2017年3月29日水曜日

持久的な運動やレジスタンストレーニングにおけるグリコーゲンの利用可能量と筋肉の適応(レビュー)

Glycogen availability and skeletal muscle adaptations with endurance and resistance exercise

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26697098

Nutr Metab (Lond). 2015 Dec 21;12:59. doi: 10.1186/s12986-015-0055-9. eCollection 2015.

Knuiman P, Hopman MT, Mensink M.

運動は大まかにレジスタンスなものと持久的なものに分類される。

持久的な運動はさらに高負荷なインターバルトレーニングのようなものと、

長時間の低負荷運動に分類される。

レジスタンストレーニングは筋肥大と筋力向上を目的とし、


持久的なトレーニングは骨格筋の酸素利用量を高めて運動の継続時間を長くすることを目的とする。


運動中のエネルギー源としては炭水化物と脂肪が主に用いられる。

(9,10)の研究のように近年ではグリコーゲンが少ない状態でのトレーニングが研究されている。

(17,18) では低グリコーゲンの状態での持久的なトレーニングはパフォーマンスの向上に有効であるとしている。

(19)の研究ではレジスタンストレーニングにおける低グリコーゲン状態はミトコンドリアの生成シグナルを増やすという結果を見せているが、

(20)の研究ではグリコーゲンレベルは関係ないとしている。

(21)の研究では筋グリコーゲン量の低下がカルシウムイオンの小胞体からの放出を抑制し、

筋力の低下を引き起こすとされている。

(25)では低グリコーゲンの状態で持久的な運動を開始すると、

早期に筋小胞体からのカルシウムイオンの放出が抑制されると示した。

最大酸素摂取量の30~65%程度の段階ではエネルギー源として脂質の利用が多いが、

(28)の研究にあるようにグリコーゲンの貯蔵量が一定レベルを下回ると、

脂質などのエネルギー源があっても運動における筋肉の活動は制限されるようになる。

(30)にあるように、低グリコーゲンはアミノ酸の全身への放出を増やし、

脂質の酸化を増加させ、運動強度を低下させる。

(10)の研究にあるように、低グリコーゲンの状態は脂肪の代謝を活性化し、

ミトコンドリアを生成するための刺激を増加させるとされているが、

多くの研究がなされているわけではない。

(17)の研究ではトレーニングをしていない被験者では運動時間の増加や、

クエン酸シンターゼの活性の増加を見つけた。

(12,16)ではトレーニングをしている被験者での実験結果を示した。

その結果、大きな効果は特に認められなかった。

最大酸素摂取量の70%程度での運動中の脂肪利用の増加は、

低グリコーゲン群で認められた。

これらの結果から、低グリコーゲン状態でのトレーニングは脂肪の利用を高めることは言えそうである。

(18)の実験では1日に2回の運動の間における炭水化物の摂取は、

短時間の高強度インターバルトレーニングに大きな違いを生じさせないことを示した。


レジスタンストレーニングは筋肉の大きな収縮が行われるが、

この時に筋グリコーゲンがエネルギー源となる。

(38)にもあるように大部分のATPの産生はグリコーゲンの分解によるものである。

レジスタンストレーニングによるグリコーゲンの減少は(37、39,40,41)の研究にあるように、

およそ24~40%ほどとされるが、運動の強度や時間などの要素によって決定される。

レジスタンストレーニングにおける低グリコーゲンは、

持久的な運動における低グリコーゲンに比べると研究が少ない。


持久的な運動によってPGC-1αが活性化する。

PGC-1αはミトコンドリアのサイズや酸化能力に影響するが、

この活性化はAMPKによって調整される。

(55)にあるように持久的な運動はATPを多量に用いるためADPやAMPを増加させる。

その結果、(56,57)のようにATPを回復させる(利用を減らし産生を増やす)ためにAMPKが活性化される。

運動時に筋グリコーゲンが減少するとAMPKが活性化する。


ミトコンドリアの増加にはp53も関与していると考えられる。

(66,67)からミトコンドリアの遺伝子発現に刺激を与えるとされる。

(68)の実験から低グリコーゲンの状態での運動はp53を上方に制御すると考えられるが、

この実験はグリコーゲンだけでなくカロリーも制限しているものなので、

さらなる調査が必要である。


レジスタンストレーニングは酸素利用を高めないと過去の研究ではされていたが、

近年の研究結果からは酸素の利用もある程度高めることが示されている。

これには年齢による違いなどはない(73,74)。


持久的な運動後のグリコーゲンとタンパク質の合成に関する研究は少ない。

(80)によると筋グリコーゲンの低下はNOの利用を倍以上に減らし、

筋肉の分解とアミノ酸の酸化を増加させる。

(82)の研究では低グリコーゲン状態で運動を開始すると、

運動中の筋肉合成が減少し分解が増加することを示した。

持久的な運動にとって低グリコーゲンによってミトコンドリアの増加が期待できるが、

筋肉の分解が増加するのは問題である。

(83,84)の研究では運動中や運動後のアミノ酸やタンパク質の補給により、

筋肉の分解を抑制できるとしている。


レジスタンストレーニングにおける筋肉の合成や分解は複雑である。

Akt-mTOR-S6Kは筋肉の合成経路の一つであるが、

多くの研究がなされている(85,86)。

(87)の研究ではグリコーゲンの利用が低いと安静時や運動時のAMPK活性が高まるとしている。

(88)では低グリコーゲンが筋肥大に関する遺伝子を活性化させないとしている。

(89)の研究ではmTORの活性は示すものの筋肉合成にはグリコーゲンの貯蔵量が影響しないことを示した。

この結果は(90)の研究でエネルギーの減少が筋肉合成を最大で19%ほど弱めるという結果が出たことと比べると興味深い。


持久的な運動とレジスタンストレーニングを同時に行うことが、

両方の効果を高めるわけではないことが多くの実験で示されている(91~96)。

しかし(97,98)の研究では持久的な運動だけを行うよりも効果が高いとしている。

この辺りはまだまだ研究が必要と考えられる。

近年では多くの実験が絶食後に行われているため、

実際に運動を行う状態とは異なっているという指摘がなされている。


Free

適度につまんだので、

興味のある方は全文をどうぞ。

いくつかの論文から言えそうなことは、

筋肉を増やしたい人は筋グリコーゲンが多い状態でレジスタンストレーニングをするべきであり、

持久力を高めたい人は少ない状態でもトレーニングすると効果が高いが、

筋グリコーゲンが多い状態でもトレーニングしないとダメ、

ということでしょう。

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