーニング経験が6年以上ある人々と運動経験の無い人を2つに分けたで4群に分類。

デッドリフトオ50%ほどのおもりをおよそ1分ほど保持する運動(ストレングスとコントロール群)と、

自転車運動(中距離選手とコントロール群)をそれぞれ実施。

結果、保持する運動は血流を制限するなどの効果が出るため、

異なったサイトカインの分泌が確認された。


Free

サイトカインに関しては体内で生じることで良い面や悪い面が言われていますので、

トレーニングを細かく考えたいと思う人はしっかり勉強するべきだと思いますが、

何せ細かくなるので、そこまで気にしすぎないでも良いかな、

と思います。

持久的なトレーニングやっている人がIL-6の数値をどう捉えるか、

というのはもっと考えられても良いと思いますが。


 膨大なデータを徹底整理するサイトカイン・増殖因子キーワード事典

2017年3月11日土曜日

魚のタンパク質を摂取したラットは速筋が肥大し肝臓の脂肪と血中グルコースが減少した

Fish protein intake induces fast-muscle hypertrophy and reduces liver lipids and serum glucose levels in rats

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25198797

Biosci Biotechnol Biochem. 2015;79(1):109-16

Kawabata F, Mizushige T, Uozumi K, Hayamizu K, Han L, Tsuji T, Kishida T.

世界中で魚は食べられているが、スケトウダラ(Alaska Pollack)の摂取による筋肉の変化などは、

筆者らの先行研究により確認されている。

この変化は牛肉の摂取などと比べてどのように異なるかを実験して調べてみた。

ラットに与えた食事はカゼインと魚のタンパク質。

6週間の期間が過ぎた結果、

魚のタンパク質を摂取した群ではヒラメ筋のmyh7(ミオシン重鎖)の発現が減少し、

myh4の発現が増加した。

魚のタンパク質を摂取した群ではPGC-1αの発現も有意に減少させた。

この結果から遅筋が速筋化したとは言い切れないが、

速筋が多くなったことは観察された。

グルコースの代謝も増加したためエネルギーの利用が増えたことで、

肝臓の脂質が減少したと考えられる。


Free

九州大大学院の川端先生が日本水産株式会社(ニッスイ)にいた時に研究されていた内容の論文ですかね。

所属がニッスイになっているので。


ということで、瞬発系のアスリート、短時間で大きな力発揮をするアスリートは、

魚をたくさん食べるのが良い、

と言えるかもしれません。

筋肉の回復のためにホエイなどと言われていますが、

筋肉のタイプを変えるためには魚のタンパク質だ、

と言われる日が来るかもしれません。

2017年3月10日金曜日

知ってる気になっている「ドーピング」

「ドーピングって何だか知っていますか?」

と質問した時に多く聞かれる答えは、

「使ってはいけない薬を使うこと」

というものでしょう。多分。きっと(私の今回のサンプル数n=10くらいです)。

では、この答えは正しいのか?

正しいと思いますという人は、ドーピングって何なのかを学んでもらいたいと思います。

「何が禁止されているかよく分からない」

と答えた人、

そうですね。そう思います。

何が禁止されているか分かりにくいというのもありますが、

現在の禁止物質リストはネガティブリストのような形式での採用となっています。


”引用”
大辞林 第三版の解説

ネガティブリスト【negative list】

禁止されている対象を列挙し、それ以外は許可するという方法で作成された一覧表。



基本的にドーピングは禁止だからね、
このリストに載っている薬以外でも、
以下に挙げるような効果があると思われるものは使ってはダメだからね、

となっています。

先日、陸上競技の4×100mリレーで2008年の北京オリンピックの金メダル獲得に貢献したジャマイカチームのメンバーの1人、

ネスタ・カーターからメチルヘキサンアミンが検出されたということで金メダルが剥奪されました。

このメチルヘキサンアミンが禁止リストに掲載されるようになったのが2010年です。

2008年時点ではリストに載っていませんが、先にも挙げたように


基本的にドーピングは禁止だからね、
このリストに載っている薬以外でも、
以下に挙げるような効果があると思われるものは使ってはダメだからね、


ということに引っかかります。

リストに載っていないから知らない、禁止されているような効果があったとは分からない、
 このような反論をすることが出来ますので、

2017年2月17日にスポーツ仲裁裁判所(CAS)に提訴しました。

異議申し立てをして係争している間は出場停止などの処分も課されない方針のようです。

まぁこの出来事はとても難しいわけでして、


「リストに載っていないもので禁止されている効果があるものを知っているか? 」


という質問をされて、はい知っています、と答えられる人は少ないでしょう。

それを専門で研究している人でないと難しいかと思います。

この出来事は我々の身近でも起こっておかしくない話です。

2017年からヒゲナミンが禁止物質に指定されたことで話題になりましたが、

ヒゲナミンはベータ2作用薬というものになります。

これはいきなりこのような機能を持つようになったわけではありません。

つまり、

ヒゲナミンは昔からずっと禁止されていた

ということです。

2017年からリストに掲載されただけです。昔からずっと禁止される機能を保有していたので、

禁止物質です。


今年から禁止リストに掲載されただけ


この点を理解してもらえれば。

歴史的な話を含めたまとめは日本体育協会さんの資料を見てもらっても良いと思います。

http://www.japan-sports.or.jp/Portals/0/data/ikusei/doc/k3-43.pdf



ではドーピングの禁止物質に関する話を少し詳しく。大雑把に。

まず、JADAが翻訳している日本語版の禁止表国際標準を見ますと、

http://www.playtruejapan.org/wp/wp-content/uploads/2016/12/3d0fcdb70bcf45de26a66192cd2a7dd7-2.pdf

S0.無承認物質

というのが一番最初に来ています。


”禁止表のどのセクションにも対応せず人体への治療目的使用が現在どの政府保健医療当局でも承認されていない薬物(例えば、前臨床段階、臨床開発中、あるいは臨床開発が中止になった薬物、デザイナードラッグ、動物への使用のみが承認されている物質”


これは常に使用禁止となっています。

簡単に言えば薬として市場に出回っていないもの、となりますかね。

莫大な金額を費やして政府や製薬会社がスポーツのために開発しても、

それは使用禁止です。

パフォーマンスが上がるけど死ぬ確率も高まることなどが分かりませんので。

これの問題点は検査で発覚しにくいということですかね。

新しい物質が開発されていた場合は当面は検知しにくいですし、

体内にあるものであったり排出されやすかったりした場合、 

チェックに引っ掛かりにくくなります。

なお、検査と簡単に言いますが、全ての物質を検査できるわけでは無いので、

時間が掛かります。スイッチ一つで全ての構成成分を判別出来る、

とても便利な機械は今の所まだ無いです。


島津製作所
http://www.an.shimadzu.co.jp/topics/bridge/bridge19.htm

LSIメディエンス
http://www.medience.co.jp/doping/


だから試合前に検査をして違反のある選手は除外する、

ということが出来ないわけです。


さて、デザイナードラッグでwikipediaを見ますと、

陸上競技のマリオン・ジョーンズの違反が出てきますね。


テトラヒドロゲストリノン(THG、クリア)

アメリカ食品医薬品局(FDA)が当時はまだ認知していなかった薬ということです。

この記事の中にリガンドやアゴニストという言葉がありますが、

これがドーピングが効く理由です。

体内では様々な物質がレセプター(受容体)と結合して機能します。

このレセプターに結合する物質はリガンドと呼ばれます。

結合することで機能が発揮されるわけですが、

このリガンド(結合する物質)と似ている物質を結合させて効果を高めたり抑制させるのが、

ドーピングの狙いです。

結合して受容体を機能させるものをアゴニスト、

受容体の機能をさせなくするものがアンタゴニストと呼ばれます。

例えば、体内には筋肉を肥大させようとする刺激を出す物質がある一方で、

筋肉を肥大させないようにする物質もあります。

通常では肥大させようとする物質が決まっていますが、

これをさらに効果を高める物質を結合させてより効果的に筋肥大させるのがドーピングの効果、

となります。

筋肉を肥大させないようにする物質を働かせないようにするため、

機能を失わせるような結合をさせることで筋肉が肥大するようにしていく、

というやり方も出来るわけです。

体内で決まっている結合を無視して外部から似た物質を投与して結合させる。

これによって副作用などが生じる可能性が高いから(実際に高いことも多い)、

ドーピングは禁止されるわけです。



ここまでを理解してもらえば十分です。

お付き合いありがとうございました。

興味がある人は続きをどうぞ。



話を戻して禁止表を見ますと、


S1.蛋白同化薬


というのがありまして、さらにS1.1として蛋白同化男性かステロイド薬のリストが書いてあります。

ここを見てもらいますと、既に述べた通りに、


例としては以下の物質がある


という記載があります。さらにリストの下には


及び類似の化学構造又は類似の生物学的効果を有するもの


という文もあります。

何度も言うことになりますが、
リストに掲載されていなくても蛋白同化薬としての機能があるものはダメだからね、

何とは断定できないから例を挙げておくからね、
これは例だからね、気を付けてね、載ってなくても使ったらダメ

ということになります。

人間の身体の構造が100%解析されたわけでは無いですし、

地球上に存在する全ての物質の機能が100%解析されているわけではない現状、

ドーピングを完璧に防ぐことは不可能ということです。

規制物質を緩和しようと言う人もいるかもしれませんが、

何度も言いますが物質はリストに掲載されているだけであり、

その効果が問題になるわけです。


リストで述べた効果があるものは全部禁止、


という分かりやすい形にしていますが、その効果があるものがどれなのか未だに不明、

というのが現在の科学の状況ということも言えるかもしれません。人間の身体は複雑なので。

人体実験もしにくいので。

なお、

ドーピング規制薬物を利用したトレーニング適応の分子機構の解析
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17500421/

こういった研究も行われているわけです。

禁止物質は身体能力の向上に効果があることがほとんどだから禁止されているわけで、

じゃあどうして効果があるのか調べよう、

ドーピングとならない方法で選手を強くしよう、という研究をしている人もいます。

最新の研究を追わないとダメな理由の一つはこの辺りにあるかと思います。


S2.ペプチドホルモン、成長因子、関連物質および模倣物質
S3.ベータ2作用薬
S4.ホルモン調整薬および代謝調節薬
S5.利尿薬および隠蔽薬

以上が常に禁止されるものです。

細かく一つずつ見ても大変ですし長くなりすぎたので省略。

さらに試合においてのみ使用禁止というものが以下になります。

S6.興奮薬
S7.麻薬
S8.カンナビノイド
S9.糖質コルチコイド

先述のネスタ・カーターのメチルヘキサンアミンはS6の特定物質である興奮薬、

これに引っ掛かりました。現在はリストに記載されていますが、当時は記載なし。

さらには特定競技において禁止される物質としてアルコールとベータ遮断薬があります。

詳しくもっと知りたいという人はJADAのサイトなどを見ると良いと思います。


JADAアスリートサイト「PLAYTRUE」
http://www.realchampion.jp/

JADA(日本アンチ・ドーピング機構)
http://www.playtruejapan.org/


ということで、

ドーピングというのは人間の身体が本来持っている機能を変化させ、

より能力を高めようとする行為であり、

その効果があると考えられる物質は全て禁止されている。

副作用による死亡リスクの高まりその他の理由から禁止されているが、

その物質の効果を知ることで人間の持つ機能が分かるため、

興味深い研究対象でもある、

ということがなんとなく分かって頂ければ。

タンパク質の摂取などがドーピングとならない理由は、

人間が本来持っている機能を変化させるわけではないからですね。



筋肉増やすぞ!!というスイッチを強制的に入れるのがドーピングであり、

このスイッチが入らないと増える量の限界は決まっている



という感じで理解してもらえれば。

限界に効率よく近づけるために摂取するのたタンパク質の摂取となります。

タンパク質を摂取しても人間が本来持っている機能を活性化するだけだから、

ドーピングとはならない、と。

ただ、我々が普段食べている物の中にも強制的にスイッチを入れるものがあったりするかもしれず、

知らぬ間にドーピングしてしまっている可能性もありますよ、

だから少なくとも禁止リストくらいは知っておいて注意しましょう、

ということです。


追記

省略しましたが質問があったので追加を。

禁止方法という規定もありまして、

M1.血液および血液成分の操作

これは自己輸血などで知られているかと思います。自分の血液や他人の血液をいかなる量でも体内に入れることは禁止です。 血管内で血液成分を操作することも禁止です

M2.化学的および物理的操作

これは尿のすりかえなどを想定していますが、とにかく検体を変化させるようなことは禁止です。
また、静脈内注射や注入も6時間で50ml を超えるような投与は禁止です。救急車で運ばれている時や病院で受診している時、手術中など正当な医療手段である場合は大丈夫です。
ニンニク注射と呼ばれるもので引っ掛かるのがこれですね。

M3.遺伝子ドーピング

最近話題のやつですね。効果があるかは明確ではないが、核酸のポリマーや核酸類似物質の移入を禁じています。細胞の使用、というのも禁止されていますので、iPS細胞なんかはダメとなるのでしょう。


いつどこでドーピングに引っ掛かるのかは分かりませんので、競技者としては常に自分の身体に何が入ったかを確認しておく必要があると思います。ファンの人から手作りのお菓子を差し入れられても、検査対象となっている選手は食べると危険がある、ということになるので貰っても食べられない、そういう理解も広まってもらいたいですね。悪意のある人でなくても、知らずにドーピングに引っ掛かる物質を使ってしまっている可能性はあるので。

アスリートの体重減少の簡単なレビュー記事(ゲータレードスポーツ科学研究所#159)

SSE #159: Protein and Exercise in Weight Loss: Considerations for Athletes

http://www.gssiweb.org/en/Article/sse-159-protein-and-exercise-in-weight-loss-considerations-for-athletes

Stuart M. Phillips, PhD

体重減少がアスリートのパフォーマンスにどのような影響を与えるかは、

まだ明確になっていないが、多くの事例から推測することが出来る。

30以上の論文のデータを提示しながら述べていますし、

簡潔に書かれているので読みやすいと思います。


他にも良い記事があるので、そちらも是非。

2017年3月9日木曜日

ギプス固定による筋肉の萎縮からの回復にはホエイがカゼインよりも効果的

Whey proteins are more efficient than casein in the recovery of muscle functional properties following a casting induced muscle atrophy


https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24069411

PLoS One. 2013 Sep 19;8(9):e75408. doi: 10.1371/journal.pone.0075408. eCollection 2013.

Martin V, Ratel S, Siracusa J, Le Ruyet P, Savary-Auzeloux I, Combaret L, Guillet C, Dardevet D

ギプス(ドイツ語、英語ではcasting)での固定は筋肉の活動を制限するため、

筋肉が萎縮することが知られているが、タンパク質の摂取によって筋肉は増えることが知られているので、

ギプスでの固定時にタンパク質を摂取したらどのような変化が起こるかをマウスで実験。

1か月半ほどで回復し、素早い回復にはホエイが効果的であった。


Free

今後の課題として人間での実験と書いてある通り、

マウスでの実験をそのまま人間にあてはめられるかは微妙なところですね。

トルクも固定による可動範囲の低下から機能回復による変化を受けて向上、

ということが見られるように、不明な点も多いですので。

取りあえず、ケガした時は運動量が減って刺激が減るから、

 ホエイの摂取をしておこう、となりますかね。

2017年3月8日水曜日

食後に行ったレジスタンストレーニングによる筋線維でのタンパク質合成

Myofibrillar muscle protein synthesis rates subsequent to a meal in response to increasing doses of whey protein at rest and after resistance exercis

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24257722

Am J Clin Nutr. 2014 Jan;99(1):86-95. doi: 10.3945/ajcn.112.055517. Epub 2013 Nov 20.

Witard OC, Jackman SR, Breen L, Smith K, Selby A, Tipton KD.

筋肉の増加には筋肉の分解と合成のバランスがプラスになることが大事である。

高齢者では40gのホエイ(8)やソイ(9)が20gの摂取よりも効果的であった。

若者ではレジスタンストレーニングを実践している人で20gの卵(EAAにして8.6g)を摂取したデータがある(4)。

40gだとロイシンの酸化速度が高まった。

これまでの研究は一晩を経て絶食状態の被験者で行われているが、

これは日常的に行われるトレーニングと同じ状態には無い。

朝食を摂取した1時間後にレジスタンストレーニングを実施したデータ(12)では、

食後に起こった筋肉のタンパク質合成をより高めた。

今回の実験では食事をした3時間後の運動とタンパク質の摂取がどのような効果を与えか、

実際に行われるトレーニング条件に近づけて実施してみた。

48人の趣味的にウエイトトレーニングを行っている男性被験者。

食後に下半身のレジスタンストレーニングを実施し、

その後に0,10,20,40gのホエイタンパク質を摂取。

血中のインスリンは40gの摂取が他の群に比べて全て有意、20gは0gに比べて有意。

フェニルアラニンとロイシンは運動によって減少したが、

摂取した後に40gが有意に上昇(ロイシンのピーク値は20gの1.5倍ほど)、

結果としては、

タンパク質が<45gと豊富に含まれる食事をした3時間45分ほど後に測定をすると、

ホエイの摂取は20g程度で筋原線維のタンパク質合成は最大値に達する。

アミノ酸の酸化や尿素の生成は20gと40gで多くなる。

普段トレーニングをしている人が、食事の後にトレーニングを実施するならば、

20g程度のホエイプロテインの摂取で筋肉のタンパク質合成は最大化されると考えられる。


Free

実験は定量化するために絶食状態で行うのがほとんどですが、

それだと実際のトレーニングをしている人に役立つか分からないので、

普段の日常に近づけて実験をしてみたデータです。

朝食で十分な量のタンパク質を摂取したのであれば、

3時間後に行う運動後は20gほどの摂取で十分であり、

それ以上の摂取は筋肉の合成には使われなさそうであるが、

まだ分からない面も多いから今後も継続、

という感じですかね。

まぁタンパク質を40gと十分な摂取が行えれば、

4時間程度は何もしないで大丈夫とも言えそうな感じですかね。

筋肉の分解が不安な人も多いかと思いますが、

絶食での実験データに引っ張られ過ぎてきたのかもしれない、

と。

2017年3月7日火曜日

骨格筋の遺伝子発現プロファイルはカロリー制限下においてタンパク質とカルシウムによって制御される

Skeletal muscle gene expression profile is modified by dietary protein source and calcium during energy restriction

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21525773

J Nutrigenet Nutrigenomics. 2011;4(1):49-62. doi: 10.1159/000327132. Epub 2011 Apr 28.

Tauriain en E, Storvik M, Finckenberg P, Merasto S, Martonen E, Pilvi TK,

Korpela R, Mervaala EM.

ゲノム解析により人間の遺伝子特定は出来たが、

遺伝子がどのように発現するかはまだまだ不明である。

肥満のマウスにカゼイン、ホエイにカルシウム、αラクトアルブミンにカルシウムを加えた食事を用いて実験。

カルシウムを添加した群ではカゼインに比べてAldh1a7, Fasn, leptin, Nr4a3, Scd1 のmRNAが減少した。

ホエイの方が肥満に対する抑制効果があることが考えられる。



この辺りに関しては、

http://togotv.dbcls.jp/20150204.html

www.ps.noda.tus.ac.jp/wp_miyazaki/wp-content/uploads/2016/11/MurakamiY8Dec.pdf

これらを見てもらいますと、少しは理解が進むのかな、と思います。

今まではタンパク質を摂取して筋肉が肥大したからこれは効果がある、

といったことが言われてきましたが、

今後は遺伝子発現プロファイルを見て、

この遺伝子情報が変化しているから、この遺伝子を刺激するようなことをやれば筋肉が、

脂肪が、以下略といったことが言われるようになるであろう、という話です。

この実験ではタンパク質の種類によって刺激される情報が違う、ということを示しました。

カゼインとホエイでの違いは多くの実験で明らかになっていますが、

これがさらに細かい遺伝情報レベルでも分かってきている、

そんなお話です。

2017年3月6日月曜日

カゼインとホエイのタンパク質を摂取することでレジスタンストレーニング後の筋肉の合成を高める

Ingestion of casein and whey proteins result in muscle anabolism after resistance exercis

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15570142

Med Sci Sports Exerc. 2004 Dec;36(12):2073-81

Tipton KD, Elliott TA, Cree MG, Wolf SE, Sanford AP, Wolfe RR.

20gのカゼインとホエイのタンパク質を摂取しての実験。

ホエイの方がカゼインの2.8倍ほどロイシンのピーク値が高かった。

摂取して60分後頃にピークは来る。

血流はホエイがどの時点でも高かった(有意だったり、そうじゃなかったり)。

フェニルアラニンはトータルで見るとカゼインの方が高い。


Free


2004年の論文に再び戻りますが、この頃はフェニルアラニンの効果が注目されていたので、

カゼインよりもホエイの方が良いとは明確に言われていません。

原著を当たっていくことで歴史の変化が見られます。

2017年3月5日日曜日

大豆タンパク質の摂取が様々な身体活動レベルの人々の骨格筋と筋力に与える影響

Effects of dietary soy protein on skeletal muscle volume and strength in humans with various physical activities

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26399344

J Med Invest. 2015;62(3-4):177-83. doi: 10.2152/jmi.62.177.

Hashimoto R, Sakai A, Murayama M, Ochi A, Abe T, Hirasaka K, Ohno A, Teshima-Kondo S, Yanagawa H, Yasui N, Inatsugi M, Doi D, Takeda M, Mukai R, Terao J, Nikawa T.

高齢化や運動不足によって寝たきりになる人が日本では近年増加している。

大豆に含まれるグリシニンが筋の萎縮を予防する効果があることを示されている。

この研究が身体活動の少ない人や寝たきりの人に効果的であると考え、

大豆タンパク質の摂取で筋量がどのように変化するかを実験してみた。

59人の被験者、デスクワーク群(低活動)、週に2回は10km以上を走る群(高活動)は、

さらにカゼイン群とソイ群に分けられた。

寝たきり群はカゼイン群とソイ群と摂取なし群に分けられた。

7.5gの粉状カゼインか7.1gのソイを30日間摂取。

筋量は低活動群でソイの摂取が有意に増加、

寝たきり群ではカゼインが摂取なしと比べて有意に増加、ソイも有意では無いが増加。

筋力はソイが最も増加したが有意差は無し。

Free


何というか、あぁ日本人の論文だな、という感じのものですね。

ソイに効果があるとしていますが、カゼインでも十分に効果があると言えるものでは、

という感じですね。

まぁ筋力の増加も起こったというのを見るとソイが良い気もしますが、

どうなのかなぁ、という感じが否めません。

日本人の論文だなぁ、となります。

2017年3月4日土曜日

運動後に炭水化物とタンパク質を摂取することでラットの骨格筋のグリコーゲン量は増加する

Post-exercise carbohydrate plus whey protein hydrolysates supplementation increases skeletal muscle glycogen level in rats

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19593593

Amino Acids. 2010 Apr;38(4):1109-15. doi: 10.1007/s00726-009-0321-0. Epub 2009 Jul 11.

Morifuji M, Kanda A, Koga J, Kawanaka K, Higuchi M.

運動後に炭水化物とタンパク質を同時に摂取することで、

グリコーゲンの回復が高まるということは分かってきたが、

どのタンパク質が効果的なのかは不明なのでラットを体重の2%負荷で4時間泳がせて、

グリコーゲンを枯渇させてからどのように回復するかを調査。

グルコースのみ、グルコース+ホエイ、グルコース+カゼイン、グルコース+BCAAの群。

ホエイプロレインの中でもWPHが最も運動後の回復が有意に高かった。

さらに Akt/PKBやPKCzetaのリン酸化も有意に増加した。

炭水化物の摂取とタンパク質(特にWPH)はAkt/PKBやatypical PKCsを活性化させ、

グリコーゲンの筋肉への取り込みを高めると考えられる。


2017年3月3日金曜日

就寝前のタンパク質摂取がトレーニングによる骨格筋の適応を高める

Pre-Sleep Protein Ingestion to Improve the Skeletal Muscle Adaptive Response to Exercise Training

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27916799

Nutrients. 2016 Nov 28;8(12). pii: E763.

Trommelen J, van Loon LJ

タンパク質の摂取に関するレビュー。


2017年3月2日木曜日

バスケットボール選手はポジションに応じてテストステロンとコルチゾールの分泌量が異なっている

Using testosterone and cortisol as biomarker for training individualization in elite basketball: a 4-year follow-up study

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25144130

J Strength Cond Res. 2015 Feb;29(2):368-78

Schelling X, Calleja-González J, Torres-Ronda L, Terrados N.

4年間のフォローアップ研究。

ポジションと出場時間、季節に応じての特徴を分析。

パワーフォワードはテストステロンが低い、

スモールフォワードはコルチゾールが高い、

13~25分の出場時間が多い選手はテストステロンもコルチゾールも多く分泌された。

3月から4月がテストステロンが低くコルチゾールが高いカタボリックな状態になりやすい。

など。

もちろん、これらは出場時間やポジションに応じて異なる点を考慮する必要はある。

と。


ドーピング検査をするならついでにこうした血液検査も少しやって、

選手に還元するというやり方を採用していったら協力的な人も増えるかなぁ、

と思いました。

年間を通じてのホルモン分泌の違いというのは試合やポジションも当然ながら、

その他の練習の影響などもあるでしょうし、

パフォーマンスとも関連して考えないとダメでしょうね。

AだからBだ!!

と単純に断じないように。

持久的な運動の強度が運動直後と1日後の回復期の筋原線維とミトコンドリアの合成に与える影響

Influence of aerobic exercise intensity on myofibrillar and mitochondrial protein synthesis in young men during early and late postexercise recovery

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24595306

Am J Physiol Endocrinol Metab. 2014 May 1;306(9):E1025-32. doi: 10.1152/ajpendo.00487.2013. Epub 2014 Mar 4.

Di Donato DM, West DW, Churchward-Venne TA, Breen L, Baker SK, Phillips SM.

持久的な運動によって筋肉の肥大が生じたり、


筋肉での酸素利用能が高まることは知られている。

高強度の持久的な運動は低強度に比べてmRNAにおけるPGC-1αの発現量を増やすが、

ではこれがミトコンドリアタンパク質の合成だとどのように変化するかは詳しく調査されていない。

ということで、筋原線維とミトコンドリアタンパク質の合成に運動負荷がどのような影響を与えるかを調査した。

8人の適度に運動をしている若い男性。

低負荷は最大酸素摂取量の30%で60分、高負荷は60%で60分の自転車運動。

30分~4時間30分と24~48時間後を分析。

高負荷群

・筋タンパク合成は24時間後でも安静時に比べて有意に高かった。むしろ回復期前半の測定よりも高かった。

・ミトコンドリアタンパク質合成は回復期前半で安静時より低く、24時間後には安静時より有意に高かった

・mTORは30分後は有意に高かったが4時間半後は安静時に戻った


低負荷群

・筋タンパク合成は回復期前半では安静時より有意に高かったが、24時間後では安静時に戻った

・ ミトコンドリアタンパク質合成は回復期前半で安静時より低く、24時間後はさらに低くなった

・mTORは30分後から安静時より低い状態が続いた。有意差は無し

・p38Thr180/Tyr182は4時間半後において低負荷の方が高負荷より有意に高かった     


結論として、高負荷の持久的な運動は低負荷に比べて、より筋肥大を起こす可能性がある。

絶食状態での運動による測定なので、先行研究にある食事、アミノ酸などとの関連は不明。


 Free

運動する前も後も絶食で被験者をやらされる苦しみ、とてもよく分かります。

60%を高負荷としているので、トレーニングをしている人からしたら、

軽く呼吸が乱れるかどうか、といった程度の負荷でしょう。

それを毎日続けている生活だと、その日の練習が翌日まで影響を与える、

さらに 翌日にも運動をすれば効果がずっと継続される、と。

しっかりとトレーニングをしている人にとっては、

軽いジョギング程度の運動ならば毎日やった方が大きな効果が得られる、

ということが言えると思われます。

ここにタンパク質の摂取などによってどのような変化が起こるのか、

という点がイマイチ見えませんが。ひょっとしたら栄養摂取がシグナルを減らす、

ということもあるかもしれませんし、無いかもしれませんし。

2017年3月1日水曜日

安静時及びレジスタンストレーニング後のホエイ、ソイ、カゼインプロテインの摂取

Ingestion of whey hydrolysate, casein, or soy protein isolate: effects on mixed muscle protein synthesis at rest and following resistance exercise in young men


http://jap.physiology.org/content/107/3/987

Journal of Applied Physiology Published 1 September 2009 Vol. 107 no. 3, 987-992

Jason E. Tang, Daniel R. Moore, Gregory W. Kujbida, Mark A. Tarnopolsky, Stuart M. Phillips

ホエイ、ソイ、カゼインの摂取による筋タンパク合成の違いは知られているが、

(2009年時点では研究が少なくて知られていない)

レジスタンストレーニング後のホエイ、ソイ、カゼインプロテインの摂取に関して、

含まれるEAAの量を同一にしてみたらどう異なるかを実験。

健康な男性18人の被験者。

体重あたり1.2~1.4gの摂取。

結果、

ホエイ >>>>>> ソイ >>>>>>>>>>>>>> カゼイン(注;参考概念です)

この実験からカゼインが筋肉の分解を抑制することを示すのは難しい。

Free


2009年の論文ですので、今からしたら分かっていることが分かっていない。

それでも現在の時点で分かっているように話がされていることが、

実はそれはおかしいのでは、

と指摘されています。

現在、一般的に言われている話が実は10年以上前の知識をベースとしていて、

この10年間でガラッと変わっている可能性もあります。

参考文献を含め、とても参考になるものかと思いますので、

一読ください。

英語が無理という人でも図が分かりやすいと思いますし。