2017年10月7日(土)と8日(日)に日本体育大学世田谷キャンパスにおいて、
第30回トレーニング科学会が開催されました。
第31回は来年の10月末の土日に東海学園大学の三好キャンパスで開催予定とのことです。
告知は先に済ませまして参加しての感想を。
初日の最初のシンポジウムは「オリンピックとトレーニング科学」というテーマ。
JISSが何をやっているのかといういつもながらの話から始まり、
二つ目は高橋英幸先生によるMRIやMRSを用いた筋コンディション評価という話。
https://research-er.jp/researchers/view/105615
こんな研究をされています。
出典のジャーナルがスライドに提示されなかったので、
JISSの年報にでも載っているかと思います。
http://www.jpnsport.go.jp/jiss/gaiyou/jigyou/houkoku/tabid/260/Default.aspx
筋グリコーゲンの回復は翌日では不十分、
3日で体重を1kg落とした例では筋グリコーゲンも30%減っていたとの話が。
1kg落としたらパフォーマンスは当然落ちるという話ですね。
トレーニング後の回復も大事ですけど、
体重を落としたらグリコーゲンは減る。
その後はバドミントンとカヌーのご紹介。
データを積み重ねていくことでトップ選手がこの年齢だった時にはこのくらいだった、
という比較ができるといった話を東京とカヌー協会理事の藤野強さんの話でありました。
指標としてデータを残しておくというのは大事ですね。
初日のポスター発表は思った点をいくつか。
1-01ウエイトトレーニングとプライオメトリックトレーニングの組み合わせ順序
プライオメトリックによる出力が刺激となってウエイトトレーニングに効果が出るだけでは?
(プライオをアップの段階で取り入れるのはどの種目でも効果的とは言えそうです)
1-04高回数・低強度レジスタンストレーニング実施直後の筋浮腫~~
高回数・低強度レジスタンストレーニングにより生じる筋浮腫が筋力向上を妨げると
結論付けていたが、高強度を一度も入れない高回数では出力が高まらず、
筋力が向上しないというのは先行研究で言われているのに筋浮腫の話にしているので、
実験プロトコルから見直した方が良いと思いました。
1-07低酸素環境下スロートレーニングの生理的応答
スローと聞いた瞬間に石井先生のところと推測されてしまうわけですが、
スロトレに低酸素でさらなる低酸素状況を筋内に作り出して筋活動を高めるとのこと。
高地トレーニングとかの話を考える今日この頃な私にとっては示唆に富む内容でした。
1-13野球の打者における下肢および体幹部の筋横断面積~~
下肢と体幹部の筋横断面積の総和とスイングスピードには有意な相関関係があった、と。
野球選手もサポートしているので野球関連は興味深く見させて頂きました。
何も考えずに走ったりするよりは、うまくウエイトなどで筋肥大をしていく方が、
効率よく鍛えることが可能というのは当然ですかね。
野球は走塁技術も必要な種目ですので、走ることも大事ですがそこの分離はあっても良い
でしょう。野球関係者からのお話、お待ちしております(広告・宣伝です)
1-16女子大学生における痩身・肥満の現状
女子大学生は隠れ肥満を指摘される一方でサルコペニアの基準を下回る報告もあり、
調査してみた結果として隠れ肥満よりもプレサルコペニアの学生の方が多かった、と。
サルコペニアは高齢者の筋肉減少のことです。女子大学生は高齢者並みに筋肉が少ない。
筋トレしましょう。しっかり食べましょう。特にたんぱく質を、ということですね。
痩せたい気持ちは分かるけど、カロリーを無理に減らしタンパク質を減らしたその身体は、
高齢者並みのスッカスカの身体になってますよ、と。
1-17スプリント加速期の接地時間とその割合
ジュニア選手での年齢変化に加えて速い選手と遅い選手で比較したものです。
接地時間が短くて1歩における接地時間も短い、脚の回転が速い選手が走るのが速い、
という結果のようです。いかに素早く脚を回転させられるかが速く走るためには大事、
という当たり前の話ではあります。遅い選手はやはり力を加えようとしてしまうんでしょうね。
サッカー関係者からのお話、お待ちしております(広告・宣伝です。その2)
1-18高校生男子1kmタイムトライアル優勝経験者の体力特性
今年は競輪選手との交流もありまして、タイムトライアルとの違いを説明して頂きました。
自転車競技の1kmTTはとにかく最初の立ち上がりが重要であり、
最後まで全力で漕いでもそんなに減速しないそうです。
ということでどうやって最初の立ち上げを速くするかの勝負であり、
下肢骨格筋のサイズが大きくて筋力・パワーが高いことが大事、と。
上手くウエイトトレーニングを導入することで、違いを出せそうな気がしました。
競輪関係者からのお話、お待ちしております(広告・宣伝です。その3)
1-23短距離走選手における足関節底屈柔軟性とスプリントパフォーマンスの関係
ストレッチ実施直後の柔軟性の増加がスプリントパフォーマンスを下げると指摘されるので、
足関節の柔軟性も関係しそうだから調べてみたというのは悪くないですが、
ストレッチ後の柔軟性の増加がそもそもにどうして起こるのか、という点を理解しないで、
硬いのが良いと言える結果が出そうだから調べたら相関は低かった、
となってしまった感じがとてもしました。
走るという点に関しては技術的な要素も絡むので、短絡的にここが硬いから速いんだ、
という都合の良い結果は出てこないと思います。
ランニングフォームの良し悪しを定量化するというのが出来ないと、
この辺りはどうにもデータとしては使えない気がします。
その他にもいろいろとございましたが、疲れてきたのでここまでとさせて頂きます。
二日目のシンポジウムで河森さんがお話されていたように、
このデータを見て俺はこう思うけど、という解釈の違いは同じ数値を見ても出てきます。
先行研究をどれだけ知っているか、似たような事例をどれだけ知っているかなど、
様々な要因で見方が異なり導かれる答えも違うと思います。
ですので、この発表にあったことを都合の良いようにだけ使わず、
いやでもこういう解釈も出来るし、ひょっとしたらこういう先行研究と組み合わせると、
という感じで考えがつながっていくとよいと思います、
そのためには多くの知識を身に着けるしかないわけですが...
初日の午後は性差を考慮したトレーニング科学というシンポジウムでした。
女性はテストステロンが男性に比べるととても低いことから、
前駆体であるDHEA(デヒドロピアンドロステロン)に注目して、
という専修大学スポーツ研究所の相澤勝治先生の話に始まり、
JISSの中村真理子先生の性差を考慮したコンディション評価、
日体大の岡本孝信先生の運動トレーニングにおける動脈進展性の性差という3題でした。
卵胞期と黄体期ではいろいろと違いが出てくるということを考慮して、
トレーニングなどをやっていくのが大事ということですね。
この辺りの話もここ数年で何度も聞いておりますが、
現場の指導者や選手自身がもっと学ばないことにはどうしようもないと思います。
どうにかして啓蒙活動をする必要がありますね。
保健体育の教科書あたりが狙い目かと思いますが...
その後の企業プレゼンでは缶ビールのご提供を受けまして、
ビールを飲みながら出展企業様の商品を眺めさせて頂きました。
欲しい、魅力的となるものもありますが、お値段を一切言わないものですので、
お高いんでしょう~~?
と思うだけで終わってしまいますね。
なお、twitterにも画像を載せましたように、
H+Bライフサイエンス社様より粉飴を頂きました。
http://www.hb-life.jp/
参加費用が粉飴で返ってきたということですね。
懇親会ではバイオメカニクス会の重鎮であります阿江先生にじっくりとお話を聞かせて頂きました。
翌日に開催しました交流会で話を盛り込ませて頂きましたが、
バイオメカニクスはどうやって使うかが大事ですので。
阿江先生には長年の経験から考える部分の話も聞かせて頂きまして、
興味深い話が多くありました。
懇親会の参加費がとても安くなった感じですね。
二日目の最初はパラリンピックとトレーニング科学というお題でしたが、
このパラリンピック関連の話は東京での開催が決まって以降、
一体何度目だというくらいに聞き飽きた話でしたし、
JISSの人たちの出してきたデータや画像も見飽きたものでした。
あちこちの学会でネタ被りが多発するようになっています。
オリンピックとパラリンピック関係はもう既に飽和したと思いますので、
御一考くださいと思いました。
初めて見る人も多いとは思いますけど、
ネタが被りすぎですね。今年だけでも3回は同じのを見ました。
最後の山本篤選手の実体験からの話は面白かったですが、
抄録集に載っている、
「1度の実験だけでは結果は見えても方法論は見えてこなく、考察はただの妄想でしかない」
という言葉に凝縮されている気がします。
5度の実験と8年の歳月によって分かったと書かれていますが、
話の中で出てきたデータなども解釈する人によって異なるだろうし、
もっとこうした方が良いのでは、という多くの意見が出そうな気がしまして、
その中でどうやって自分で取捨選択をしてきたのか、後悔は無いのかな、
ということを思いました。
障がい者だから健常者と同じ/異なった動作にすることが本当に良いのか、
という判断はとても難しい気がします。
昼のランチョンセミナーは筑波大学の征矢英昭先生による
「スポーツにおける中枢疲労問題に迫る
メタボロミクスの導入;脳グリコーゲン代謝やストレスホルモン蓄積に関連して」
という題でのお話でした。
長時間の運動における脳の疲労、脳グリコーゲンの減少といった話とその生理的意義について、
いつもながらの圧倒的な情報量でのお話でした。
マラソンでのトレーニングについてあれこれとやっているところですが、
(陸上競技関係者からのお話、お待ちしております)(広告・宣伝です。その4)
以前に聞いた征矢先生の話もかなりベースになっておりまして、
2時間切りプロジェクトなんかも多分この辺の話をちゃんと入手してやっているはずです。
それ故の給水方法だと思われますし。
お話の中では運動によって脳内でケトンが増え、乳酸が増え、
これらを脳が取り込んで使っているというものがあり、
乳酸の利用をすることが非常に大事であるということを述べられていました。
脳に関しては運動すればケトン体が出るみたいですが、
ケトジェニックな食事をしていたら乳酸が出にくくなりますので、
しっかりと糖質を摂取した食事をするのが大事そうだな(粉飴もらったな)と思いました。
結局のところ、トレーニング効果はいかに代謝物質を作り出すかという点も大事ですので、
いろいろな物質を作れるように食事などはアレコレと食べておく必要がありそうだ、
と。
後半の駅伝選手に関しての毛髪での測定は、思うところが多々あり、
今後の別のサンプルでの結果に期待と思いました。
二日目の午前に行われたポスターに関しても数点。
2-09陸上長距離選手を対象としたレジスタンストレーニングの効果
負荷が60%1RMを10rep×3setとか意味が分からないです。
クロカンを走れば掛かってしまう負荷レベルであり、設定からして謎です。
日本の長距離の人たちはウエイトといったら1RMの60%という妄想から、
いつになったら抜け出してくれるのでしょうか。必要なのは80~100%といった負荷ですよ。
2-11短距離走選手における大腿四頭筋内個別占有率とスプリントパフォーマンスの関連
フォームの要素とか排除しきれないので何とも言えません。
どうしてこうなったのかという推測が全く無く、とりあえず実験しました感しかないです。
短距離選手と一般の人を比較した中で、過去にトレーニングをした一般人がいたのか、
という点を聞き忘れました。
これはよくある話でして、トレーニングを今していなくても過去にしていた場合では、
かなり異なった結果をもたらす場合がありますので。
2-32アキレス腱長はスプリントパフォーマンスに影響するか
ポスターの結論が影響しないという断言したもので、とてもチャレンジ精神に溢れていました。
弾性その他を見ないで腱長だけで断言できる精神は若さですね。
付着部や筋との関係など見る要素は多々あると思いますので、
もっとしっかりやったら全く別の結果になるのではないかと思います。
速い選手は基本的にアキレス腱がクッキリとしていますし、
全く関係ないということは無いと思いますので...
2-41中強度有酸素性運動後の動脈機能の変化
水中での運動後の方が血流依存性血管拡張反応が高かったということで、
たまにプールで運動するようなトレーニングを入れて血管の機能を良くするのはありかな、
と思いました。
その他、多くの発表がありました。来年の学会も多くの発表がなされることを期待しております。
質問、ツッコミを恐れずにしっかりと準備して全てのことを打ち返せるようにご用意ください...
そして二日目の最後のシンポジウム4が、
「これからのトレーニング現場で求められる人材」
という題で河森直紀先生(フリーランス)、熊野陽人先生(東海大学)、藤田善也先生(早稲田大学)の三人が登壇されました。
学会という場においては河森さんのフリーランスという肩書が光ってましたね。
内容に関してまして河森さんの研究者マインドを持つ指導者が求められるという話で、
論文の筆者の結論と自分の解釈は違っても良いはずだし、
そうした異なるような解釈を出来る知識が必要だといった感じの話には共感できました。
論文に書いてあることを鵜呑みにしていてはダメですよ、
というのはよく思います。
先行研究で既にあるのに知らない筆者であれば内容のレベルは少し落ちたりしますし。
少し疑った視点で見るのは大事だと思います。
あとは選手が求めるのならば少しくらいトレーニング効果が低くても、
しっかりとやれるものを提供するのが大事、という点も現場では必要な話だと思います。
理想的なトレーニングはとてもキツイものだったりして、
やりたくない、モチベーションが上がらないということはよく経験しますし。
なお、この練習をやった後に刷り込まれたツライ練習という感覚をどのように取り除くか、
という話は夏場に開催されました運動生理学会で大学院時代の先輩や先生に話を聞き、
二人とも同じ答えでした。
食事などで楽しんで忘れる。
これでした。キツイ運動の後にストイックな食事はツラさが増してしまうだけになりかねないので、
その辺りもうまくコントロール出来ると良いと思います。
そんなわけで長々と雑感を書いてきましたが、
私の個人的に思ったことなどですので意見の相違などはあるかと思いますが、
伝われば良いと思います点は、
「お仕事の依頼お待ちしています」
ですので、よろしくお願い致します。
真面目な点も入れておきますと、
今回は大学生などの若い人と一緒に参加しまして解説などをしながら見ましたが、
他人に話を聞くというのが最も速く理解する方法だと思いますので、
ポスター発表などでは分からない点は話を聞くのが良いと思います。
分からないので教えてくださいとやっていれば、
ポスター発表している側も重鎮の先生が「不勉強なので教えてください」、
という恐ろしいツッコミを入れてくるのを防ぐことも出来ますので...
それでも分からなかった点はネットや本で調べれば、
なるほどこれがあれでこれがあれか、
となると思いますし。
私も征矢先生の話を聞いていて、
やはりフルクトース-1,6-ビスリン酸は大事だよね、
と思いましたし。
興味を持って情報を集めていると、
突如としてすべてがつながることもよくありますから。
分からないからこそ参加する、そういった気軽な感じで良いと思います。
特にトレーニング科学会は現場を意識した学会ですので。
まぁでも現場のことはあんまり分かってないんだろうなぁ、
という話なんかも多々ありましたけど。
そうした点も自分でデータの使い方などを理解すれば選手としてさらに成長できるのでは、
と思います。
そうした論文を読んだりデータを見ての解釈の仕方などを教えてくれるのが、
大学や大学院だと思いますので、まだその辺りの若手の皆様は、
しっかりと勉強して頂ければと思います。
そうした点を理解するにはどうしたら良いか、
どうやって学べば良いのかといったことをの紹介も出来る場を作れればな、
と思います(来年度のカンファレンスでそんなテーマを提案してみたいところです)。
かなり長くなりましたが、
何か役立つことがございましたら幸いです。
https://sites.google.com/view/spe-gym/ 走りや身体作りの指導など、各種のご依頼はジムのサイトよりどうぞ。小田急線、千歳船橋駅から徒歩3分のパーソナルジムです。
2017年10月10日火曜日
2017年9月13日水曜日
サッカーのエリート選手におけるスプリントと高い速度でのランニングの調査
High Speed Running and Sprinting Profiles of Elite Soccer Players.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28828087
J Hum Kinet. 2017 Aug 1;58:169-176. doi: 10.1515/hukin-2017-0086. eCollection 2017 Sep.
Miñano-Espin J, Casáis L, Lago-Peñas C, Gómez-Ruano MÁ.
Rampininiら(2007)年の研究によると、
サッカーの試合における仕事率は対戦相手の活動量に影響されることが分かっている。
走行距離の合計とその中での高負荷の走行距離は対戦相手が良いチームであると多くなる。
Bloomfield(2005)やLagoら(2010)では対戦相手の質が低いと走行距離が減ることを示している。
このことから、チームの質が高くなると選手の走行距離が減るということが考えられる。
しかし、チームの質が走行距離に影響を与えるかという研究は無いので、
2001-2002シーズンと2006-2007シーズンのレアルマドリードのデータを使って調べてみた。
スペインリーグの1~5位をとても強いチーム、6~10位を強いチーム、
11~15位を中間、16~20位を弱いチームとした。
この期間はリーグ戦、カップ戦、チャンピオンズリーグで94勝21分26敗であった。
時速24㎞より速いものをスプリント、時速21.1~24.0kmを高負荷の走行とした。
結果、レアルマドリードの選手はスプリントも高負荷での走行も相手チームと比較して少なかった。
これはスコアが優位な時には運動量が減るということが明らかになっていることからも分かるが、
先制点を取るとボールの保持が高まって運動量が減少し、走行速度も下がる。
一方で、失点すると勝つために得点をしようと運動量は高まる。
しかし、これは強豪であるレアルマドリードにおいては多く見られない。
試合の戦術を調査したJamesら(2002) や Lago and Martin (2007)では、
チームが負けている時の方が勝っている時よりもボール保持が多いことを示している。
勝っている時はポゼッションを減らしてカウンターやダイレクトプレーを行う
負けている時はゲームをコントロールしようとしてボールポゼッションが増えていく。
走りのパフォーマンスに関して、レアルマドリードは対戦相手による変化は見られなかった。
これは自分たちが試合においてパターンをキープしていたことが考えられる。
この辺りは他のチームを調べると結果は異なっているが、
それは戦略や選手の特性、予算、クラブ哲学などが異なるためであろう。
文献調査の中で明確だった点はサイドバックとサイドハーフが高負荷での距離をカバーしていたことである。
この研究では血液などのデータを見ていない。
シーズンによってどのように変化するかといった点も今後の課題として残る。
(FREE)
サッカーにおいては強いチームほど走らなくなるという傾向があるけれども、
レアルマドリードはどんな相手でも走っている。
それは勝つためのパターン、
戦術が明確であるからということが言えそうなデータがあるということですね
選手の能力などによっても変化するが、
常に同じようなパフォーマンスが発揮される能力の高い選手が集まっているからできることかもしれません。
ポゼッションが少ないから負けたという分析を目にすることも多いですが、
実際には勝っていると相手にボールを持たせて、カウンターから二点目を狙いにいく、
となるようですね。
こうした点を知ってトップ選手の試合を見て戦術を考えるというのは大事かもしれません。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28828087
J Hum Kinet. 2017 Aug 1;58:169-176. doi: 10.1515/hukin-2017-0086. eCollection 2017 Sep.
Miñano-Espin J, Casáis L, Lago-Peñas C, Gómez-Ruano MÁ.
Rampininiら(2007)年の研究によると、
サッカーの試合における仕事率は対戦相手の活動量に影響されることが分かっている。
走行距離の合計とその中での高負荷の走行距離は対戦相手が良いチームであると多くなる。
Bloomfield(2005)やLagoら(2010)では対戦相手の質が低いと走行距離が減ることを示している。
このことから、チームの質が高くなると選手の走行距離が減るということが考えられる。
しかし、チームの質が走行距離に影響を与えるかという研究は無いので、
2001-2002シーズンと2006-2007シーズンのレアルマドリードのデータを使って調べてみた。
スペインリーグの1~5位をとても強いチーム、6~10位を強いチーム、
11~15位を中間、16~20位を弱いチームとした。
この期間はリーグ戦、カップ戦、チャンピオンズリーグで94勝21分26敗であった。
時速24㎞より速いものをスプリント、時速21.1~24.0kmを高負荷の走行とした。
結果、レアルマドリードの選手はスプリントも高負荷での走行も相手チームと比較して少なかった。
これはスコアが優位な時には運動量が減るということが明らかになっていることからも分かるが、
先制点を取るとボールの保持が高まって運動量が減少し、走行速度も下がる。
一方で、失点すると勝つために得点をしようと運動量は高まる。
しかし、これは強豪であるレアルマドリードにおいては多く見られない。
試合の戦術を調査したJamesら(2002) や Lago and Martin (2007)では、
チームが負けている時の方が勝っている時よりもボール保持が多いことを示している。
勝っている時はポゼッションを減らしてカウンターやダイレクトプレーを行う
負けている時はゲームをコントロールしようとしてボールポゼッションが増えていく。
走りのパフォーマンスに関して、レアルマドリードは対戦相手による変化は見られなかった。
これは自分たちが試合においてパターンをキープしていたことが考えられる。
この辺りは他のチームを調べると結果は異なっているが、
それは戦略や選手の特性、予算、クラブ哲学などが異なるためであろう。
文献調査の中で明確だった点はサイドバックとサイドハーフが高負荷での距離をカバーしていたことである。
この研究では血液などのデータを見ていない。
シーズンによってどのように変化するかといった点も今後の課題として残る。
(FREE)
サッカーにおいては強いチームほど走らなくなるという傾向があるけれども、
レアルマドリードはどんな相手でも走っている。
それは勝つためのパターン、
戦術が明確であるからということが言えそうなデータがあるということですね
選手の能力などによっても変化するが、
常に同じようなパフォーマンスが発揮される能力の高い選手が集まっているからできることかもしれません。
ポゼッションが少ないから負けたという分析を目にすることも多いですが、
実際には勝っていると相手にボールを持たせて、カウンターから二点目を狙いにいく、
となるようですね。
こうした点を知ってトップ選手の試合を見て戦術を考えるというのは大事かもしれません。
2017年9月8日金曜日
USADAによる”こんなサプリメントはダメだと思え”
アメリカのアンチドーピング機関であるUSADAのSupplement 411に載っています、
これを見たら危ないサプリメントだと考えろ、
というものを簡単に。
https://www.usada.org/substances/supplement-411/recognize-risk-when-see-it/
411はアメリカでの電話による案内サービスですね。
URLを”それを見たら危険性を思い出せ”、なんてしているくらいですからね。
1. Avoid supplements that list prohibited substances on their label.
※禁止物質がラベルに書いてあるサプリメントは避ける。
禁止物質は別の呼び方でも表記されていることもあるので、しっかり確認する。
(メチルヘキサンアミンはジメチルアミン;DMAAなどとも呼ばれる)
2. Avoid products made by any company that sells products containing substances prohibited in sport.
※会社が売っている商品に禁止物質が含まれている場合、その会社の商品は避ける。
使おうと思う商品そのものには禁止物質が入っていなくても、
誤って混入するリスクが生じるので、その会社の商品を避ける。
3. Avoid muscle-building, weight-loss, sexual enhancement, and “energy” supplements.
※筋肉増強、体重減少、精力向上、エネルギーと書かれるサプリメントは避ける。
これらが書いてあるサプリメントには、
未承認の物質や、その他の物質が含まれている可能性が高い。
4. Watch out for companies that market products in any of the above categories.
※3の商品を販売している会社の商品には注意する
2と同じく禁止物質が使われていて、混入する恐れがある
5. Watch out for ingredients ending in -ol – diol or –stene, or ingredients that contain a lot of numbers.
※~olや~diolまたは~steneで単語が終わる、または多くの数字を含む成分には注意する
一部のSupplement会社は独創的に見せるために曖昧な名前で成分表を列記しているかも。
6. Avoid supplements that claim to treat or prevent a disease.
※病気を治療するなどと書いているものは避ける
7. Watch out for claims like “newest scientific breakthrough” or statements like “secret formula,” “money back guarantee,” “quick fix,” “used for thousands of years,” or “what the experts don’t want you to know”, or the use of impressive sounding scientific jargon.
※最新の科学による発見や秘密の配合、返金保証など強い印象を与えるものは避ける
8. Watch out for claims that a product is an “alternative to prescription medication.”
9. Be very skeptical of “clinical studies” or advertisements with lots of images of doctors, etc.
※医者などの画像による公告が多いものは避ける
サプリメントの有効性を示す研究の多くは貧弱な管理で、科学的では無い形で実施される。
企業は独自に実施した研究に対して、他の専門家による評価をさせないことがある。
10. Watch out for herbals, and the term “all natural.”
※全て自然の成分と書いてあるものは注意する
天然の成分が安全であるとは限らない。
天然のハーブから合成した成分を作り出すことが傾向として見られる。
メチルヘキサンアミンを含有する場合、ゼラニウムオイルと書いてあることが多い。
11. Avoid complicated products with tons of ingredients or ingredients that you don’t recognize.
※多くの成分が含まれていて複雑になっているものは避ける。
より多くの成分が含まれると製造中に禁止物質などが混合するリスクが高まる
12. Beware of products that have not been tested by a qualified third-party.
13. Beware of “Proprietary Blends.”
※独自の配合に注意する
独自の配合の場合は合計量だけを示せば良いのでここの成分の量が不明になる。
高価な成分をごく微量に配合して商品の価格を高くしたりする
14. Beware of products that have a lot of adverse events associated with them.
全文は元のリンク先にありますので、そちらを読んで頂くのが良いと思います。
アスリートにとって禁止物質の摂取というのは大きな問題になりますが、
まずは禁止物質が検出された商品は摂取しない、
禁止物質が検出された商品を製造している会社の商品は摂取しない、
そうした商品を広告・販売しているサイトは情報不足の可能性があるので注意する、
というのが基本ですね。
ここを怠った場合、 もし商品が汚染されていて検査で違反となった際、
注意不足として資格停止期間が長くなってしまうことが先例から考えられます。
これを見たら危ないサプリメントだと考えろ、
というものを簡単に。
https://www.usada.org/substances/supplement-411/recognize-risk-when-see-it/
411はアメリカでの電話による案内サービスですね。
URLを”それを見たら危険性を思い出せ”、なんてしているくらいですからね。
1. Avoid supplements that list prohibited substances on their label.
※禁止物質がラベルに書いてあるサプリメントは避ける。
禁止物質は別の呼び方でも表記されていることもあるので、しっかり確認する。
(メチルヘキサンアミンはジメチルアミン;DMAAなどとも呼ばれる)
2. Avoid products made by any company that sells products containing substances prohibited in sport.
※会社が売っている商品に禁止物質が含まれている場合、その会社の商品は避ける。
使おうと思う商品そのものには禁止物質が入っていなくても、
誤って混入するリスクが生じるので、その会社の商品を避ける。
3. Avoid muscle-building, weight-loss, sexual enhancement, and “energy” supplements.
※筋肉増強、体重減少、精力向上、エネルギーと書かれるサプリメントは避ける。
これらが書いてあるサプリメントには、
未承認の物質や、その他の物質が含まれている可能性が高い。
4. Watch out for companies that market products in any of the above categories.
※3の商品を販売している会社の商品には注意する
2と同じく禁止物質が使われていて、混入する恐れがある
5. Watch out for ingredients ending in -ol – diol or –stene, or ingredients that contain a lot of numbers.
※~olや~diolまたは~steneで単語が終わる、または多くの数字を含む成分には注意する
一部のSupplement会社は独創的に見せるために曖昧な名前で成分表を列記しているかも。
6. Avoid supplements that claim to treat or prevent a disease.
※病気を治療するなどと書いているものは避ける
7. Watch out for claims like “newest scientific breakthrough” or statements like “secret formula,” “money back guarantee,” “quick fix,” “used for thousands of years,” or “what the experts don’t want you to know”, or the use of impressive sounding scientific jargon.
※最新の科学による発見や秘密の配合、返金保証など強い印象を与えるものは避ける
8. Watch out for claims that a product is an “alternative to prescription medication.”
9. Be very skeptical of “clinical studies” or advertisements with lots of images of doctors, etc.
※医者などの画像による公告が多いものは避ける
サプリメントの有効性を示す研究の多くは貧弱な管理で、科学的では無い形で実施される。
企業は独自に実施した研究に対して、他の専門家による評価をさせないことがある。
10. Watch out for herbals, and the term “all natural.”
※全て自然の成分と書いてあるものは注意する
天然の成分が安全であるとは限らない。
天然のハーブから合成した成分を作り出すことが傾向として見られる。
メチルヘキサンアミンを含有する場合、ゼラニウムオイルと書いてあることが多い。
11. Avoid complicated products with tons of ingredients or ingredients that you don’t recognize.
※多くの成分が含まれていて複雑になっているものは避ける。
より多くの成分が含まれると製造中に禁止物質などが混合するリスクが高まる
12. Beware of products that have not been tested by a qualified third-party.
13. Beware of “Proprietary Blends.”
※独自の配合に注意する
独自の配合の場合は合計量だけを示せば良いのでここの成分の量が不明になる。
高価な成分をごく微量に配合して商品の価格を高くしたりする
14. Beware of products that have a lot of adverse events associated with them.
全文は元のリンク先にありますので、そちらを読んで頂くのが良いと思います。
アスリートにとって禁止物質の摂取というのは大きな問題になりますが、
まずは禁止物質が検出された商品は摂取しない、
禁止物質が検出された商品を製造している会社の商品は摂取しない、
そうした商品を広告・販売しているサイトは情報不足の可能性があるので注意する、
というのが基本ですね。
ここを怠った場合、 もし商品が汚染されていて検査で違反となった際、
注意不足として資格停止期間が長くなってしまうことが先例から考えられます。
2017年9月3日日曜日
毒素の排出と体重コントロールに”デトックス”は効くのか?
Detox diets for toxin elimination and weight management: A critical review of the evidence
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25522674
J Hum Nutr Diet. 2015 Dec;28(6):675-86. doi: 10.1111/jhn.12286. Epub 2014 Dec 18.
Klein AV, Kiat H
デトックスという用語は広まっており多くの人に認知されているが、
そもそもに毒素という言葉の定義が曖昧であり、
科学的なデータはほとんど無い。
臨床的に検査が行われた唯一のものはPCBsに暴露した消防士のデータであり、
対照群は置かれていない。
これと同様の手順で実験をしたサイエントロジーは血圧やコレステロールなどに有意な改善を見出した。
デトックスという言葉、すなわち”毒素”とは何かを考えてみる。
毒素と言うと工場などから排出される有害な物質などが思い浮かべられるだろうが、
そうした人体に明確な悪影響がある物質は厳しく規制されている。
もちろん、日常的に摂取している食品などに有毒な物質が含まれている事実はある。
ヒ素に代表されるような金属などを微量に摂取している。
これらは体内において排除するシステムがある。
もちろん、体内から容易には排除されない物質もあり、
脂肪組織はこれらを溜め込みやすい(鉛は20~30年が半減期)。
近年は食品にこれらの金属を取り除く機能があると考えられ、
ラットや魚でいくつかの研究が行われている。
人体においての研究が行われていないものでは、
これらが人間において効果があるかは不明である。
また、人体において行われている実験の中でも問題となるものが、
食品の摂取による蓄積された物質の移動が生じることである。
量が減ったとされても、
それが脳などに移動しているだけの例が確認されている。
興味深いデータとしてはスナック菓子の製造などにおいて使われるolestraが、
人体からPCBの排除を行うといったものがある。
体重減少に対するデトックスの効果を科学的に検証したものは無い。
そこで食事などの研究から推測すると、
デトックスに効くとされる食事はタンパク質の不足によってストレスを引き起こし、
コルチゾールが高められることで食欲が刺激される。
短期的には我慢によって体重減少が期待できるかもしれないが、
長期的には疑問が残る。
結論;デトックスに効果は無い
長々と多くの論文を引用しながらレビューをしていますが、
abstractで結論を出していました。
デトックスに効果があると企業は言っているけれども”毒素”の定義は曖昧であり、
科学的な説明は無い。
インターネットで言葉は普及しており様々な方法が宣伝されているが、
それらの中には健康を害するものも確認されており、
実際に被害も出ている、と。
明確にデータを出そうとしたのがサイエントロジーというのも、何ともまた...
体重を減らすためにやってる行為がストレスを与えて逆に食欲を高め、
太らせる可能性があるというオチもついていますし、
無理をするのは良くないということですね。
デトックス、効果なし
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25522674
J Hum Nutr Diet. 2015 Dec;28(6):675-86. doi: 10.1111/jhn.12286. Epub 2014 Dec 18.
Klein AV, Kiat H
デトックスという用語は広まっており多くの人に認知されているが、
そもそもに毒素という言葉の定義が曖昧であり、
科学的なデータはほとんど無い。
臨床的に検査が行われた唯一のものはPCBsに暴露した消防士のデータであり、
対照群は置かれていない。
これと同様の手順で実験をしたサイエントロジーは血圧やコレステロールなどに有意な改善を見出した。
デトックスという言葉、すなわち”毒素”とは何かを考えてみる。
毒素と言うと工場などから排出される有害な物質などが思い浮かべられるだろうが、
そうした人体に明確な悪影響がある物質は厳しく規制されている。
もちろん、日常的に摂取している食品などに有毒な物質が含まれている事実はある。
ヒ素に代表されるような金属などを微量に摂取している。
これらは体内において排除するシステムがある。
もちろん、体内から容易には排除されない物質もあり、
脂肪組織はこれらを溜め込みやすい(鉛は20~30年が半減期)。
近年は食品にこれらの金属を取り除く機能があると考えられ、
ラットや魚でいくつかの研究が行われている。
人体においての研究が行われていないものでは、
これらが人間において効果があるかは不明である。
また、人体において行われている実験の中でも問題となるものが、
食品の摂取による蓄積された物質の移動が生じることである。
量が減ったとされても、
それが脳などに移動しているだけの例が確認されている。
興味深いデータとしてはスナック菓子の製造などにおいて使われるolestraが、
人体からPCBの排除を行うといったものがある。
体重減少に対するデトックスの効果を科学的に検証したものは無い。
そこで食事などの研究から推測すると、
デトックスに効くとされる食事はタンパク質の不足によってストレスを引き起こし、
コルチゾールが高められることで食欲が刺激される。
短期的には我慢によって体重減少が期待できるかもしれないが、
長期的には疑問が残る。
結論;デトックスに効果は無い
長々と多くの論文を引用しながらレビューをしていますが、
abstractで結論を出していました。
デトックスに効果があると企業は言っているけれども”毒素”の定義は曖昧であり、
科学的な説明は無い。
インターネットで言葉は普及しており様々な方法が宣伝されているが、
それらの中には健康を害するものも確認されており、
実際に被害も出ている、と。
明確にデータを出そうとしたのがサイエントロジーというのも、何ともまた...
体重を減らすためにやってる行為がストレスを与えて逆に食欲を高め、
太らせる可能性があるというオチもついていますし、
無理をするのは良くないということですね。
デトックス、効果なし
2017年9月1日金曜日
継続して行うストレッチは筋腱の機械的な性質を変化させるか?
Can chronic stretching change the muscle-tendon mechanical properties? A review
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/sms.12957/abstract
Scand J Med Sci Sports. Accepted manuscript online:
Freitas, S. R., Mendes, B., Le Sant, G., Andrade, R. J., Nordez, A. and Milanovic, Z.
Scand J Med Sci Sports. Accepted Author Manuscript. doi:10.1111/sms.12957
レジスタンストレーニングは筋の肥大や筋束の長さ、羽状角の変化などを引き起こして、
筋腱複合体の性質を変化させることは知られている。
これらの変化はケガの発生などにも影響を与えることが知られているが、
ストレッチによる変化の研究はほとんどない。
継続してストレッチを実施することで関節可動域が広くなることは知られている。
これらの変化に関しては二つの考えが提案されており、
一つは筋腱が伸ばされることによる耐性がつくこと、
もう一つは筋の長さや弾性が弱まるといった機能的な変化である。
2~8週間の短期間で実施された研究結果を見ると、
その結果は異なっている。
そこにはストレッチのやり方や介入期間、強度といったことが影響している。
2016年8月までに出された論文からそうしたストレッチの研究を分析したレビュー。
26の論文が抽出され、平均して5.1週間の介入が行われている(3~8週間の範囲)。
1週間あたり1165秒が平均して行われた(270~3150秒の範囲)。
結果からして、
この短期間の介入では筋腱複合体の機能的な変化は起こらないと推測される。
レジスタンストレーニングなどを行った際にも初期は神経系の適応が起こることと同様である。
論文の多くで強度についての設定が不明確になっている。
この強度設定が高くてrestが短いなどの場合、変化は観測されるかもしれない。
また、最近の研究では筋膜と末梢神経が関節可動域の制限に影響を与えると指摘している。
Non-Muscular Structures Can Limit the Maximal Joint Range of Motion during Stretching.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28255938
さらに股関節と頭の位置は足首の関節可動域に影響を与えるというものや、
Effects of hip and head position on ankle range of motion, ankle passive torque, and passive gastrocnemius tension.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25676048
坐骨神経は足首や膝の位置によって影響を受ける
Non-invasive assessment of sciatic nerve stiffness during human ankle motion using ultrasound shear wave elastography.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26725218
生体において腓腹筋の深部筋膜と骨盤の動きの関連
In vivo relationship between pelvis motion and deep fascia displacement of the medial gastrocnemius: anatomical and functional implications.
などなど、筋膜や神経での多くの新しい研究が出てきており、
今後大きく見直されていくことが考えられる。
また、ストレッチにおける評価の定量化が難しいことから結果にバラつきがあるが、
市橋らの研究ではせん断波エラストグラフィを用いて4週間の静的ストレッチによってハムストリングスの柔軟性の改善を報告している
The effects of a 4-week static stretching programme on the individual muscles comprising the hamstrings.
http://jspt.japanpt.or.jp/eibun/2017/1703_1.html
(リンク先は理学療法士協会のもので日本語の解説がありますので)
ように、様々な手法が登場している。
今回のレビューにおいては6~8週間でのストレッチによって、
筋腱の構造的な変化は観察されず、
感覚の変化が主に起こっていると言える。
しかし、研究データが少ないことから、
末梢神経や中枢神経が影響をしている可能性があると思われるが、
どうしてこのような感覚の変化が起こっているのかも不明確なままである。
ストレッチによって身体が柔らかくなると言われていますが、
2か月ほど毎日のように実施した結果として起こる変化は、
筋肉や腱が伸びるようになったのではなく身体が痛みに耐えられるようになることだ、
と現状では言えるようですね。
タイトルの答えつぃては変化させない、となります。
ただ、筋膜や神経など様々な要素も影響をしていると考えられるので、
今後の研究に期待、と。
むしろストレッチの根本的な所に関する研究って少ないんだなという印象すら受けました。
そんなわけで、
トレーニングしても筋肉が簡単に肥大しないのにストレッチで筋肉や腱の構造がそんな簡単に変わってたまるか、
というメッセージを受け取りました。
ただ、途中に挙げた例のように、ハムストリングスの弾性変化はケガの予防になりますので、
ストレッチはタイミングを考えて適度に実施するのは大事かと思います。
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/sms.12957/abstract
Scand J Med Sci Sports. Accepted manuscript online:
Freitas, S. R., Mendes, B., Le Sant, G., Andrade, R. J., Nordez, A. and Milanovic, Z.
Scand J Med Sci Sports. Accepted Author Manuscript. doi:10.1111/sms.12957
レジスタンストレーニングは筋の肥大や筋束の長さ、羽状角の変化などを引き起こして、
筋腱複合体の性質を変化させることは知られている。
これらの変化はケガの発生などにも影響を与えることが知られているが、
ストレッチによる変化の研究はほとんどない。
継続してストレッチを実施することで関節可動域が広くなることは知られている。
これらの変化に関しては二つの考えが提案されており、
一つは筋腱が伸ばされることによる耐性がつくこと、
もう一つは筋の長さや弾性が弱まるといった機能的な変化である。
2~8週間の短期間で実施された研究結果を見ると、
その結果は異なっている。
そこにはストレッチのやり方や介入期間、強度といったことが影響している。
2016年8月までに出された論文からそうしたストレッチの研究を分析したレビュー。
26の論文が抽出され、平均して5.1週間の介入が行われている(3~8週間の範囲)。
1週間あたり1165秒が平均して行われた(270~3150秒の範囲)。
結果からして、
この短期間の介入では筋腱複合体の機能的な変化は起こらないと推測される。
レジスタンストレーニングなどを行った際にも初期は神経系の適応が起こることと同様である。
論文の多くで強度についての設定が不明確になっている。
この強度設定が高くてrestが短いなどの場合、変化は観測されるかもしれない。
また、最近の研究では筋膜と末梢神経が関節可動域の制限に影響を与えると指摘している。
Non-Muscular Structures Can Limit the Maximal Joint Range of Motion during Stretching.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28255938
さらに股関節と頭の位置は足首の関節可動域に影響を与えるというものや、
Effects of hip and head position on ankle range of motion, ankle passive torque, and passive gastrocnemius tension.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25676048
坐骨神経は足首や膝の位置によって影響を受ける
Non-invasive assessment of sciatic nerve stiffness during human ankle motion using ultrasound shear wave elastography.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26725218
生体において腓腹筋の深部筋膜と骨盤の動きの関連
In vivo relationship between pelvis motion and deep fascia displacement of the medial gastrocnemius: anatomical and functional implications.
などなど、筋膜や神経での多くの新しい研究が出てきており、
今後大きく見直されていくことが考えられる。
また、ストレッチにおける評価の定量化が難しいことから結果にバラつきがあるが、
市橋らの研究ではせん断波エラストグラフィを用いて4週間の静的ストレッチによってハムストリングスの柔軟性の改善を報告している
The effects of a 4-week static stretching programme on the individual muscles comprising the hamstrings.
http://jspt.japanpt.or.jp/eibun/2017/1703_1.html
(リンク先は理学療法士協会のもので日本語の解説がありますので)
ように、様々な手法が登場している。
今回のレビューにおいては6~8週間でのストレッチによって、
筋腱の構造的な変化は観察されず、
感覚の変化が主に起こっていると言える。
しかし、研究データが少ないことから、
末梢神経や中枢神経が影響をしている可能性があると思われるが、
どうしてこのような感覚の変化が起こっているのかも不明確なままである。
ストレッチによって身体が柔らかくなると言われていますが、
2か月ほど毎日のように実施した結果として起こる変化は、
筋肉や腱が伸びるようになったのではなく身体が痛みに耐えられるようになることだ、
と現状では言えるようですね。
タイトルの答えつぃては変化させない、となります。
ただ、筋膜や神経など様々な要素も影響をしていると考えられるので、
今後の研究に期待、と。
むしろストレッチの根本的な所に関する研究って少ないんだなという印象すら受けました。
そんなわけで、
トレーニングしても筋肉が簡単に肥大しないのにストレッチで筋肉や腱の構造がそんな簡単に変わってたまるか、
というメッセージを受け取りました。
ただ、途中に挙げた例のように、ハムストリングスの弾性変化はケガの予防になりますので、
ストレッチはタイミングを考えて適度に実施するのは大事かと思います。
登録:
投稿 (Atom)