2016年7月25日月曜日

第24回日本運動生理学会大会の感想

個人的な感想ですので参考までにお願い致します。

2016年7月23(土)と24(日)に熊本大学黒髪キャンパスにおきまして、

第24回日本運動生理学会大会が開催されました。

私は当日の朝一の飛行機にて熊本入りしましたので、

一番最初の大会長である井福裕俊先生(熊本大学教育学部生涯スポーツ福祉学科)の講演を見ておりません。

また、シンポジウムなども同時並行で別会場において実施されましたので、

興味あるものしか見られておりません。

見に行った他の人に話を聞いて把握はしておりますが、

ほぼ抄録に記載されている通りということですので、

そちらを参考にして頂ければ。

持っていないという人の方が多数と思いますが、

そこは何とも出来ません。

ご理解下さい。

さて、

初日の午前にはシンポジウム1、座長は緒方知徳先生(広島修道大学人間環境学部)で

「骨格筋の質的・量的変化を制御する分子メカニズムの探求」

が行われました。

河野史倫先生(松本大学健康科学研究科)による

「運動が引き起こすエピジェネティクスと骨格筋の適応性変化」

という題での講演です。

これも内容としましてはほぼ抄録に記載されている通りかと思います。

言葉の説明などを丁寧に進めて頂きましたが、

どれだけトレーニングしても速筋での糖利用は遅筋に勝てないといった話から、

速筋や遅筋におけるヒストン修飾の影響についてという話へ。

”1か月のover load なトレーニングで遅筋においてサイズが有意に増加”
”遅筋においては転写誘導は上昇しているのにヒストンのアセチル化は減少した”

などが示されました。

そしてこれらは胎児期の細胞が関わるのでは?

ということで再生筋での話に移っていきました。

胎児期の筋核がどうやって消失するのかという話や、

再生筋は肥大しにくいがその理由は何かといった話、

サテライト細胞が増殖していく過程で機能が無くなっていくのでは、

といったことが示されました。

2人目の小野悠介先生(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科)は

「骨格筋の修復・再生の分子メカニズム」

というテーマでのお話しでした。

3人目は小笠原理紀先生(名古屋工業大学大学院工学研究科)は

「骨格筋量調節におけるリボソーム生合成の役割」

というテーマ。

このペースで書いていくと時間が掛かりますので、

皆様が知りたいであろう話を数点挙げていきますと、

・小野先生の筋再生に関する話として
「互いに抑制して制御をしているものがある。常に量を多くしていることが良いとは限らない」

・小笠原先生のリボソーム生合成の話として
「rRNAの増加が多い人は筋の肥大も大きい」

・昼の大塚製薬によるランチョンセミナー
「ポカリスエットは薄めずにそのまま飲んでください(個人的にお伺いした質問への答え)」

・午後の教育講演 丸山敦夫先生(新潟医療福祉大学健康科学部)の話として
「筋疲労による脱抑制が運動学習の成績を高める可能性がある。疲労している中での技術トレーニングは有用である」


シンポジウム3、座長は林直亨先生(東京工業大学リベラルアーツ研究教育院)による進行。

まずは林先生から
”血液が不足すると人間には何が起こるか?何が問題か?”
という点について簡単な説明。

「脳や筋、眼では血流が不足すると意識を失ったり運動継続困難になったり、視野を失う。
これは狩猟の時代であったら狩られる」

・石井圭先生(産業技術総合研究所)
「自発的な運動をする時には運動開始前にセントラルコマンドの指令により血流は増加する」
「脚の運動を行うと上肢骨格筋のOxy・Hbが増加、上肢を行っても下肢では増えない」

・芝崎学先生(奈良女子大学研究員生活環境科学系)
「暑熱下で静脈還流量は低下するが一回拍出量は維持される」
「暑熱下では副交感神経支配が弱まることで心拍が増加する(交感神経系に関係なく)」

・池村司先生(早稲田大学スポーツ科学学術院)
「疲労困憊時では血圧が増加しても脈絡網血管の血流増加は抑制される」

・一之瀬真志先生(明治大学経営学部人間統合生理学研究室)
「運動時に生じる代謝物は血圧の低下や血管拡張の抑制に関わっている」

教育講演2は荻田太先生(鹿屋体育大学)
「運動強度という言葉がよく使われるが、どこからが高強度なのか明確ではない」
「Tabata Protocolには弱点もあるので新たなスプリントトレーニングを提案したい」

といった内容でした。

口頭発表やポスター発表で数点、私が興味深かったものを簡単にまとめますと、

・筋内脂肪が多い人に持久力が優れている傾向が見られる

・高頻度のレジスタンストレーニングはタンパク合成シグナルを活性化するが、骨格筋合成は活性化しない可能性がある(マウス実験)

・長期の高脂肪食(60%、マウス実験)摂取は速筋の筋機能低下を引き起こす(筋内脂肪は増加)

といったものです。

長時間の持久的な運動を行う人が著しく体脂肪を低くすることは、エネルギー源である(可能性がある)筋内脂肪を減らすことになるので、好ましくないことかと推測されます。また、高頻度のレジスタンストレーニングで筋肥大が引き起こしにくくなる可能性も提示されましたが、この辺りもなんとなく感覚的に理解できるものがあります。毎日やるのは筋力の向上を目的とするならば良いかもしれませんが、筋量の増加を目的とするならば止めておくべきでしょう。

以上、簡単にではありますが、まとめさせて頂きました。