2017年4月29日土曜日

トレーニングと高脂質食による酸素摂取量の変化

Increase of aerobic capacity by submaximal training and high-fat diets.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8979456

Folia Med (Plovdiv). 1996;38(1):49-59.

Boyadjiev N


1996年の論文で少々古いものですが、


動物実験を実施。


食事のカロリー摂取の8割近くを脂質にしたグループは、


最大酸素摂取量の向上が見られた。


運動を組み合わせるとさらに向上した。

これには糖の利用よりも脂質の利用が進んだことが影響していると考えられる。



最大酸素摂取量の向上には高脂質の食事も効果的である、

という話です。

運動によって向上しない場合

脂質が不足しているからということも言えるわけですね。

こうした考えから、最大酸素摂取量が持久的なパフォーマンスの指標として有用なのか、

ということへの疑問は高まっています。

まぁ現在言われているような感じでは使えないであろう、という話です。

筋内脂肪の話なども組み合わせると、

適度な脂質が存在することで持久的なパフォーマンスは高まる、

脂質を貯蔵しようと人間の身体は適応する、

となります。

糖の貯蔵量を測定する方が効果的ということが言えるかと思います。

60~70%を超える酸素摂取量の運動の場合は確実に糖が必要となります。

2017年4月6日木曜日

適切な負荷のエキセントリックトレーニング(レビュー)

Moderate Load Eccentric Exercise; A Distinct Novel Training Modality

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27899894

Front Physiol. 2016 Nov 16;7:483. eCollection 2016.

Hoppeler H

持久的なトレーニングやレジスタンストレーニングは多くの実験が行われてきているが、

負荷設定が曖昧となっている。

エキセントリックトレーニングは使用するエネルギーが少ないが、

筋肉に与えられるダメージは大きくなる。

Blazevichらの2007年の研究ではエキセントリックな負荷によって羽状角が拡大することが示された。

Brughelli と Croninの2007年の研究からは、エキセントリックなトレーニングによって最適な長さ-張力関係とするため、

筋長をより長く適応させると考えられる(ケガの予防やパフォーマンスの向上といった適応)。

Chelly と Denisの2001年の研究でのホッピングジャンプテストは高い走速度は筋腱複合体の剛性と関係があることを示している。

LaStayoらの2000年の研究で適切なエキセントリックトレーニングが筋腱複合体の剛性を変化させることが示された。


Free

その他、いろいろとエキセントリックな負荷の掛け方とコンセントリックの違いが書かれています。

速く走るには筋肉も大事ですが腱も鍛えないと、という点をつまんでおきます。

2017年4月3日月曜日

運動のパフォーマンスとサーカディアンリズム(ホルモンと筋肉の適応)、2011年レビュー

Circadian rhythms in exercise performance: implications for hormonal and muscular adaptation

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24149547

J Sports Sci Med. 2011 Dec 1;10(4):600-6.

Teo W, Newton MJ, McGuigan MR.

24時間周期に起こる変化であるサーカディアンリズム(概日リズム)は、

多くの研究がなされている。

これを司るのは視床下部に位置する視交叉上核(SCN)である。

Hastings and Herzog 2004の研究では網膜から太陽の周期の情報を受け取るとされる。

ホルモンの分泌や体温の変化、神経機能活性化などはこの影響を受けている。

Cappaertの1999年の研究では、安静時の体温が最も高くなるのは夕方であり、

この時に身体の多くの機能が最も活性化されるとしている。

Baehr らの2000年の研究やHill らの1988年の研究、Kerkhofの1985年の研究などから、

人によって日内変動は異なり、朝方や夜型など様々なタイプが存在することも確認されている。


Guignardらの1980年の研究でテストステロンは早朝にピークがあり、

その後は下がっていくことが示された。

この研究ではコルチコイドも同様の変化があることが示された。

パフォーマンスと概日リズムの影響を調べるのは難しい。

太陽が出る、気温が上昇するなどの周辺環境によって影響を受けるし、

普段の日常生活の習慣も影響を与える。

個人の生物学的なリズムはそれらに影響を受けている。

 Starkieらの1999年の研究では、体温の上昇が炭水化物の利用を脂質よりも高めると示した。

これにより筋肉の活動が高まると考えられる。 

Taylor らの2011年の研究では、

早朝のトレーニングではウォーミングアップの時間を20分長くすることで力の発揮が弱まることを防げると示した。

この体温の上昇から、筋力の発揮には体温が関係していると言える。






しかし、Atkinsonらの2005年の研究では早朝にウォーミングアップをして自転車を漕ぐ実験をしたが、

体温が高まってもパフォーマンは夕方に行ったものに比べて低かった。

この時には耳の温度が夕方の方が高いことが確認されている。

Martinらの1999年の研究やGuetteらの2005年の研究では、

筋内で起こる様々な変化(カルシウムイオンの放出など)が概日リズムで影響を受けていると示した。

運動がテストステロンやコルチコイドの概日リズムに影響を与えるかを調べた研究は少ない。

Häkkinenらの1988年の研究では8人のトレーニングを積んだリフターを被験者として実験し、

午後のトレーニングが高いテストステロンを示すことを明らかにした。

Sedliakらが2007年に報告したデータでは連続したトレーニングによりテストステロンとコルチゾールが減少することを示した(有意な変化では無かった)。

Bird and Tarpenningの2004年の研究では夕方にレジスタンストレーニングを行うことは、

テストステロンとコルチゾールの比を改善し筋肥大に効果的であると示したが、

この実験には条件の問題が見られるので不明な点も多い。

Teoらの2011年の研究ではテストステロンとコルチゾールの概日での変動は、

力とパワーの発揮に関係が無いことを示した。

これはWestらの2010年の結果にある、

成長ホルモンやIGF-1、テストステロンの変化と力の発揮や筋肥大は無関係ということと同じである。

しかし、テストステロンとコルチゾールの概日リズムによる変化と力発揮などに関して、

不明な点はまだまだある。


Free 

取りあえず、成長ホルモンやIGF-1、テストステロンなどのホルモンが筋肥大と無関係の可能性が高い、

という論文があることや、一日の変動を気にして夕方にトレーニングをしないといけない、

そう思っている人は特に気にしないでもよさそうですよ、

ということが言えると思います。

2017年4月2日日曜日

トレーニングを積んでいる人の筋肥大に関して、巷で言われる負荷やホルモンの 影響はほとんどない

Neither load nor systemic hormones determine resistance training-mediated hypertrophy or strength gains in resistance-trained young men

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27174923

J Appl Physiol (1985). 2016 Jul 1;121(1):129-38. doi: 10.1152/japplphysiol.00154.2016. Epub 2016 May 12.

Morton RW, Oikawa SY, Wavell CG, Mazara N, McGlory C, Quadrilatero J, Baechler BL, Baker SK, Phillips SM

(4)の研究で1RMの30%~90%の負荷が筋肉のタンパク質合成を刺激する最低の負荷であると示した。

(50)や(51)の研究から、レジスタンストレーニングによって生じる循環するホルモンの量は筋肥大にほとんど影響していないことが示された。

簡単に言うと(4,28,33,50,51)の研究結果から、


負荷やホルモンは筋肥大に影響を与えていないということが言える。

しかし、(4,28,50,51)は非鍛練者での実験であるため、

レジスタンストレーニングを実施している人であればさらに影響が低いと推測される。

そこで本研究ではトレーニングを積んでいる人を被験者として実験を実施した。

少なくとも2年以上のトレーニング経験がある49人の健康で若い男性が参加。

高回数群は20~25repで3set、1RMの30~50%

低回数群は8~12repで3set、1RMの75~90%

とし、実験期間中に負荷は調整を実施した。

運動後には30gのホエイタンパク質を摂取。

結果、どちらの群でも筋肥大は認められ、大きな差は無かった。

ベンチプレスの1RMだけは低回数群の方が伸びが良かった。

循環するホルモンの分泌量は実験前後で違いは無かった。

より高負荷なレジスタンストレーニングの方が筋肥大に効果的では無いと言える。

オールアウトするような回数の継続が効果的であるということが示された。

(1,20,41)にあるような高負荷低回数と(5,28,44)にあるような低負荷高回数を組み合わせることが、

もっとも効果的であることを裏付ける実験であると言える。

(52)の研究ではトレーニング後のGHやIGF-1などは筋肥大や筋力向上と相関がほとんど無いことを示したが、

今回の実験でも同様の結果となった。

Free


筋肥大や筋力向上に成長ホルモンやIGF-1は無関係
rep数を多く繰り返すことが筋肥大や筋力向上には重要
rep数を多くすることで時間や総運動量が異なる
ネットで検索すると成長ホルモンやらIGF-1を多くするsetの組み方というのは未だに多くでますが、

残念でした

という感じですかね。

はい。

毎度ながらの広告になりますが、

既に書いた通りですがそんなものには全く触れておりません。

https://note.mu/jshira/n/n46007f6f8f73

今のところ考えられる最も適切な形になっていると思います。

あとはもっと食事に気を遣おう、

ということになっていくかと思います。

腸脳相関とかさらに研究が進みそうな気がしますね。

2017年4月1日土曜日

GI値、GL値の測定における問題と食事が起こす影響(レビュー)

Glycemic index and glycemic load: measurement issues and their effect on diet-disease relationships

http://www.nature.com/ejcn/journal/v61/n1s/full/1602942a.html

Eur J Clin Nutr. 2007 Dec;61 Suppl 1:S122-31.

Venn BJ, Green TJ.

GI値という考えはJenkinsらの1981年の論文によって発表された。

摂取してすぐに血中のグルコースを上昇させるかという指標である。

GI値は糖尿病患者の食事を考えるために用いられており、

低いGI値の食品を摂取することは高いものより良いとされている。

GI値の考えに量との組み合わせも加えてGL値というものも考え出された。

現在に至るまでに多くの研究がなされており、

肥満や糖尿病の予防などに低GI値の食品は効果的だとされるが、

疑問も多く指摘されてきた。

GIの測定方法は1998年にFAOとWHOによって示された。

55未満が低、55~69が中、70以上が高とされている。

スイカはGI値が低いものとされていないが、食品中に含まれる炭水化物の量は少ない。

GIが高いものでも摂取量が少なければGLを低くすることが出来る。

食後の血糖値の変化に影響を与える要因は様々ある。

2005年にBrounsらは糖尿病患者などの数値ではなく、

通常の糖耐性の人々での実験を用いることを主張した。

Readらの1986年の研究やSuzukiらの2005年の研究では、

どれだけ噛むかということでも数値が変化する可能性を主張した。

またテスト食品として飲料が多く用いられるが、

実際には調理された食品を摂取するのであり、

その際には保管温度、調理方法や時間、温度などによっても結果は異なると考えられる。


1998年のFAOの実験では被験者数が6人必要とされたが、

この根拠は示されていない。

Brounsは2005年の研究で10人の被験者が必要としたが、

実際にはもっと多くの人数で実験が行われるべきであろう。

同じ2005年の行われたHenryらの実験では8種類のジャガイモを用いて試したが、

GI値は56~94の幅に収まった。

より正確な値を推測するためには多くの被験者に対して複数回の実験をするのが必要であるが、

これには多くの費用がかかることから行われていない。

Sugiyamaらの2003年の研究では、米と牛乳が一緒に摂取されると、

米を単独で食べる時よりもGI値が有意に下がることを示した。

Henryらの2006年の研究では、

ジャガイモにチーズを加えると、GI値が93から39へと劇的に減少することを示した。

これらの結果から、炭水化物に脂質やタンパク質を加えるなど、

食事の組み合わせによってGI値は大きく変動すると考えられる。

Mettlerらの2007年の研究ではトレーニングの状態によってGI値が異なることを示した。

GI値の高低がインスリンの分泌に影響を与えることは示されていないが、

McAuley と Mannの2006年の研究では食物繊維がインスリン感受性に好影響を与えることを示している。

GIやGLは不明な点がとても多く、研究データが出ている場合にのみ適応が出来そうである。


Free

10年前のレビューですが、

この時点でGI値というのは何の役に立つのか分からない、

と言える状態です。

研究にも穴が多く、

古いデータに矛盾があるものを強引に使っている感じが否めません。

こうした10年前のレベルからアップデートした知識がどれだけ採用されているのか。

多分、

巷で使われている教科書などはこの10年前のレベルで止まっているはずですので、

何の役にも立たないGI値を使ってアレコレと語っているでしょう。

この10年間にどんな変化があったのか、

ここで示された役に立てるためにはもっと多くの研究が必要という点が埋められたのか。

はてさて。