2017年2月28日火曜日

レジスタンストレーニング後のアミノ酸の摂取は筋タンパク合成とシグナルを高める

Rapid aminoacidemia enhances myofibrillar protein synthesis and anabolic intramuscular signaling responses after resistance exercise

http://ajcn.nutrition.org/content/94/3/795.long

Am J Clin Nutr September 2011 vol. 94 no. 3 795-803

Daniel WD West, Nicholas A Burd, Vernon G Coffey, Steven K Baker, Louise M Burke,
John A Hawley, Daniel R Moore, Trent Stellingwerff, and Stuart M Phillips

タンパク質の摂取をレジスタンストレーニングの後に行うと、

より高い筋肉の合成が行われることが知られている。

一方でアミノ酸の摂取(特にロイシン)によっても筋肉の合成が刺激されることも知られている。

カゼインとホエイではカゼインの方が血中アミノ酸の濃度が高まらず、

筋肉のタンパク合成を刺激しないことも知られている。

この違いは一度の摂取量によるものなのかが明確に調査されていないので調べた。

1回に25gを摂取する群と2.5gを20分ごとに10回摂取する群での比較。

12.8gのEAAを含み(ロイシンは3.5g)炭水化物と脂質は無し。

筋タンパク質合成は1回に25gの方が1~3時間でも3~5時間でも高かった(10回群は3時間過ぎてもまだ投与しているのに)。

筋肉の同化シグナルは有意差があったりなかったり。
(AktThr308, AktSer473, mTORSer2448, 4EBP1Thr37/46 phosphorylation)

結論として、

一度に摂取した場合、3時間程度で血中アミノ酸は通常値に戻るが筋タンパク合成は続いており、

その数値は分割して長時間摂取するよりも有意に高い効果が出ている。

先行研究では運動とアミノ酸の摂取を組み合わせていない。

運動後にアミノ酸を摂取することでトレーニングとアミノ酸の効果を強められる。

筋タンパク合成を刺激するロイシンを多く含むタンパク質を一度に大量に摂取することが大事。

 (Free)




この論文から言えることとしては一度に25gのタンパク質(ロイシン3.5g)を超える摂取、

これが大事であるということです(両足での8-10RM×8setのトレーニング後に)。

運動後にはカゼインなどの吸収が遅いものは効果的では無いということが言えますね。

また、アミノ酸の量が少なくても効果が出ない。


筋肉の分解を怖がるよりも合成が少なくなることを気にした方が良い、

とも言えるかと思います。

2017年2月27日月曜日

食事による体内グルコースとアミノ酸の変化

Splanchnic and leg substrate exchange after ingestion of a natural mixed meal in humans

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10331398

Diabetes. 1999 May;48(5):958-66.

Capaldo B, Gastaldelli A, Antoniello S, Auletta M, Pardo F, Ciociaro D, Guida R, Ferrannini E, Saccà L

糖質の単純な摂取による動態は知られているが、

食事による糖質、脂質、タンパク質が同時に摂取された後の変化はよく分からないので、

男性11人を被験者として実験。

600kcalのピザを食べた後の変化を見た結果、

炭水化物は5時間後でもまだ吸収中と推測される。

動脈血中の乳酸値は30%ほど上昇したが、120分もしたら通常の値に戻った。

5時間後でも肝臓のアミノ酸放出は高まり筋肉での利用は増加した。



1999年の論文ですが、

サプリメントなどでの摂取ではなく、

通常の食事をしたらどのような変化が見られるのか、

というものを調べています。

近年、サプリメントでの単独摂取だけで語っている話が多く見られますが、

日常における食事も栄養補給に大きな効果を持っていますし、

その時間はかなり長く続きます。

こうした点を考えてサプリメントの摂取は実施すべきかと思います。

2017年2月26日日曜日

栄養と運動による筋肉のタンパク質合成(レビュー)

Muscle protein synthesis in response to nutrition and exercise


https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22289911

J Physiol. 2012 Mar 1;590(5):1049-57. doi: 10.1113/jphysiol.2011.225003. Epub 2012 Jan 30.

Atherton PJ, Smith K.

分かってはいたことですが、

運動と栄養の摂取によって筋肉の合成はより高まることがエビデンスベースで示されてきまして、

じゃあどういう時に筋肉の合成は高まるのか、抑制されるのか??

というのをまとめたレビューです。

これで2012年。

よく分からない面が多くあるのが人間の身体ということで。

2017年2月25日土曜日

運動中と運動後の筋肉合成と分解(レビュー)

Human muscle protein synthesis and breakdown during and after exercise

http://jap.physiology.org/content/106/6/2026



Vinod Kumar, Philip Atherton, Kenneth Smith, Michael J. Rennie

運動後には筋肉の合成が高まるが、分解の方が上回ってしまう。

これを逆転させて合成を高めるにはアミノ酸、タンパク質の摂取である(111)。

運動前にタンパク質を摂取することで運動中の筋肉合成が高まる(7)。

人の持久的な運動中にタンパク質の合成が下がるという明確なデータはほとんどないが、

自転車運動の後に筋肉合成のシグナルが高まっていることが示されている(123)

運動後のタンパク質の摂取タイミングはいつがベストなのかは様々な意見があるが、

数時間が経つよりはなるべく早い方が良い(40,53,67)

ホエイとカゼインとソイではホエイが最も良いとされる(53,124) 。

などなど。

Free


筋肉の分解と合成、食事やタイミングなど、多くの点についてまとめているレビューです。

2008年と少し古いですが、基本的な点を理解するには良いと思います。

なお、明日は2012年のレビュー「栄養と運動によるタンパク質合成」です。

2017年2月24日金曜日

インスリンによる筋肉分解の抑制は高齢者のサルコペニアの予防に貢献するかもしれない

Blunting of insulin inhibition of proteolysis in legs of older subjects may contribute to age-related sarcopenia


https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19740975

Am J Clin Nutr. 2009 Nov;90(5):1343-50. doi: 10.3945/ajcn.2009.27543. Epub 2009 Sep 9.

Wilkes EA, Selby AL, Atherton PJ, Patel R, Rankin D, Smith K, Rennie MJ.

高齢者は筋肉の合成よりも分解の方が上回る結果、サルコペニアが引き起こされる。

インスリンは筋肉の分解に効果があると言われているが、

その機序は明確でなく効果が無いというデータも示されている。

低いインスリンの分泌はどの程度筋肉の分解を抑制するか調べてみた。

男性4人、女性4人の若者と高齢者のグループで実験(BMIは若者24:高齢者26)。

結果、高齢者はインスリンが食事程度で高まるインスリンの分泌では筋肉の分解が抑制されにくい。

高齢者のインスリンを調べたデータと異なる点が出たのは、今回の実験の参加者のBMIが高いからと推測される。

高齢者になるとアミノ酸にもインスリンにも反応が悪くなる。

(Free)


肥満などによってインスリンの応答が悪くなることが将来的なサルコペニアを引き起こす原因になるかもしれない、ということですね。

まぁ運動して筋肉に刺激を入れ、食事もタンパク質量を多くしてアミノ酸濃度を高めてインスリンが分泌されるようにすることで、

健康寿命も長くなるということが考えられそうです。

食べても反応しないから若者よりも高齢者の方がサルコペニアの予防のためにも、

より多くの食事をしっかりと、となりますかね。

運動をして刺激を入れていれば防げると思いますので、

食事と運動を若い頃から実践して健康な老後を目指しましょう、と。

2009年時点ではインスリンによる予防が効果的と言われていたという点も。

2017年2月23日木曜日

筋肉合成とmTORのシグナルは時間経過により不一致が生じる

Muscle full effect after oral protein: time-dependent concordance and discordance between human muscle protein synthesis and mTORC1 signaling

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20844073

Am J Clin Nutr. 2010 Nov;92(5):1080-8. doi: 10.3945/ajcn.2010.29819. Epub 2010 Sep 15

Atherton PJ, Etheridge T, Watt PW, Wilkinson D, Selby A, Rankin D, Smith K, Rennie MJ.

イントロ部分は(1~8)の論文を示してタンパク質やアミノ酸による筋肉合成の歴史に触れつつ、

アミノ酸はmRNAの転写を刺激するが多くの研究はmTOR1についてなされているという前振り。

そしてホエイタンパク質を48g、EAAにして20gの摂取によってどのような変化が時間の経過とともに生じるかを調査。

健康な若い男性8名での実験。

結果としては、タンパク質の摂取によるMPS(筋合成)は45~90分でピークを迎え、

以降は180分でベースラインに戻る。

しかし、筋合成のシグナル(”ie, S6K1, 4EBP1 phosphorylation, and eIF4E•eIF4G”) は

上昇したままであった。

これに関してはアミノ酸が血中や筋中にあっても利用できないシグナルが出ている可能性がある。

小胞体ストレスなど何かしらの要因があるかもしれないが、さらなる実験が必要。

(Free)


筋肉の合成はアミノ酸の摂取によって刺激されるということが言われていますが、

その理由というのがイマイチ分かっていないということですね。

2010年の論文ですが現状もそんなに大差はないかと思います。

人間の身体は複雑に制御されているから、

ということですかね。

血中や筋中のアミノ酸濃度を高くすることが筋肉の合成には大事であり、

ある程度の状態に戻るとシグナルはあっても筋肉の合成はなされない。

この点を見ると、 一度に多くのタンパク質を摂取して刺激をし、

再び180分後に摂取して刺激をし、

というのは効率が最も良いという事実が再度認識されるかと思います。

食事での筋肉合成の刺激と運動での刺激はどちらがより強いのか、

といった視点も必要になるかと思います。

まぁアミノ酸の濃度が高くならないと食事からの刺激が不足する、

という点を理解しておけば良いかと思います。

参考までに2009年のを。日本語です。

http://www.nncj.nestle.co.jp/ja/scientificpublications/repositoryofnutritionreviews/nutritionandphysicalexercise

2017年2月22日水曜日

血中へのアミノ酸注入による刺激と筋肉での影響

Disassociation between the effects of amino acids and insulin on signaling, ubiquitin ligases, and protein turnover in human muscle.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18577697

Am J Physiol Endocrinol Metab. 2008 Sep;295(3):E595-604. doi: 10.1152/ajpendo.90411.2008. Epub 2008 Jun 24.

Greenhaff PL, Karagounis LG, Peirce N, Simpson EJ, Hazell M, Layfield R, Wackerhage H, Smith K, Atherton P, Selby A, Rennie MJ.

血中へのアミノ酸の注入と、それに伴うインスリンの変化を観察。

インスリンはアミノ酸とは無関係に筋肉の分解を抑制する効果がある(10、23)ようだが、

アミノ酸が十分にある状態でインスリンが高まることによる影響はよく分からないので、

健康な若い8人の男性で実験して観察してみた。

結果として、インスリン濃度が高まってもmRNAには大きな変化がなく、

筋肉の合成の指標として使っている場合は注意が必要である。

インスリンがタンパク質分解を制御しているということは言えるかもしれないが、

アミノ酸とインスリンを見ただけでは何も言えない。



インスリンは筋肉の分解を抑制するかどうかはイマイチ分からないという感じですね。

ただ、トレーニングを翌日も行うといった観点からすると、

インスリンを分泌させてグリコーゲンの貯蔵を増やすといったことは必要ですので、

インスリンは筋肉肥大を刺激しないから不要、

という短絡的な話に持ち込まないようにした方が良いでしょうね。

2017年2月21日火曜日

PGC-1に関するレビュー

Peroxisome Proliferator-Activated Receptor γ Coactivator 1 Coactivators, Energy Homeostasis, and Metabolism
https://academic.oup.com/edrv/article-lookup/doi/10.1210/er.2006-0037

Endocr Rev (2006) 27 (7): 728-735. DOI: https://doi.org/10.1210/er.2006-0037
Published: 01 December 2006

Christoph Handschin  Bruce M. Spiegelman

2006年のものですが、

基本的な話を押さえるのには理解しやすいかと思います。

まぁ今から10年以上前のものなので、

日本語訳された教科書などもありますので、

日本が良いという方はそちらを読んだ方が。

ただ、参考文献などはどちらにせよ英語ですので、

基礎研究を見ておきたいという人はこれで良いかと思います。

フォリスタチンによる筋肥大はSmad3とmTORの影響するがミオスタチンとは別の機構で作用

Follistatin-mediated skeletal muscle hypertrophy is regulated by Smad3 and mTOR independently of myostatin.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22711699

J Cell Biol. 2012 Jun 25;197(7):997-1008. doi: 10.1083/jcb.201109091. Epub 2012 Jun 18.

Winbanks CE, Weeks KL, Thomson RE, Sepulveda PV, Beyer C, Qian H, Chen JL, Allen JM, Lancaster GI, Febbraio MA, Harrison CA, McMullen JR, Chamberlain JS, Gregorevic P.
フォリスタチンはTGF-βに結合し、TGF-βが別の物質と結合するのを防ぐ。

これにより筋肥大を抑制するとされるミオスタチンなどは機能しにくくなる。

ミオスタチンはSmadを介して情報を伝達する。

筋肥大の刺激にはmTORやAkt、S6Kなどの経路があるが、

フォリスタチンはどれに対して影響を与えるかを検討。

結果、フォリスタチンはmTORやS6Kに作用してSmadに影響を与えたが、

ミオスタチンには特に影響を与えないと考えられる。

(Free)


筋肉を肥大させる要因は多々ありますが、

その一方で筋肉を減らそうとする作用も多々あります。

運動によって遺伝子発現が起こり刺激が与えられ、

筋肉を増やしたり減らしたりするスイッチが入る。

タンパク質の摂取などはそれよりも下流ですので、

こうした上流の因子がどう変化させるかというのが筋肥大など、

トレーニング効果を最大限発揮させるには大事になります。

まぁトレーニングなどでは簡単に変化しないので、

ドーピングと呼ばれるような手法で強引に変化させてしまうわけです。

だからドーピングはダメと言われるわけです。

で、

ミオスタチンは筋肥大を抑制する因子として知られておりますが、

これをノックアウトする方法が無いものか、

ドーピングとならない方法では無いのか?

ということを探し回るわけですが、

2012年の時点ではフォリスタチンはミオスタチンに影響を与えないから別の方法を考えよう、

となったわけです。

筋肥大を抑制する因子が抑制されるから肥大するというよりも、

筋肥大を促進する因子を活発化させるから肥大する、

ということですね。

どちらを中心に狙うべきかというのは、まだまだよく分からない所です。

2017年2月20日月曜日

AMP活性化プロテインキナーゼはmTORシグナルの活性を抑制しタンパク質の合成を抑制する

AMP-activated protein kinase suppresses protein synthesis in rat skeletal muscle through down-regulated mammalian target of rapamycin (mTOR) signaling

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11997383/

J Biol Chem. 2002 Jul 5;277(27):23977-80. Epub 2002 May 7.

Bolster DR, Crozier SJ, Kimball SR, Jefferson LS.


アカデシン(AICAR)を用いたAMPK活性はの増加はmRNA翻訳を減らし、

タンパク質の合成を減らすと仮定してマウスで実験。

運動などによってATPはADP、さらにAMPへと分解されるが、

この時にAMPが増えてくるとAMPKが増加していく。



これも現在となっては当たり前の話として知られていますが、

2002年の研究ですのでよく分からない部分は多かったということで。

AMPKは筋肉合成に関して悪影響ではありますが、

脂肪酸の利用を高めることは減量や持久的な要素を狙ったトレーニングを実施している場合には良い効果がある。

何を目的としてトレーニングを実施するかによって、

AMPKは良くも悪くもなる、ということです。

この点が分かると、筋肥大を狙う場合はATPを減らさないようにするのが良い、

ということが見えてくると思います。

呼吸が乱れるような負荷設定は筋肥大を抑制するスイッチを入れることになるので。

2017年2月19日日曜日

カゼインとホエイの違いによる食後の血中アミノ酸濃度変化

Slow and fast dietary proteins differently modulate postprandial protein accretion
http://www.pnas.org/content/94/26/14930.full

PNAS December 23, 1997 vol. 94 no. 26

Yves Boirie, Martial Dangin, Pierre Gachon, Marie-Paule Vasson,
Jean-Louis Maubois, and Bernard Beaufrère

1997年の論文です。

16人の健康な男性被験者。

カゼインとホエイというタンパク質の違いは摂取後にどのような違いを生むか、

という点を調べたもの。

ホエイは摂取後にアミノ酸濃度を高める

カゼインはホエイほど高い濃度にならないが6時間経ってもやや高い状態にする。

120~180分の間でカゼインの方が血中のロイシンの濃度が上回るようになる。

この違いはカゼインは胃から腸へと排出される速度が遅いということから起こる。




睡眠中などは30g程度のカゼインを事前に摂取するのは効果的であるが、

筋肉の合成は高めないのでカタボリックな状態を抑制したい、

という点を意識する人は良いかもしれません。

近年では寝る前のホエイの摂取で筋合成が高まるとされていますし、

ホエイの摂取による刺激>カゼインによる分解の抑制

といったことが言えるかもしれません。

また、これより古い1987年の研究では

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/3316280?dopt=Abstract

インスリンの分泌も筋肉の分解を防ぐ要素とされていますし、

日常生活では食事の時間との関係なども意識しての摂取で大丈夫、

といった所かと思います。

2017年2月18日土曜日

炭水化物+アミノ酸+小麦タンパク質の混合物の摂取は運動後の筋グリコーゲン合成を最大化する

Maximizing postexercise muscle glycogen synthesis: carbohydrate supplementation and the application of amino acid or protein hydrolysate mixtures

http://ajcn.nutrition.org/content/72/1/106.full

Am J Clin Nutr July 2000 vol. 72 no. 1 106-111

Luc JC van Loon, Wim HM Saris, Margriet Kruijshoop, and Anton JM Wagenmakers

8人のwell-trainedのサイクリストでの実験。

グリコーゲン量の回復は1時間に体重あたり0.5gの摂取を行うことで促進される(ref10)

0.75gと1.5gでは差は無かった(ref7)

固形、液体、静脈投与での差は無かった(ref8,12)

体重あたり0.8gのタンパク質と炭水化物の混合物は回復を促した(ref13)

こうした先行研究をベースに実験を実施。

30分ごとに体重あたり3.5mlの飲料を摂取。内容としては以下。

コントロール群;0.8gの糖質(グルコースとマルトデキストリンそれぞれ50%を含む)

炭水化物+アミノ酸群;上記の糖質0.8gに加え0.4gのアミノ酸(ロイシン:フェニルアラニン50%ずつ、小麦加水分解タンパク質50%)

炭水化物+炭水化物群;1.2gの糖質(グルコースとマルトデキストリンそれぞれ50%を含む)

炭水化物+炭水化物群はコントロール群より170%高い回復を5時間で見せた。

炭水化物+アミノ酸群はインスリンが最も高くなり、筋グリコーゲンの回復も高かったが、血中グルコースは最も低くなった。


同じようなタイトルが続いていますが、

今から10年やそれ以上前の論文とそこの引用を眺めておりますので、

こうなるのも仕方ないと思って頂ければ。

この論文から言えることは筋肉のグリコーゲンの回復だけを考えるならば、

炭水化物を多くするのがベストであるということになりますね。

ただ、筋肉の回復などもしないと翌日のパフォーマンスは下がりますので、

グリコーゲンも高くしつつ筋肉の合成も高くなるもの、

という選択をしていくのが良いと言えるでしょう。

どれも最高に高くなるという手法があれば良いのですがね。

2017年2月17日金曜日

炭水化物とタンパク質の混合物は運動後のグリコーゲンの貯蔵を高める

Carbohydrate-protein complex increases the rate of muscle glycogen storage after exercise
http://jap.physiology.org/content/72/5/1854

K. M. Zawadzki, B. B. Yaspelkis, J. L. Ivy




前日の2000年のものはこの1992年のタンパク質と炭水化物のをさらに調べたものということで。

https://tf-ver3.blogspot.jp/2017/02/blog-post_16.html


運動後にはタンパク質と炭水化物をしっかりと摂取した方が筋肉のグリコーゲンの貯蔵を高めるので、

翌日やそれ以降のパフォーマンスに備えることが出来る。



糖質を摂取
小麦製品

見えてくるものはいくつかありますね。

2017年2月16日木曜日

アミノ酸やタンパク質と炭水化物の混合物を摂取した後の血中インスリンの反応

Plasma insulin responses after ingestion of different amino acid or protein mixtures with carbohydrate
http://ajcn.nutrition.org/content/72/1/96.full

Am J Clin Nutr July 2000 vol. 72 no. 1 96-105

Luc JC van Loon, Wim HM Saris, Hans Verhagen, and Anton JM Wagenmakers

健康な男性8人を一晩絶食させての実験。

炭水化物を摂取した後でのインスリンの反応、アミノ酸やタンパク質を摂取した後でのインスリンの反応、

これらはどちらも実験されている。

両者を組み合わせた実験も行われている。

ではこれらの組み合わせで最もインスリンの分泌を高めるのはどれなのかを確認しよう

という具合で実験がなされています。

※注;アミノ酸やタンパク質だけの摂取でもインスリンは分泌されますからね。
  1~20までの文献参照

インスリンの分泌はグリコーゲンの合成速度を高めるので、

パフォーマンス向上に効果があると考えられる(21や22を参照)。

Whey Pea Wheat Caseinの四つを摂取するタンパク質として利用。


アミノ酸としてはアルギニン、フェニルアラニン、ロイシン、グルタミンを使用。

組合せは図を参照。

インスリンと強い正の相関があったのはロイシン、フェニルアラニン、チロシン、シトルリン。

負の相関が見られたのがグルタミン。

チロシンはフェニルアラニンが大量にあると合成されるので、それによるものと考えられる。

アルギニンの単独での摂取は腹痛を引き起こすだけでインスリンには効果は無し。

グルタミンも摂取して特に変化が出なかったので体内での合成で十分であろう。

タンパク質も”市販のプロテイン”のように粉状になっているものは消化が速く2時間後にはアミノ酸の濃度を高める。

(注;市販のという訳を当てるのが適当かと思いまして。プロテインというとタンパク質そのものなのか、日本人が使うサプリとしてのものなのか分かりにくくなりますので)



インスリンだけを考えるならロイシンとフェニルアラニンを同時に加水分解した小麦タンパク質を摂取するのが効果的。腹痛も起こらないし。

という結論ですね。

アミノ酸の摂取はアルギニンのように腹痛を引き起こしたりするという作用も出るので、

そうした点も含めてベストなものを選ぶというのは必要でしょう。

小麦のタンパク質とロイシン、フェニルアラニン...

グルテン、グルタミン...

まぁ特別にグルタミンを他から取る必要は無いというだけで、

食事で気にせずに食べて良しということですから、

アレルギーなどなければグルテンフリーをせずにパスタなどを食べるのが効果的、

となりますかね。

というか、小麦をしっかり食べるのが良いのでは、

となるかと思いますね。

グルテンフリーって一般人に必要ですか?

2017年2月15日水曜日

東京大学大学院農学生命科学研究科社会連携講座「栄養・生命科学」キックオフシンポジウム雑感

2017年2月14日に東京大学弥生講堂・一条ホールにて開催されました、

東京大学大学院農学生命科学研究科社会連携講座「栄養・生命科学」キックオフシンポジウムを眺めてきました。

協賛はサントリーグローバルイノベーションセンター株式会社。

寄付講座ではなくて社会連携講座ということで、

研究成果に基づいた知財を大学と出資企業が共有するなどなどの解説が、

一番最初に佐藤隆一郎先生からありましてから、

講演が4題。

まずは阿部啓子先生による「次世代機能性食品の学術基盤と産業」という講演。

阿部先生がどのような研究をされているのかという話と現在の社会に関わる問題から、

食品開発に関しての話、食品がもたらすとされる健康への影響とそのエビデンス、

といったキックオフシンポジウムの一番手として大事なところを押さえる発表でした。

最後の方ではご自身の研究の詳しい点にも触れられまして、

”skn-1欠損マウスでは味蕾の甘・苦・うま味細胞が完全に消失”

”カテコールアミンの尿中分泌量がSkn-1欠損マウスで有意に増加”

”血清中総ケトン体の上昇、腓腹筋ミトコンドリアのコピー数増加、脂肪分解の亢進、および、インスリン分泌量が低下”

といったことが紹介されました。上記に関しては以下のリンクより引用。
 
「腸脳軸を介した新しいエネルギー代謝調節機構を解明」
http://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/2016/20160531-1.html

二番目は佐藤隆一郎先生による「骨格筋機能と食品成分の接点を科学する」という講演。

こちらはご自身の研究を中心とした発表なのか、

次々とスライドが流れていく速いテンポのものでしたので、

会場の中でついて行けた人がどれくらいいたのかな、

と思う所ですがとても面白かったです。

最初の方にあったのはAICAR(Acadesine) の話でampkの活性を高めるが、

これはドーピングに指定されているので使えないですね、

といった話。

AMPK and PPARdelta agonists are exercise mimetics
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18674809
Cell. 2008 Aug 8;134(3):405-15 


AICARに関してはWikipediaの記事でも見てもらいますと分かりますが、

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%AB%E3%83%87%E3%82%B7%E3%83%B3

2008年に注目されて2009年には禁止物質リスト入りというスピーディな対応。

そして2009年には検出されている。

2013年の記事ですが、自転車界隈では頻繁に使われる代物ですね。

http://www.cyclingtime.com/modules/ctnews/view.php?p=20239

この話が理解できると話題になっているジャマイカの短距離選手のドーピング問題の話も理解できると思います。

まぁこのドーピング話はまた別でやります。

AICARとは異なるものではレスベラトロールなんかに注目


詳しい内容は以下のリンクよりPDFをご覧ください。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jln/25/1/25_35/_pdf

TGR5と胆汁酸という話で、

食事による胆汁酸の分泌が筋肥大に関わってくるということで、

しっかり食事しましょうね、

という理解をさせて頂きました(食べないと強くなれない派ですので...)。

ノートカトンやノミリン、オバクノンなど柑橘類の中にある苦み成分に効果があるものがありそう、

といった話でゆずを使って笑いが取れなかったのは何でですかね。

そこまで話についていけなかったのか、

真面目な話に唐突な仕込みネタだったからか。

まぁ柑橘類を食べる時は種まで食べましょうね、

とっても苦くておいしくは無いですけど、

ということを受け取りました。

休憩を挟んでの三番目は森谷敏夫先生(京都産業大)の講演。

「筋肉は偉大な臓器である」という題でのお話でした。

かなり久しぶりに講演を見ましたが、

相変わらず巧みな話術でした。

【筋肉はロコもを予防・改善する臓器である 】
【筋育は肥満・メタボを予防・改善する臓器である】
【筋肉は糖尿病を予防・改善する臓器である】
【筋育は脳萎縮・認知症を予防・改善する臓器である】

この四点が抄録には項目として記載され解説が書かれていましたが、

それをスライドと話術で説得力を高めるのはさすがでした。

アイリシンの話では運動によって白色脂肪細胞が褐色脂肪細胞に機能が近づくという説明をし、

だから運動が必要なんだと強く述べられました。

アイリシンに関してはコチラからPDFをどうぞ。

また、自律神経が働くことで褐色脂肪細胞が働くのだから、

カロリー制限をするな、運動をしろ!!

ということも力強く述べられました。

栄養士の方々は100kcalを食事制限すれば楽だと言うが、

それは将来の寝たきり患者を作ることになるからやめろ、

という感じの話でしたね、

私もそう思います。

ケトン体の話もされていましたが、

脳がどれだけのエネルギーを使うと思っているんだ、

ということでした。

私もそう思います。

運動を適度にしてカロリーを消費することには身体を作る意味もある。

全く運動をしないでカロリー制限をして痩せるというのは悪循環しか生まないので、

適度に運動をしてカロリーを消費して、しっかり食べて生活しよう、

と。痩せるために運動というのよりも、将来の足腰予防のために若いうちから適度な運動を、

ということです。カロリー摂取量の少ない人は高齢者になってからの状態がよろしくない

そういうデータも示されましたし。

この辺りは本当に栄養士の方々には話が通じない点でして、

とにかく痩せることがゴールであって身体が弱ることは気にしない、

という指導をしていることに早く気が付いてもらいたいものですね。

また、糖尿病は遺伝が原因だという医者の方々の勉強不足も嘆いておりました。

これもまったくもってその通りの話でして、

宇宙飛行士は二週間の滞在で糖尿病になることからも分かるわけですが、


遺伝だからと思っている人が多過ぎる。

勉強をしろ、


と。

宇宙で人体に生じるあれこれに関する記事です。
http://www.afpbb.com/articles/-/3084764

私は大学院での研究の一つが宇宙飛行士の筋肥大というのがありましたので、

この辺りは「ですよね」 と思いながら聞かせて頂きました。

宇宙では筋肉の萎縮や機能が弱ることから糖の分解が行えなくなるわけです。

インスリンでの取り込みとGLUT4を使った取り込みの経路があるのに、

片方しか使えなくなったら、多くある筋肉が使えなくなったら糖尿病になってもおかしくない、

糖尿病の原因は筋肉がダメになること、運動をしろ!!

という具合で栄養士の方々に続きまして医者の方々への熱い語り。

この熱さが届かないのは医者の方々が運動生理学を学ばないからなんでしょうね。

まぁ講演を通して、とにかく運動をしろという当たり前の話しかされていませんでしたが、

どうして運動が必要なのかということを分かっておらず、

カロリー制限だけで終わらせようとする人が多いというこの現実はどうしようもないかな、とも思ってしまいます。

これをお読みの皆様は、簡単な運動で良いですので、

筋肉を維持する・少し増やすような運動をやりましょう。

しっかりと食べましょう。

食べないから、運動しないから身体がダメになる、病気になる、ということです。

20分歩くといったことからでもやりましょう。

そして最後は山内祥生先生による「社会連携講座「栄養・生命科学」が目指す研究」という講演。

森谷先生の後でやりにくいというボヤキから始まりまして、

ご自身の研究を紹介され、今後はどのような研究をして連携講座の役割を担っていくか、

という話へとまとめていかれました。

基礎的な話と研究の話を淡々とされていたので真新しい点はあまりありませんでしたが、

多い少ないの問題があるにせよコレステロールはやはり大事だよな、

ということや再び出てきた胆汁酸の話もありまして、

胆汁酸に興味を持ちました。



森谷先生の講演を聞くために行ったようなものでしたが、

その他の講演も楽しく聞けました。

やはり様々な分野の話を聞いても、

どこかで必ず絡んでくる話はあるので、

そうした点をより深く掘っていくと面白いですね。

そして何より森谷先生の講演がとてもインパクトがありました。

痩せようと思わないでも良いから軽くスクワットをしてみるとか、

何かしらの簡単な運動をして身体に刺激をいれることが脳から神経から筋肉から、

全身のありとあらゆることに良い影響がもたらされるわけですから、

運動をしましょう。

カロリー制限は最後の奥の手としてとっておきましょう、

という感じでしょうか。

なお、懇親会の前に個人的な質問を森谷先生させて頂きましたが、

私が推定していた通りの数値を先生も 仰られていましたので、

アスリートがパフォーマンスを落とさないようにするレベルだと、ケトン体でまかなうのは無理!!

という私からのメッセージを残しまして、

以上とさせて頂きます。

タンパク質の種類によって摂取後の血中のインスリンとグルカゴンの反応は異なるのか?

Plasma Glucagon and Insulin Responses Depend on the Rate of Appearance of Amino Acids after Ingestion of Different Protein Solutions in Humans
http://jn.nutrition.org/content/132/8/2174.abstract

J. Nutr. August 1, 2002 vol. 132 no. 8 2174-2182

Jose A. L. Calbet and Dave A. MacLean

2002年の論文です。

男性3人女性3人の被験者。

深夜の絶食と胃の洗浄を実施してから測定。

エンドウ豆、ホエイ、牛乳から作られたミルクプロテインの3種類の比較。

インスリンがタンパク質の分解を抑制し、

グルカゴンがアミノ酸の分解を促進すると言われているから、

3種類のタンパク質の摂取後にどのような変化が起こるかを調べてみました、

という具合です。

グルカゴンの反応は血中のアミノ酸濃度(チロシン、メチオニン)に応じている(直線的な相関)。

インスリンはロイシン、イソロイシン、バリン、フェニルアラニンおよびアルギニンが影響する。



まぁソイでもホエイでもカゼインでもどれを摂取しても効果はあると言われますが、

当然ながらしっかりと見るとそれぞれ特性はある。

筋肉の合成という面から考えるとホエイが最も強い作用を持つということになりますかね。

あとは量でしょうかね。

ミルクに関しては特別魅力を感じられるデータがあまりないと思うところです。

2017年2月14日火曜日

レジスタンストレーニング後のアミノ酸の輸送とタンパク質の代謝回転は上昇する

Increased rates of muscle protein turnover and amino acid transport after resistance exercise in humans

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/7900797/

Am J Physiol. 1995 Mar;268(3 Pt 1):E514-20.

Biolo G, Maggi SP, Williams BD, Tipton KD, Wolfe RR.

トレーニングを日常的に行っていない被験者で実験。

ロイシン、リシン、アラニンの輸送速度は有意に上昇。

この点からタンパク質の分解・合成の速度上昇は、

タンパク質の合成に対する刺激となると考えられる。



1995年の論文です。アミノ酸の摂取によるものなどは見ていない、

単純にトレーニングの刺激が筋肉にどのような変化をもたらすかを見たデータです。

今となってはタンパク質の摂取による筋肉の合成上昇、

ウエイトトレーニングよる刺激などは当たり前となっていますが、

基礎的な点を見たデータを見直すのは大事ですね。

ここから見えてくるものもありますし。

2017年2月13日月曜日

大豆とミルク由来タンパク質から生じるアミノ酸の食後の動態

Postprandial Kinetics of Dietary Amino Acids Are the Main Determinant of Their Metabolism after Soy or Milk Protein Ingestion in Humans

http://jn.nutrition.org/content/133/5/1308.full

J. Nutr. May 1, 2003 vol. 133 no. 5 1308-1315

Cécile Bos, Cornelia C. Metges,Claire Gaudichon,Klaus J. Petzke,Maria E. Pueyo,
Céline Morens, Julia Everwand,Robert Benamouzig, and Daniel Tomé
大豆とミルクでは含有しているタンパク質の成分構成が異なるため、

消化や吸収に掛かる時間が異なる。

この辺りを明らかにするために男女16名の被験者を用いて実験。

平均年齢28歳でBMIが21前後なので標準的でしょう。

体重あたり46kj/kg、タンパク質15%、炭水化物55%、脂質30%と食事を統一。

27.6 ± 6.6 g in the milk group
21.9 ± 3.9 g in the soy group

違いは大豆群の方が被験者の体重が低かったことで生じた。

N15ラベルで追跡して結果を分析。

大豆の方が消化が素早く行われるという変化が確認された。

Free


2003年に出された論文ですので、

カゼインとソイでの違いの初期的な研究ですね。

タンパク質の組成の違いというよりは消化に掛かる時間の違いが体内での動態にも違いを生む、

という具合ですね。

この辺りから考えられることは、

食事の量などもタンパク質の摂取に影響を与えるであろうということで、

その後の研究の流れになっていく、

という具合ですかね。

ただ、

現状の捉え方が異なっている感じは否めません。

この頃のデータだけを見て考えたりしている話も見られますし、

後を追う、昔のを調べなおすというのは大事ですね。

2017年2月12日日曜日

レジスタンストレーニング後の無脂肪乳の摂取は同量の大豆タンパク質飲料よりも筋肉をより多く増加させる

Consumption of fluid skim milk promotes greater muscle protein accretion after resistance exercise than does consumption of an isonitrogenous and isoenergetic soy-protein beverage

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17413102

Am J Clin Nutr. 2007 Apr;85(4):1031-40.

Wilkinson SB, Tarnopolsky MA, Macdonald MJ, Macdonald JR, Armstrong D, Phillips SM.

無脂肪乳の摂取と大豆由来のタンパク質含有飲料での比較です。

18gのタンパク質の摂取とし、

飲料の内容成分もしっかりと書いてあります。

週に4回のトレーニングをしている若い男性という条件もありますし、

実際のトレーニングに役立ちそうなものです。

やや体重が重いかなといった所ですかね。

大豆由来のタンパク質の方が素早く血中のアミノ酸濃度が上昇し、

ミルク由来のタンパク質は血中アミノ酸濃度が上昇しにくいが、

3時間以上それなりの値をキープするという有名なグラフがあります。

Free




カゼイン、ソイ、ホエイのプロテイン話を調べなおしていこうと思いまして、

まずは10年前の論文から。

近年はロイシンの含有量が大事であるということが言われていますが、

その辺りの話の初期段階を見直していき、

何だかおかしな話が生まれていった原因を探ろう、

という目的です。

血中アミノ酸が上がることで刺激が起こって筋肉が合成されるわけですが、

その量が少ないと刺激としては不十分。

カゼインのように吸収が遅いものは血中アミノ酸を高めないので、

筋肥大の能力は弱いということが現在は指摘されています。

この論文を読むと、

確かに睡眠中などにはカゼインの方が良いかもしれないと言えますが、

合成も起こらないということを考えるとどうなのかな、

という具合ですね。

その他の食事由来のタンパク質なども考えると、

カゼインの有用性は疑問なのではというのが私の現在の考えです。

2017年2月11日土曜日

レジスタンストレーニング後の筋肉の分解とEAAと炭水化物の摂取が与える影響

Muscle protein breakdown has a minor role in the protein anabolic response to essential amino acid and carbohydrate intake following resistance exercise
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20519362

Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol. 2010 Aug;299(2):R533-40. 
doi: 10.1152/ajpregu.00077.2010. Epub 2010 Jun 2.

Glynn EL, Fry CS, Drummond MJ, Dreyer HC, Dhanani S, Volpi E, Rasmussen BB.

より多くの研究がさらに必要とconclusionで説明していますが、

これが出されたのが2010年。

筋肉の分解については何だか変な情報が世の中に出回り過ぎですよね、

と思ったらこの辺を追っていくと良いかと思います。



2017年2月10日金曜日

運動後の糖質とタンパク質の同時摂取が回復とその後の運動に与える影響

Influence of Post-Exercise Carbohydrate-Protein Ingestion on Muscle Glycogen Metabolism in Recovery and Subsequent Running Exercise
http://journals.humankinetics.com/doi/pdf/10.1123/ijsnem.2016-0021

International Journal of Sport Nutrition and Exercise Metabolism
Volume:26 Issue: 6 Pages:572-580 doi: 10.1123/ijsnem.2016-0021
Abdullah F. Alghannam Dawid Jedrzejewski James Bilzon
Dylan Thompson Kostas Tsintzas James A. Betts


6人の持久的なwell-trainedの人を使い、

最大酸素摂取量の70%の負荷で疲労困憊になるまで走り、

運動後には糖だけor糖+タンパク質の群を作り、

4時間での回復を見て再び70%の運動を実施。

どちらにおいても回復や疲労困憊までの時間は違いが無かった。



先行実験などから考えると、

摂取した糖の量(タンパク質群は体重あたり0.8g、糖質のみは1.2g)が少ないような気がしますね。

体重あたりで1gを超えてくるともう少し違いが出るのかな、

と思いました。

タンパク質も体重あたりで0.4gなので、

もっと多くするとどう違うのかが興味深い所です。

今後に期待。


2017年2月9日木曜日

全身冷却法のレビュー(冷水に浸かる場合との比較)

The Effectiveness of Whole Body Cryotherapy Compared to Cold Water Immersion: Implications for Sport and Exercise Recovery
http://www.journals.aiac.org.au/index.php/IJKSS/article/view/3001/2498

International Journal of Kinesiology & Sports Science
ISSN 2202-946X Vol. 4 No. 4; October 2016

Michael Holmes, Darryn S. Willoughby


全身を冷却するクライオセラピー(Whole Body Cryotherapy)は、

冷水に浸かるアイシングとの間に違いがあるかを調べたレビューです。

結論部分にありますが、

WBCはまだまだ新たな手法であり、

しっかりとした実験データは存在していないということと、

アイシングと呼ばれるものにも効果が怪しいものがある、

ということですね。

運動後の筋肉の炎症などに対して冷やすことが効果的なのか、

といった点など、まだまだ未解明な部分が多い感じです。

(Free)

2017年2月8日水曜日

スプリントの加速とスレッドトレーニング(ブログ記事)

とてもしっかりとしている記事です。

http://jbmorinsportscience.blogspot.jp/2016/12/sprint-acceleration-mechanics-and.html?spref=tw


これが万能なダッシュ力を鍛えるトレーニングではなく、

軽いものも重いものも目的に応じてトレーニングとして組み込む。

当たり前の話ではありますが忘れがちなことです。

2017年2月7日火曜日

第13回乳酸研究会雑感

2017年2月4日土曜に東京大学駒場キャンパスにおいて第13回の乳酸研究会が開催されましたので、それの内容を簡単に。

・マッカードル病から考える筋グリコーゲンの重要性
 北岡 祐(東京大学大学院総合文化研究科)

マッカードル病では筋グリコーゲンの分解ができない。
運動中は乳酸値が上昇しない。
子供の頃に運動障害が見られることで判明することが多い。
ミオグロビンが尿に出る。
CK値が高く筋損傷が起こっている。

マッカードル病以外にも垂井病など、糖を分解する機序に問題がある病気が糖原病として見つかっているが、有効な治療方法は特に無い。ポンぺ病のように薬があっても投与を継続する必要がある。運動が効果を示す例が出てきているので、医者の監督下で様々な取り組みが行われ始めている、といった感じでした。


・運動後の骨格筋グリコーゲンの回復を促進させる栄養摂取方法の探索
 高橋祐美子(東京大学大学院総合文化研究科)

JONAS BERGSTRÖM & ERIC HULTMAN
Nature 210, 309 - 310 (16 April 1966); doi:10.1038/210309a0
当日、他の演者も含めて何回か登場した図

筋肉のグリコーゲンの回復には1日かかる
減ったグリコーゲンを素早く回復させるにはとにかく食べる(多過ぎて厳しい)
タウリンの投与で動物では回復が高まった(投与量が非常に多い?)
高脂肪食がグリコーゲンの回復にどのような影響を与えるか(全部Free)
Andrew L. Careyらの実験

Frøsig Cらの実験

Yeo WKらの実験


高脂肪食に期待はあまり出来なさそうであろうと思われます。
とにかく食べて回復させる、翌日には筋グリコーゲンが少ないから高いパフォーマンス発揮は無理、というのを理解しておけば問題なかろうかと。試合の続く場合には素早く食事をして回復させる、高橋英幸先生の発表にあったように、体重あたり1gの糖質(体重60㎏の人なら60gでカロリーを考えると240kcalほどを糖質だけで摂る)をしっかり摂取、でしょうか。それ以外の手法は特に期待できなさそうな感じですので、むしろ運動中の利用を減らす方を考えるべきでしょうね。


・筋グリコーゲンの視点からの疲労予防と回復
  高橋英幸(国立スポーツ科学センター)

筋肉のグリコーゲンの減少はカルシウムの放出も低下させる
Gejl KDら
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24091991

1日に体重あたり12gの糖の摂取での変化を見る
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27231310

持久的な運動後の糖質摂取量での回復の違い
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22968309

グルコースの摂取による持久的なパフォーマンスの変化
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20299609


フルクトースとグルコースの混合物が良さそうということで。フルクトースは肝グリコーゲンの回復には効果的となると、脳・筋・肝のそれぞれでベストなものは違ってくる可能性はありますが、取りあえず多種類のものを食べれば良し、ということで。



・陸上競技選手を対象としたフィットネスチェックにおける乳酸カーブテスト  
 とMARTの活用
 松林武生(国立スポーツ科学センター)

私からは特に何もありません


・パラリンピックに向けた科学的トレーニングの実際
  平松竜司(日本スポーツ振興センター)

パラリンピックは障害の軽い重いによって区分があるが、その区分の中でも障害の軽い選手が有利である。トレーニング効果によって変化が起こるのか、運動によって機能改善が起こってパフォーマンスが上がったのかが分かりにくいので、定量化した分析がやりにくい。

パラリンピックに関しては、まぁそうですよね、という感じでした。全く同じ条件になっていることは少なさそうですし、トレーニング効果を把握しやすい人もいれば、要因が複雑すぎて分かりにくい人もいるとなると、経験として次に残しても必ず使えるとは限らないわけですし。多くの経験を何かしらの形で残しておいて、選択していくしかなさそうという、当たり前の感想になりますが、これを意識してやるのも難しいですね。背景を細かく伝えないと再現性は著しく下がりますし。



総合討論では最後に少し発言させて頂きましたが、時間を意識して短くしたので、言いたかったことに少々。

現場において論文を読んで、研究者に話を聞いて、最先端のものを取り入れている人は、それなりにいると思います。論文をどのように現場に落とし込むかは難しいですが、これは多角的に考える・見ることをしっかりすれば適応は可能だと思います。要因をしっかりと考えることが出来れば、乳酸などの数値を確認出来れば。研究を専門としている人に話を聞く限界はありますし、研究と現場を上手く橋渡しが出来れば、と思って活動を増やしつつある今日この頃でございます。その際のネックとなっているのが対価の支払いという現実ですね...知りたい知識がこれであると提示されたら、それに対して答える。でも、知りたいことが漠然とし過ぎていると、論文やら研究データを示すことは出来ません。強くなりたい!!というだけではなく、何をどうやって強くなりたい、というのが示されれば、それが最善かどうかの答えや、最善でなくても要求に沿った答えを返すことなどは出来ますし。論文をたくさん読み、先駆者の話をたくさん聞く、そうやって蓄積された多くのデータがある所にはあって、注ぎ込まれている、ということを知って頂ければ。現場の方が圧倒的に進んでいる、という面もありますので...それは根性とか経験だけでなく、データ、実験、論文を読むなど様々なことをやって先に進む努力をしている、ということです。ただ、それらが確実に正しいかとは言えない、定量化されていないし競争相手に知られたくない、出す意味も無いから外に出てこない、ということは多いです。とにかく良い結果さえ残せば現場と呼ばれる所では評価されますので。相関、有意差、エビデンス。いらないです。結果が評価の全てです。この論文によればこのやり方は正しいと言われても、結果が残せなければ科学と呼ばれたりするものが足を引っ張ったと言われるだけです。基礎研究を見て遺伝子レベルから代謝の経路を考えて、という細かいレベルから私は見ていますが、そうしないとどこに間違いがあるのか分からない、把握できないという面も多々あります。直接、単品で役に立つ研究というものはほとんどありませんから、いかにして組み合わせるか。この組み合わせのためには多くのデータが必要だと思います。そうしたデータ、経験を上手く共有しゼロから作り直さないでも済むようにしていくのが大事でしょう。持久的な能力を最大限に高める中で筋量を増やす。こうした厳しい話を最大限に効率化して実現させる。無理と思うことを細かく探って考えて結果につながるようにする。そうした作業をやっている人たちも少なからずいますよ、ということをお伝え出来れば、と思います。

まぁ研究に対する信用が低い(研究者に対する信頼が無い)、データを出す側の説明能力など様々な問題もあると思います。この数年、科学的なトレーニングの実践をやりたい、という相談は受けますが、最低限を学んでもらわないと何も出来ないこともあります。「科学的な」という言葉で何でも解決出来ると思われている、その辺の誤解も解いていかないとダメだと思います。そして現場と呼んでいる所が何も学んでいない、工夫もしていない場だと思っている人々には認識を改めて欲しいな、と思いました。何もやってない所もあれば、とても先端のことをやっている所もある。それらを一括りにしてしまうのも如何なものかな、と。

2017年2月6日月曜日

負荷の無いレジスタンストレーニング動作の効果

The acute and chronic effects of "NO LOAD" resistance training

http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S003193841630436X

Counts BR, et al. Physiol Behav. 2016.
Counts BR, Buckner SL, Dankel SJ, Jessee MB, Mattocks KT, Mouser JG, Laurentino GC, Loenneke JP
筋肥大には高い負荷が必要とされているが、

負荷をかけずに動作だけをしても肥大するのかを確認。

肥大はした。

Free


近年は低負荷でもオールアウトさせると筋肥大するという実験報告があり、

それを再確認するというものですね。

筋肉の収縮による代謝物質の生成が影響を与える、

刺激となるということが考えられますね。

この辺りはまだまだ研究途上ということで。

2017年2月5日日曜日

持久的なトレーニングにおいてマッスルメモリーはあるのか?

The Impact of Endurance Training on Human Skeletal Muscle Memory, Global Isoform Expression and Novel Transcripts
http://journals.plos.org/plosgenetics/article?id=10.1371/journal.pgen.1006294

PLoS Genet 12(9): e1006294. doi:10.1371/journal.pgen.1006294
Lindholm ME, Giacomello S, Werne Solnestam B, Fischer H, Huss M, Kjellqvist S, et al.

多分、無い。

今回の実験以外の要因ではひょっとしたらあるのかもしれないが。


Free

2017年2月4日土曜日

レジスタンストレーニング後の自転車トレーニングの影響

Effects of high-intensity interval cycling performed after resistance training on muscle strength and hypertrophy
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27659479

Scand J Med Sci Sports. 2016 Sep 23. doi: 10.1111/sms.12751. [Epub ahead of print]
Tsitkanou S, Spengos K, Stasinaki AN, Zaras N, Bogdanis G, Papadimas G, Terzis G
趣味程度で運動をしている大学生を用いた8週間の実験。

1週間に2日のトレーニングをスミスマシーンで実施。

ハーフスクワット(90度)とレッグプレス(45度)で、徐々に負荷は増加させた。

自転車を付加するグループは10分後に60秒×10のセッションを実施。

VO2の100%の負荷で設定、回転数は毎分55~60回転。

どちらの群でも筋肥大は生じスクワットの負荷の上昇や、

パワーの増加などが見られた。

RFD(力の立ち上がり)は自転車の方で減少していた。

VO2は自転車の方で向上、心拍は自転車の方で減少していた。



有酸素と呼ばれる能力の向上は自転車を追加した群でしか見られない。

また、力の立ち上がりが自転車追加では落ちている。

インパルスが下がっているので立ち上がりが落ちるのは当然かな、

という感じです。

disussionで筋肉の構造変化が立ち上がりに影響しているかも、

と言っていますがこの辺は今後に期待ですかね。

2017年2月3日金曜日

クレアチンの摂取はエルゴメーターでの漸増負荷テスト結果を改善させる

Creatine supplementation alters the response to a graded cycle ergometer test
http://link.springer.com/article/10.1007%2Fs004210000244

Eur J Appl Physiol. 2000 Sep;83(1):89-94.

Nelson AG, Day R, Glickman-Weiss EL, Hegsted M, Kokkonen J, Sampson B

well trainedな人々での実験。

一週間の摂取によって少ない酸素の摂取で高いパフォーマンス発揮を実現する。




2000年の論文なので、ここから新たに分かっていったものもあるわけで。

クレアチンがどうしてパフォーマンスを高めるのか、など。


2017年2月2日木曜日

運動負荷によるミトコンドリアの遺伝子発現の転写調整の違い

Transcriptional modulation of mitochondria biogenesis pathway at and above critical speed in mice
http://link.springer.com/article/10.1007%2Fs11010-015-2413-3

Molecular and Cellular Biochemistry July 2015, Volume 405, Issue 1, pp 223–232

L. Mille-Hamardr C. Breuneval A. S.Rousseau P. Grimaldi V. L. Billat

マウスの四頭筋での実験。

PGC-1αはどの強度でも発現が増加。

PPARβは強度と負の相関がある。



トレーニングは高い負荷の強度をやっているだけでは効果的ではない、

ということを言う一つの材料として使えそうですね。

2017年2月1日水曜日

ビタミンDに関する広範なレビュー

Non-musculoskeletal benefits of vitamin D
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27662817

J Steroid Biochem Mol Biol. 2016 Sep 20. pii: S0960-0760(16)30252-7
Wimalawansa SJ

ビタミンDに関するレビュー。428本。

ほとんどの場合において効果的なデータが見られる。

効果がないとするものには実験デザインのミスや投与量が少ないなどがある。



ビタミンDを使うときの効果として参考にするにはとても良し。