2023年8月19日土曜日

男性の自慰行為とホルモン応答

Hormonal response after masturbation in young healthy men - a randomized controlled cross-over pilot study
Basic Clin Androl. 2021 Dec 23;31(1):32. doi: 10.1186/s12610-021-00148-2.
Eduard Isenmann et.al

テストステロンの話を眺めていたら出てきた論文で興味深かったので読んでみましたが、テストステロンの数値が1日で上下するけれども、それをエロ動画を見ることで抑制することが可能なので、トレーニング効果を最大限に発揮するためにはトレーニングの何時間か前に動画を見ておくのが良いかもしれないということが示されています。今回の実験では14時に動画を見て、18時頃にテストステロンとコルチゾールのバランスが最も良くなった。分解が減って合成が高まるもっともよいタイミングですね。ただこれ、普通に仕事をしている人ですと仕事中にトイレで...といったことになるので難しい気もします。電車の中で東スポなどのエロページを眺めているおじいちゃんたちは、やはり下半身が元気なんだろうな、といったことも考えたりで何とも興味深いところです。ちなみに過去にはマスターベーションによる体への負荷といったものも眺めましたが、ブログにも書いてありますが、基本的にはほとんど悪影響はありません。体勢が悪いとか時間をかけすぎといった問題点くらいです。ですので、トレーニングをしっかりと考える場合はやはり動画やらで興奮をするのは大事、日常的に見られるものなら、ですね。プレワークアウトサプリメントとしてスマホの待ち受け画像なんかにしておくのは有りなのかな、と思いました。なお女性に関しても似たような論文があった記憶がするので、そちらも探してそのうちまとめようかと思います。


・テストステロンなどのホルモンは、パフォーマンスの向上と筋成長に大きな役割を果たすとされている[1]。テストステロンはタンパク質の生合成を刺激し、繊維含量を変化させることで骨格筋の同化作用を促進することが知られている[2]
・人間では総テストステロン(TT)の98%が性ホルモン結合グロブリン(SHBG)やアルブミンなどの輸送タンパク質と結合しており[3,4,5,6]、TTの最大2%が生物学的に活性な形態(遊離テストステロン、FT)で見られる。TTとは対照的に、FTとその代謝物であるジヒドロテストステロン(DHT)のみが細胞内のアンドロゲン受容体(AR)と相互作用することができ、同化作用を促進する
・テストステロンに加えてコルチゾール(C)もヒトの代謝に決定的な役割を果たしており、これは視床下部-下垂体-副腎軸によって調節されている[7, 8]。コルチゾール濃度の上昇はTT濃度に悪影響を及ぼすと考えられているが[9,10,11]、初期の研究では運動後のFTとCレベルの間には正の相関関係があることが示されている[11]
・興味深いことに、専門家の間やソーシャルメディアにおいてレジスタンストレーニングの数時間前に性行為を行うことでFT濃度やFTとCの比率が上昇し、それによりトレーニング適応、特に筋肉量の増加が改善されるのではないかという仮説が立てられ、議論されている。しかし、この仮定を支持する科学的証拠はない
・性交やマスターベーションがホルモン反応に及ぼす影響について分析すると、それらは主にエンドルフィン、ドーパミン、オキシトシン、プロラクチンの放出と関連している[12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22]。オーガズム後、プロラクチンレベルは増加し、オキシトシンとドーパミンレベルは有意に減少することが様々な研究で示されている [12,13,14,15,16,17,18,19,23] 。性行為がテストステロン(総テストステロンおよび遊離テストステロン)、エストロゲン、コルチゾールおよび黄体形成ホルモン(LH)のホルモン濃度に及ぼす影響についての調査は不十分である
・過去数十年の初期研究では、マスターベーションまたは性行為後60分間は、TT濃度に変化がないことが観察されている[15, 24]。さらに性的な禁欲の影響と射精後のテストステロン濃度の変化に焦点を当てた研究もある[25]。初期の調査や研究では、FT濃度は性行為と性的興奮の両方によって影響を受けることが示されている [26] 。さらに、視覚刺激によってTT濃度が急性的に上昇することを示す研究もある[27,28,29,30]が、性交後またはマスターベーション後のTT、FT、C濃度の詳細な動態に関する研究は不足している
・今回の研究ではマスターベーションと視覚刺激が、TT、FT、およびC濃度の動態ならびにそれらの比(TT/C;FT/TT;FT/C)に及ぼす影響を調査した

・8名の若い男性(年齢:27.1歳、身長:181.7cm、体重:87.7kg)が本研究への参加。参加者は健康な若者でドイツ体育大学ケルンでスカウトされた身体的、心理的、性的機能障害がなく、少なくとも3年間のトレーニング経験があり、バックスクワットで体重の150%以上、ベンチプレスで体重の120%以上のパフォーマンスを有し[31]、恋人がいる。ステロイドその他の薬物は使用しておらず、健康補助食品の摂取も制限された
・視覚刺激を伴うマスターベーション(AG)、マスターベーションを伴わない視覚刺激(VG)、視覚刺激とマスターベーションを伴わない受動的設定(PG)の3つに分けてホルモン濃度の変化を観察。実験の48時間前と検査日には性行為と身体活動、アルコールの摂取を禁止。12時間の絶食後に朝の8時から実験を開始、用意された食事を2回摂取し14時から自分の好むポルノ動画を鑑賞

・マスターベーションと視覚刺激はFT濃度のみに影響を及ぼすと仮定できる。マスターベーションを伴った場合が最も数値は上昇した。概日リズムでのFTの減少を抑制することが可能
・筋力トレーニングの過程でマスターベーションを繰り返すことにも潜在的な効果がある可能性がある
・レジスタンストレーニングの前にマスターベーションという形で1回性行為を行うだけで、テストステロンによる強い適応を引き起こす可能性があるとは言えないが、筋力トレーニングと組み合わせてFTの分泌を増やすことで、筋の成長や筋線維含量の変化により強力な適応をもたらす可能性はある
・マスターベーションとは別に調査されたホルモンの概日リズム、トレーニングの時間帯は、筋成長の潜在的な調節因子と考えられるが、今回の研究結果からするとレジスタンストレーニングは、FTとCの比率が最も高くなる夕方(この研究では18:15)に行うのが最も効果的であるが、モチベーションのような他の生理学的・心理学的要因も重要な役割を果たすので、その点の考慮も必要である。特に、ストレスレベルの上昇はコルチゾール放出の増加 [7] と関連しており、テストステロン濃度とFT/C比に悪影響を及ぼす [9, 34]

2023年8月16日水曜日

クレアチンは筋肥大に影響するのか

The Effects of Creatine Supplementation Combined with Resistance Training on Regional Measures of Muscle Hypertrophy: A Systematic Review with Meta-Analysis

Nutrients. 2023 May; 15(9): 2116.Published online 2023 Apr 28. doi: 10.3390/nu15092116
Ryan Burke, Alec Piñero, Max Coleman, Adam Mohan, Max Sapuppo, Francesca Augustin, Alan A. Aragon, Darren G. Candow, Scott C. Forbes, Paul Swinton, and Brad J. Schoenfeld

・クレアチンはレジスタンストレーニング(RT)の適応を増強するための数少ない有効な栄養補助食品の1つと考えられている[1]。クレアチンサプリメントの摂取により、骨格筋の総クレアチン(遊離クレアチンとホスホクレアチン)が増加し、アデノシン三リン酸を素早く再合成する能力が高まり、高強度運動が可能となる[1]
・クレアチンはインスリン様成長因子-1(IGF-1)、筋原性調節因子、衛星細胞、細胞水分補給、カルシウムおよびタンパク質の動態、グリコーゲン含量、炎症、酸化ストレスに影響を及ぼし[2]、長期にわたる筋の肥大に影響を与える可能性がある[3]。筋力[4,5]、パワー[6]、無酸素性代謝に関連するパフォーマンスは向上することが示されている[7]
・クレアチンサプリメントとRTの併用は、RTとプラセボと比較して除脂肪体重の増加が大きいが、除脂肪体重は体水分を含むすべての非脂肪組織から構成されるため、骨格筋量を示すものとしては不正確である。実際、除脂肪量の標準的な指標とされることの多いDXAは、筋肉の大きさを評価するための指標とされる部位特異的画像法 [13,14] による縦断的な肥大変化との相関が比較的低い
・クレアチンサプリメントを摂取すると全身の水分が増加することが示されている[16]。クレアチンは浸透溶媒として作用することから、その水分補給効果の大部分は細胞内にあると考えられている[17] 。しかし、クレアチンサプリメントによる除脂肪体重増加の一部は、おそらく尿量の減少を介した水分貯留に起因すると考えられる[18]

・対象とした研究は (1)クレアチン補給とRTの併用と、クレアチン補給なしでRTの効果を検討したもの、(2)期間が6週間以上、(3)18歳以上を対象としたもの、(4)英語の査読付き学術誌で発表されたもの、(5)磁気共鳴画像法(MRI)、コンピュータ断層撮影法(CT)や超音波など画像により変化を調査したもの。血流制限が行われているものは排除した

・合計10本の論文が基準を満たした。研究期間は6~52週間。4つの研究は若年成人(21~26歳)を対象とし[33,34,35,36]、6つの研究は高齢者(57~72歳)を対象とした[37,38,39,40]。4つの研究は男性のみを対象とし[35,37,38,39]、1つの研究は女性のみを対象とし[40]、5つの研究は男女両方を対象とした[33,34,36,41,42]。2つの研究では、トレーニング経験者が用いられ[34,36]、他の研究では未経験者が用いられた。すべてのRTセッションは週に2~5回行われた。1つの研究は肘関節屈筋のトレーニングのみに焦点を当てたものであり [35]、他の研究はすべて全身トレーニングプロトコルを実施。1つの研究ではクレアチンのローディングがあり、これは5日間連続して20g/日のクレアチンを摂取した後、残りの期間5g/日のクレアチンを摂取するというものであった[35]

・クレアチンサプリメントとRTの組み合わせによる筋肥大の部位変化を検討した最初のメタ分析であり、このレビューに含まれるサプリメントとレジスタンスプロトコルのプール解析では、クレアチンサプリメントをRTと組み合わせると、局所的な骨格筋肥大が促進されることが示された。しかし、プラセボと比較して、この効果はかなり小さなものである
・以前のメタアナリシスでは全身の除脂肪体重が有意に増加し(1.1~1.4kg)[2,9,10,11]たことが示されているが、これはクレアチンによる体水分総量の増加に関連していると考えられ、細胞外液の蓄積などを反映している可能性がある。また、除脂肪量での測定は全身の非脂肪組織を考慮に入れていることから、画像診断では評価されなかった部位や他の組織(例えば、骨[42])での肥大が起こったことも考えられる。これらの仮説については、さらなる調査が必要である
・身体の部位、年齢、調査期間についてサブ解析を行った。クレアチンサプリメントの摂取は、体の部位に関係なく同様の効果を示すことが明らかになった。これは、レジスタンストレーニングを行った男性において、上半身の除脂肪体重が下半身に比べて増加した(上半身:7.1%対下半身:3.2%)というDXA由来の研究とは対照的である [43]
・個々の筋群の効果の大きさも小さく、プラセボに対する改善幅の中央値は0.10~0.16cmであった
・期間が長い研究はすべて参加者が高齢であり、研究期間ではなく年齢により変化している可能性がある
・研究の限界としては
1、女性のみで調査した研究は1件であった
2、RTを行っている人を対象とした研究が2つしかなく、よりハードなトレーニングができる人たちの方がクレアチンサプリメントから大きな利益を得られる可能性がある
3、クレアチンサプリメントに対する反応にはかなりの個人差があり、Greenhaffら[47]は、被験者の約20~30%が「非反応者、ノンレスポンダー」であると報告している。この特徴としては、初期の筋クレアチンレベルが高いこと、II型線維の割合が低いこと、筋線維CSAが低いこと、および除脂肪体重が低いことなどが挙げられる[44]


クレアチンが筋肥大に影響を与えるのかっていう話に関しては、一般の人でも効果は出ない人が20~30%ほどいて、そうした人は筋横断面積が少ない、速筋が少ない、脂肪量が多い、クレアチンが十分にあるといった状態なので、まずは普通にトレーニングをしていくのが良さそうですね。そしてある程度の段階になったら筋力を高めるためにクレアチンを摂取する。それによってパフォーマンスは向上するが、じゃあそれが筋肥大につながるかと言われるとデータからはよく分からんとなっているのがクレアチン。筋肥大はさせるけど細胞が蓄えられる水を増やしているだけであり、純粋に筋肉を増やすという観点では不要かもしれないですね。筋力が高い方が筋肥大しやすいのか、という謎も残っているので、その辺りも眺めたいところです。

2023年8月9日水曜日

長時間の静的ストレッチが、膝伸展筋の筋力変動の強度を高め、複雑性を低下させる

Prolonged static stretching increases the magnitude and decreases the complexity of knee extensor muscle force fluctuations
Jamie Pethick,et.al PLoS One. 2023; 18(7): e0288167.
Published online 2023 Jul 21. doi: 10.1371/journal.pone.0288167

・ウォームアップは持久的な軽い運動やストレッチ、競技で行われる運動に類似した特定の運動などから成り立っている[2]。ストレッチに関して、静的、動的、弾性、および固有の神経筋促通(PNF)の4つの主要なタイプが認識されているが[2]、長年に渡って静的ストレッチ(SS)がウォームアップに組み込まれてきた[3]
・SSは筋肉をストレッチ感覚が得られるまでまたは不快感が到達するまで伸ばし[4]、その位置で15から60秒間保持するものであり[6]、その目標は、可動域の増加、筋腱損傷の発生率の減少、運動能力の向上など[1、3]にある。可動域の改善については強いエビデンスがある[7]
・適切なウォームアップなしに長時間(筋群ごとに60秒以上)のSSを行うと、運動能力を低下させるという結果も示唆されている[8]
・運動前のSSが最大筋力パフォーマンスを低下させることを示す研究は多く、ストレッチの持続時間と最大筋力パフォーマンスの減少の大きさとの間に関係が見られる[12、13]
・60秒以上のストレッチは最大筋力の有意な減少をもたらす[8、13]。よって、最大筋力を発揮したい運動の前に長時間のSSを行うことは避けるべきである[14]。ただ、最大筋力はパフォーマンスの唯一の決定因子ではなく、筋力を制御する能力、適切なレベルの力を正確に生成する能力も運動能力の決定に重要[15]であるが、研究はほとんど行われていない
・筋力の発揮はゆらぎがあることが分かっており、筋力をコントロールすることは、パフォーマンスに重要な影響を及ぼす可能性がある。神経筋疲労は力の変動 [21] の大きさの増加と複雑さの減少によるものであり、力の安定性の低下と適応性の低下 [22] を示す。このような変化は運動課題の失敗リスクを増加させるとされており[15]、スキルを必要とする動作のパフォーマンスの低下につながる可能性がある
・筋単位の選択や放電率の変化が力の制御の変化に関係があるとされている[23]。最大筋力の発揮に対するSSによる減少の影響は、筋単位の活性化[10]および放電率[24、25]の変化と関連している。これはSSが筋力制御に影響を与える可能性があることを示唆している。これらの筋単位の行動の変化は、60秒未満のSSの影響を受けないと考えられている[2]。
・本研究の目的は、急性のSSが筋力制御に与える影響を調査し、力の変動の大きさ(すなわち、SD、CV)および複雑性(すなわち、ApEn、DFA α)に応じて定量化することであり、60秒以上の長時間のSSが膝伸展筋の力の変動の大きさを増加させ、複雑性を減少させる結果が示され、力の制御の低下を示す応答が想定された

・12名の健康な男性(年齢23.8±5.3歳、身長1.77±0.05m、体重76.8±6.2kg)で週2~3回軽い運動を行っている。実験前の24時間に激しい運動をしておらず、実験前の3時間に食事やカフェイン飲料を摂取していない

・SSの前に3秒間の等尺性膝伸展MVCを実施。これらのMVCは60秒間の休息で区切られ、連続した3回の収縮のピーク力が互いに5%以内になるまで続けられ、最初に行った3回の収縮で5%以内の値を達成したものがほとんであった。参加者に3秒間のカウントダウンが行われ、最大限の力発揮が行われた。SSプロトコルの直後と10分後の測定では、各時点でMVCを1回のみ実施した。
・5分間休息した後、25、50、75%MVCで一連の間欠的等尺性膝伸筋収縮を行った
・事前のストレッチングMVCと一定の力のタスクを実行した後、被験者は休憩してからストレッチなし、30秒、60秒、120秒。4つの条件でストレッチを実施。不快感を感じ始める位置で保持される立位の大腿四頭筋ストレッチ[5]。ストレッチのない条件では室内を120秒歩き回り、筋肉の温度をSSによって達成されるレベルと同様に保った
・ストレッチ終了直後、被験者はダイナモメーターでMVCタスクを実施、ストレッチ終了から1分後に開始され、1回のMVCのみを行った。事後の力の制御タスクは、さらに30秒後に開始し、SS介入前と同じ手順、および目標力が使用された。これは、ストレッチ終了後10分後に繰り返されました。

・本研究ではSSがその後の最大下等尺性収縮中の膝伸展筋力の制御を低下させることを明らかにした。120秒間のSSは、50%および75%MVCでの収縮中の力の変動の大きさを増加させ、複雑さを減少させた。これらの反応はarEMGの増加を伴っており、運動単位プールの活性化が進んでいると考えられるが、25%MVCでの収縮時には力制御の変化は認められなかった。
・60秒以下のストレッチは力制御に影響を及ぼさなかった。これらの結果から、長時間のSSの影響は、最大筋力を必要とする運動だけでなく、中強度から高強度の筋収縮において正確な筋力発揮を行う際にも影響があると考えられる
・長時間のSSに続く筋力の制御の低下は、その後の運動パフォーマンスに影響を与える可能性がある。力を制御する能力が高いほど疲労抵抗力が高くなるので、今回観察された力の制御の低下は、持久的な運動において制限値に達するのにかかる時間が短くなる可能性が感がられる[34]。また、力の制御の低下は、転倒とそれに続く怪我のリスクが増加する可能性があるとされるが、引き続き研究が必要となる。長時間のSSをやった後に筋力の発揮を制御する必要がある運動を行う場合、10分以上の間を空けるとよいかもしれない
・静的ストレッチによる力の減少は、運動ニューロンの興奮性の低下による可能性が示唆されている[38]
・本研究での120秒のストレッチの持続時間は過度であると考えられるが、以前の研究との比較を可能にするためである[2]。SSの持続時間と力の制御の変化との間に関係があるかを調べるためであったが、力の制御に影響を及ぼす筋単位の挙動の変化は、60秒未満のSSの影響を受けないとされている[2]。また、ストレッチの前に有酸素運動と呼ばれるものを行っておらず、ストレッチの後にも動的なものを行っていない。これも静的ストレッチのみが力の制御に与える影響を単純に調査するためである
・最近のいくつかの研究では、静的ストレッチが総合的なウォームアップ内で利用される場合、その後のパフォーマンスへの影響は微小または良好であることが示されている[41、42]。エアロビックなウォームアップの後に6セットの30秒の静的ストレッチを行った後、大腿の筋肉のEMG出力の複雑性が40% MVCでの等尺性収縮中に増加するという最近の研究もあり[43]、本研究で観察された筋力の複雑性の低下とは対照的である
・静的ストレッチが総合的なウォームアップの一部として行われる場合の力の制御への影響を調査することは、この研究の次のステップである

ストレッチ話が目に入ったので、最近のストレッチ事情を見ていこうと思いまして、とりあえず流れてきた論文を見てみましたが、最大筋力が低下するからというだけで考えてはいけないということですね。最大筋力以外にも必要な出力レベルがある競技は多く、例えばサッカーにおいてターンする時などは出力が必ずしも最大である必要はないけれど、そこでの発揮がおかしくなっていると思った通りの動きにならずに故障リスクが上がってしまう、と。あとは力の発揮と一言で言うけれど、実際には筋肉と神経とその他の諸々が絡んでいる複雑なものであり、単純化して考えすぎてもアカン、ということですね。最大出力だけでトレーニングをする日は120秒もストレッチはしないで30秒以内の軽めのストレッチにして適度に刺激を入れる、その際にまずは全身運動などをやって筋肉を、身体を温めてからやるとストレッチによるマイナス効果はほとんどないよ、ということで。その辺りの論文を次は眺めてみようかなと思います。まぁしかし、120秒も同じ部位をストレッチしている人ってほとんどいないかとは思いますが、喋るのに夢中でずっとストレッチしているという光景は見るので、なかなか微妙なところですね。ストップウォッチを持って何秒くらいやっているかを計測してみると良いかもしれません。大腿部を座った、寝た状態でストレッチをする人は60秒くらいは簡単にやってしまうので。

2023年8月3日木曜日

持久的競技のトップ選手のトレーニング特性とパフォーマンス決定要因の長期的な発達

 Long-Term Development of Training Characteristics and Performance-Determining Factors in Elite/International and World-Class Endurance Athletes: A Scoping Review
Hanne C. Staff, Guro Strøm Solli, John O. Osborne & Øyvind Sandbakk
Sports Medicine volume 53, pages1595–1607 (2023)

・持久的なスポーツにおいて、パフォーマンスは長期に及ぶ複雑な相互作用によって決定される。適切なトレーニング量、頻度、強度が適切に配分されることがトレーニングによる適応を促すために必要となる。この過程は10〜15年が必要とされるが、最近の研究では競技によってエリートレベルに到達するために必要な時間やトレーニング量にかなりのバリエーションがあると報告されている[1,2,3,4]。遺伝的なポテンシャルに加えて、選手とコーチの動機、スキルセットと経験、トレーニング仲間、サポートスタッフ、トレーニング環境と施設なども選手のポテンシャルに影響を与える[5, 6]
・筋肉への負荷と怪我のリスクが競技やトレーニングによって異なるため、トレーニング量(TV)の重要性が強調されている[10]。トレーニング負荷はトレーニングの強度や頻度により操作できるが、これらの要因の増加がどのように相互作用して最適なトレーニング刺激を提供し、生理学的要因とパフォーマンスの発達を最適化するかについては限られたエビデンスしかない[9, 14]
・持久的なトレーニングの強度分布(TID)を説明し、異なる研究や選手間での比較をするために3つのゾーンモデルがよく用いられている。低強度トレーニング(LIT)、中等強度トレーニング(MIT)、高強度トレーニング(HIT)と呼ばれ、ゾーンの分割には概念的および実践的な課題があるが、再現性のある血乳酸アンカーポイントを使用して各ゾーンを分離し、対応する心拍数と知覚的努力の評価と組み合わせることがおそらく最も効果的な方法とされています[9, 15]
・過去の研究では成功した選手のトレーニングの70〜90%がLIT、残りの10〜30%がMITおよびHITと報告されている[9,18,19]。強度分布のバリエーションは、検証されたスポーツの特性、個々の発達、LIT・MIT・HITを決定する方法の違いによるものと考えらる[10,20,21]。持久的なアスリートにおいて、キャリアのどの段階でも同じTIDを採用すべきかは明確ではない
・成功している選手は、最大酸素摂取量(VO2max)、乳酸閾値または無酸素閾値、および作業経済性または効率性が高いレベルで特徴づけられている[22]。これらのパフォーマンス決定要因の長期的な発達は、トレーニング、心身の成熟、性別などさまざまな要因に影響され、選手のキャリア全体で異なる発達パターンが見られる[23]

・合計17のピアレビュー論文が含まれ、16の研究は後ろ向きの研究デザインを使用し、平均約7年(範囲2〜17年)の期間をカバー。これらの研究は合計109人の参加者で、約4分の1が女性。両性を含んだ2つの研究は全参加者の2/3(n = 73; 67%)で、女性24人と男性49人が含まれていた。女性のみの研究は全参加者のわずか5%(n = 5)で、男性のみの研究は28%(n = 31)。7つのオリンピック競技の持久的なアスリートが含まれており、中距離・長距離走(n = 41)、水泳(n = 41)、サイクリング(n = 13)、ローイング(n = 6)、トライアスロン(n = 6)、バイアスロン(n = 1)、クロスカントリースキー(n = 1)。パラリンピックの種目からは水泳で1人。研究の大多数(n = 11; 65%)は2010年以降に発表。大多数(85%)はスペイン(n = 52)とオーストラリア(n = 40)からであり、残りはノルウェー(n = 7)、クロアチア(n = 4)、イギリス(n = 3)、フランス(n = 2)、ベルギー(n = 1)

トレーニングの特性
・クロスカントリースキー、バイアスロン、ランニング、サイクリング、ローイング、およびパラ水泳のアスリートを対象とした個別の研究で、6つの研究は6〜17年間のトレーニングデータ。どの研究もジュニア年齢以前のトレーニングについては報告していない。トレーニング頻度、強度、速度、高地トレーニングなどの他の重要なトレーニング特性はほとんど説明されていない。具体的には、4つの研究がトレーニング頻度に関する情報を含み[29,30,31,32]、3つの研究が強度と速度トレーニングを報告[30,33,34]、4つの研究が高地トレーニングの使用に関する情報を含んでいた[30,33,34,35]。1つの研究は最も成功した5年間(30〜35歳)の高地トレーニングについて詳細な説明があったが、より早い時期の高地トレーニングに関する情報はなかった[30]。他の研究では、高地トレーニングが行われたことは簡単に記述されていましたが、詳細なデータは提供されていない

トレーニングボリューム
・合計8つの研究が、TVの進行的で非線形な増加を報告しています[29, 30, 32, 33, 34, 35, 36, 37]。クロスカントリースキーとマラソンランニングからの2人の女性ワールドクラスアスリートは、ジュニア時代には比較的低いTVを持ち、18〜20歳からピークパフォーマンスの年齢までの10〜12年間に80〜500%増加しました[30, 35]。ローイングとサイクリングの2人の男性アスリートでも同様の傾向が見られ、18〜23歳の間にTVが50〜80%増加しました[29, 36]。また、1人の女性パラ水泳選手も23〜26歳の間にTVが約70%増加しました[34]。さらに、17〜21歳の2人の男性中距離ランナーはTVが約50%と66%増加しました[32]。一方、21〜31歳のワールドクラスの男性バイアスロン選手はTVの増加が非常に低かった(30%)[33]。3つの研究では、26〜30歳の間にTVが1年間で500〜900時間の範囲で頭打ちになることが報告されました[30, 31, 33]。特にTVの大きな増加はキャリアの早い段階で起こり、ワールドクラスの女性クロスカントリースキーヤーでは20〜24歳の間にTVが60%増加し、スペインの男性サイクリストでは18〜20歳の間にTVが60%増加した[30, 36]。


トレーニング強度の分布
・トレーニング強度の分布は6つの個別の研究で説明されている[29, 30, 33, 34, 37, 38]。1つの研究では、後期の段階で女性のクロスカントリースキーワールドクラス選手のLITとMITが増加し、HITの量が減少することが報告されている[30]。2つの研究では、男性のローワー(週に漕いだキロメートル数)とロングディスタンスランナー(相対的な分布)では、LITとHITの両方のボリュームが増加し、MITのボリュームが減少する傾向が見られた[29, 38]。中距離ランナーでは17〜22歳の間に週に走ったキロメートル数がLIT、MIT、HITで増加した[37]。ワールドクラスの男性バイアスロン選手とワールドクラスのパラ水泳選手の両方において、10年間で比較的安定したTIDが報告されました[33, 34]

パフォーマンスを決定する要因
・VO2maxの増加が4つの研究で報告された[29, 38, 39, 40]。男性ローワーの相対的VO2maxは25歳から32歳の引退まで4%増加[39]。他の2つの男性ローワーに関する研究では、16歳から20歳までのVO2maxは29%増加し、16%の相対的な増加が見られた[29, 40]。これらのうちの1つの研究では、20歳から27歳まで13%の増加が見られ、28歳で安定化した[29]。男性中距離ランナーでは、2つの連続したシーズンでLITとHITの割合を増加させることでVO2maxが11%増加した[38]
・5つの研究では、長距離ランニング、トライアスロン、サイクリング、クロスカントリースキーのエリート/国際レベルおよびワールドクラスレベルのアスリートの相対的なVO2maxの値に変化はなかった[30, 35, 41, 42, 43]。6つの研究では、サブマックスパフォーマンスを決定する変数(乳酸/無酸素閾値および/またはエコノミー/効率など)[29, 30, 35, 38, 40, 44]および6つの研究では、パフォーマンス指標(最大速度、最大出力、およびVO2maxでの速度など)[29, 35, 38, 39, 40, 44]の向上が報告されている。これらの変化は2〜17年の期間で、ワールドクラスのランナーやクロスカントリースキーヤー、およびローワーに見られました

・このレビューに含まれる研究の大部分は、最も弱い科学的根拠とされるケーススタディであり、結果の一般化の可能性が制限されます。しかし、ポーラ・ラドクリフ、ヤコブ・インゲブリクトセン、モー・ファラーなどワールドクラスレベルのアスリートに関する詳細な情報を提供している
・特定の年におけるTVの大幅な増加の背後にある理由を理解し、大きな増加がパフォーマンスおよび生理的な発達をより促進するか、逆に停滞のリスクが高いかを判断するためにはさらなる情報が必要
・世界クラスのレベルに到達するためには長期的な献身的なトレーニングが重要です。時間とともにトレーニング量(TV)は非線形に増加し、ピークパフォーマンスに近づくとプラトーが現れることがある。トレーニング強度の分布(TID)の概念は注目されており、LIT(低強度トレーニング)、MIT(中強度トレーニング)、HIT(高強度トレーニング)の割合は選手のキャリアの中で変化することが示されています。

パフォーマンスを決定する要因
・研究では、複数年にわたるパフォーマンスの向上が報告されている。VO2maxは個人差があり、一部の選手はキャリアの早い段階で最適化される一方、他の要因がその後の改善をもたらすことがある。VO2max以外の要因も、18〜20歳以降の持久的なスポーツ選手のパフォーマンス向上に重要な役割を果たすことが示されている。これはPaula Radcliffの研究[35, 44]で示されており、18歳の時点で既に高いVO2max値を達成していたが、ランニングの経済性とランニングパフォーマンスの改善は数年にわたって徐々に発展し続けた

・3つの研究ではピークパフォーマンスに近づく際にTVのプラトーが見られた。また、TVが減少したが、パフォーマンスレベルが維持されている場合もあった[30]

持久的な種目においては長期的なトレーニングの積み重ねによってパフォーマンスが改善されるが、そのトレーニングには身体的な要素だけでなく技術面もあり、最大酸素摂取量に関しては早い段階でピークに達しているので他の要因が大事になる。練習量も年を経るに連れて増えていき、一気に増える年が見られるが、それによって向上したパフォーマンスはプラトーになり上昇するのが難しくなる。あとはひたすら積み重ねていくのみ、という感じですかね。まぁ問題点として記載があった通り、じゃあそこまでのトレーニングはどうしたらよいのか、というのが抜けてしまっているので難しいところです。ジュニア期のトレーニングの積み重ねがシニアになって出てくるのは間違いないので、中学生や高校生の頃は飽きずに丁寧にフィジカルを鍛え、少しずつ量を増やせる身体を作っていき、成長期が終わって身体も耐えられるようになってきたら量が増えていく。そうした流れでやれるのが理想なんだろうなと思います。あとは高負荷なトレーニングは本当に少ないので、持久的な種目をやっている人はまずは土台を作る軽い負荷で量をしっかりこなす、そうした点が大事かなと思います。

2023年8月1日火曜日

持久的な運動中と運動後の肝臓のグリコーゲン

Liver glycogen metabolism during and after prolonged endurance-type exercise
American Journal of Physiology-Endocrinology and Metabolism
Vol. 311, No. 3 01 SEP 2016
Javier T. Gonzalez, Cas J. Fuchs, James A. Betts, and Luc J. C. van Loon
https://doi.org/10.1152/ajpendo.00232.2016

・持久性運動中の炭水化物ベースの燃料の役割は、約100年前から知られている(63)
・中程度から高強度の運動時における炭水化物の重要性は、1930年代に示された(20)
・運動中の筋肉グリコーゲンの利用と重要性は、1960年代に筋肉生検技術とによって示された(12, 13)
・筋肉グリコーゲンの利用に重点が置かれてた一方、肝臓グリコーゲンの評価は技術的な問題から難しかったため、運動中の肝臓グリコーゲンの使用に関するデータはわずかしか得られていなかった
・1960年代(9, 100)および1970年代(39, 77-79)に、Menghiniが開発した肝臓生検技術を利用して、人間での生体内肝臓グリコーゲン利用を報告することが可能になった。断食によって肝臓グリコーゲンが急速に減少することが示され(100)、断食または極めて低炭水化物な食事によって48時間以内に完全に枯渇することが示された(79)。また、食事に十分な炭水化物が含まれている場合に肝臓グリコーゲンの正の再補充が始まることも示された

・食後、血糖の過剰放出を緩和し食後の高血糖を和らげるために肝臓グリコーゲン合成が行われ、肝臓グリコーゲンの分解と合成は同時に起こる(69, 82, 86)。病気などで肝臓グリコーゲンの適切な合成または分解ができない場合には、多くの代謝異常が引き起こされる
・脂肪酸とグリセロールの供給によって肝臓グリコーゲンが調節されることが示されており、非エステル化脂肪酸(NEFA)とグリセロールは肝臓グリコーゲンを約84%抑制することができることが報告されている(98)
・食後から肝臓グリコーゲン濃度がピークになる(約5時間後)までのグリコーゲン補充の平均速度は約6 g/h(101)

・運動後には特定の筋肉に対してグリコーゲンのSupercompensation(超回復)が起こる(13)。持久的なトレーニングにより、通常時の筋グリコーゲン濃度はトレーニングしていない状態と比べると20~66%増加する(10, 44, 67, 97, 117)
・筋グリコーゲンの貯蔵量が多いと、筋グリコーゲンの枯渇が疲労に寄与するタイミングを遅らせるかもしれない。アスリートでは、絶対および相対的な高い運動強度で長時間の運動ができるので、筋グリコーゲンを非常に低いレベルにすることが可能となる(28)
・肝臓のグリコーゲンの貯蔵量は、持久的なトレーニングやインスリン感受性の違いによって変化しない
・トレーニングしていない人では、肝臓グリコーゲンの分解率は運動強度が高くなるに連れて著しく増加していく。持久的なトレーニングを行っているアスリートでは、高強度運動時における肝臓グリコーゲン分解の減少が見られる。最大酸素摂取量の80%を超えるような高負荷の運動になると脂肪分解が抑制されるため、肝臓グリコーゲンの消費が著しくなり血中グルコースの低下をもたらす。これが運動を制限する要因の一つとなる
・肝臓グリコーゲンの代謝は、最高酸素摂取量の80%未満の運動強度でしか研究されていないため、トレーニングされたアスリートにおける過剰なホルモン反応が、最大運動時における肝臓グリコーゲンの利用にどのように影響するかは不明

・長時間の中程度から高強度(>最高酸素摂取量の60%以上)の持久的な運動において、炭水化物が最も重要な燃料源となり、炭水化物摂取を運動中に摂取しない場合、肝臓および筋肉のグリコーゲンは最高酸素摂取量の70%で90分の運動をした後に40~60%減少する(18, 97)
・長時間の運動中の炭水化物摂取はパフォーマンスを向上させる(118)。これは血糖値の維持、炭水化物酸化率を高く維持する、筋肉グリコーゲンの利用の節約などが含まれる(19, 108)。筋肉グリコーゲンの節約は一部の研究で示されているが(96, 109, 110)、全ての研究で見られるわけではなく(27, 36, 47, 58)、測定のタイミング(96)および運動のタイプまたは筋肉繊維によるものと考えられる(110)
・運動中の適度な糖摂取(約0.6-0.8 g/min)が肝グルコース産生を抑制できることが示されており(17)、大量の糖摂取(約3 g/min)は運動中の肝グルコース産生を完全に抑制することもある(59)。これらの結果から運動中の炭水化物摂取は肝臓のグリコーゲン分解を抑制し、肝臓グリコーゲンの減少を緩和すると示唆されている(19)。摂取された炭水化物が新たに合成されたグリコーゲンとして蓄積されるか、直接的に血中にグルコースまたは乳酸として放出されるかは不明

・運動後の筋グリコーゲンの再補充は、十分な炭水化物摂取(1時間に体重1kgあたり1.2 g)によって最適化される(8, 15, 115)。糖と果糖の混合物が単独の糖(ポリマー)よりも筋肉グリコーゲン再補充をさらに増強することはほとんどないことがますます明らかになっているが(40, 106, 122)、運動後の回復初期に十分な炭水化物摂取をする際には、ブドウ糖と果糖、ブドウ糖とスクロース)の摂取がブドウ糖だけの摂取よりも良いと推測される(40)
・肝臓のグリコーゲン再合成に与える影響に関する研究は少ない(18, 29, 30, 40, 74)
・ブドウ糖のみを摂取した場合、肝臓グリコーゲンの最大再合成率は約4g肝臓グリコーゲン/hほど(18, 29, 40)。運動後のブドウ糖摂取による肝臓グリコーゲン再合成率は、混合食を摂取した場合に安静状態で報告される約6 g/hの肝臓グリコーゲン再合成率よりもかなり低い傾向になる(101)。よって、脂肪とタンパク質を炭水化物と一緒に摂取することで、肝グリコーゲンの合成を増強する可能性が推測される。混合食を摂取した場合のより大きなインスリン分泌は、肝臓グリコーゲンへの純粋なグルコースの取り込みと貯蔵を増加させる可能性がある(4, 16, 113, 115)
・安静時はフルクトースとガラクトースが肝臓で優先的に代謝される(7, 41, 78)。したがって、グルコースとフルクトースまたはガラクトースのいずれかを一緒に摂取することで、運動後の肝臓グリコーゲン再合成率をさらに増加させることができる(18, 29, 40)。一緒に摂取することで肝臓グリコーゲン再合成率は約4 g/hから約8 g/hにほぼ倍増する
・グルコースとフルクトースを一緒に摂取することで、単独摂取よりも腸管吸収速度が速くなる(54, 56, 57)

筋グリコーゲンに関しての補給の話はよく知られていますが、脳や肝臓に関してはイマイチかと思われるので、再度確認しておくとよいかなと思います。持久的な運動をする前に補給を十分にすることでトレーニング効果が高まるので、効率を高めたい場合は事前の食事、練習後の食事への意識を高めるのが効果的です。運動中に関してはまだ研究不足となっていますので、今後に期待です。脂質も大事なのでしっかり摂取しましょう。ガラクトースも効果的となるので、牛乳などが苦手ではない人は積極的に飲むとよいかもしれません。