2017年12月23日土曜日

スポーツにおける試合前の性行為

Sexual Activity before Sports Competition: A Systematic Review

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27445838

Front Physiol. 2016 Jun 21;7:246. doi: 10.3389/fphys.2016.00246. eCollection 2016.
Stefani L, Galanti G, Padulo J, Bragazzi NL, Maffulli N.

古代ギリシアやローマの時代から試合前の性行為はパフォーマンスを下げると信じられ、

大いなる犠牲は成功につながるとされてきた。

しかし、科学的な研究に関してはまだまだ不足している。

最初の研究(Anshel, 1981)は

”禁欲によって競技におけるパフォーマンスが上がるかもしれないが、 ストレスとなる可能性もある。適切な性行為はリラックスを生んでパフォーマンスを高めるかもしれない 。深夜の行動や睡眠時間の減少、飲酒などがなければ悪影響は少ないのでは”

といったことを述べている。

しかし、自慰行為(masturbation)や性的絶頂(climax)に関する管理されたデータはなく、

再現性のある研究はほとんど無い。

競技会の前夜での実験はいくつかあるが、

多くのコーチはエネルギーの無駄遣いによる影響が出ると思っている。

実際には性行為によるエネルギー消費は少ないと思われるが、

実験はほとんどない。

本研究では過去に行われた実験のシステマティック・レビューを実施。

140の研究の中から9件の研究を抽出した。

結果、対象としては男性の方が多かった。

(Johnson 1968)では24~49歳の元アスリートの女性を用いて実験を実施、

前夜に性行為をした場合と6日ほど間を空けた場合で筋力に関して差は無かった。

同様の実験で酸素摂取や心拍について調べたものが(Boone and Gilmore 1995)である。

アスリート以外も含む男性のデータで性行為の2時間後に実験を行った。

この研究の結果からは、性行為は少なくとも競技の10時間前に終わらせておけば影響はないと言える。

しかし、間が2時間程度であると心拍数が高くなった。

だが集中力や仕事量に関する差は無かった。

この点から性行為は交感神経を活性化し、テストステロンを上昇させるということが言えるかもしれない。

(Sztajzel et al. 2000)では被験者数が少ないなどの問題があるが、

持久的なトレーニングを積んだアマチュアランナーでの悪影響が無かったという実験結果を報告している。

 (McGlone and Shrier 2000)はハンドグリップでのテストにおいて、

性的行為がハンドグリップに悪影響を与えないがcoordinationや最大酸素摂取量に影響を及ぼす、という報告をしている。

1週間程度の禁欲における影響なども考えられるため、

その点を排除する方法なども考える必要がある。

また、性行為に費やされるエネルギーは25~50cal程度(階段で1階から2階に上がる程度)であり、

エネルギーの消費がパフォーマンスに影響を及ぼすことは無いであろうとしている。

競技会前などでは不安や緊張などの影響もあることが考えられるので、

そうした不安を取り除いたりするのに性行為が好影響を与えることも考えられる。

(Chidley 1996; Pupiš et al. 2010)らのデータにもあるように、

近年では性行為を我慢することの方が悪影響であると考える人も多くなっている。

本研究のデータから言えることは、

研究数が少ないのと男性でのデータが多いこと、

十分な間隔(睡眠時間)を確保し競技前に行う性行為は悪影響を及ぼさないであろう、

ということが言える。



講習会で最も多くの質問をいただく点ですので(以前からも多くの質問は頂いております)、

最新のレビュー論文を眺めてみましたが、

これといって何かを言える感じはしませんが、

無理に我慢するのは良くないし、

前日で10時間ほどの時間があり睡眠が確保(性行為後の興奮が収まる時間も必要?)すれば、

特に大きな影響は無さそうかなと思います。

いくつかの論文の中であったように、

結局は行為の時間や姿勢などによって影響は違ってきますが、

こうした所を統一してデータを取ったものが何も無いので、

何というか曖昧な感じになっています。

取りあえず言えそうな事としては、

男性はしっかりと自慰なり性行為なりをしてストレスを溜めない方が、

ということですね。

女性に関してはデータがほとんど無いので、

何とも言えません。

ホルモンの変動などから何かが言えるかもしれませんが、

そうしたデータを取っていくのが今後の研究になるかと思われます。


無理の無い体位で、疲れを感じない時間でどうぞ

というのは言えそうですかね。

なお、未公開の個人的なデータ(男性のみ)で言いますと、

男性が言う翌日に残る疲労感は性行為の時間と姿勢が明らかに関係しています。

特に自慰行為における姿勢変化の無さは、気づいていない人が多いです。

PCやスマホで動画を探すという行為に集中しすぎて、

姿勢がずっと一定で緊張を保ち続けているというのが原因であろうと推測しています。

長い人では30~1時間程度は同じ姿勢を保持していたりするみたいですので、

座ったり寝たりしている時の姿勢にも気を配る、

床に座ると膝が曲がった状態になったままでダメージが蓄積するので、

ある程度は狙いを絞っておいて立った状態や椅子に座ってリラックスして、

という感じでやると疲労感も軽減されると導き出しております(未公開データですので)。

性行為そのものに悪影響があるということでは無さそうですので、

上手く利用できるように、というところですね。

女性に関してはデータが少ないので何とも言えませんが、

男性とほぼ同様かと思います。

2017年12月13日水曜日

日本スプリント学会第28回大会雑感、二日目

二日目の最初はシンポジウム2で

「多種目におけるスプリント能力の必要性と多種目によるスプリント能力向上の可能性」

というテーマで本田陽先生(中京大学)と大山卞圭吾先生(筑波大学)が登壇。

本田先生は10種競技の選手を例にして話をされ、

大山先生は砲丸投げを例として話をされました。

同じ動きをする部分はあるというのが両者に共通する点かと思います。

大山先生はメディシンボールを投げる練習での工夫を動画を用いて示されていました。

カラーコーンを上手く投げるというのは面白そうだな、と思いました。

特別講演2は森谷敏夫先生による「最新トレーニング科学」というテーマでしたが、

森谷先生はいつもながらの森谷先生でした。

初めて見た人は圧倒されたor頭のおかしな人が出てきた、

というどちらかの感想になるのかと思いますが、

陸上競技のみならずスポーツの指導というのは説明がつかないことをやらせていることが多い、

という点は認識すべきであろうと思います。

遅いスピードでやる練習になんか意味があるの?

何でその練習やってんの?

という森谷先生の煽りにしっかりと心の中で返せていれば良いかと思います。

運動生理学などをしっかりと学んでいない人にも分かるようなレベルになっていたかと思いますが、

ところどころは理解できないような内容もあったかと思います。

ただ、あの程度のことは知っておいて損は無いし、

あの程度を知らずに指導したり競技をするのは伸びしろを伸びしろのまま終わらせてしまうことになりますので、

何を言っていたのか分からないという場合は運動生理学をもっと学んでいただきたいと思います。

最新とはついていますが、実際には10年前頃から今に至るまで変わっていない、

そうした内容のものもありましたし。

”筋肉が増えただけではパフォーマンスは上がらない!!”

この点はしっかりと認識すべきでしょうね。

森谷先生が暴れた?後の講演は寺田新先生(東京大学)による、

「スポーツ栄養学における最近の知見」

という講演でしたが、時間が足りなくなったためにサプリメントの話が無くなりました。

残念。
 詳しい話に関しては著書を読んで頂くのが良いと思います。

スポーツ栄養学 科学の基礎から「なぜ?」にこたえる


午後の一般発表に関してはこの学会ではこんなもんだろうな、

という感じのものですので省略します。

一件、終わってからお話を聞かせて頂いた発表もありましたが、

現状の広く知られているスプリント理論が正しいという前提で果たして良いのか、

という点から質問をさせて頂きました。

とても楽しい話が出来ました。




そんなわけで二日目に関しては内容が薄い感じになりますが、

二日間の感想として思いましたこととしては、

筋肥大や筋力を向上させるためのトレーニングにおいて、

正しいフォームと呼ばれているもの以外でも効果的なやり方はある、

むしろあの正しいフォームはケガ予防には効果的かもしれないが、

世界で勝負できるような突き抜けた選手になるためには、

正しいとは言えないが筋肉に対してはとにかく効果的なやり方、

というのが必要かもしれないな、

となります。

感覚として良いことが必ずしも正しいわけではなく、

理屈として正しいことが全てにおいて正しいわけではなく。

その場に応じて最適な答えというのはあるのだと思いますが、

解明されていること、知っていることなど見る人によって異なるので、

本当にやるべきことというのは実践しているかどうかは不明なのだろうと思います。

素振りも本当に効果が出るのはエネルギーが減った所からと森谷先生は言っていましたが、
技術的な所とエネルギーの面から見た話はまた別ですし。

幅広い知識をもって多角的に物事を捉えて、

ベストな答えを導いていくのが大事だという当たり前のことを再認識させて頂きました。

まだまだ知らないことはたくさんありますので、

引き続き勉強していこうと思います。

2017年12月10日日曜日

日本スプリント学会第28回大会雑感、初日

2017年12月9(土)~10(日)の日程において、

三重県の皇學館大学を会場として行われましたスプリント学会へ参加しての感想です。

初日の最初はシンポジウム1として高野進先生(東海大)と、

河野匡監督(大塚製薬陸上部)が「リレー、駅伝はこの力を伸ばしているのか?」

というテーマでの講演をされました。

 高野先生はリレーの強化によって選手個人が他者と交流するようになり、

心理的要因・技術的要因・戦略的要因に好影響を与えたという話。

しかし、4×100mリレーに関しては良い影響を与えているが、

4×400mリレーには影響が無く、

現状の選手のポテンシャルのままでは期待できないとバッサリ。

河野監督は日本陸連の強化委員会としての立場もありますが、

まずは大塚製薬の陸上部に関する話をされ、

教育ということを大事にしている、というのを図示されていました。

その後、長距離の現状という話になり、

世界記録に対して90%達成率の選手は多いが、93%になると激減し、

95%になるとほぼいないというデータを出され、

箱根駅伝により一定の層は厚いが世界と戦えるレベルがいない、

ということを示されていました。

マラソングランドチャンピンシップのシステムやオリンピックの選考の話、

今後の方針として長距離の指導者におけるライセンス制度の導入や、

3000mを強化する方向性などの話がありました。

その他、現在の長距離の指導やシステムに対する厳しいお言葉が多数。

また、質疑応答で箱根駅伝に関するものが出ましたが、

高野先生から箱根駅伝の全国化という話は学連の会議などでは出ていないガセネタと、

というお話がありました。

午後は熊本水賴先生(京都大学名誉教授)による二関節筋のお話から。

二関節筋の基本的な説明を丁寧にされながらの話で、

走っている時の姿勢、角度が少し違うだけで筋肉の力発揮が大きく変わるという点や、

主動筋と拮抗筋という言葉が使われるが、

これは昔からの用語として使われていて、そのように教えていることに問題があるが、

拮抗筋と呼ぶものも見る時によっては主動筋であるということを語られていました、

会場に人が一気に増えた記念講演では、

土江寛裕コーチ(東洋大)、柴田博之先生(洛南高等学校)が桐生祥秀選手(東洋大)に関する話をされ、

最後に三人が登壇をして質疑応答が行われました。

土江コーチは大学時代の練習のテーマやどのようなことをやったか、

という話をされていました。

コンセプトとしては”接地中の移動距離を大きくする”というものだそうです。

実際、これがストライドを大きくするにはとても大事ですので、

これを間違っていたら今年の結果は無かったのでは、

と個人的には思いました。

柴田先生は高校時代の桐生選手の話を当時の他の選手の話を交えつつ、

寝ている桐生選手に注意をして起こしつつ、

話を進められていきました。

興味深かった点としてましては、

”獲得と消失”
”プラスがあればマイナスもある”

”大きく変化をさせない”
”この練習をやっていけばこうなるだろう”

というものがあります。

練習をやったことで必ずプラスが積み重なるわけではないという、

意外と忘れがちな点をしっかりと認識させて、

病院などと連携してデータを取って、

故障をしていなくても予防のために故障として扱うなどといったものがありました。

質疑応答では桐生選手の高校時代のウォーミングアップについて聞かれ、

”私が見に行くと選手が私に見せるためのアップをするのでほとんど見ないから知らない”

と答えていました。

”「チラッと見た時もあるがやっていた記憶が無い。お前やってた?」”
”「ほぼやってません」”

というやり取りもありました。

アップに関しては土江コーチからはやらせ過ぎて失敗したので今は見守る、

というコメントがありました。

高校から大学へと移行する過程でやりたいことが出来た、

様々なことがあり多くの人に世話になるなかで上手く流れがつながった、

というのが結果につながったのかなと思いました。

招待講演1の小田俊明先生(兵庫教育大学) は、

「筋腱の力学的性質とランニングにおけるその重要性」

というテーマで中長距離のケニア人選手のデータから、

slackが少ないことで効率の良い力発揮をしているということを示し、

短距離や日本人ではどうかといった話をされました。

足関節の硬さと筋のstiffnessが高いことが競技力と相関がある、

と。

相関(決定係数)の説明も丁寧にされていたので、

とても分かりやすかったと思います。

柴田先生の話の中に”洛南高校の選手は足首が硬い子に強い子が多いが、

これが練習によるものなのか先天的なものなのかは分からない”

というものがありましたが、

足首が硬い方がパフォーマンスは高いというデータはあるということです。

トレーニングで硬くする方法もありますし、

そうした点を意識してやっていくのは大事ですね。

初日の最後は奥脇透先生(国立スポーツ科学センター)による

「疾走中に起こる肉離れについて」

というテーマでのお話でした。

どうして肉離れが起こるのかというのを解剖学的に見ていき、

肉離れというのは膜が離れているのが正しそう、

とのことでした。

重症となる肉離れが起こりやすいのはバトンパスやフィニッシュの姿勢であり、

その他にもねじる動作があったりすると起こりやすいが、

完全に予防するのは難しい、

膜がしっかりと元に戻ったことを確認してから競技に復帰して再発を防ぐ、

鍛える動作を変えるなどやれば、とのことでした。

2017年11月2日木曜日

タバコの煙による悪影響は運動によって低下させることができる

Exercise training reverses inflammation and muscle wasting after tobacco smoke exposure

http://ajpregu.physiology.org/content/early/2017/10/25/ajpregu.00316.2017
















2017年10月25日水曜日

筋原線維のタンパク質合成はレジスタンストレーニング後24時間続く

Enhanced Amino Acid Sensitivity of Myofibrillar Protein Synthesis Persists for up to 24 h after Resistance Exercise in Young Men


https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21289204

J Nutr. 2011 Apr 1;141(4):568-73. doi: 10.3945/jn.110.135038. Epub 2011 Feb 2.

Burd NA, West DW, Moore DR, Atherton PJ, Staples AW, Prior T, Tang JE, Rennie MJ, Baker SK, Phillips SM.

運動後の筋肉の合成は1~4時間程度に関して多くの研究がされている(1~5)。

また、レジスタンストレーニングにおける合成も多く研究されている。

一方で、24時間での合成などに関しては不明な点も多い。

高齢者ではインスリンによる影響で20時間に渡って合成が高まると言われる(9)。

この論文の著者らは(10)や(11)において筋肉の合成効果は強度ではなく収縮活動の量に応じることを明らかにした。

しかし、強度や量がどの程度で刺激となるかは不明のままである。

この論文における研究は通常時とレジスタンストレーニング後の筋肉の合成の違いを調べた。

被験者は15人の活動的な若い男性、BMIは24。

実験プロトコルは(10) で用いたものを使用。

(10)
Low-Load High Volume Resistance Exercise Stimulates Muscle Protein Synthesis More Than High-Load Low Volume Resistance Exercise in Young Menhttp://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0012033

1RMの90%を持続出来なくなるまで(90FAIL)
1RMの30%で仕事量を90FAILと同じにしたもの(30WM)
1RMの30%を持続出来なくなるまで(30FAIL)

結果

筋原線維のタンパク質合成速度(FSR)は90FAILと30FAILにおいて、

レジスタンストレーニング後24~27時間でコントロール群より有意に高かった。

Akt on Ser473の変化は90FAILにおいて有意に高かった。

mTOR on Ser2448の変化は30FAILにおいて有意に高かった。

4E-BP1 on Thr37/46はどの群においてもレジスタンストレーニング後群が有意に高かった。

p70S6K on Thr389はどの群でも差が見られなかった。

考察

既に運動とタンパク質の摂取によって24時間のタンパク質合成の上昇は確認されており、

今回の結果は 驚くものでは無かった。

タンパク質の合成を高めるには速筋の動員が重要であると推測される。

速筋が動員された後、筋線維の動員が速筋、遅筋ともに行われることで、

24時間後のタンパク質合成を高めると考えられる。

このことから負荷に関しては質と量が大事であろうと推測される。

しかし、どういったものが最適なのかは今回の実験からは不明のままである。


Free


2011年の論文ですが、量と質の両方が筋肥大の刺激となりますよ、

という話ですね。

負荷というものが質と量の両面で考えるものというのが理解できていないと、

説明する際に勘違いして理解されそうな話でもあります。

仕事量を90FAILと同じにした30WMでは筋肉の合成が大きくないという点は大事ですね。

軽いのでやる場合は徹底的にしっかりとやる。

疲れて動かないという状態までやるのが必要である、ということで。

あとは24時間もトレーニング効果の残存がある点から、

タンパク質の摂取はそうしたところも意識してするべき、

となるかと思います。

2017年10月10日火曜日

第30回トレーニング科学会雑感

2017年10月7日(土)と8日(日)に日本体育大学世田谷キャンパスにおいて、

第30回トレーニング科学会が開催されました。

第31回は来年の10月末の土日に東海学園大学の三好キャンパスで開催予定とのことです。

告知は先に済ませまして参加しての感想を。

初日の最初のシンポジウムは「オリンピックとトレーニング科学」というテーマ。

JISSが何をやっているのかといういつもながらの話から始まり、

二つ目は高橋英幸先生によるMRIやMRSを用いた筋コンディション評価という話。

https://research-er.jp/researchers/view/105615
こんな研究をされています。

出典のジャーナルがスライドに提示されなかったので、

JISSの年報にでも載っているかと思います。

http://www.jpnsport.go.jp/jiss/gaiyou/jigyou/houkoku/tabid/260/Default.aspx

筋グリコーゲンの回復は翌日では不十分、

3日で体重を1kg落とした例では筋グリコーゲンも30%減っていたとの話が。

1kg落としたらパフォーマンスは当然落ちるという話ですね。

トレーニング後の回復も大事ですけど、

体重を落としたらグリコーゲンは減る。

その後はバドミントンとカヌーのご紹介。

データを積み重ねていくことでトップ選手がこの年齢だった時にはこのくらいだった、

という比較ができるといった話を東京とカヌー協会理事の藤野強さんの話でありました。

指標としてデータを残しておくというのは大事ですね。

初日のポスター発表は思った点をいくつか。

1-01ウエイトトレーニングとプライオメトリックトレーニングの組み合わせ順序
    プライオメトリックによる出力が刺激となってウエイトトレーニングに効果が出るだけでは?
    (プライオをアップの段階で取り入れるのはどの種目でも効果的とは言えそうです)

1-04高回数・低強度レジスタンストレーニング実施直後の筋浮腫~~
    高回数・低強度レジスタンストレーニングにより生じる筋浮腫が筋力向上を妨げると
    結論付けていたが、高強度を一度も入れない高回数では出力が高まらず、
    筋力が向上しないというのは先行研究で言われているのに筋浮腫の話にしているので、
    実験プロトコルから見直した方が良いと思いました。

1-07低酸素環境下スロートレーニングの生理的応答
    スローと聞いた瞬間に石井先生のところと推測されてしまうわけですが、
    スロトレに低酸素でさらなる低酸素状況を筋内に作り出して筋活動を高めるとのこと。
    高地トレーニングとかの話を考える今日この頃な私にとっては示唆に富む内容でした。

1-13野球の打者における下肢および体幹部の筋横断面積~~
    下肢と体幹部の筋横断面積の総和とスイングスピードには有意な相関関係があった、と。
    野球選手もサポートしているので野球関連は興味深く見させて頂きました。
    何も考えずに走ったりするよりは、うまくウエイトなどで筋肥大をしていく方が、
    効率よく鍛えることが可能というのは当然ですかね。
    野球は走塁技術も必要な種目ですので、走ることも大事ですがそこの分離はあっても良い
    でしょう。野球関係者からのお話、お待ちしております(広告・宣伝です)

1-16女子大学生における痩身・肥満の現状
    女子大学生は隠れ肥満を指摘される一方でサルコペニアの基準を下回る報告もあり、
    調査してみた結果として隠れ肥満よりもプレサルコペニアの学生の方が多かった、と。
    サルコペニアは高齢者の筋肉減少のことです。女子大学生は高齢者並みに筋肉が少ない。
    筋トレしましょう。しっかり食べましょう。特にたんぱく質を、ということですね。
    痩せたい気持ちは分かるけど、カロリーを無理に減らしタンパク質を減らしたその身体は、
    高齢者並みのスッカスカの身体になってますよ、と。

1-17スプリント加速期の接地時間とその割合
    ジュニア選手での年齢変化に加えて速い選手と遅い選手で比較したものです。
    接地時間が短くて1歩における接地時間も短い、脚の回転が速い選手が走るのが速い、
    という結果のようです。いかに素早く脚を回転させられるかが速く走るためには大事、
    という当たり前の話ではあります。遅い選手はやはり力を加えようとしてしまうんでしょうね。
    サッカー関係者からのお話、お待ちしております(広告・宣伝です。その2)

1-18高校生男子1kmタイムトライアル優勝経験者の体力特性
    今年は競輪選手との交流もありまして、タイムトライアルとの違いを説明して頂きました。
    自転車競技の1kmTTはとにかく最初の立ち上がりが重要であり、
    最後まで全力で漕いでもそんなに減速しないそうです。
    ということでどうやって最初の立ち上げを速くするかの勝負であり、
    下肢骨格筋のサイズが大きくて筋力・パワーが高いことが大事、と。
    上手くウエイトトレーニングを導入することで、違いを出せそうな気がしました。
    競輪関係者からのお話、お待ちしております(広告・宣伝です。その3)

1-23短距離走選手における足関節底屈柔軟性とスプリントパフォーマンスの関係
    ストレッチ実施直後の柔軟性の増加がスプリントパフォーマンスを下げると指摘されるので、
    足関節の柔軟性も関係しそうだから調べてみたというのは悪くないですが、
    ストレッチ後の柔軟性の増加がそもそもにどうして起こるのか、という点を理解しないで、
    硬いのが良いと言える結果が出そうだから調べたら相関は低かった、
    となってしまった感じがとてもしました。
    走るという点に関しては技術的な要素も絡むので、短絡的にここが硬いから速いんだ、
    という都合の良い結果は出てこないと思います。
    ランニングフォームの良し悪しを定量化するというのが出来ないと、
    この辺りはどうにもデータとしては使えない気がします。

その他にもいろいろとございましたが、疲れてきたのでここまでとさせて頂きます。

二日目のシンポジウムで河森さんがお話されていたように、

このデータを見て俺はこう思うけど、という解釈の違いは同じ数値を見ても出てきます。

先行研究をどれだけ知っているか、似たような事例をどれだけ知っているかなど、

様々な要因で見方が異なり導かれる答えも違うと思います。

ですので、この発表にあったことを都合の良いようにだけ使わず、

いやでもこういう解釈も出来るし、ひょっとしたらこういう先行研究と組み合わせると、

という感じで考えがつながっていくとよいと思います、

そのためには多くの知識を身に着けるしかないわけですが...


初日の午後は性差を考慮したトレーニング科学というシンポジウムでした。

女性はテストステロンが男性に比べるととても低いことから、

前駆体であるDHEA(デヒドロピアンドロステロン)に注目して、

という専修大学スポーツ研究所の相澤勝治先生の話に始まり、

JISSの中村真理子先生の性差を考慮したコンディション評価、

日体大の岡本孝信先生の運動トレーニングにおける動脈進展性の性差という3題でした。

卵胞期と黄体期ではいろいろと違いが出てくるということを考慮して、

トレーニングなどをやっていくのが大事ということですね。

この辺りの話もここ数年で何度も聞いておりますが、

現場の指導者や選手自身がもっと学ばないことにはどうしようもないと思います。

どうにかして啓蒙活動をする必要がありますね。

保健体育の教科書あたりが狙い目かと思いますが...


その後の企業プレゼンでは缶ビールのご提供を受けまして、

ビールを飲みながら出展企業様の商品を眺めさせて頂きました。

欲しい、魅力的となるものもありますが、お値段を一切言わないものですので、

お高いんでしょう~~?

と思うだけで終わってしまいますね。

なお、twitterにも画像を載せましたように、

H+Bライフサイエンス社様より粉飴を頂きました。
 http://www.hb-life.jp/

参加費用が粉飴で返ってきたということですね。

懇親会ではバイオメカニクス会の重鎮であります阿江先生にじっくりとお話を聞かせて頂きました。

翌日に開催しました交流会で話を盛り込ませて頂きましたが、

バイオメカニクスはどうやって使うかが大事ですので。

阿江先生には長年の経験から考える部分の話も聞かせて頂きまして、

興味深い話が多くありました。

懇親会の参加費がとても安くなった感じですね。

二日目の最初はパラリンピックとトレーニング科学というお題でしたが、

このパラリンピック関連の話は東京での開催が決まって以降、

一体何度目だというくらいに聞き飽きた話でしたし、

JISSの人たちの出してきたデータや画像も見飽きたものでした。

あちこちの学会でネタ被りが多発するようになっています。

オリンピックとパラリンピック関係はもう既に飽和したと思いますので、

御一考くださいと思いました。

初めて見る人も多いとは思いますけど、

ネタが被りすぎですね。今年だけでも3回は同じのを見ました。

最後の山本篤選手の実体験からの話は面白かったですが、

抄録集に載っている、

「1度の実験だけでは結果は見えても方法論は見えてこなく、考察はただの妄想でしかない」

という言葉に凝縮されている気がします。

5度の実験と8年の歳月によって分かったと書かれていますが、

話の中で出てきたデータなども解釈する人によって異なるだろうし、

もっとこうした方が良いのでは、という多くの意見が出そうな気がしまして、

その中でどうやって自分で取捨選択をしてきたのか、後悔は無いのかな、

ということを思いました。

障がい者だから健常者と同じ/異なった動作にすることが本当に良いのか、

という判断はとても難しい気がします。

昼のランチョンセミナーは筑波大学の征矢英昭先生による
「スポーツにおける中枢疲労問題に迫る
メタボロミクスの導入;脳グリコーゲン代謝やストレスホルモン蓄積に関連して」

という題でのお話でした。

長時間の運動における脳の疲労、脳グリコーゲンの減少といった話とその生理的意義について、

いつもながらの圧倒的な情報量でのお話でした。

マラソンでのトレーニングについてあれこれとやっているところですが、
(陸上競技関係者からのお話、お待ちしております)(広告・宣伝です。その4)

 以前に聞いた征矢先生の話もかなりベースになっておりまして、

2時間切りプロジェクトなんかも多分この辺の話をちゃんと入手してやっているはずです。

それ故の給水方法だと思われますし。

お話の中では運動によって脳内でケトンが増え、乳酸が増え、

これらを脳が取り込んで使っているというものがあり、

乳酸の利用をすることが非常に大事であるということを述べられていました。

脳に関しては運動すればケトン体が出るみたいですが、

ケトジェニックな食事をしていたら乳酸が出にくくなりますので、

しっかりと糖質を摂取した食事をするのが大事そうだな(粉飴もらったな)と思いました。

結局のところ、トレーニング効果はいかに代謝物質を作り出すかという点も大事ですので、

いろいろな物質を作れるように食事などはアレコレと食べておく必要がありそうだ、

と。

後半の駅伝選手に関しての毛髪での測定は、思うところが多々あり、

今後の別のサンプルでの結果に期待と思いました。

二日目の午前に行われたポスターに関しても数点。

2-09陸上長距離選手を対象としたレジスタンストレーニングの効果
   負荷が60%1RMを10rep×3setとか意味が分からないです。
   クロカンを走れば掛かってしまう負荷レベルであり、設定からして謎です。
   日本の長距離の人たちはウエイトといったら1RMの60%という妄想から、
   いつになったら抜け出してくれるのでしょうか。必要なのは80~100%といった負荷ですよ。

2-11短距離走選手における大腿四頭筋内個別占有率とスプリントパフォーマンスの関連
   フォームの要素とか排除しきれないので何とも言えません。
   どうしてこうなったのかという推測が全く無く、とりあえず実験しました感しかないです。
   短距離選手と一般の人を比較した中で、過去にトレーニングをした一般人がいたのか、
   という点を聞き忘れました。
   これはよくある話でして、トレーニングを今していなくても過去にしていた場合では、
   かなり異なった結果をもたらす場合がありますので。
   
2-32アキレス腱長はスプリントパフォーマンスに影響するか
   ポスターの結論が影響しないという断言したもので、とてもチャレンジ精神に溢れていました。
   弾性その他を見ないで腱長だけで断言できる精神は若さですね。
   付着部や筋との関係など見る要素は多々あると思いますので、
   もっとしっかりやったら全く別の結果になるのではないかと思います。
   速い選手は基本的にアキレス腱がクッキリとしていますし、
   全く関係ないということは無いと思いますので...

2-41中強度有酸素性運動後の動脈機能の変化
   水中での運動後の方が血流依存性血管拡張反応が高かったということで、
   たまにプールで運動するようなトレーニングを入れて血管の機能を良くするのはありかな、
   と思いました。


その他、多くの発表がありました。来年の学会も多くの発表がなされることを期待しております。
質問、ツッコミを恐れずにしっかりと準備して全てのことを打ち返せるようにご用意ください...

そして二日目の最後のシンポジウム4が、

「これからのトレーニング現場で求められる人材」

という題で河森直紀先生(フリーランス)、熊野陽人先生(東海大学)、藤田善也先生(早稲田大学)の三人が登壇されました。

学会という場においては河森さんのフリーランスという肩書が光ってましたね。

内容に関してまして河森さんの研究者マインドを持つ指導者が求められるという話で、

論文の筆者の結論と自分の解釈は違っても良いはずだし、

そうした異なるような解釈を出来る知識が必要だといった感じの話には共感できました。

論文に書いてあることを鵜呑みにしていてはダメですよ、

というのはよく思います。

先行研究で既にあるのに知らない筆者であれば内容のレベルは少し落ちたりしますし。

少し疑った視点で見るのは大事だと思います。

あとは選手が求めるのならば少しくらいトレーニング効果が低くても、

しっかりとやれるものを提供するのが大事、という点も現場では必要な話だと思います。

理想的なトレーニングはとてもキツイものだったりして、

やりたくない、モチベーションが上がらないということはよく経験しますし。

なお、この練習をやった後に刷り込まれたツライ練習という感覚をどのように取り除くか、

という話は夏場に開催されました運動生理学会で大学院時代の先輩や先生に話を聞き、

二人とも同じ答えでした。

食事などで楽しんで忘れる。

これでした。キツイ運動の後にストイックな食事はツラさが増してしまうだけになりかねないので、

その辺りもうまくコントロール出来ると良いと思います。



そんなわけで長々と雑感を書いてきましたが、

私の個人的に思ったことなどですので意見の相違などはあるかと思いますが、

伝われば良いと思います点は、

「お仕事の依頼お待ちしています」

ですので、よろしくお願い致します。


真面目な点も入れておきますと、

今回は大学生などの若い人と一緒に参加しまして解説などをしながら見ましたが、

他人に話を聞くというのが最も速く理解する方法だと思いますので、

ポスター発表などでは分からない点は話を聞くのが良いと思います。

分からないので教えてくださいとやっていれば、

ポスター発表している側も重鎮の先生が「不勉強なので教えてください」、

という恐ろしいツッコミを入れてくるのを防ぐことも出来ますので...

それでも分からなかった点はネットや本で調べれば、

なるほどこれがあれでこれがあれか、

となると思いますし。

私も征矢先生の話を聞いていて、

やはりフルクトース-1,6-ビスリン酸は大事だよね、

と思いましたし。

興味を持って情報を集めていると、

突如としてすべてがつながることもよくありますから。

分からないからこそ参加する、そういった気軽な感じで良いと思います。

特にトレーニング科学会は現場を意識した学会ですので。

まぁでも現場のことはあんまり分かってないんだろうなぁ、

という話なんかも多々ありましたけど。

そうした点も自分でデータの使い方などを理解すれば選手としてさらに成長できるのでは、

と思います。

そうした論文を読んだりデータを見ての解釈の仕方などを教えてくれるのが、

大学や大学院だと思いますので、まだその辺りの若手の皆様は、

しっかりと勉強して頂ければと思います。

そうした点を理解するにはどうしたら良いか、

どうやって学べば良いのかといったことをの紹介も出来る場を作れればな、

と思います(来年度のカンファレンスでそんなテーマを提案してみたいところです)。

かなり長くなりましたが、

何か役立つことがございましたら幸いです。

2017年9月13日水曜日

サッカーのエリート選手におけるスプリントと高い速度でのランニングの調査

High Speed Running and Sprinting Profiles of Elite Soccer Players.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28828087 

J Hum Kinet. 2017 Aug 1;58:169-176. doi: 10.1515/hukin-2017-0086. eCollection 2017 Sep.

Miñano-Espin J, Casáis L, Lago-Peñas C, Gómez-Ruano MÁ.



Rampininiら(2007)年の研究によると、

サッカーの試合における仕事率は対戦相手の活動量に影響されることが分かっている。

走行距離の合計とその中での高負荷の走行距離は対戦相手が良いチームであると多くなる。

Bloomfield(2005)やLagoら(2010)では対戦相手の質が低いと走行距離が減ることを示している。

このことから、チームの質が高くなると選手の走行距離が減るということが考えられる。

しかし、チームの質が走行距離に影響を与えるかという研究は無いので、

2001-2002シーズンと2006-2007シーズンのレアルマドリードのデータを使って調べてみた。

スペインリーグの1~5位をとても強いチーム、6~10位を強いチーム、

11~15位を中間、16~20位を弱いチームとした。

この期間はリーグ戦、カップ戦、チャンピオンズリーグで94勝21分26敗であった。

時速24㎞より速いものをスプリント、時速21.1~24.0kmを高負荷の走行とした。

結果、レアルマドリードの選手はスプリントも高負荷での走行も相手チームと比較して少なかった。

これはスコアが優位な時には運動量が減るということが明らかになっていることからも分かるが、

先制点を取るとボールの保持が高まって運動量が減少し、走行速度も下がる。

一方で、失点すると勝つために得点をしようと運動量は高まる。

しかし、これは強豪であるレアルマドリードにおいては多く見られない。


試合の戦術を調査したJamesら(2002) や Lago and Martin (2007)では、

チームが負けている時の方が勝っている時よりもボール保持が多いことを示している。

勝っている時はポゼッションを減らしてカウンターやダイレクトプレーを行う

負けている時はゲームをコントロールしようとしてボールポゼッションが増えていく。


走りのパフォーマンスに関して、レアルマドリードは対戦相手による変化は見られなかった。

これは自分たちが試合においてパターンをキープしていたことが考えられる。

この辺りは他のチームを調べると結果は異なっているが、

それは戦略や選手の特性、予算、クラブ哲学などが異なるためであろう。

文献調査の中で明確だった点はサイドバックとサイドハーフが高負荷での距離をカバーしていたことである。

この研究では血液などのデータを見ていない。

シーズンによってどのように変化するかといった点も今後の課題として残る。

(FREE)


サッカーにおいては強いチームほど走らなくなるという傾向があるけれども、

レアルマドリードはどんな相手でも走っている。

それは勝つためのパターン、

戦術が明確であるからということが言えそうなデータがあるということですね

選手の能力などによっても変化するが、

常に同じようなパフォーマンスが発揮される能力の高い選手が集まっているからできることかもしれません。

ポゼッションが少ないから負けたという分析を目にすることも多いですが、

実際には勝っていると相手にボールを持たせて、カウンターから二点目を狙いにいく、

となるようですね。

こうした点を知ってトップ選手の試合を見て戦術を考えるというのは大事かもしれません。

2017年9月8日金曜日

USADAによる”こんなサプリメントはダメだと思え”

アメリカのアンチドーピング機関であるUSADAのSupplement 411に載っています、

これを見たら危ないサプリメントだと考えろ、

というものを簡単に。

https://www.usada.org/substances/supplement-411/recognize-risk-when-see-it/

411はアメリカでの電話による案内サービスですね。

URLを”それを見たら危険性を思い出せ”、なんてしているくらいですからね。




1. Avoid supplements that list prohibited substances on their label.
 ※禁止物質がラベルに書いてあるサプリメントは避ける。
   禁止物質は別の呼び方でも表記されていることもあるので、しっかり確認する。
   (メチルヘキサンアミンはジメチルアミン;DMAAなどとも呼ばれる)

2. Avoid products made by any company that sells products containing substances prohibited in sport.
 ※会社が売っている商品に禁止物質が含まれている場合、その会社の商品は避ける。
   使おうと思う商品そのものには禁止物質が入っていなくても、
   誤って混入するリスクが生じるので、その会社の商品を避ける。


3. Avoid muscle-building, weight-loss, sexual enhancement, and “energy” supplements.
 ※筋肉増強、体重減少、精力向上、エネルギーと書かれるサプリメントは避ける。
   これらが書いてあるサプリメントには、
   未承認の物質や、その他の物質が含まれている可能性が高い。

4. Watch out for companies that market products in any of the above categories.
 ※3の商品を販売している会社の商品には注意する
   2と同じく禁止物質が使われていて、混入する恐れがある
 
5. Watch out for ingredients ending in -ol – diol or –stene, or ingredients that contain a lot of numbers.








 ※~olや~diolまたは~steneで単語が終わる、または多くの数字を含む成分には注意する
   一部のSupplement会社は独創的に見せるために曖昧な名前で成分表を列記しているかも。
   
6. Avoid supplements that claim to treat or prevent a disease.
 ※病気を治療するなどと書いているものは避ける




7. Watch out for claims like “newest scientific breakthrough” or statements like “secret formula,” “money back guarantee,” “quick fix,” “used for thousands of years,” or “what the experts don’t want you to know”, or the use of impressive sounding scientific jargon.
 ※最新の科学による発見や秘密の配合、返金保証など強い印象を与えるものは避ける


8. Watch out for claims that a product is an “alternative to prescription medication.”

9. Be very skeptical of “clinical studies” or advertisements with lots of images of doctors, etc.
 ※医者などの画像による公告が多いものは避ける
   サプリメントの有効性を示す研究の多くは貧弱な管理で、科学的では無い形で実施される。
   企業は独自に実施した研究に対して、他の専門家による評価をさせないことがある。
   
10. Watch out for herbals, and the term “all natural.”
 ※全て自然の成分と書いてあるものは注意する

   天然の成分が安全であるとは限らない。
   天然のハーブから合成した成分を作り出すことが傾向として見られる。
   メチルヘキサンアミンを含有する場合、ゼラニウムオイルと書いてあることが多い。

11. Avoid complicated products with tons of ingredients or ingredients that you don’t recognize.
 ※多くの成分が含まれていて複雑になっているものは避ける。
   より多くの成分が含まれると製造中に禁止物質などが混合するリスクが高まる

12. Beware of products that have not been tested by a qualified third-party.

13. Beware of “Proprietary Blends.”
 ※独自の配合に注意する



   独自の配合の場合は合計量だけを示せば良いのでここの成分の量が不明になる。
   高価な成分をごく微量に配合して商品の価格を高くしたりする

14. Beware of products that have a lot of adverse events associated with them.



全文は元のリンク先にありますので、そちらを読んで頂くのが良いと思います。


アスリートにとって禁止物質の摂取というのは大きな問題になりますが、

まずは禁止物質が検出された商品は摂取しない、

禁止物質が検出された商品を製造している会社の商品は摂取しない、

そうした商品を広告・販売しているサイトは情報不足の可能性があるので注意する、

というのが基本ですね。

ここを怠った場合、 もし商品が汚染されていて検査で違反となった際、

注意不足として資格停止期間が長くなってしまうことが先例から考えられます。

2017年9月3日日曜日

毒素の排出と体重コントロールに”デトックス”は効くのか?

Detox diets for toxin elimination and weight management: A critical review of the evidence


https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25522674




J Hum Nutr Diet. 2015 Dec;28(6):675-86. doi: 10.1111/jhn.12286. Epub 2014 Dec 18.

Klein AV, Kiat H


デトックスという用語は広まっており多くの人に認知されているが、



そもそもに毒素という言葉の定義が曖昧であり、

科学的なデータはほとんど無い。

臨床的に検査が行われた唯一のものはPCBsに暴露した消防士のデータであり、

対照群は置かれていない。

これと同様の手順で実験をしたサイエントロジーは血圧やコレステロールなどに有意な改善を見出した。

デトックスという言葉、すなわち”毒素”とは何かを考えてみる。

毒素と言うと工場などから排出される有害な物質などが思い浮かべられるだろうが、

そうした人体に明確な悪影響がある物質は厳しく規制されている。

もちろん、日常的に摂取している食品などに有毒な物質が含まれている事実はある。

ヒ素に代表されるような金属などを微量に摂取している。

これらは体内において排除するシステムがある。

もちろん、体内から容易には排除されない物質もあり、

脂肪組織はこれらを溜め込みやすい(鉛は20~30年が半減期)。

近年は食品にこれらの金属を取り除く機能があると考えられ、

ラットや魚でいくつかの研究が行われている。

人体においての研究が行われていないものでは、

これらが人間において効果があるかは不明である。


また、人体において行われている実験の中でも問題となるものが、

食品の摂取による蓄積された物質の移動が生じることである。

量が減ったとされても、

それが脳などに移動しているだけの例が確認されている。

興味深いデータとしてはスナック菓子の製造などにおいて使われるolestraが、

人体からPCBの排除を行うといったものがある。

体重減少に対するデトックスの効果を科学的に検証したものは無い。

そこで食事などの研究から推測すると、

デトックスに効くとされる食事はタンパク質の不足によってストレスを引き起こし、

コルチゾールが高められることで食欲が刺激される。

短期的には我慢によって体重減少が期待できるかもしれないが、

長期的には疑問が残る。



結論;デトックスに効果は無い


長々と多くの論文を引用しながらレビューをしていますが、

abstractで結論を出していました。

デトックスに効果があると企業は言っているけれども”毒素”の定義は曖昧であり、

科学的な説明は無い。

インターネットで言葉は普及しており様々な方法が宣伝されているが、

それらの中には健康を害するものも確認されており、

実際に被害も出ている、と。

明確にデータを出そうとしたのがサイエントロジーというのも、何ともまた...

体重を減らすためにやってる行為がストレスを与えて逆に食欲を高め、

太らせる可能性があるというオチもついていますし、

無理をするのは良くないということですね。


デトックス、効果なし

2017年9月1日金曜日

継続して行うストレッチは筋腱の機械的な性質を変化させるか?

Can chronic stretching change the muscle-tendon mechanical properties? A review



http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/sms.12957/abstract



Scand J Med Sci Sports. Accepted manuscript online:


Freitas, S. R., Mendes, B., Le Sant, G., Andrade, R. J., Nordez, A. and Milanovic, Z.
Scand J Med Sci Sports. Accepted Author Manuscript. doi:10.1111/sms.12957


レジスタンストレーニングは筋の肥大や筋束の長さ、羽状角の変化などを引き起こして、


筋腱複合体の性質を変化させることは知られている。



これらの変化はケガの発生などにも影響を与えることが知られているが、


ストレッチによる変化の研究はほとんどない。


継続してストレッチを実施することで関節可動域が広くなることは知られている。

これらの変化に関しては二つの考えが提案されており、

一つは筋腱が伸ばされることによる耐性がつくこと、

もう一つは筋の長さや弾性が弱まるといった機能的な変化である。

2~8週間の短期間で実施された研究結果を見ると、

その結果は異なっている。

そこにはストレッチのやり方や介入期間、強度といったことが影響している。

2016年8月までに出された論文からそうしたストレッチの研究を分析したレビュー。

26の論文が抽出され、平均して5.1週間の介入が行われている(3~8週間の範囲)。

1週間あたり1165秒が平均して行われた(270~3150秒の範囲)。

結果からして、

この短期間の介入では筋腱複合体の機能的な変化は起こらないと推測される。

レジスタンストレーニングなどを行った際にも初期は神経系の適応が起こることと同様である。

論文の多くで強度についての設定が不明確になっている。

この強度設定が高くてrestが短いなどの場合、変化は観測されるかもしれない。






また、最近の研究では筋膜と末梢神経が関節可動域の制限に影響を与えると指摘している。

Non-Muscular Structures Can Limit the Maximal Joint Range of Motion during Stretching.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28255938

さらに股関節と頭の位置は足首の関節可動域に影響を与えるというものや、

Effects of hip and head position on ankle range of motion, ankle passive torque, and passive gastrocnemius tension.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25676048

坐骨神経は足首や膝の位置によって影響を受ける
Non-invasive assessment of sciatic nerve stiffness during human ankle motion using ultrasound shear wave elastography.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26725218

生体において腓腹筋の深部筋膜と骨盤の動きの関連
In vivo relationship between pelvis motion and deep fascia displacement of the medial gastrocnemius: anatomical and functional implications.

などなど、筋膜や神経での多くの新しい研究が出てきており、

今後大きく見直されていくことが考えられる。

また、ストレッチにおける評価の定量化が難しいことから結果にバラつきがあるが、

市橋らの研究ではせん断波エラストグラフィを用いて4週間の静的ストレッチによってハムストリングスの柔軟性の改善を報告している
The effects of a 4-week static stretching programme on the individual muscles comprising the hamstrings.
http://jspt.japanpt.or.jp/eibun/2017/1703_1.html
(リンク先は理学療法士協会のもので日本語の解説がありますので)

ように、様々な手法が登場している。

今回のレビューにおいては6~8週間でのストレッチによって、

筋腱の構造的な変化は観察されず、

感覚の変化が主に起こっていると言える。

しかし、研究データが少ないことから、

末梢神経や中枢神経が影響をしている可能性があると思われるが、

どうしてこのような感覚の変化が起こっているのかも不明確なままである。





ストレッチによって身体が柔らかくなると言われていますが、

2か月ほど毎日のように実施した結果として起こる変化は、

筋肉や腱が伸びるようになったのではなく身体が痛みに耐えられるようになることだ、

と現状では言えるようですね。

タイトルの答えつぃては変化させない、となります。

ただ、筋膜や神経など様々な要素も影響をしていると考えられるので、

今後の研究に期待、と。

むしろストレッチの根本的な所に関する研究って少ないんだなという印象すら受けました。

そんなわけで、

トレーニングしても筋肉が簡単に肥大しないのにストレッチで筋肉や腱の構造がそんな簡単に変わってたまるか、

というメッセージを受け取りました。

ただ、途中に挙げた例のように、ハムストリングスの弾性変化はケガの予防になりますので、

ストレッチはタイミングを考えて適度に実施するのは大事かと思います。

2017年8月25日金曜日

水分補給の歴史から学ぶ

紀要ではありますが、水分補給の歴史的な背景から書かれていましたので。

「運動時の水分補給に関する変遷ならびに日本における運動習慣のある若年成人の現状と課題」
https://tsukuba.repo.nii.ac.jp/?action=repository_uri&item_id=22506&file_id=17&file_no=1


時代の変化をご理解頂きたいと思いましてスライド化しました。

文字が多くて読みたくないとなるかもしれませんので7枚ほどにまとめました。

十分多いですかね…

夏の話という感じになりますが、



トレーニング中だけでなくトレーニング前にも水分補給が出来ているかの確認が必要である、

という点を理解をして頂ければ。




論文中に出てくるガイドブックなどのサイトは以下に示す通りです。

スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック
http://www.japan-sports.or.jp/publish/tabid/661/pdid/48/Default.aspx

熱中症環境保健マニュアル
http://www.wbgt.env.go.jp/heatillness_manual.php


Selecting and Effectively Using Hydration for Fitness
https://www.acsm.org/docs/brochures/selecting-and-effectively-using-hydration-for-fitness.pdf











スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック
http://www.japan-sports.or.jp/publish/tabid/661/pdid/48/Default.aspx

part4の21ぺージより

5~15℃に冷やした、飲みやすい組成、胃にたまりにくい組成および量

などがすすめられます。

冷たいものを摂取しましょう。

2017年8月20日日曜日

ドーピング問題はいつ誰に起こるか分からない

つい先日、昨年起こりました一件の仲裁結果が出されまして、

自転車選手によるドーピング問題が伝えられました。

詳細は公益財団法人日本スポーツ仲裁機構
JSAA-DP-2016-001

http://www.jsaa.jp/award/DP-2016-001.html

こちらに記載されていますので全文を読んで頂くのがベストかと思います。


本件を簡単にまとめますと

・サプリメントの表記に禁止物質が書いていなくても混入しているケースはある(国内、国外問わず)
・過去に使って安全だった商品が次回も安全とは限らない(製造ラインで混入する可能性がある)
・有名なメーカーでも混入することはある
・他人が使っていて検出されなかった商品でも信用はできない

・過去に禁止物質を混入させた会社の商品は危険なので避ける 
・大会前後で使用したサプリメントその他はドーピング検査の結果が出るまで保管。使い切らずに少し残しておく(過失・過誤の程度を証明するため)
・選手は自ら過失が少ないことを証明しないといけない(企業その他に責任があるということを証明)

などなどあります。
 
ザックリと見ていきます。

まず、2016年10月の国体で検査を実施した結果、

体内から禁止物質が検出され、10月末に暫定的に資格停止となった。

12月に4年間の資格停止となったことで、スポーツ仲裁機構に訴えた、

という事案です。


12月に申し立てをして2017年2月から仲裁機構が活動し、

4月にSMRTL(アメリカの調査機関)にサプリメントを送るも税関を通過できず、

5月中頃に到着し、6月頭には検査結果が出て、8月に仲裁の判断が出された、

という流れですね。

この中でサプリメントの検査をしたら禁止物質が出てきたという話です。

この辺りの話を見ていくと、

2015年に購入したANAVITE(GASPARINUTRITION.COM製)を使用している時は検査に引っかかったことが無い。

2016年に8月と9月に購入したANAVITEからは禁止物質が検出された、

となっています。

14種類のサプリメントを使用していたが、

今回問題となるのは競技会参加前に使っていたANAVITEから禁止物質が出た点です。

それ以外は競技会前には使用していなかったもようです。

なお、競技会後の検査では検出されていませんが、

使用していたQH-Absorb(Jarrow FORMULAS製)を検査したらオキサンドロロンが出たとなっています。

この点に関しては、競技会の時に摂取していたボトルとは別のものを検査機関に提出したとなっているので、

こちらも汚染疑われるという事態ですね…

さて、ANAVITEには禁止物質が含まれているような表記はありません。

そのため摂取しても大丈夫と考えたようですが、

同社の製品であるSP250で2015年末に禁止物質が出ています。

この点に対して日本アンチ・ドーピング機構(JADA)は調べ足りないと主張、指摘しています。

選手にミスが少ないほど資格停止期間は短くなりますが、

JADAの主張は本当にキツいです。


ところで、JADAの規定ってご存知ですか?


”2.1.1
禁止物質が体内に入らないようにすることは、各競技者が自ら取り組まなければならない責務である。自己の検体に禁止物質又はその代謝物若しくはマーカーが存在した場合には、競技者はその責任を負う。ゆえに、本第2.1項に基づくアンチ・ドーピング規則違反を証明するためには、競技者側に使用に関しての意図、過誤、過失又は使用を知っていたことが示される必要はない”

簡単に言えば、
体内から禁止物質(その代謝物質)が出たらアウト


となっています。

検査結果がおかしいということを主張するのは効果的ではありません。

この辺りはヤバい統計学という本でも書かれていた通りですね。

明らかに検出された場合は自信を持って摘発するが、

グレーなところの場合は見逃されていることが多い。

もし検査ミスだった場合には損害賠償や選手の信頼回復など、

失うものの方が大きいためです。

なので、検出されてクロと指摘された場合、何かから摂取してしまったと考えるしかありません。

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今回の案件では手元に残っていたサプリメントをアメリカの機関に送って検査した結果、

禁止物質が出たことからサプリメント(ANAVITE)が汚染されていたことが一要因と判断され、

資格停止期間が短縮されましたが、

ここから一つ覚えておかないといけないのは、

試合の一週間前から当日に摂取したサプリメントは覚えておく、手元に残しておく、

ということです。

全部使いきってしまって中身も無く容器も無くなっていたら、

自分に過失が無いことを明らかにすることが出来ません。

あまり意識したことが無い点かもしれませんが、

競技者は試合後も少し残しておくという習慣が無いとダメですね。

当日に摂取したものの一覧の中にモンスターエナジーがありますが、

これは検査対象外となっています。

多分、飲み干してそのまま捨ててしまったのだと思われますが、

ひょっとしたらこの中に入っていたかもしれないという可能性はあります。

JADAの考えだとサンプルを残していなかったのが過失になると思われます。

それだと食事なんかはどうしたら?食品が汚染されていたら、

と思う人もいるかと思いますが、

諦めるしかありません。

口の中に入れたものは全て自己責任での管理が必要です。

やはりサプリメントはダメだ、

という意見も散見されましたが、それは違います。

むしろ、食事の方が手元に残すことが無いので、

過失の有無を証明することが不可能になりますから救いようがありません。

こうなるともう何も食べられない、となってしまいますね。

ちなみに今回の検査には10点のサプリメントに対して60万円ほどかかっています(ほぼ全額が選手の負担)。

100%のドーピング違反を摘発するためには食事全てのチェックも必要になるので、

いかほどの金額が必要になるのか分からない、

となります。

100%のクリーンな状態が実現不可能だという話でもあります。

今回の案件では手元に残っていたサプリから検出されたので資格停止が短くなりましたが、

もし無かった場合は何も証明する方法が存在しないため、

4年間の資格停止になったと思われます。

まぁ不幸な一件という見方の方が適切かなという案件ですが、

これを書いていて「あぁこういう抜け道方法があるのか」というのに思い至りました。

真似される可能性があるので書きませんが、

ドーピング事案というのは本当に厄介なんだということがもっと理解されればな、

と思います。

過去にも同様の記事で書きましたけど、

他人からもらったものは食べられませんからね。

選手への差し入れで食べ物はやめてあげて下さい。

なお、今回検出されたからといってANAVITEが全てアウトというわけではなく、

この時期に同様の過程で製造されている商品を摂取した選手がいてもおかしくはありませんが、

もしいたとしても検出されていません。

競技に参加しない人が健康のために摂取している場合は問題ありません。

まぁそれなりの売れ行きの商品ですし、

その製造された日のこの容器だけ汚染されていた、

というのも考えにくい所ですね。

そうしたのもあるため、

過失が無くても処分はされるという形になってしまいます。

本当にクリーンな選手でも過去に傷がつくことになります。

そういうルールなので...

また、現在使用が認められているものでも、

著しくパフォーマンスを向上させる効果が認められた場合、

禁止物質に変更されます。

その辺りは過去に書いていますので、

https://tf-ver3.blogspot.jp/2017/03/blog-post_94.html

こちらを。

追記;選手はドーピングに引っかからないように気を付けており、

TSP承認プログラムやアンチドーピング品質管理プログラムなどがついているものを選び、

違反しないように気を付けていたと主張しています。

これに対してましてアンチ・ドーピング規律パネル(12月に処分を決定したところ)は、

TSP??禁止物質全てを調査していないと言ってるものを信じるとかバカなんじゃないの、

そんなので気を付けているとか言ってんの?は?(当然ながら意訳)

とぶった切っております。

また、14種類のサプリメントを摂取していたと選手が主張したのに対して、

3種類の検査だけをして検出されなかったから4年間の資格停止、

としている点は如何なものかな、

という気がします。

まぁ分析して出たとしても、体内から検出された事実は変わらないので、

安全じゃない製品を使った選手が悪いというのがJADAの立場ですので。

いやしかし、知れば知るほどドーピング関係の話というのは選手にとって不利な話しか無いと思えますね。

意図的にやった人は論外として、

意図的ではない人に対しての救いが無さすぎです。

2017年8月8日火曜日

第25回運動生理学会大会雑感

2017年7月29日(土)と30日(日)にかけまして、

横浜国立大学におきまして第25回運動生理学会が開催されました。

その振り返りを簡単に。

まずは田中英登大会長(横浜国立大学)による生活習慣と熱中症予防という講演。

開会のあいさつからの流れで横浜国立大学は横浜の街から微妙に遠く、

地下鉄の駅から歩くと夏場は汗だくになる距離である、

という自虐的なお話が強く記憶に残りました。

続く若手の口頭発表は抄録に記載の通りですね。
http://jsesp25.umin.jp/koutou.html(タイトルだけ)

A会場を見ていたのでB会場の方は分かりませんが、

ラットでのレジスタンス運動のセッション間は8時間だと筋肥大がしない、

というのがあります。

また、勃起不全が心血管疾患の発症と関連することから、

23~82歳の成人男性の運動能力(持久力と筋力)と勃起機能の関連を調べたというのは興味深いですね。

最高酸素摂取量と握力が勃起能スコア(IIEF5)と有意に関連することが示された、

とのことです。

Is Exercise good for the Brain?という題でのRomain Meesuse氏の国際招待講演は、

途中の細かな点で面白い話はありましたが、適度な運動は脳にとって良いけど、

やりすぎは良くないという当然の話にまとめられるかと思います。

初日の最後のシンポジウム1では2020年に向けた暑熱環境対策の現在というテーマで4題

「アスリートからの課題」田山寛豪(NTT東日本・西日本/流通経済大学)
「研究者からの最新研究紹介」長谷川博(広島大学)
「気象情報会社からのサポート例紹介」浅田佳津雄((株)ウェザーニューズ)
「オリンピックに向けたJISSでの取り組み」中村大輔(国立スポーツ科学センター)

田山さんのお話では過去のトライアスロンでの競技に関して大会に向けての練習などを振り返りつつ、

どうして失敗したのかを周囲の選手との暑熱対策の違いを取り上げて、

情報の少なさを挙げられていました。

外国の選手が冷やしているのに対して、冷やすことは良くないと教わったが、

より良い結果を残したのは外国の選手であったなどといった事例。

「選手は競技で結果を残すためには何でもやります」と言われておりましたが、

研究者の方々としてはどのような情報が欲しいのかを教えてもらわずに、

結果を残すための情報が出すことは難しいだろうな、と思いました。

科学的な見地からアドバイスしてくれる人を雇うのが効率よいと思います。
(お仕事の依頼お待ちしております)

長谷川先生による最新研究はエビデンスベースのお話でした。

共同研究をしているMujika氏、
https://twitter.com/inigomujika 
http://www.inigomujika.com/

の情報を追っていればまぁ知っている内容がほとんどとなるかと思いますが。

浅田さんによるウェザーニューズのスポーツサポートは初めて聞く内容も多く、

楽しく聞けました。

暑熱対策として日本に近い気候の国、都市の紹介(合宿をここでやればきっと効果的、費用などは知りません!!)といった掴みのトークから、

レース当日の気象予報だけでなく、レース中の風や気温の変化もリアルタイムで測定し、

それが選手に伝えられるなどして戦略を練れるなどなど。

3年後に行われる東京オリンピックに向けて気温などのデータ測定を実施して準備を開始しているそうです。

また、海外のチームで3年後に出られるか分からないが、

既に日本の気象情報を収集しに来ている所もあるとのこと。

3年後の見据えた早期の対策をしている人たちも多いのに、

今なにもしていなくて太刀打ちできますかね、と思いました。

最後の発表に関しては、JISSが暑熱対策ガイドブックを作ったそうです。

その程度ですかね。どうしても内容が重複してしまいますので。

2日目のA会場での口頭発表もこれといったものは無かったですね。

ハズレが多かったと思います。

パワーの発揮特性によって咬合力が違う。

強く噛む群はスピード型、弱い咬合力の軍は力型のパワー発揮特性とのこと。

まぁマウスピースって大事だな、と思いました。

脳出血後の早期リハビリテーションの運動機能回復に関しては、

超早期と後期での介入は良くないというデータが示されまして、

初日のRomain Meesuse氏の講演であったように、やりすぎは良くない、

ということかなと思いました。

早過ぎてもダメだし遅すぎでもダメ。早ければ早いほど効果があるわけじゃない、と。

続く特別公演は木村昌彦先生(横浜国立大学)による話で、

柔道のサポート現場について過去の例を具体的に振り返り、

何が良かったか、何がダメだったかを取り上げていきました。

科学的なサポートをしてもらうために、するためにどうしたらよいかを考えて、

柔道関係者がしっかりと意思の疎通をさせていくようにしたのかな、

という感じですね。

握力のテストを一つとっても、使えるデータにしていかないと意味が無い、

本気で取り組ませる工夫をしないと意味が無い。

基本的なところからしっかりと改善していった結果、

メダル争いを確実に期待できるようになっていった、

と。必ず取れるかは分からないけど、目標を明確に設定することで、

試合後のインタビューにおいて自分の言葉でしっかりと話せるようになった、

今回はこれが出来れば良かったので、これが出来るはずだったのに、

などなど。

緊張して動けなかったと言うけど、そこまで達してない人もよくいる、

というのが掴みのトークにありましたが、

トレーニングと自分の状態を理解していれば、緊張だけで片付けることは無いでしょう。

今をトキメク岡田先生のサポート話なども触れられていました。

この話を聞いての感想としては、やはり科学的なサポートができる人をしっかりと配置して、

コミュニケーションを丁寧に取って細かくやっていくのが大事、

ということですね。

大きな結果を求めて派手なことをやるのではなく、

地道に一つずつ丁寧に課題をこなしていく。

そうした地味な努力がやはり結果に結びつくわけですよね。

地道な努力の質が高まれば、より結果は良くなる。

その努力の質を高めるために科学的なサポートがある、

と。

自分の欲しい答えが100%そのまま出てくることは無いと思いますが、

コミュニケーションを取る中で自分に必要なことが見えてくる、

そうしたこともよくありますし。

より効果的なトレーニングをこなすための相談は大事ですね。
(お仕事の依頼お待ちしております。2度目)

ランチョンセミナーでは花王の提供によりまして時間栄養学、時間運動学の紹介。

人間はサーカディアンリズム(体内時計)があるので、

それによってトレーニング効果がどのように変わるかという話や、

花王の商品である茶カテキンの効果のお話。

安静時や運動時の脂質代謝を亢進させる効果があるので摂取することできっと効果が期待できるはずです。

最後は

脳-身体-環境の連関について、行動神経科学的アプローチからの知見を運動生理学に生かす

というテーマのシンポジウムへ。

気になった点としては志内哲也先生(徳島大学)の話の中にあった、

夜の食事で1日のカロリーの多くを摂取するとインスリン抵抗性が生じる、

という話やマウスがevening feedingでビビリになるという話でした。

https://www.astellas.com/jp/byoutai/other/reports_h23/pdf/23-23_shiuchi.pdf

ビビりになるマウスはエサがなくても生きられるようにしようとするのか、

エネルギー代謝が低下するとのこと。

こうした点を近年の知見に当てはめると、やはり夜のカロリーは少なくなるようにして、

朝食を重視するのが良さそうかな、などと思いました。

夜間の食事量と睡眠の質といった研究なんかをやると面白そう、

とも思います。

ポスター発表に関しては個人的にウッドチップで走った時の下肢筋活動の筋電図が興味深かったですね。

路面による走行時の筋活動量に有意な差はなく、

一方で速度が上昇すると速度の違いにおいて大腿二頭筋、腓腹筋内側、腓腹筋外側に有意な差があったとのこと。走行速度は1㎞7分30、6分、5分の3つ。

これだけで考えるとウッドチップの方が故障をしにくいということが言いにくいですし、

被験者の疲労感はウッドチップの方が高かったと言うのに筋放電は特に差がなかったりする。

下腿に関しては放電が少ないので、下腿の故障リスクは減るかもしれないが、

大腿は特に差がないから効果が無い?

などなど思うところが多々。



今回は総じて、あぁやはりそうなんだな、と思う点が多かったので、

ちゃんと論文を追えているな、考え方は間違っていないな、

となりましたが、やや物足りない感じでした。

まぁ裏付けが増えることは良いことですが、

へぇ、よく分からない、詳しくない分野だけど面白い、

と思えるものが無かったなぁ、という気がします。

2017年8月1日火曜日

8週間のヒップスラストはスプリントに影響を与えない。。。???

Heavy Barbell Hip Thrusts Do Not Effect Sprint Performance: An 8-Week Randomized-Controlled Study

http://journals.lww.com/nsca-jscr/Abstract/publishahead/Heavy_Barbell_Hip_Thrusts_Do_Not_Effect_Sprint.95841.aspx

Journal of Strength & Conditioning Research: Post Acceptance: July 24, 2017

Bishop, Chris et,al

ヒップスラストを行うことでスプリントが向上することが先行研究で示されているが、

アスリートでの実験は行われていないので実施してみた。

被験者;11人の大学レベルのアスリート男性15人と女性6人


ヒップスラスト群は週に2回5×5をヒップスラストを実施。負荷は85%1RM。

二回続けて最後のセットで2回rep数をさらにこなせるようになったら2.5%負荷を増加。

結果;ヒップスラストを実施した群は平均値では44.09kgほど1回のヒップスラストの最大値が向上。

スプリントタイムはコントロール群と同じくタイムの向上は無し。



タイトルやabstractを見ただけで効果が無い!!

と言い切ってしまっている人は、あ、この人は論文を読めない、読んでいない人なんだな、

と判断するのに最高の論文ですね。

問題点は著者も指摘している通りでしょう。

まずはトレーニングをしている人にとって、

この程度のことを加えただけでスプリント力が向上したら驚く内容です。

トレーニングしている人が週に二回、5×5のウエイトトレーニングだけで走るのが速くなったら、

誰もが実施しますよね。

最大値が大幅に上昇していますが、

被験者が走ることを専門としているわけではないので、

上昇した力を使うことが出来ていないと考えられます。

この点も著者の指摘通りでしょう。

走る能力にとっては最大値よりも回数をこなせる方が効果があるのかも、

といってた点も先行研究を引いて指摘しています。

この実験と同様のことは最大酸素摂取量の測定などでも見られます。

トレッドミルで走ることに慣れた結果、能力が向上したように見えてしまうといったケースです。


この論文から読み取れることは、

これだけやれば速くなれるというものは無い、

といった程度でしょう。

筋力は明らかに向上していますので、

それを使えるような走り方に転換できれば効果が出るかもしれません。

筆者の考察などをしっかりと読まないと何も言えない例として適度な論文でした。

2017年7月28日金曜日

ブロッコリー(アブラナ科の作物)を食べることによる影響

筋肉を育成するためにブロッコリーを食べる人が多いというのを眺めて、

どんな効果があるのかというのを確認してみました。

ネット上では3,3 diindolylmethaneがテストステロンを増やす、


そんな話が載っておりますが、どうなのよと思いまして。



3,3 diindolylmethane leads to apoptosis, decreases sperm quality, affects blood estradiol 17 β and testosterone, oestrogen (α and β) and androgen receptor levels in the reproductive system in male rats.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26926141


ブロッコリーが筋肥大に効果がある理由の一つとされる3,3 diindolylmethaneには、

摂りすぎると精子の質を下げる効果がある模様です。


3,3'-Diindolylmethane attenuates cardiac H9c2 cell hypertrophy through 5'-adenosine monophosphate-activated protein kinase-α.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25816057

3,3'-Diindolylmethaneは心筋の肥大を抑制すると。

AMPKを活性化し、MAPK-mTORを弱めると。

心筋の細胞レベルでは肥大を抑制するのに、骨格筋だと筋肥大するんですかね?


3,3'-Diindolylmethane induces immunotoxicity via splenocyte apoptosis in neonatal mice.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21820497

ロタウイルス誘発性の胃腸炎に対して3,3'-Diindolylmethaneを投与すると悪化する。

新生児マウスでの結果。免疫細胞のアポトーシスが増加するためとのこと。


Effect of boiling on the content of ascorbigen, indole-3-carbinol, indole-3-acetonitrile, and 3,3'-diindolylmethane in fermented cabbage.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19292468

発酵させたキャベツを40~50分ゆでると3,3'-Diindolylmethaneが大幅に増加する。

ブロッコリーではなく同じアブラナ科のキャベツでの実験です。

茹でた方が良いということですね。


Inhibition of growth factor-induced Ras signaling in vascular endothelial cells and angiogenesis by 3,3'-diindolylmethane.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16199440

3,3'-diindolylmethaneは血管の新生を強く抑制する。



Indole-3-Carbinol Is a Negative Regulator of Estrogen

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12840226

Indole-3-Carbinolはエストロゲンを抑制し乳がんなどの発がんを抑制する

この論文によるエストロゲンの抑制というのがテストステロンの増加とつなげ、

筋肥大に効果的としているのかと思われます。

ただ、大豆に含まれるゲニステインの効果と一緒に見ているので、

なんとも。


とりあえずブロッコリーおよびアブラナ科というワードで調べてみましたが、

直接的に筋肥大をしたかどうかの実験は出ませんでした。

エストロゲンを抑制するからテストステロンが増えるであろうという推測に基づき、

ブロッコリーを食べることが推奨されているのかな、

という感じです。

この論文に載ってる、というのがあればコメントで教えて頂きますと幸いです。

よろしくお願い致します。



パッと80本近くの論文を眺めた感じでは、

ほぼ癌との関連話であり、

癌細胞があるからといった話がくっついていますので、

本当に効果的なのかという疑問は残っておりますので...

2017年6月7日水曜日

持久的なトレーニングは筋肥大を引き起こさない、ということはない

Myostatin gene expression is reduced in humans with heavy-resistance strength training: a brief communication

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12773702

Exp Biol Med (Maywood). 2003 Jun;228(6):706-9.

筋力トレーニングによって筋肥大を抑制するミオスタチンの発現が減少する


Protein synthesis and the expression of growth-related genes are altered by running in human vastus lateralis and soleus muscles



Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol. 2009 Mar;296(3):R708-14. doi: 10.1152/ajpregu.90906.2008. Epub 2008 Dec 31.

走る運動を行った後にミオスタチンの遺伝子発現が減少した


Muscle protein synthesis and gene expression during recovery from aerobic exercise in the fasted and fed states

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20720176

Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol. 2010 Nov;299(5):R1254-62. doi: 10.1152/ajpregu.00348.2010. Epub 2010 Aug 18.

夜間の絶食状態の後に最大酸素摂取量の70%程度の少し負荷の高いトレーニングをしたらタンパク質合成が高まった。
運動後に食事をすることで筋肉の分解は弱まった。

Skeletal muscle hypertrophy after aerobic exercise training

Exerc Sport Sci Rev. 2014 Apr;42(2):53-61. doi: 10.1249/JES.0000000000000007.

上記の三点はこちらの論文で引用しているものであり、

一番下のものは同じ研究者なので結論は同じで当たり前ではありますが、

この論文はしっかりと読んでもらい、引用しているものも眺めてもらいたいところです。

持久的なトレーニングで筋肉が増えないという神話をいつまで信じているんですか?

まぁ高齢者を被験者にしているものも多いので微妙な所はありますが、

若者でも持久的なトレーニングで筋肥大を抑制する因子は減る、

と言えます。

なお、上で大文字にしましたが、この神話の問題点がどこにあるのかを考えるべきだと思います。

上記に挙げた論文の中でも指摘してありますが、

持久的なトレーニングの負荷設定がどうなっているのか?

というのがポイントだと思われます。

有酸素運動という一言で何も考えずに長い時間続けられる運動と想像してしまいますが、

これほどまでに適当な言葉は無いわけです。

酸素を用いて脂肪を燃焼させるのが多くなる負荷、

というものなのか、歩いていることなのか、生きている事なのか。

有酸素運動という言葉の定義があいまい過ぎるのに、

何だか便利に使ってしまっていて、そこにある注意すべき点を見忘れている、

ということが散見されるわけです。

なので基本的には持久的な運動などを私は使うようにしております。

「持久的な運動」というと「どのくらいの負荷なの?」と返されますが、

有酸素運動というと勝手にウォーキングやジョギングだと決めつけられてしまいますので。

最初に挙げた論文は時系列になっている通り、

この10年程度で大きく動いている話だから勘違いしても仕方がないとは思いますが、

ある程度の速さで走れば速筋は動員されるわけでして、

それなのに分解が進むというのは何かおかしくないか?

と思わないとダメだと思う所です。

この辺りに関しては、余計な要因を排除するために絶食状態でのトレーニングを基本としていた時代から、

タンパク質や炭水化物の摂取をしっかりとする実験プロトコルへの変化なども影響しているかと思います。

ですので、知らなくても仕方がないとは思います。

ただ、

走ってるだけで筋トレなんてしてない人でも速く走れるようになっている、

ということは持久力だけでなく筋力も高まっている、きっと筋肉も増えているはず、

というのを見てるはずなのに筋肉が減ると思ってしまうのはここまでにしませんか、

と思います。



そしてその先には、

走った後にタンパク質の摂取をすることを意識するなど、

栄養系の話をしっかりとやらないとダメなんだという話になっていくかと思われます。

2017年5月4日木曜日

ボディビルコンテストへ向けた準備への栄養とコンディショニングの介入(ケーススタディ)

A nutrition and conditioning intervention for natural bodybuilding contest preparation: case study

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25949233

J Int Soc Sports Nutr. 2015 May 1;12:20. doi: 10.1186/s12970-015-0083-x. eCollection 2015.

Robinson SL, Lambeth-Mansell A, Gillibrand G, Smith-Ryan A, Bannock L

ボディビルは身体的な美しさを審査する競技であるが、

そこでは筋量の多さと脂肪の少なさが重要になる。

そのため、不適切なサプリメント使用や薬物の投与、

過度な栄養摂取不足による不健康な減量などが行われてしまう。

これらは身体に様々な悪影響を及ぼす。

短気になったり摂食障害(1)、骨密度の減少(2)、代謝障害(3)、

心血管系イベントの増加(4)、その他ホルモン分泌の異常によって様々な障害が生じる(5、6)。

これらによって筋肉の機能が低下していることなどが考えられる。 

近年、プロボクシング(8)、プロジョッキー(9)、国際標準の女性サッカー選手(10)において、

体組成やパフォーマンス目標の達成のための支援としてケーススタディが用いられている。

しかし、ボディビルではまだ確認されていないので、

14週間に渡って実施されたケーススタディについて示す。

被験者は21歳の男性で2年間の競技経験があるが、

それまでは雑誌やインターネットで得た情報からトレーニングやコンディショニングを実施していた。

介入前の一日の食事はtable1にある通り。

2128 (kcal)
炭水化物 212g
脂質28g
タンパク質257g

2週に1回のチートデイがある。

(14)の式を用いて安静時の脂質と炭水化物の酸化を測定し、

(21~23)の式を用いて一日のエネルギー消費を推定した。

table3に提供された食事例(トレーニング日と休みの日)を二つ示した。

Fig1に14週間でのPFCの構成の変化を示した。

近年の研究から(35、36)絶食状態でのトレーニングが脂質の利用を増加させるわけではないことが示されているが、

選手の感覚を重視して(トレーニング後に朝食を食べたい)早朝にトレーニングを実施した。

結果、14週間での体重減少は11.7kgとなり、

これは(40)で示す一週間で1%程度の減少と一致するものである。

しかし、体脂肪が6.7kg減少したものの除脂肪体重も5kgの減少を示してしまった。

これは一日あたり800kcalほど不足する食生活の中で、

タンパク質の摂取が明らかに不足したのが原因と考えられる。

Free


細かい内容は見てもらえばという感じですが、

結論から言えば失敗例と言えるものです。

何がダメだったのかを反省しているので、

次に活かすことが出来ると思いますが。

タンパク質の摂取が明らかに少ないのはサプリなどでの摂取が不足しているからでしょう。

食事のみで身体を作ることが難しい、というのを示したとも言えそうです。

除脂肪体重がここまで減ってしまうと、

減量その他の話でもなんか違うのでは、

という面も出ますし。

健康に重視したトレーニング、減量戦略となりますし、

まぁアプローチとしては良かったのでは。

なお、被験者は19人参加した大会で7位だったそうです。

2017年5月3日水曜日

運動により筋肉へダメージが生じた際の回復期におけるタンパク質摂取の効果

The efficacy of protein supplementation during recovery from muscle-damaging concurrent exercise

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28199799

Appl Physiol Nutr Metab. 2017 Feb 15:1-9. doi: 10.1139/apnm-2016-0626. [Epub ahead of print]

Eddens L, Browne S, Stevenson EJ, Sanderson B, van Someren K, Howatson G

運動の初心者や経験したことが無い運動を行うと筋肉にダメージ(EIMD)を与える。

そのため素早く回復させることは次のトレーニングに備えるためにも大事である。

この研究では24人のwell-trainedな自転車選手を用いて実施。

500mlの水分摂取を実施し、

プラセボ
ホエイタンパク質20gと微量の炭水化物を含む90kcal
炭水化物20gほどを含む90kcal

の三つを摂取。

自転車運動と60cmほどの台からのドロップジャンプによって筋肉へダメージを与えた。

結果、回復には大きな差は見られなかった。

トレーニングを積んだ人においての実験という点もあるが、

近年明らかになってきているようなタンパク質の摂取量からすると、

摂取量が少なかったことなどが原因であろうと考えられる。


Free

筋肉にダメージが明確に与えられるような負荷を掛けてしまうと、

回復に手間取るということが言えそうですが、

一方で一日のタンパク質摂取量が体重×1g程度なので、

もっと多くの摂取を実施することで違いは出るかもしれません。

まぁなるべく普段は筋肉に過剰なダメージを与えない方が良さそう、

というのが現状では言えること、となりますかね。

2017年4月29日土曜日

トレーニングと高脂質食による酸素摂取量の変化

Increase of aerobic capacity by submaximal training and high-fat diets.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8979456

Folia Med (Plovdiv). 1996;38(1):49-59.

Boyadjiev N


1996年の論文で少々古いものですが、


動物実験を実施。


食事のカロリー摂取の8割近くを脂質にしたグループは、


最大酸素摂取量の向上が見られた。


運動を組み合わせるとさらに向上した。

これには糖の利用よりも脂質の利用が進んだことが影響していると考えられる。



最大酸素摂取量の向上には高脂質の食事も効果的である、

という話です。

運動によって向上しない場合

脂質が不足しているからということも言えるわけですね。

こうした考えから、最大酸素摂取量が持久的なパフォーマンスの指標として有用なのか、

ということへの疑問は高まっています。

まぁ現在言われているような感じでは使えないであろう、という話です。

筋内脂肪の話なども組み合わせると、

適度な脂質が存在することで持久的なパフォーマンスは高まる、

脂質を貯蔵しようと人間の身体は適応する、

となります。

糖の貯蔵量を測定する方が効果的ということが言えるかと思います。

60~70%を超える酸素摂取量の運動の場合は確実に糖が必要となります。

2017年4月6日木曜日

適切な負荷のエキセントリックトレーニング(レビュー)

Moderate Load Eccentric Exercise; A Distinct Novel Training Modality

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27899894

Front Physiol. 2016 Nov 16;7:483. eCollection 2016.

Hoppeler H

持久的なトレーニングやレジスタンストレーニングは多くの実験が行われてきているが、

負荷設定が曖昧となっている。

エキセントリックトレーニングは使用するエネルギーが少ないが、

筋肉に与えられるダメージは大きくなる。

Blazevichらの2007年の研究ではエキセントリックな負荷によって羽状角が拡大することが示された。

Brughelli と Croninの2007年の研究からは、エキセントリックなトレーニングによって最適な長さ-張力関係とするため、

筋長をより長く適応させると考えられる(ケガの予防やパフォーマンスの向上といった適応)。

Chelly と Denisの2001年の研究でのホッピングジャンプテストは高い走速度は筋腱複合体の剛性と関係があることを示している。

LaStayoらの2000年の研究で適切なエキセントリックトレーニングが筋腱複合体の剛性を変化させることが示された。


Free

その他、いろいろとエキセントリックな負荷の掛け方とコンセントリックの違いが書かれています。

速く走るには筋肉も大事ですが腱も鍛えないと、という点をつまんでおきます。

2017年4月3日月曜日

運動のパフォーマンスとサーカディアンリズム(ホルモンと筋肉の適応)、2011年レビュー

Circadian rhythms in exercise performance: implications for hormonal and muscular adaptation

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24149547

J Sports Sci Med. 2011 Dec 1;10(4):600-6.

Teo W, Newton MJ, McGuigan MR.

24時間周期に起こる変化であるサーカディアンリズム(概日リズム)は、

多くの研究がなされている。

これを司るのは視床下部に位置する視交叉上核(SCN)である。

Hastings and Herzog 2004の研究では網膜から太陽の周期の情報を受け取るとされる。

ホルモンの分泌や体温の変化、神経機能活性化などはこの影響を受けている。

Cappaertの1999年の研究では、安静時の体温が最も高くなるのは夕方であり、

この時に身体の多くの機能が最も活性化されるとしている。

Baehr らの2000年の研究やHill らの1988年の研究、Kerkhofの1985年の研究などから、

人によって日内変動は異なり、朝方や夜型など様々なタイプが存在することも確認されている。


Guignardらの1980年の研究でテストステロンは早朝にピークがあり、

その後は下がっていくことが示された。

この研究ではコルチコイドも同様の変化があることが示された。

パフォーマンスと概日リズムの影響を調べるのは難しい。

太陽が出る、気温が上昇するなどの周辺環境によって影響を受けるし、

普段の日常生活の習慣も影響を与える。

個人の生物学的なリズムはそれらに影響を受けている。

 Starkieらの1999年の研究では、体温の上昇が炭水化物の利用を脂質よりも高めると示した。

これにより筋肉の活動が高まると考えられる。 

Taylor らの2011年の研究では、

早朝のトレーニングではウォーミングアップの時間を20分長くすることで力の発揮が弱まることを防げると示した。

この体温の上昇から、筋力の発揮には体温が関係していると言える。






しかし、Atkinsonらの2005年の研究では早朝にウォーミングアップをして自転車を漕ぐ実験をしたが、

体温が高まってもパフォーマンは夕方に行ったものに比べて低かった。

この時には耳の温度が夕方の方が高いことが確認されている。

Martinらの1999年の研究やGuetteらの2005年の研究では、

筋内で起こる様々な変化(カルシウムイオンの放出など)が概日リズムで影響を受けていると示した。

運動がテストステロンやコルチコイドの概日リズムに影響を与えるかを調べた研究は少ない。

Häkkinenらの1988年の研究では8人のトレーニングを積んだリフターを被験者として実験し、

午後のトレーニングが高いテストステロンを示すことを明らかにした。

Sedliakらが2007年に報告したデータでは連続したトレーニングによりテストステロンとコルチゾールが減少することを示した(有意な変化では無かった)。

Bird and Tarpenningの2004年の研究では夕方にレジスタンストレーニングを行うことは、

テストステロンとコルチゾールの比を改善し筋肥大に効果的であると示したが、

この実験には条件の問題が見られるので不明な点も多い。

Teoらの2011年の研究ではテストステロンとコルチゾールの概日での変動は、

力とパワーの発揮に関係が無いことを示した。

これはWestらの2010年の結果にある、

成長ホルモンやIGF-1、テストステロンの変化と力の発揮や筋肥大は無関係ということと同じである。

しかし、テストステロンとコルチゾールの概日リズムによる変化と力発揮などに関して、

不明な点はまだまだある。


Free 

取りあえず、成長ホルモンやIGF-1、テストステロンなどのホルモンが筋肥大と無関係の可能性が高い、

という論文があることや、一日の変動を気にして夕方にトレーニングをしないといけない、

そう思っている人は特に気にしないでもよさそうですよ、

ということが言えると思います。