2021年11月27日土曜日

マスクを着用しての運動は無着用の時と負荷は変わらない

Effect of Wearing Surgical Face Masks During Exercise: Does Intensity Matter?
Eric Tsz-Chun Poon Front. Physiol., 26 November 2021 | https://doi.org/10.3389/fphys.2021.775750

コロナ下においてマスクを着用して運動すると負荷が高くなるのかという議論が多く起こり、実際に研究も行われて負荷が高くなるというデータが出てきたが、これらに関しての疑問から
条件を変えて実験を実行。

・マスク着用時には強度が最大酸素摂取量の75%以上に達するとキツさを感じるようになるが、生理的な負担の違いは観察されなかった
・肺、循環系、免疫系などの生理系に重大なリスクと負担を与える可能性があるという、Chandrasekaran and Fernandes, 2020の指摘などがあるが、こうした実験はマスクを着用した上に呼気ガス測定用のマスク(ガスマスクのようなやつですね)を着用しており、空気の循環がより低下して負担が大きくなっていたと考えられる
・Shawら(2020)では疲労困憊するまでの自転車でのテストにおいては、動脈血酸素飽和度や心拍数HRに関して、ピーク時のパフォーマンスとの相対的な関係においてマスクをしている場合としていない場合で差がないことを示されている
・マスクを装着した被験者は暑さや湿気を感じたり、呼吸に抵抗を感じたりするなどの不快感を訴え、これにより最大努力をすることが難しくなり、運動強度が増すにつれて疲労が早くなる可能性がある(Driverら、2021)

不快感は運動の制限要因となるということが言える論文ですね。顔にマスクが密着することで空気が吸い込めないように感じるけれども、実際には不快感の方が制限要因として大きいかもしれないわけで、これはトレーニングをしている時の環境が良い、ストレスなくできるというのが大事ということにつながる話かもしれません。酸素が吸える量が少なくなるなども言われてきましたが、そんなことは特に無いというのも明確になりましたので、軽い負荷の運動であるならば、マスクをしても特に問題はなさそうです。ただ、不快感が高くなる場合は別なので、夏場などはやはりマスク無しが良さそうです。冬場は寒さ対策として活用しても効果的かもしれませんね。軽い負荷の場合は呼吸に悪影響は特になさそうなので。

2021年10月16日土曜日

代謝の支点となる乳酸

Lactate as a fulcrum of metabolism
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2213231720300422
George A.Brooks  Redox Biology Volume 35, August 2020

・人間の心臓では、エネルギー源としてグルコースや脂肪酸よりも乳酸が好まれる
・脳においてもグルコースよりも好まれる
・神経細胞はグルコースの取り込みと乳酸の生成に必要な細胞成分を持っていて、細胞内乳酸シャトルによって動脈に直接乳酸を取り込み、利用することができる(74)
・解糖系による乳酸の生成が酸素不足時にのみ生じる考え方には実験的な裏付けがない
・完全な好気性条件下では、グルコースとグリコーゲンの異化が乳酸生成に進むというエビデンスがある(7,39,136,139)
・筋収縮が細胞の酸化還元に及ぼす以外に、L-乳酸は、酵素的および非酵素的に触媒される反応によって、活性酸素種(ROS)の細胞産生に影響を与える(ミトコンドリア呼吸の結果として活性酸素が生成される)
・ミトコンドリアの呼吸の主なエネルギー源は乳酸である
・乳酸は血管内皮成長因子(VEGF)、インターロイキン-1(IL-1)、TGF-βの放出を促して血管新生と創傷治癒を促進するという好ましい結果が得られている(88)
・定期的な運動によりミトコンドリア質量が2倍になる可能性がある(42,82,94,137)
・ミトコンドリアタンパク質発現の増加のためのシグナル
・ミトコンドリア生合成の転写制御としてカルシウムイオン (119),AMP活性化プロテインキナーゼ (AMPK) (101,167])、サーチュイン1 (Sirt1) (46),低酸素誘導因子-1α (HIF-1α) (152)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γコアクチベーター-1α (PGC-1α) (72)がある。PGC-1αがマスターレギュレーターとされる
・ミトコンドリア生合成の下流の調節因子はNRF-1およびNRF-2、ミトコンドリア転写因子A(TFAM)(117)がある。これらに共通するのは、ATPのホメオスタシスが損なわれているという状況である
・乳酸にさらされると活性酸素が増加し、活性酸素やカルシウムイオンに反応することが知られている673の遺伝子が上昇
・乳酸は、脂肪酸の動員と酸化を阻害して制御する
・乳酸が脂肪酸を抑制するメカニズムは、乳酸が受容体結合を介して脂肪の脂肪分解を抑制すること(1,33,59,99)
・pHやナトリウムイオンとは無関係に、乳酸がヒドロキシカルボン酸受容体1(HCAR-1)の活性化を介して、脂肪細胞における脂肪分解を抑制する
・筋収縮時に解糖が促進されると、乳酸とピルビン酸の濃度が上昇し、ピルビン酸よりも乳酸への影響が相対的に大きくなる
・筋活動によりモノカルボン酸がミトコンドリアに取り込まれるとアセチル-CoAが生成され、それによってマロニル-CoAが生成されCPT1を阻害し、活性化された遊離脂肪酸がミトコンドリアマトリックスに侵入するのを抑制する(107,142)


トレーニング関連で個人的に気になる点をピックアップしただけですので、興味がある方は全文を読むことをオススメいたします。非常に興味深く読める内容でした。2000年代に乳酸が疲労物質ではなさそうであるという流れが進んできていますが、現実的にはまだそれを理解していない人も多く臨床の場などでは高い乳酸値が問題であると捉えてしまっているが、機能を改善するためには乳酸が高値になることが良い影響を与えている可能性なども指摘されてきています。ケガの回復に乳酸が役割を果たしているということですね。あとは持久的な運動をする時には乳酸が出ることが大事なのは引き続きですし、パワー系のトレーニングにおいても重要でしょう。腸脳の話ではまだ明確なものが多くは無いですが、今後さらにデータが出てくることが期待されます。あとは文中にも載せましたが、ミトコンドリアの呼吸による活性酸素が遺伝子発現において大事な役割を果たしているので、そこも意識して抗酸化作用のある食品、サプリの摂取を行うことも大事でしょう。

2021年9月12日日曜日

インスリン様成長因子とパフォーマンスの関連

 Insulin-like Growth Factor Axis Genetic Score and Sports Excellence
Ben-Zaken et.al
Journal of Strength and Conditioning Research: September 2021

 運動能力を向上させる可能性のある遺伝子を特定することは非常に難しく、将来のスポーツ選手の成功を予測するというのは推測の域を出ていない。プロスポーツ選手の遺伝子と運動能力に関する報告のほとんどが、IGF1の変動に焦点を当てていた。インスリン様成長因子(IGF)は筋肉の成長、分化、および機能に重要な役割を果たしており、高いIGF1レベルは短距離走に有利であり、エリートパフォーマンスに関係する可能性が示唆される。ランナーとは対照的に、IGF多型は水泳のパフォーマンスとは関連していなかった。
本研究では、イスラエルのエリートランナーと水泳選手を対象に、遺伝子スコアの高低を調査した。
 優れた能力を発揮するには遺伝的要因が必要であることはよく知られているが、環境と遺伝との関係や相互作用から生じる様々な要因があることも知られている。パフォーマンスのばらつきに関連する遺伝子を特定しようとする場合、成功にわずかしか貢献しないことも理解しておく必要がある。エリートアスリートを見分けるために遺伝子スコアツールが開発されているが、これまでの研究では循環型IGF-Iもフィットネスと相関することが示されている。IGF遺伝子スコアは、国内レベルの陸上競技選手とトップレベルの陸上競技選手(国際大会、世界選手権、欧州選手権、オリンピックの優勝者)で比較。ランナーとは対照的に、IGF多型は水泳のパフォーマンス向上と関連していなかったため、ランナーと水泳選手の間で、IGF1遺伝子スコアを比較した。

・イスラエルのスポーツ選手では、対照群に比べてTT遺伝子型の頻度が高いことが示されました(4.8%)。TT多型保有者は持久系とパワー系の両方のアスリートであったが、持久系アスリートは国内レベルの選手であり、パワー系アスリートは国際大会やオリンピックのトップレベルの選手であった
・典型的なパワースポーツの中でも、IGF1多型はストレングス競技よりもむしろスピードスポーツ競技に重要である
・IGF2(rs680)GG遺伝子型は、重量挙げ選手と比較してスプリンターで有意に高く、スピードスポーツには有益だが、ストレングススポーツには有益ではないことが示唆される。IGF2(rs680)多型がスピードパフォーマンスに及ぼす可能性のある有益な影響は、必ずしも循環IGF2への影響からではなく、IGF1レベルへの影響を介している可能性がある
・MSTN(ミオスタチン)遺伝子は骨格筋細胞にほぼ独占的に発現しており、循環IGF1レベルの抑制効果を介して筋成長の負の制御因子として機能している

・ランニングと水泳は、生理学的・代謝的特性が似ているが異なる遺伝子多型を持っている可能性がある。特定のIGF1多型は、陸上の短距離系の種目に有利であると考えられ、特定のIGF軸遺伝子スコアは、トップレベルの短距離走者と国内レベルの短距離走者を区別する可能性がある

興味深い点としてはトップ選手であれば必ず高いIGFを誇るわけではなく、競技に応じて違いがあるというところですね。水泳と陸上競技では持久力という観点などで似ていると言われたりするわけですが、遺伝子的な面では異なっているかもと考えられるのであると、これまでに様々な研究で行われている持久力の測定といったものも分けて考える必要があるのでは、と思いました。水泳における持久力が高い選手、陸上競技における持久力が高い選手は異なると考えられるのであれば、水泳選手の走ったり自転車によるトレーニングでは効果が出にくい選手もいるのでは、といった感じです。

2021年7月24日土曜日

健康な若年男性のレジスタンストレーニングによる骨格筋肥大には筋アンドロゲン受容体の含有量が関係

Muscle Androgen Receptor Content but Not Systemic Hormones Is Associated With Resistance Training-Induced Skeletal Muscle Hypertrophy in Healthy, Young Men
Robert W. Morton et.al
Front. Physiol., 09 October 2018

・骨格筋肥大には個人差が大きい。運動後の循環している同化ホルモン(T、GH、IGF-1など)の上昇がレジスタンストレーニングによる骨格筋肥大を決定すると考えられている(Kraemerら、2017;Mangineら、2017)
・しかし、筋タンパク質合成量の増加(Westら、2009年)と肥大化(Westら、2010年、WestとPhillips、2012年、Mitchellら、2013年、Mortonら、2016年、Mobleyら、2018年)において、このようなホルモンが因果関係を持つかは疑わしい
・レジスタンストレーニングによる筋肉内アンドロゲン受容体量の増加は筋肥大と有意に相関している(Ahtiainenら、2011;Mitchellら、2013)ので、筋肉内アンドロゲンや受容体の増加が重要であると考えられる。
・被験者は49名平均23歳身長186cm±6、体重86kg±5で12週間のトレーニングを実施
・筋肉内アンドロゲン受容体量は介入前と介入後で変化がなかった
・高反応者と低反応者の間では筋横断面積と徐脂肪体重に有意な変化の差が見られた
考察
・高反応者は低反応者に比べて、12週間後に5αリダクターゼ含量が増加、アンドロゲン受容体含量が有意に高い(トレーニング前後での変化はない)ことから、骨格筋の肥大には全身性ホルモンと局所性ホルモンのどちらも影響しないと考える。骨格筋肥大の大きさは、筋肉内のアンドロゲン受容体の含有量やその他の筋肉内の変数によって調節されると考える
・アンドロゲン受容体の相関関係については、トレーニングに対する反応が高かった人と低かった人のみを測定するという選択をした値である


アンドロゲン受容体を狙ったドーピングがここ5年ほどで時代になっていまして、テストステロンなどのホルモンはやはり関係はあまり大きくなさそうであると指摘されています。一方で陸上競技においてはテストステロンの値が高いとパフォーマンスが高いというデータがあるため、女子選手は基準値を超えている場合は薬物を用いて数値を下げないことには400mや800mなどに出場することができないというルールも存在しています。この辺りは研究が追い付いていない、解析がおかしいのではという指摘も当然ながら存在しています。なかなか難しいところではありますが、取り合えずはアンドロゲン受容体を増やすようなことを狙った方が明らかに筋肥大の効果は出ると期待される、と言えるかと思います。

2021年7月22日木曜日

運動時および回復時のグリコーゲンの貯蔵量と骨格筋のタンパク質の合成、分解

Effect of glycogen availability on human skeletal muscle protein turnover during exercise and recovery

Howarth KR, Phillips SM, MacDonald MJ, Richards D, Moreau NA, Gibala MJ.

J Appl Physiol (1985). 2010 Aug;109(2):431-8. 



・運動により炭水化物の利用率が低下するとタンパク質の分解とアミノ酸の酸化が促進されることが示唆されている
Effect of initial muscle glycogen levels on protein catabolism during exercise

・被験者は平均年齢24±1歳、体重80±5kgの健康な適度に運動をしている男性6名

・自転車運動によって糖を枯渇させ両脚での膝伸展運動を実施

・低炭水化物条件では高炭水化物条件に比べて運動の後半にタンパク質の分解が増加し、合成が減少(運動の後半、炭水化物がより減ってくることで合成が減ることで、より分解が増したと考えられる)
・炭水化物の利用可能性は長時間の運動中のタンパク質合成率に影響を与える

・低炭水化物群は実験前の摂取カロリー条件を整えるためタンパク質摂取が多めとなっていたので、ロイシンの酸化が多かったと考えられるかもしれない

筋肉を増やすことが目的である場合、炭水化物が減った状態でのトレーニングは好ましくないということですね。特に長時間運動をする場合は、運動中に糖質の補給をすることでタンパク質の分解を減らしていくことが大事になると考えられます。マラソンなどに向けてしっかりと走り込んで脚を作るということをしたいのであれば、運動前の炭水化物の補給、運動中の炭水化物の補給をしっかりと行うことが大事であろうと思われます

2021年7月21日水曜日

タンパク質摂取のメタアナリシス(2018年)

A systematic review, meta-analysis and meta-regression of the effect of protein supplementation on resistance training-induced gains in muscle mass and strength in healthy adults

Robert W Morton et.al
British Journal of Sports Medicine 2018;52:376-384

・食事でのタンパク質の摂取がレジスタンストレーニングによる1RMと徐脂肪体重の増加を大きくさせる(年齢が高くなるにつれて効果が減少する)

・タンパク質の総摂取量と徐脂肪体重の変化に関して、タンパク質の補給はレジスタンストレーニングを行っている人でより効果的でありるが、1.6g/kg/日を超えても増加しなかった

・1RMは2.49kgほどタンパク質摂取群の方が高い(9%ほど高い)程度なので、1RMの向上を狙うパワーリフティングやウエイトリフティングなどの選手で無ければ、タンパク質の摂取よりもトレーニングをもっと考慮した方が効果的であると考えられる

・タンパク質の補給は、徐脂肪体重の増加を0.30kg(27%)、横断面積を310μm2(38%)、大腿骨中央部横断面積を7.2mm2(14%)増大させた

・運動後のタンパク質投与量は、レジスタンストレーニングによる徐脂肪体重の変化に影響しなかった。レジスタンストレーニングをしている人は、筋肉の成長の可能性が小さく運動後の筋タンパク質の代謝が弱く、筋肉量の増加を見るためのタンパク質補給の必要性が高いのではないかと推測している

・高齢者は同化への抵抗性があり若い参加者と比較して、より多くのタンパク質量を必要とする。レジスタンストレーニングによる筋横断面積の変化に年齢は影響しなかったが、徐脂肪体重の変化に年齢が負の影響を与えたことから、高齢者が徐脂肪体重を増加させるためには、より多くのタンパク質を摂取する必要性が高まると推測される

タンパク質摂取量(g/kg/day)が多くなるとレジスタンストレーニングによる徐脂肪体重の増加にプラスの影響を与えるという理論があるが、これは高齢者を対象とした研究において、ベースラインのタンパク質摂取量の平均値および1日のタンパク質摂取量の平均値が低かったことに起因していると考えられる。調整なしのメタ回帰分析では、若年者のベースラインのタンパク質摂取量が多いほど、実際には徐脂肪体重の変化が抑制された

・レジスタンストレーニングによる徐脂肪体重の増加を最大化したい人には、約2.2gのタンパク質/kg/日を推奨するのが賢明かもしれない(このアプローチには限界があるが、合理的な証拠と理論に基づいている)

・タンパク質補給の詳細(タイミング、運動後のタンパク質投与量またはタンパク質源など)は、レジスタンストレーニングによる数週間のF徐脂肪体重や筋力の増加ほとんど影響していない。むしろ、若い人たちは、1日あたりのタンパク質摂取量が1.6g/kg/日程度、0.25g/kg程度に分割して摂取することがレジスタンストレーニングの効果により大きな影響を与える

・レジスタンストレーニングの実施が大きな影響を与える

2018年のものですが、いろいろと言われている内容を3年前の段階ではしっかりと示しております。そこからまた新たな知見なども出てきてはいますが、大事なことはしっかりとトレーニングをしろ、朝昼晩の三回の食事で体重60㎏の人なら1回につき15gのタンパク質を必ず摂取しろ、三食にプラスして50gほど摂取しろ、ということですね。結局のところ、トレーニング後はある程度の時間が経っているから摂取するタイミングとしては理想的である、という感じなのではないでしょうか。あとは話をする機会がある時には触れている、摂取しすぎてもダメという点もお忘れなく、と。人によっては摂取量を増やすことで効果が出ている人もいるので2.2g程度でも良いのではというのがありますが、ダメな人はその摂取しすぎによって逆効果が出ている可能性もありますので、摂り過ぎを注意するということをやってみるのもありかと思います。とにもかくにも、トレーニングによる刺激の方が効果的であり、タンパク質の摂取による筋肥大の刺激~なんていうのは気にする必要はそんなに無いよ、ということは言えるかと思います。ただ、触れられているようにウエイトリフティングやパワーリフティングの選手などはキッチリと意識して10%程度のプラスを取りにいかないとダメということで。そうではない、1RMの向上よりも大事なことがある人は、タンパク質の摂取を考えるよりも練習をもっと考えろ、ということは言えるかと思います。

2021年7月20日火曜日

給水不足な状態で暑い中での運動を開始した時の体温調整に関する男女差

Sex difference in initial thermoregulatory response to dehydrated exercise in the heat 
Gabrielle E. W. Giersch 2021 - Physiological Reports

・脱水の影響と生殖ホルモンの状態(生物学的性別も)の影響が、暑い中での運動時の体温調節に影響するのかという点は現在のところ明らかになっていない。

・水分を補給した状態で暑い中で運動する際の男女の体温調節の違いは、体格や形態の違いに起因するとされている。(Gagnon & Kenny, 2012; Jay, 2014; Shapiro et al., 1980)。

・運動強度を相対的な最大酸素摂取量(VO2max; Gagnon et al., 2009)に基づいて決定した場合、体格が体温調節反応の違いを説明することが示されてきた。しかし、熱産生に基づいて運動強度を規定した研究(Gagnonら、2008、2009;Gagnon & Kenny、2012)では、女性は主に性ホルモン濃度が周期の中で最も低い時期であるMC(月経周期)の初期である卵胞期に調査されてきた(Owen、1975)ので、エストラジオールやプロゲステロンが男女間の違いに与える影響を評価することができない

・女性ホルモンはMCを通して大きく変動し、体温調節機能に定量的な影響を与える(Charkoudian & Stachenfeld, 2014, 2016; Kolka & Stephenson, 1989, 1997a, 1997b; Owen, 1975)
女性は、卵胞期初期に比べて黄体期中期には、安静時、運動時、運動後のTre(直腸温)が増加する(Carpenter & Nunneley, 1988; Giersch, Morrissey, et al., 2020; Kolka & Stephenson, 1997b; Kuwahara et al., 2005; Lei et al., 2017)

・Treの増加は、プロゲステロン濃度の上昇によるものと考えられる(Charkoudian & Stachenfeld, 2016; Kolka & Stephenson, 1997b)

・ホルモンの影響があるので女性は男性と比べて暑さに対して反応が異なる可能性がある。しかし、このような疑問は、水分補給の状態を変化させた場合に関しては、解決されていない(Sawka et al., 1998)。

・性、生殖ホルモン、水分補給の状態によって、暑中での運動に対する体温調節反応が変化する可能性はあるが、メカニズムは十分に解明されていない。この研究では健康な若年男女を対象に、暑熱時の運動に対する体温調節反応に対する性の影響が、水分補給状態によって変化し、さらに生理周期によっても変化するかどうかを評価することを目的とした。

・女性では脱水に伴う運動中の体温上昇が、MC期とは無関係に悪化するという仮説を立てた。

・被験者は健康な20歳前後の男性12名と女性7名

・VO2maxの30%、40%、50%、60%、70%、80%の速度でそれぞれ4分、24分間の運動を実施。地形や風の抵抗を考慮してトレッドミルで2%の勾配をつけた。環境は~33°Cで相対湿度50%

・運動試験の直前に24時間の水分制限を実施。運動前の24時間は水分を摂取せず,水分含有量の少ない食品を摂取するよう指示

・運動前の脱水刺激として24時間の水分制限をしたのは、水分摂取量が少ない人や前日に脱水症状を伴う運動をして十分に回復しなかった人と同様の低レベルの脱水症状にするため(Cheuvront & Kenefick, 2014)

・比較的軽度の脱水状態であっても、女性は男性よりも暑い中での運動開始時のTreの上昇をより高める

・ホルモン状態による体温調節反応の違いは確認できなかった

・水分補給の状態は男女ともに発汗量に影響を与える。女性でも脱水は体温調節反応を損なうことが示唆された


雑感
運動する前にしっかりと水分摂取を実施してとは言うものの、前日の運動後に十分な給水ができていない場合というのはそれなりにあり、どうして調子が悪いのかとなったら給水不足というのはよくあることかと思われます。オシッコの色がほんのりと黄色い状態になるくらいまでの摂取が必要ですが、飲んでから体内で給水されて反映されるまでにもそれなりの時間を要しますし、運動後の喉の渇きに比べると、数時間も経ってしまうと水分を摂ろうという意識は減ってしまいます。そうした状態での運動において、女性は直腸温が上がりやすくなるので、パフォーマンスがすぐに落ちてしまう可能性が高い、ということですね。もちろん、給水が不十分な状態での運動は好ましくないわけですが、気づかずに運動を開始した場合に今日は何か動きが悪いなと思ったら、脱水の可能性も疑いましょうね、というのが言えるかと思います。生理周期での違いは特に無いようなので、しっかりと運動後や日常における給水を実施して、万全な状態で練習ができるようにすれば良さそう、ということで。

2021年6月12日土曜日

高負荷なトレーニング後はミトコンドリアの呼吸が減少する

Short term intensified training temporarily impairs mitochondrial respiratory capacity in elite endurance athletes

https://journals.physiology.org/doi/abs/10.1152/japplphysiol.00829.2020Journal of Applied Physiology 10 JUN 2021
Daniele A. Cardinale et.al
27人のエリートの持久的な種目の選手に適度なトレーニングを3日の後に高負荷なインターバルトレーニングを4週間続けて実施した。ミトコンドリアの呼吸量は20%ほど減少した。ミトコンドリアの密度は増加していることから、機能が減少していると考えられる。そしてアコニターゼの不活性化が確認された。

そのうち本文はしっかりと読むとして、ミトコンドリアの機能が低下するというのは経験や他の論文などからも予想していた通り。気になる点はアコニターゼの不活性化。クエン酸回路の機能が弱まるという点や鉄イオン濃度の調整がうまくいかなくなるという点。追い込んだ練習はあまりやり過ぎても意味が無いというのをまた裏付けるデータかなと言えるかと思います。

2021年4月1日木曜日

朝食を食べないことは夕方のトレーニングのパフォーマンスに悪影響

Omission of a carbohydrate-rich breakfast impairs evening endurance exercise performance despite complete dietary compensation at lunch
Richard S. Metcalfe, Matthew Thomas , Christopher Lamb & Enhad A. Chowdhury

European Journal of Sport Science 
Accepted author version posted online: 16 Jul 2020, Published online: 27 Aug 2020

朝食で炭水化物を多く含む食事をせずに昼に自由に食べると夕方のパフォーマンスが下がるのが分かっているので、朝食を摂取しなかった場合を実験してみたもの。
・被験者はトレーニングをしている自転車選手。
・朝食と昼食、昼食だけのグループに分けて両者のカロリーやタンパク質などを統一。
・結果、朝食を抜いた群は夕方の20㎞トライアルで3%ほど平均出力が低かった
・トライアル開始時から明らかに出力は低下
・しかし、この差は心理的な要因の可能性が高い
・問題点は前日の食事管理をしていない、朝食を食べる習慣がある人を被験者にしたこと

細かい点は無料で読めるのでお読みください。
取りあえず言えそうな事は、朝食をしっかりと食べることは大事である。これですね。かねてから説明している通りですが、学生の皆様は夏休みなどの長期休業以外では、土日を除いて夕方に練習をすることがほとんどだと思われますので、しっかりと朝食を摂取することでパフォーマンスをしっかりと発揮できる、質の高いトレーニングができる状態を作って臨みましょう。そして食事は翌日のトレーニングを万全に行うためにも、素早くエネルギーや身体を回復させるためにも、練習直後の意識は当然ながら、練習中から次の練習への回復を始める意識をもっと持つべきだろうな、と思います。あとは心理的な要因についても触れられているように、ルーティン化している作業が途切れることでパフォーマンスが落ちてしまった可能性もあるので、自分の置かれた状態で100%を発揮すればよいだけ、という開き直るメンタルの強さを持てるようになるのも大事なのかな、と思います。

2021年2月25日木曜日

セット間は長い方が筋肥大には効果的

Short inter-set rest blunts resistance exercise-induced increases in myofibrillar protein synthesis and intracellular signalling in young males
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27126459/
James McKendry et.al,
Exp Physiol . 2016 Jul 1;101(7):866-82. doi: 10.1113/EP085647.

レジスタンストレーニングにおいて1分と5分のrestではどちらが筋肉の合成に効果的かを調べたもの。
1年以上に渡り週に1回以上の下半身のレジスタンストレーニングを実施している若い男性を被験者とした。1RMび75%の負荷で1秒間のレッグプレスとニーエクステンションを4setずつ実施して疲労が確認されたら1分または5分のrestを導入。

結果、1分間のrestによるトレーニングは回復初期の筋タンパク合成を減衰させた。一方でテストステロンの数値は上がっていた。運動により生じるテストステロン値の上昇や成長ホルモンの分泌が筋タンパク合成と関連しないデータは増えている(West et al. 2009; West & Phillips, 2012; Mitchell et al. 2013)。循環内と筋肉内のテストステロン値は関連性が低い可能性はあること、アンドロゲン受容体が作られることが筋肥大に重要な役割を果たしている可能性を考えるべき(Bamman et al. 2001; Mitchell et al. 2013)。
運動後の筋タンパク合成の上昇は長期的な筋肥大を予測するのには役立たない(Mitchell et al. 2014)という近年の論文からして、

以下略

細かいことは無料で読めるので後はご確認ください。トレーニング初期にはエネルギーの必要性が高くて持久的な要素を伸ばすことが大事、その結果としてパワーも自然と上がるという話を最近しておりますが、こういった背景があるわけで。当然ながら、rest時間を長くして回数を増やす事による影響というものも考えられますが、それによって刺激に慣れてしまい伸びが弱まるということも起こります。ですので、トレーニング刺激は様々なものを入れるのが大事である、となるかと思います。筋肉を収縮させることそのものが肥大の刺激である、という考えも大事ですから。

2021年2月13日土曜日

第17回乳酸研究会(オンライン開催)

 ●短時間で実施可能なアスリート向けの低酸素トレーニング方法
~living low-training low+training highという発想~
山本正嘉(鹿屋体育大学)

・自転車選手は最大運動、陸上競技の長距離選手は150bmp程度での運動を実施、どちらも乳酸値の変動に大きな効果。主観的なキツさが低下しやすい
・高所トレーニング単独の効果ではなく、普段のトレーニングの中に組み込むことでトレーニング効果を高めるのがよいのでは
・個人に応じて身体応答が大きく変化するので、最適な負荷をかけるのが大事
・科学の作法に則した研究のやり方ではアスリートレベルのトレーニングに追い付かないので、事例研究として蓄積してヒントとしていくのが大事

八田先生の質問「体内での使い方の変化が起こった、効率に使えるようになったのでは?」

感想としましては、食事の摂取に応じて酸素摂取量も乳酸値も変動するので、疲労によって食事摂取が変動することで数値は簡単に変動します。低酸素環境においては糖の分解がより高まると考えられるので、事前の食事、糖質(炭水化物)の摂取が統一されないと研究として数値を一定にしていくのは難しいと思います。乳酸値も簡易な測定ができるようになりましたが、食事での変動が大きいことがあまり知られていないので、食事が不足している結果として数値が下がっているのに改善したと思ってしまっている案件もある、と思います。

●低酸素環境下でのスプリントインターバル運動時の乳酸代謝に対する急性の応答とトレーニングによる適応
竹井尚也(東京大学大学院総合文化研究科)

・高強度運動時に遅筋線維よりも速筋において酸素分圧の低下が顕著に起こる
・標高3000m相当の低酸素環境において自転車運動を実施、30秒のスプリントと4分程度の休憩をはさんで実施。糖の分解を中心としたエネルギー代謝の変化なし。呼吸のしづらさが感覚的に少し高くなる程度。疲労度などは変化無し。低酸素環境でのスプリント運動では中枢疲労は起こらない、条件間での差も無い。心拍数は上がる。絶対運動強度は低酸素環境での低下は無いので、低酸素環境において大きな生理学的ストレスをかけることが可能になる(実験2へ)
・短距離選手において実施、3×30秒のスプリントを週に3回2週間を実施。トレーニング効果は差が無かった。運動後の乳酸値は低酸素の方がやや低くなる傾向。
・運動後の乳酸濃度の減少傾向は乳酸を作るよりも利用が高まったと考えられる。
・先行研究でも乳酸値が減少している。
Exercise Performance, Muscle Oxygen Extraction and Blood Cell Mitochondrial Respiration after Repeated-Sprint and Sprint Interval Training in Hypoxia: A Pilot Study
なので、ミトコンドリアの機能改善が起こっているのでは?乳酸の酸化、利用が高まる可能性が考えられる

八田先生の質問「常酸素では酸欠にはならないが、低酸素環境では酸欠になってると解釈する?」 竹井「10~20%下がっても運動ができなくなるわけではない」

感想としましては、普通のトレーニングで良くないか?という数値しか出てこなかったので、血液的な変化をもっと見て欲しい、出して欲しいところです。あとは短距離選手のトレーニングとしてその本数、負荷が適切だったのかという点も疑問です。どの時期において実施したのか、これで強くなると言える負荷だったのかというところですね。あれで強くなるならば、と思ってしまえる負荷ですし。この辺りは最初の山本先生が言われていたように、実験として比較条件を明確にしないとダメだから仕方がない部分でもあるので、何とも言えない面もありますが。

●簡単・迅速に血中の乳酸濃度測定が可能!
~ラクテートプロ2 LT-1730のご紹介~
寺尾優人(アークレイマーケティング株式会社)

アークレイによる商品紹介。

ラクテートプロ2にはお世話になっております。薬剤師さんのいる薬局に行き、商品の画像を見せて説明するとスムーズに購入できます。

●軽度な高気圧酸素の効果
~生活習慣病の改善やトレーニングへの応用~
竹村藍(国立スポーツ科学センター)

・高気圧酸素の機械の使用には医師免許が必要
・メタボリックシンドロームに対して軽度な高気圧酸素での滞在により糖代謝異常の改善が起きる。ラットにおいてヒラメ筋重量の減少も抑制され、PGC-1αの減少も抑制される。組織や細胞に十分な酸素が供給されることが影響していると考えられる。
・ヒトにおける今後の研究が必要
・60%酸素環境下でのトレーイングは酸化ストレスの増大は生じなかった(Kon et.al, 2019)
・高酸素環境のため血中酸素飽和度がほぼ100%を維持。心拍数の上昇抑制や血中乳酸濃度の上昇抑制(stellingwerff T et.al 2006)が見られる。発揮パワーの上昇(Chrisopher GRP A et.al, 2007)も見られる
・高濃度酸素環境下でのトレーニングにより血中乳酸濃度の上昇が抑制され、最大運動における平均パワーが増大。神経系の適応の可能性がある。一方で短距離や中距離走においては酸素の利用が高まる結果としてパフォーマンスが下がる可能性がある。

八田先生の質問「酸素濃度を上昇させるのと気圧を上昇させることでの違いは?」「骨粗しょう症に関して。」

感想としましては、トレーニング効果は運動をどれだけ実施できたかという点だけではなく、代謝物質をどれだけ生成できたかという点も大きく影響するので、これだけだと何とも言えない内容かな、という感じです。より長い時間運動を継続できたからといって、トレーニングという観点からすると疑問が残るということです。

●腸内細菌由来乳酸・ピルビン酸を介した腸管免疫の制御
森田直樹(東京大学定量生命科学研究所)
・説明が難しいのでこちらこちらこちらなどを見ていただくのが早いと思われます。
八田先生の質問「運動による血中乳酸濃度の上昇は免疫を高めるのに効果的か?運動による」「腸内細菌の存在は大腸がメインだが?乳酸菌を生成する腸内細菌は小腸に多い」「低炭水化物な食事は免疫の観点からは悪影響?菌によってエサとなる糖が違うが、それが無くなると腸内細菌が乱れてもおかしくない」

感想としましては、最近注目されてる分野であり楽しいお話でしたが、多分基本的なところの知識が無いと難しく感じてしまう内容だろうな、というものでした。やはり炭水化物が大事なんだろうな、ヨーグルトを毎日食べようと言ってますがこれはやはり大事だな、と思いました。

総合討論で思ったこと。
・リカバリーが低酸素環境で悪くなると言うが、ケニアのアスリートなんかはずっと滞在、生活をしているわけで、順応できているかどうかの問題が大きいのでは?個人差が大きいという点は順応力が人によって違うからというのはあるわけで。この辺りがなんとも微妙でして、回復しきれない高負荷を与えてしまったのが問題であるので、トレーニングの設計を見直すべきではという案件なんだろうと思います。なので研究における実験計画通りにやるのは反応の違いが予測できないので本当に難しい。

2021年1月10日日曜日

カフェイン摂取に関する国際スポーツ栄養学会のガイドラインを読んで

International society of sports nutrition position stand: caffeine and exercise performance

https://jissn.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12970-020-00383-4

Journal of the International Society of Sports Nutrition 

volume 18, Article number: 1 (2021

全文公開ですし、読んで面白いと思いますので、ぜひ。


どれくらいの摂取で効果が出るのかに関しては「少なくとも3mg/kg」

Dose response effects of a caffeine-containing energy drink on muscle performance: a repeated measures design

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22569090/ 

J Int Soc Sports Nutr. 2012 May 8;9(1):21


IOC Consensus Statement: Dietary Supplements and the High-Performance Athlete

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29589768/

Int J Sport Nutr Exerc Metab . 2018 Mar 1;28(2):104-125.

持久系種目、自転車や陸上競技、ボートでの使用者が多いが、2008年以降はチームスポーツやパワー系種目での効果に関しての研究が増えてきている。小腸で主に吸収されるが胃でも吸収され、30分~120分ほど血漿における濃度が上昇する。飲食物からの九州には個人間での差は無いようだが、代謝や分解においては差が見られる。平均半減期は4~6時間とされているが個人差があり、成人では1.5~10時間の範囲になることもある。

The absolute bioavailability of caffeine in man
Eur J Clin Pharmacol . 1983;24(1):93-8
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/6832208/


160mgのカフェインを含む飲料での比較では、コーヒーと紅茶が30分、コーラが2時間後に最大値となった。摂取速度、温度、摂取源での違いは小さいが、ガムからの摂取が一番速い。持久力の向上にしては中枢神経系や末梢神経系内での作用によるものと考えられる。

プラセボの可能性も考えられる
Placebo effects in competitive sport: qualitative data
J Sports Sci Med . 2007 Mar 1;6(1):21-8

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24149220/

この論文からはカフェイン以外でもプラセボはかなり大きな影響を与えていることが分かる。

使用に慣れている人では筋力や持久力が高まらなかったという例もある
The Effects of High Doses of Caffeine on Maximal Strength and Muscular Endurance in Athletes Habituated to Caffeine
Nutrients . 2019 Aug 15;11(8):1912
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31443220/

代謝や感受性に関する遺伝子によって効果が異なる
Comparisons of CYP1A2 genetic polymorphisms, enzyme activity and the genotype-phenotype relationship in Swedes and Koreans
Eur J Clin Pharmacol . 2007 Jun;63(6):537-46
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17370067/


サプリメントとコーヒーではカフェインの含有量に大きな差がある
An examination of consumer exposure to caffeine from commercial coffee and coffee-flavoured milk
Journal of Food Composition and Analysis

Volume 28, Issue 2, December 2012, Pages 114-118
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0889157512001548


Caffeine content of pre-workout supplements commonly used by Australian
consumersDrug
Test Anal . 2019 Mar;11(3):523-529
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30196576/

コーヒーは植物なので含有量にバラつきがあるのは当然ですね



痛みを感じることを抑制して持久力の向上などにつながっているなども考えられるので、何が効果的なのかというのはよく分からない点がまだまだあるということですね。 あとはガムの効果が即効性もある点からして、マラソンなどの持久的な種目における途中での給水で活用しようと思うのなら、口の中で少し溜めてから飲んだりするのが効果的になるかもしれません。10秒間のマウスリンスで効果が確認されているので。自転車種目においては競技中にガムを摂取することでパフォーマンスが上がることが確認されています。力を発揮するようなパワー系の種目、ボールを投げるといった種目には効果的である一方で、ダッシュと休憩を繰り返すような種目には大きな効果はほとんど見られないという点からすると、必ずしも摂取しない方が効果的(その後の睡眠の質の向上による回復力アップ)という場合もありそうです。実際、バスケやサッカーでの効果はあまり見られず、バレーボールも女子選手では効果が見られていないが、ラグビーや柔道においては効果が認められています。ただ、ラグビーもスプリント力の向上は見られていない。これらは遺伝子的な影響がかなり大きいようなので、効果が無いなと感じる人は使わない方が良いかもしれません。飛行機での移動による時差ボケの対策には使えるかもしれない、という点にも触れていますが、脳を覚醒させることで強制的に治すというのは有りかと思います。しかし、カフェインの摂取により不安感が増大するというものもあるため、環境が変化して憂鬱な状態での摂取は避けた方が良いかもしれません。試合前に摂取することでも不安感が増大するので、摂取するかどうかはなかなか難しいですね。暑熱環境での使用は特に悪い面が大きいわけでもなく、かといって明確にパフォーマンスを高めるわけでもないようですが、それなりに効果はある様子。また、運動後にカフェインと炭水化物を同時に摂取することでグリコーゲンの回復速度が速くなることも確認されている。ただ、これによって睡眠不足になると意味が無いので、午前中に練習をした場合は昼食にコーヒーなどでカフェインを摂取すると良いかもしれません。その他、詳しいことは原著をご覧ください。