2017年8月8日火曜日

第25回運動生理学会大会雑感

2017年7月29日(土)と30日(日)にかけまして、

横浜国立大学におきまして第25回運動生理学会が開催されました。

その振り返りを簡単に。

まずは田中英登大会長(横浜国立大学)による生活習慣と熱中症予防という講演。

開会のあいさつからの流れで横浜国立大学は横浜の街から微妙に遠く、

地下鉄の駅から歩くと夏場は汗だくになる距離である、

という自虐的なお話が強く記憶に残りました。

続く若手の口頭発表は抄録に記載の通りですね。
http://jsesp25.umin.jp/koutou.html(タイトルだけ)

A会場を見ていたのでB会場の方は分かりませんが、

ラットでのレジスタンス運動のセッション間は8時間だと筋肥大がしない、

というのがあります。

また、勃起不全が心血管疾患の発症と関連することから、

23~82歳の成人男性の運動能力(持久力と筋力)と勃起機能の関連を調べたというのは興味深いですね。

最高酸素摂取量と握力が勃起能スコア(IIEF5)と有意に関連することが示された、

とのことです。

Is Exercise good for the Brain?という題でのRomain Meesuse氏の国際招待講演は、

途中の細かな点で面白い話はありましたが、適度な運動は脳にとって良いけど、

やりすぎは良くないという当然の話にまとめられるかと思います。

初日の最後のシンポジウム1では2020年に向けた暑熱環境対策の現在というテーマで4題

「アスリートからの課題」田山寛豪(NTT東日本・西日本/流通経済大学)
「研究者からの最新研究紹介」長谷川博(広島大学)
「気象情報会社からのサポート例紹介」浅田佳津雄((株)ウェザーニューズ)
「オリンピックに向けたJISSでの取り組み」中村大輔(国立スポーツ科学センター)

田山さんのお話では過去のトライアスロンでの競技に関して大会に向けての練習などを振り返りつつ、

どうして失敗したのかを周囲の選手との暑熱対策の違いを取り上げて、

情報の少なさを挙げられていました。

外国の選手が冷やしているのに対して、冷やすことは良くないと教わったが、

より良い結果を残したのは外国の選手であったなどといった事例。

「選手は競技で結果を残すためには何でもやります」と言われておりましたが、

研究者の方々としてはどのような情報が欲しいのかを教えてもらわずに、

結果を残すための情報が出すことは難しいだろうな、と思いました。

科学的な見地からアドバイスしてくれる人を雇うのが効率よいと思います。
(お仕事の依頼お待ちしております)

長谷川先生による最新研究はエビデンスベースのお話でした。

共同研究をしているMujika氏、
https://twitter.com/inigomujika 
http://www.inigomujika.com/

の情報を追っていればまぁ知っている内容がほとんどとなるかと思いますが。

浅田さんによるウェザーニューズのスポーツサポートは初めて聞く内容も多く、

楽しく聞けました。

暑熱対策として日本に近い気候の国、都市の紹介(合宿をここでやればきっと効果的、費用などは知りません!!)といった掴みのトークから、

レース当日の気象予報だけでなく、レース中の風や気温の変化もリアルタイムで測定し、

それが選手に伝えられるなどして戦略を練れるなどなど。

3年後に行われる東京オリンピックに向けて気温などのデータ測定を実施して準備を開始しているそうです。

また、海外のチームで3年後に出られるか分からないが、

既に日本の気象情報を収集しに来ている所もあるとのこと。

3年後の見据えた早期の対策をしている人たちも多いのに、

今なにもしていなくて太刀打ちできますかね、と思いました。

最後の発表に関しては、JISSが暑熱対策ガイドブックを作ったそうです。

その程度ですかね。どうしても内容が重複してしまいますので。

2日目のA会場での口頭発表もこれといったものは無かったですね。

ハズレが多かったと思います。

パワーの発揮特性によって咬合力が違う。

強く噛む群はスピード型、弱い咬合力の軍は力型のパワー発揮特性とのこと。

まぁマウスピースって大事だな、と思いました。

脳出血後の早期リハビリテーションの運動機能回復に関しては、

超早期と後期での介入は良くないというデータが示されまして、

初日のRomain Meesuse氏の講演であったように、やりすぎは良くない、

ということかなと思いました。

早過ぎてもダメだし遅すぎでもダメ。早ければ早いほど効果があるわけじゃない、と。

続く特別公演は木村昌彦先生(横浜国立大学)による話で、

柔道のサポート現場について過去の例を具体的に振り返り、

何が良かったか、何がダメだったかを取り上げていきました。

科学的なサポートをしてもらうために、するためにどうしたらよいかを考えて、

柔道関係者がしっかりと意思の疎通をさせていくようにしたのかな、

という感じですね。

握力のテストを一つとっても、使えるデータにしていかないと意味が無い、

本気で取り組ませる工夫をしないと意味が無い。

基本的なところからしっかりと改善していった結果、

メダル争いを確実に期待できるようになっていった、

と。必ず取れるかは分からないけど、目標を明確に設定することで、

試合後のインタビューにおいて自分の言葉でしっかりと話せるようになった、

今回はこれが出来れば良かったので、これが出来るはずだったのに、

などなど。

緊張して動けなかったと言うけど、そこまで達してない人もよくいる、

というのが掴みのトークにありましたが、

トレーニングと自分の状態を理解していれば、緊張だけで片付けることは無いでしょう。

今をトキメク岡田先生のサポート話なども触れられていました。

この話を聞いての感想としては、やはり科学的なサポートができる人をしっかりと配置して、

コミュニケーションを丁寧に取って細かくやっていくのが大事、

ということですね。

大きな結果を求めて派手なことをやるのではなく、

地道に一つずつ丁寧に課題をこなしていく。

そうした地味な努力がやはり結果に結びつくわけですよね。

地道な努力の質が高まれば、より結果は良くなる。

その努力の質を高めるために科学的なサポートがある、

と。

自分の欲しい答えが100%そのまま出てくることは無いと思いますが、

コミュニケーションを取る中で自分に必要なことが見えてくる、

そうしたこともよくありますし。

より効果的なトレーニングをこなすための相談は大事ですね。
(お仕事の依頼お待ちしております。2度目)

ランチョンセミナーでは花王の提供によりまして時間栄養学、時間運動学の紹介。

人間はサーカディアンリズム(体内時計)があるので、

それによってトレーニング効果がどのように変わるかという話や、

花王の商品である茶カテキンの効果のお話。

安静時や運動時の脂質代謝を亢進させる効果があるので摂取することできっと効果が期待できるはずです。

最後は

脳-身体-環境の連関について、行動神経科学的アプローチからの知見を運動生理学に生かす

というテーマのシンポジウムへ。

気になった点としては志内哲也先生(徳島大学)の話の中にあった、

夜の食事で1日のカロリーの多くを摂取するとインスリン抵抗性が生じる、

という話やマウスがevening feedingでビビリになるという話でした。

https://www.astellas.com/jp/byoutai/other/reports_h23/pdf/23-23_shiuchi.pdf

ビビりになるマウスはエサがなくても生きられるようにしようとするのか、

エネルギー代謝が低下するとのこと。

こうした点を近年の知見に当てはめると、やはり夜のカロリーは少なくなるようにして、

朝食を重視するのが良さそうかな、などと思いました。

夜間の食事量と睡眠の質といった研究なんかをやると面白そう、

とも思います。

ポスター発表に関しては個人的にウッドチップで走った時の下肢筋活動の筋電図が興味深かったですね。

路面による走行時の筋活動量に有意な差はなく、

一方で速度が上昇すると速度の違いにおいて大腿二頭筋、腓腹筋内側、腓腹筋外側に有意な差があったとのこと。走行速度は1㎞7分30、6分、5分の3つ。

これだけで考えるとウッドチップの方が故障をしにくいということが言いにくいですし、

被験者の疲労感はウッドチップの方が高かったと言うのに筋放電は特に差がなかったりする。

下腿に関しては放電が少ないので、下腿の故障リスクは減るかもしれないが、

大腿は特に差がないから効果が無い?

などなど思うところが多々。



今回は総じて、あぁやはりそうなんだな、と思う点が多かったので、

ちゃんと論文を追えているな、考え方は間違っていないな、

となりましたが、やや物足りない感じでした。

まぁ裏付けが増えることは良いことですが、

へぇ、よく分からない、詳しくない分野だけど面白い、

と思えるものが無かったなぁ、という気がします。

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