2017年3月23日木曜日

持久的な運動によって引き起こされるAMPKの活性化はレジスタンストレーニ ングによる筋肥大の反応を邪魔しない。が…

Exercise-induced AMPK activation does not interfere with muscle hypertrophy in response to resistance training in men

http://jap.physiology.org/content/116/6/611

Journal of Applied Physiology Published 15 March 2014 Vol. 116 no. 6, 611-620

Tommy R. Lundberg, Rodrigo Fernandez-Gonzalo, Per A. Tesch

持久的な運動をレジスタンストレーニングを同じ日に行う場合、

間に6時間の回復をおくとレジスタンストレーニング単独で行うよりも筋肥大した(42)。

持久的な運動によって筋グリコーゲンが減少するため、

直後にレジスタンストレーニングを行うことは筋力とパワーの減少が起こると考えられる。

持久的な運動はAMPKを活性化し、PGC-1αを増加させる。

レジスタンストレーニングはmTORの経路を活性化して筋肥大を促す。

ラットでの実験(60)では先に行った持久的な運動によるAMPKの活性化は、

mTORの伝達を抑制し4E-BP1やP70S6Kなどの下流因子の調節により筋肥大を抑制すると考えられる。

(41)や(42)の研究結果では、持久的な運動の後に筋機能が回復してからレジスタンストレーニングを行うと、

筋肥大が確認された。

では、持久的な運動の直後に行うとどうなるか、実験してみた。

週に3日程度運動を行う若い男性10人で実施。

片足での自転車運動を40分行った後、15分の回復時間を挟んで、

座った状態での膝伸展を4×7セット実施。

結果、持久的な運動を組み合わせた場合、

筋グリコーゲンやPGC-1α、VEGFのmRNAはレジスタンスだけ群よりも有意に増加し、

ミオスタチンmRNAは有意に減少した(Fig5)。

しかし4E-BP1やP70S6Kなどは特に変化が無かった(Fig6)。

持久的な運動が筋肥大を抑制せず、むしろ肥大を促したが、、

これが競技を行う選手に導入されることは悪影響を及ぼすと考える。

AMPKの活性は運動後1時間に明確に高まる(11,20,46)ので、

レジスタンストレーニングが打ち消した可能性がある。

ミオスタチンが減少しPGC-1αが増加したことは筋肉の増加や分解を抑制すると考えられ、

これが持久的な運動を組み合わせた群で高まったことは興味深い。

今回の結果で筋肥大は持久的な運動の組み合わせの方がより大きくなっているが、

これにはミトコンドリアや筋グリコーゲンの増加が大きく寄与していると推測される。

持久的な運動との組み合わせの方が筋力の向上が低かったことなどから、これは言える。

今回の実験では片足での運動を行っているが、

今後は他のやり方での比較が必要と思われる。


Free

とても面白い論文でした。

持久的な運動を組み合わせることがミオスタチン(筋肉の肥大を抑制する)の発現を弱める。

その点から考えると筋肥大には適度な持久的な運動を行うことは良さそうですね。 

ただ、見た目のデータだけから都合の良いことを言わず、

この結果からすると筋肥大や筋力向上には持久的な運動の直後に行う組み合わせは効果的では無いと思う、

と言っていますので。

最大出力の向上を狙う人であれば、

少し考えた方が良い、見た目の変化を狙う人ならば、持久的な運動も組み合わせると良い、

ということは言えるかと思います。






2017年3月22日水曜日

筋線維のタイプとサイズのパラドックス

The muscle fiber type-fiber size paradox: hypertrophy or oxidative metabolism?

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20602111/

Eur J Appl Physiol. 2010 Nov;110(4):665-94.

van Wessel T, de Haan A, van der Laarse WJ, Jaspers RT

1980年のHicksonの研究で持久的な運動とストレングストレーニングを同時に行うと、

それぞれを単独で行うのに比べてトレーニングによる反応が弱まることが確認された。

持久的な負荷は筋内での酸化能力を高めることが知られており、

ストレングストレーニング(高負荷なトレーニング)は筋肉を肥大させるのに効果的であるとされる。

どうしてこれらの能力は同時に向上していかないのか。

以下、何点か面白かった話を。

・TYPEⅠやTYPEⅡという筋肉の分類の仕方は筋線維の酸化能力とは一致しないことを理解しておく必要がある。TYPEⅠとTYPEⅡaの間には酸化能力や筋肉の太さに差があるとされるが、女性においてはTYPEⅠがTYPEⅡよりも大きいことがよくある。ラットの骨格筋ではTYPEⅠの酸化活性がTYPEⅡより低かったり、TYPEⅠ線維の方が筋サイズが大きかったりする。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/14617264/
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10596950/
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/2529775/
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19429822/

・図1から考えるに、筋肉の酸化能力は筋線維タイプの違いよりも筋のサイズに大きく影響される
・高い酸化能力を有する筋肉はタンパク質の合成も高い(それならば遅筋の方が肥大しやすいはず...???)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10424883/

・その他、酸化能力が高い方が筋肥大に効果的とされるはずだが、遅筋は肥大しにくいのは何故か。酸化能力が高すぎることでターンオーバーが働き過ぎて抑制されるのでは?


長いので結論部分を見てもらいますと分かるように、AMPKとmTORの活性による作用によって肥大が抑制されたり刺激されたりする、ということが書かれています。この辺りが把握できるようになったら、持久的なトレーニングに近いものをウエイトトレーニングなどにも入れていくことで、より筋肥大を高められるのかな、という気がします。かなり長いですが、なかなか面白い内容でした。

2017年3月21日火曜日

鍛錬者と非鍛練者におけるドロップセット法と逆ドロップセット法での筋活動と筋内の酸素動態の違い

Effects of the Drop-set and Reverse Drop-set Methods on the Muscle Activity and Intramuscular Oxygenation of the Triceps Brachii among Trained and Untrained Individuals

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27928200

J Sports Sci Med. 2016 Dec 1;15(4):562-568. eCollection 2016.

Goto M1, Nirengi S2, Kurosawa Y3, Nagano A4, Hamaoka T3.


Van Wesselらのレビューによるとレジスタンストレーニングによって生じる筋内の酸化能力は、

筋肥大において負の影響を与えることを示している。

また、Adamsらの研究では、トレーニングをしていない人では運動単位の動員が低下していることが報告されている。

筋肉の力と肥大の向上に機械的、代謝的なストレスがどのように影響を与えているかを調べることが必要である。

ドロップセット法は徐々に負荷を下げていく、

逆ドロップセット法は徐々に負荷を上げていくトレーニング方法である。

ドロップセット法の効果はGorassiniらの研究Schoenfeldらのレビューで説明される。

Schoenfeldのレビューでは、ドロップセット法は筋肉による負荷で血流が制限され一次的な低酸素状態になる。

これに機械的負荷が加わることで、より強い筋肥大が誘発されると示している。

過去の研究で鍛練者と非鍛練者での比較などは行われていないので実験をしてみた。

ウエイトトレーニング実施者と特に何もトレーニングしていない人それぞれ16人。

トレーニングプロトコルはfigure1にある通り。

ドロップセット法   95%×2 reps + 85% × 2reps +75% ×10reps
逆ドロップセット法 55%×3 reps + 65% × 3reps +75% ×10reps

間はそれぞれ3分のrest。

結果、鍛練者のドロップセット法が筋肉の活動や筋肉内の低酸素化をより大きく示した。

鍛練者は酸素の回復が素早く見られたが、

これはFryerらの研究によりトレーニングによる結果として知られている、

しかし、トレーニングしている人がより太い血管を有することなども分かっている点からすると、

鍛練者の血流は十分に制限されていなかったことも考えられる。

また、上半身と下半身のトレーニングでは結果が異なるとZhangらは示しているので、

今回の結果が下半身にも言えるかは不明である。


Free

ドロップセット法が効果的である、ということで。

逆ドロップ方は疲れた感じはするかもしれないけれども、

トレーニング効果は低いですよ、と。

あとは筋肥大の原因はイマイチよく分からない、ということで。

次回はここで一番最初に出てきた

The muscle fiber type-fiber size paradox: hypertrophy or oxidative metabolism?

筋肉のタイプとサイズのパラドックス

こちらのレビューを少々。

2017年3月20日月曜日

肥満男性の睡眠前カゼインタンパク質摂取と脂質代謝

The Effect of Casein Protein Prior to Sleep on Fat Metabolism in Obese Men

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27472361

Nutrients. 2016 Jul 27;8(8). pii: E452. doi: 10.3390/nu8080452

Kinsey AW, Cappadona SR, Panton LB, Allman BR, Contreras RJ, Hickner RC, Ormsbee MJ

深夜の高カロリーな食事は体重増加や心血管代謝の悪化を引き起こすとされる(1~5)。


寝る30分前に150kcal以下でタンパク質が豊富な食事を摂取することは、

食欲の減少や体組成に有益であるとされる(7~13)。

カゼインタンパク質を摂取した(8)の研究では女性の場合、翌朝の満腹感を高め、

翌朝の安静時代謝は(9)の研究では高まっていたことが観察されている。

こうしたことからカゼインタンパク質の摂取が肥満男性に良い影響があると考えられるので実験してみた。

BMIが25以上、体脂肪率が25%以上の18~45歳の男性12人。

平均BMI36、平均体脂肪率が36%であった。

就寝前のタンパク質はカゼインを30g。

普段の食事などはtable2を参照。

結果、特に大きな変化は見られなかった。

ただ、筋肉の分解抑制などを考えると効果はあると思われる。


Free

女性では変化が見られた先行研究に対して男性では特に効果が無かった。

考察をいろいろとしていますが、体重の違いや睡眠の質が悪かったなど、

多くの要因が関係してくると推測されます。

肥満となっている時間が長くて健康的に悪化している面が多いのかな、

ということも考えられますし。

まぁサプリメントを摂取した程度で健康な身体にはならない、

というオチとも言えますかね。

普段の食事などもタンパク質多めにするなどをしたら、

また違いが大きくなるかとも思われますが。

2017年3月19日日曜日

運動をした後、就寝前にタンパク質を摂取すると夜間の回復が促進される

Protein ingestion before sleep improves postexercise overnight recovery

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22330017

Med Sci Sports Exerc. 2012 Aug;44(8):1560-9. doi: 10.1249/MSS.0b013e31824cc363.

Res PT, Groen B, Pennings B, Beelen M, Wallis GA, Gijsen AP, Senden JM, VAN Loon LJ.

レジスタンストレーニングは筋肉の合成と分解を刺激する(6,31,37)

合成の方が分解よりも刺激されるが(6,8,31)、バランスは負の状態である。

このタンパク質のバランスを改善するために運動だけでなく栄養の摂取が必要となる。

炭水化物の摂取は分解が進んでいくのを抑制するが(11,28)、

合成速度には影響を与えない(10,21,28)。

タンパク質の摂取はバランスを正の状態へと改善する(8,12,23,28,32,36)

多くの先行研究は一晩の絶食に対する反応を見ている。

(4)の研究では夜に運動を実施しタンパク質を投与した後の一晩での回復を調べた。

この研究では予想よりも夜間での回復は低く、通常の値よりも低くなった。

これには血中アミノ酸の上昇やインスリンの分泌が無かったことなどが関係していると思われる。

今回の研究では夜に運動をし寝る直前にタンパク質を摂取するとどうなるかを調べた。

15人のレクリエーション程度の活動を行っている若い男性を被験者とした。

16時45分に管理された夕食を食べ始めて実験の準備をし、

20時からレジスタンストレーニングを開始。

水平方向のレッグプレスとレッグエクステンションを8×8set、

55%を1set、65%を1set、75%を6set実施。

間の休憩は2分で、エクササイズを変える際の休憩は5分。

45分程度で終わらせて21時に採血などを実施し60gの炭水化物と20gのホエイタンパク質のドリンクを摂取。

23時30分にも採血を実施して同じドリンクを摂取して就寝。

結果はグラフなどを参照。

血中のロイシンは朝までコントロール群と比較して高かった。


Free

寝る前のタンパク質の摂取だけを評価していない点に注意ですかね。

夜にトレーニングをしたことで高まっていた筋肉の合成を、

トレーニング後のタンパク質摂取と就寝前のタンパク質摂取で高く維持させた、

となるかと思います。

学生や社会人でトレーニングをしている人にはよくあるパターン化と思います。

学校に行って、仕事して、終わってからのトレーニングをしてタンパク質を摂取して寝る。

先に食事をしている点も異なりますが、

まぁ運動をしてタンパク質を摂取して寝る前にもタンパク質を摂取してというのは、

かなり効果的だろうと推測されます。

カゼインの方が就寝時には分解を抑制するという話もありますが、

この辺りは組合せ次第ではホエイの方が効果的と言えるのでは?

という気もします。

継続して観察していきたいところですね。