2017年3月20日月曜日

肥満男性の睡眠前カゼインタンパク質摂取と脂質代謝

The Effect of Casein Protein Prior to Sleep on Fat Metabolism in Obese Men

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27472361

Nutrients. 2016 Jul 27;8(8). pii: E452. doi: 10.3390/nu8080452

Kinsey AW, Cappadona SR, Panton LB, Allman BR, Contreras RJ, Hickner RC, Ormsbee MJ

深夜の高カロリーな食事は体重増加や心血管代謝の悪化を引き起こすとされる(1~5)。


寝る30分前に150kcal以下でタンパク質が豊富な食事を摂取することは、

食欲の減少や体組成に有益であるとされる(7~13)。

カゼインタンパク質を摂取した(8)の研究では女性の場合、翌朝の満腹感を高め、

翌朝の安静時代謝は(9)の研究では高まっていたことが観察されている。

こうしたことからカゼインタンパク質の摂取が肥満男性に良い影響があると考えられるので実験してみた。

BMIが25以上、体脂肪率が25%以上の18~45歳の男性12人。

平均BMI36、平均体脂肪率が36%であった。

就寝前のタンパク質はカゼインを30g。

普段の食事などはtable2を参照。

結果、特に大きな変化は見られなかった。

ただ、筋肉の分解抑制などを考えると効果はあると思われる。


Free

女性では変化が見られた先行研究に対して男性では特に効果が無かった。

考察をいろいろとしていますが、体重の違いや睡眠の質が悪かったなど、

多くの要因が関係してくると推測されます。

肥満となっている時間が長くて健康的に悪化している面が多いのかな、

ということも考えられますし。

まぁサプリメントを摂取した程度で健康な身体にはならない、

というオチとも言えますかね。

普段の食事などもタンパク質多めにするなどをしたら、

また違いが大きくなるかとも思われますが。

2017年3月19日日曜日

運動をした後、就寝前にタンパク質を摂取すると夜間の回復が促進される

Protein ingestion before sleep improves postexercise overnight recovery

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22330017

Med Sci Sports Exerc. 2012 Aug;44(8):1560-9. doi: 10.1249/MSS.0b013e31824cc363.

Res PT, Groen B, Pennings B, Beelen M, Wallis GA, Gijsen AP, Senden JM, VAN Loon LJ.

レジスタンストレーニングは筋肉の合成と分解を刺激する(6,31,37)

合成の方が分解よりも刺激されるが(6,8,31)、バランスは負の状態である。

このタンパク質のバランスを改善するために運動だけでなく栄養の摂取が必要となる。

炭水化物の摂取は分解が進んでいくのを抑制するが(11,28)、

合成速度には影響を与えない(10,21,28)。

タンパク質の摂取はバランスを正の状態へと改善する(8,12,23,28,32,36)

多くの先行研究は一晩の絶食に対する反応を見ている。

(4)の研究では夜に運動を実施しタンパク質を投与した後の一晩での回復を調べた。

この研究では予想よりも夜間での回復は低く、通常の値よりも低くなった。

これには血中アミノ酸の上昇やインスリンの分泌が無かったことなどが関係していると思われる。

今回の研究では夜に運動をし寝る直前にタンパク質を摂取するとどうなるかを調べた。

15人のレクリエーション程度の活動を行っている若い男性を被験者とした。

16時45分に管理された夕食を食べ始めて実験の準備をし、

20時からレジスタンストレーニングを開始。

水平方向のレッグプレスとレッグエクステンションを8×8set、

55%を1set、65%を1set、75%を6set実施。

間の休憩は2分で、エクササイズを変える際の休憩は5分。

45分程度で終わらせて21時に採血などを実施し60gの炭水化物と20gのホエイタンパク質のドリンクを摂取。

23時30分にも採血を実施して同じドリンクを摂取して就寝。

結果はグラフなどを参照。

血中のロイシンは朝までコントロール群と比較して高かった。


Free

寝る前のタンパク質の摂取だけを評価していない点に注意ですかね。

夜にトレーニングをしたことで高まっていた筋肉の合成を、

トレーニング後のタンパク質摂取と就寝前のタンパク質摂取で高く維持させた、

となるかと思います。

学生や社会人でトレーニングをしている人にはよくあるパターン化と思います。

学校に行って、仕事して、終わってからのトレーニングをしてタンパク質を摂取して寝る。

先に食事をしている点も異なりますが、

まぁ運動をしてタンパク質を摂取して寝る前にもタンパク質を摂取してというのは、

かなり効果的だろうと推測されます。

カゼインの方が就寝時には分解を抑制するという話もありますが、

この辺りは組合せ次第ではホエイの方が効果的と言えるのでは?

という気もします。

継続して観察していきたいところですね。

2017年3月18日土曜日

高負荷なレジスタンストレーニングと高タンパク質な食事は身体組成を改善する(追跡調査)

A high protein diet (3.4 g/kg/d) combined with a heavy resistance training program improves body composition in healthy trained men and women – a follow-up investigation

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4617900/



J Int Soc Sports Nutr. 2015; 12: 39.

Jose Antonio, Anya Ellerbroek, Tobin Silver, Steve Orris, Max Scheiner, Adriana Gonzalez, and Corey A Peacock

国際スポーツ栄養学会(ISSN、筆頭者が創設者の1人)は身体的に活動的な人々は、

1日に体重あたり1.4g~2.0g程度のタンパク質の摂取がトレーニングによる適応を高めるとしている。

持久的なトレーニングや負荷の高いトレーニングを実施している人ではそれ以下でも良いというデータもある。

高タンパク質という言葉は定義が曖昧な点があり、

高タンパク質と言っているがエネルギーに対してやカロリーに対しての比率などがある。

この実験では体重あたり3g以上のタンパク質の摂取を行うとどうなるかを調べた。

被験者は73人のレジスタンストレーニング経験のある若い男女。

最終的には25人が途中離脱(table3)。

週に5日、土日をrestにした高負荷なレジスタンストレーニングを8週間実施。

日々のトレーニング部位はスプリットルーティン(table1、2)。

過去の実験ではトレーニング内容を固定しているものがあるが、

今回の実験では週ごとに変化をさせている。

結果、table4にある通り。

体重は通常のタンパク質摂取群で有意に増加。

除脂肪体重は両群ともに有意に増加。

脂肪は両群ともに有意に減少。

体脂肪率は両群とも有意に減少。

パフォーマンスは両群ともに上昇(table5)。

食事はカロリーの大きな増加が高タンパク質群で見られる(table6)。

血液データには大きな変化は無し(table7)。

先行研究ではタンパク質の利用効率が高まるから多くのタンパク質は不要というものもあるが(10)、

推奨量よりも多いタンパク質の摂取をさせた今回の実験によって体組成は大きく変化している。

MPS(筋肉のタンパク質合成)の短期的な変化は、

除脂肪体重の長期的な変化の予測には効果的でないことが示されている(11)。

https://tf-ver3.blogspot.jp/2017/03/blog-post_13.html

(12)の卵20gのタンパク質の研究は一食当たりのタンパク質量の制限の根拠とされるが、

ミルクやホエイなど他のタンパク質でのデータは無いし、

1日に60gしかタンパク質を摂取しないとなると、1日に消費される量よりも少なくなる。

そのため、時間経過で考える研究を行う必要があると考えられる。

体水分量は除脂肪体重量などに大きな影響を与えるものであるが、

今回の実験ではデータを取らなかったので除脂肪体重の変化には脱水が影響しているかもしれない。

この点は今後の課題となる。

体脂肪量が減った理由として考えられるのは(14)の論文にあるように、

タンパク質を多く摂取すると睡眠時と安静時のエネルギー利用量が上昇したというものがある。

しかし、この(14)の実験ではエネルギー消費と脂肪量の間に関係がなかったので、

他の要因があるかもしれない。(14)は運動を行っていないので。

高タンパク質で負荷の高いトレーニングをしている群は、

(17,18)にあるようなNEAT(非運動性熱産生)が高まるかもしれない。

この高タンパク質の結果、腎機能に異常が見られたということは無い。

より長い期間での摂取などについてはさらなる研究が必要であろう。

結論として、

今回の実験から一日あたりに必要なタンパク質量は体重あたり2g以上であろうと考える。

コントロール群でもタンパク質の摂取量が増えてしまったという問題があった。

食事の管理は一般の人に任せるのは難しい面がある。

今後の研究としてはよりトレーニングされるエリート選手での実験を行うべきである。


Free

タンパク質はどれくらい摂取すればよいのかという話です。

論者のJose Antonioは一貫して高タンパク質を摂取すべきと言っています。

実際にそれで腎機能にも問題は起こっていないので。

取りあえずは8週間では問題なしということが分かりましたし、

一日に体重あたりで3g以上のタンパク質を摂取することのメリットは多そうなので、

しっかりとタンパク質を摂りましょう、と言えそうです。

あとはどのタイミングで摂取したのかが疑問として残る、

というところですかね。

その点でも異なりそうです。

2017年3月17日金曜日

ホエイプロテインはカゼインやカゼイン加水分解物よりも食後の筋肉合成を高める

Whey protein stimulates postprandial muscle protein accretion more effectively than do casein and casein hydrolysate in older men

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21367943

Am J Clin Nutr. 2011 May;93(5):997-1005. doi: 10.3945/ajcn.110.008102. Epub 2011 Mar 2

Pennings B1, Boirie Y, Senden JM, Gijsen AP, Kuipers H, van Loon LJ.

高齢者では筋肉の合成量が下がると考えられるが、これにより筋肉が不足する状態になる。


アミノ酸やミルク、牛乳などは骨格筋のタンパク質合成を刺激する。

この刺激はタンパク質の量や種類によって異なる。

こうした知見を用いて高齢者ではどうなるかを実験してみた。

被験者は平均年齢74歳の男性48人。

深夜の絶食を経て朝の8時に集合して実験。

結果、フェニルアラニンはカゼイン加水分解物が最も高くなった。

血中のロイシンはホエイ、カゼイン加水分解物、カゼインの順に高かった。

血中のEAAはホエイが最も高く、カゼイン加水分解物は高くなるも120分後にはカゼインと同じに、

その後はカゼインよりも低くなった。

筋肉のタンパク質合成速度はホエイが最も高く、ロイシンとの間に相関が見られた。

これはホエイに最も多くロイシンが含まれていることも影響すると考えられる。

高齢者においてはホエイが筋肉を刺激するのに効果的であり、

食事その他を考えるのが良いであろう。


Free


2011年の論文です。

この辺りから適量はどれくらいなのか、という話にシフトしていった感じですかね。

筋肉の合成が弱っている高齢者の場合はホエイが良いと考えられるわけで、

分解を抑制したいという考えよりは増やしたいという考えに基づいているという言い方をするなら、

若者であってもホエイの摂取が効果的であると言えそうですが、

その点は食事やらトレーニングやらとの兼ね合いで変化するであろうから、

何とも明確なことは言えない、となります。

個々人の条件に当てはめる実験は難しいので、

この辺りの論文を大量に読んで推測していくしかないと思います。

そのためには最新のレビューの活用です。

2017年3月16日木曜日

カゼインとホエイによるタンパク質合成の違いをラベルしたロイシンで調査

Whey and casein labeled with L-[1-13C]leucine and muscle protein synthesis: effect of resistance exercise and protein ingestion

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21045172

Am J Physiol Endocrinol Metab. 2011 Jan;300(1):E231-42

Reitelseder S, Agergaard J, Doessing S, Helmark IC, Lund P, Kristensen NB, Frystyk J, Flyvbjerg A, Schjerling P, van Hall G, Kjaer M, Holm L.

ホエイとカゼインの違いは知られているが、

レジスタンストレーニングの後に与える効果が違うのかはよく分かっていないので実験してみた。

除脂肪体重(LBM)で体重あたり0.3gのタンパク質を摂取。

結果、バリンとアルギニンはカゼインの方が60分以降も有意に高い傾向がある。

EAAに関しては180分後だけカゼインの方が有意に高いが、摂取後のピークは有意に低い。

p70S6kの変化などはカゼインの方が高かったが、この辺りには不明な点もある。

結論として、カゼインもホエイも含まれるミルクがベストなのでは?と。


Free

2011年の論文ですが、ホエイが良いかカゼインが良いかというのを決着するには至りません。

運動を組み合わせていますが、早朝に実施していますし夜間の絶食明けです。

この辺りがどのような影響を与えているのかというのが不明です。

また、conclusionでも触れているように筋肉の合成を調べているのであって分解は見ていません。

なので結論が合成に良いとされるホエイと分解を抑制するとされるカゼイン、

この両方が含まれるミルクの摂取が高齢者などには良いのでは、となっています。

まぁ現実的に、どちらが良いとは言いきれないので、

両方を上手く摂取するのが良いのだろうな、と思う所です。