Acute post-exercise myofibrillar protein synthesis is not correlated with resistance training-induced muscle hypertrophy in young men.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24586775
PLoS One. 2014 Feb 24;9(2):e89431. doi: 10.1371/journal.pone.0089431. eCollection 2014.
Mitchell CJ1, Churchward-Venne TA1, Parise G1, Bellamy L1, Baker SK2, Smith K3, Atherton PJ3, Phillips SM
運動後に筋肉の合成が高まることは知られているが、
これが長期的なトレーニングによる筋肥大に関係しているかを明確にした研究は無い。
23人の健康な男性でレジスタンストレーニングの経験が一年以上ない被験者。
結論、
多くの実験で1時間後から6時間後のMPSを測定しているが、
そこで出た数値が16週間後の筋肥大を予測するわけではない。
トレーニングを継続しているうちに数値は変わってくるので。
Free
引用している論文に面白いものが多いので、
そこをしっかりと読み込むのが良いでしょうね。
よくある基本的なタンパク質合成の実験は、
だからどうした?その時点ではそうかもな、トレーニングしたら分からんよ、
という当たり前の結果とも言えそうです。
トレーニングによって反応がより高くなる人、
変化しない人など様々なパターンがあると思われますし。
反応がよりよくなって筋肥大しやすくなる人が才能のある人となるのでしょうが、
じゃあどういう人がそうなるのか、というのは引用にもあるmTOR関連の話だと思いますが、
まだまだ未解明ということで。
https://sites.google.com/view/spe-gym/ 走りや身体作りの指導など、各種のご依頼はジムのサイトよりどうぞ。小田急線、千歳船橋駅から徒歩3分のパーソナルジムです。
2017年3月13日月曜日
2017年3月12日日曜日
運動の様式によって血中のサイトカイン分泌は異なる
Dynamic and Static Exercises Differentially Affect Plasma Cytokine Content in Elite Endurance- and Strength-Trained Athletes and Untrained Volunteers
http://journal.frontiersin.org/article/10.3389/fphys.2017.00035/full
Front. Physiol., 30 January 2017
Leonid V. Kapilevich, Anna N. Zakharova, Anastasia V. Kabachkova, Tatyana A. Kironenko and Sergei N. Orlov
運動によってサイトカイン(IL-6など)が分泌されることは広く知られている。
ランニングによってIL-6が増加することは知られている。
運動の形態での違い、被験者の特性での違いを調べた。
若い男性でウエイトリフティング・トラック&フィールド(10人のよくトレーニングされた中距離選手)のトレーニング経験が6年以上ある人々と運動経験の無い人を2つに分けたで4群に分類。
デッドリフトオ50%ほどのおもりをおよそ1分ほど保持する運動(ストレングスとコントロール群)と、
自転車運動(中距離選手とコントロール群)をそれぞれ実施。
結果、保持する運動は血流を制限するなどの効果が出るため、
異なったサイトカインの分泌が確認された。
Free
サイトカインに関しては体内で生じることで良い面や悪い面が言われていますので、
トレーニングを細かく考えたいと思う人はしっかり勉強するべきだと思いますが、
何せ細かくなるので、そこまで気にしすぎないでも良いかな、
と思います。
持久的なトレーニングやっている人がIL-6の数値をどう捉えるか、
というのはもっと考えられても良いと思いますが。
膨大なデータを徹底整理するサイトカイン・増殖因子キーワード事典
http://journal.frontiersin.org/article/10.3389/fphys.2017.00035/full
Front. Physiol., 30 January 2017
Leonid V. Kapilevich, Anna N. Zakharova, Anastasia V. Kabachkova, Tatyana A. Kironenko and Sergei N. Orlov
運動によってサイトカイン(IL-6など)が分泌されることは広く知られている。
ランニングによってIL-6が増加することは知られている。
運動の形態での違い、被験者の特性での違いを調べた。
若い男性でウエイトリフティング・トラック&フィールド(10人のよくトレーニングされた中距離選手)のトレーニング経験が6年以上ある人々と運動経験の無い人を2つに分けたで4群に分類。
デッドリフトオ50%ほどのおもりをおよそ1分ほど保持する運動(ストレングスとコントロール群)と、
自転車運動(中距離選手とコントロール群)をそれぞれ実施。
結果、保持する運動は血流を制限するなどの効果が出るため、
異なったサイトカインの分泌が確認された。
Free
サイトカインに関しては体内で生じることで良い面や悪い面が言われていますので、
トレーニングを細かく考えたいと思う人はしっかり勉強するべきだと思いますが、
何せ細かくなるので、そこまで気にしすぎないでも良いかな、
と思います。
持久的なトレーニングやっている人がIL-6の数値をどう捉えるか、
というのはもっと考えられても良いと思いますが。
膨大なデータを徹底整理するサイトカイン・増殖因子キーワード事典
2017年3月11日土曜日
魚のタンパク質を摂取したラットは速筋が肥大し肝臓の脂肪と血中グルコースが減少した
Fish protein intake induces fast-muscle hypertrophy and reduces liver lipids and serum glucose levels in rats
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25198797
Biosci Biotechnol Biochem. 2015;79(1):109-16
Kawabata F, Mizushige T, Uozumi K, Hayamizu K, Han L, Tsuji T, Kishida T.
世界中で魚は食べられているが、スケトウダラ(Alaska Pollack)の摂取による筋肉の変化などは、
筆者らの先行研究により確認されている。
この変化は牛肉の摂取などと比べてどのように異なるかを実験して調べてみた。
ラットに与えた食事はカゼインと魚のタンパク質。
6週間の期間が過ぎた結果、
魚のタンパク質を摂取した群ではヒラメ筋のmyh7(ミオシン重鎖)の発現が減少し、
myh4の発現が増加した。
魚のタンパク質を摂取した群ではPGC-1αの発現も有意に減少させた。
この結果から遅筋が速筋化したとは言い切れないが、
速筋が多くなったことは観察された。
グルコースの代謝も増加したためエネルギーの利用が増えたことで、
肝臓の脂質が減少したと考えられる。
Free
九州大大学院の川端先生が日本水産株式会社(ニッスイ)にいた時に研究されていた内容の論文ですかね。
所属がニッスイになっているので。
ということで、瞬発系のアスリート、短時間で大きな力発揮をするアスリートは、
魚をたくさん食べるのが良い、
と言えるかもしれません。
筋肉の回復のためにホエイなどと言われていますが、
筋肉のタイプを変えるためには魚のタンパク質だ、
と言われる日が来るかもしれません。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25198797
Biosci Biotechnol Biochem. 2015;79(1):109-16
Kawabata F, Mizushige T, Uozumi K, Hayamizu K, Han L, Tsuji T, Kishida T.
世界中で魚は食べられているが、スケトウダラ(Alaska Pollack)の摂取による筋肉の変化などは、
筆者らの先行研究により確認されている。
この変化は牛肉の摂取などと比べてどのように異なるかを実験して調べてみた。
ラットに与えた食事はカゼインと魚のタンパク質。
6週間の期間が過ぎた結果、
魚のタンパク質を摂取した群ではヒラメ筋のmyh7(ミオシン重鎖)の発現が減少し、
myh4の発現が増加した。
魚のタンパク質を摂取した群ではPGC-1αの発現も有意に減少させた。
この結果から遅筋が速筋化したとは言い切れないが、
速筋が多くなったことは観察された。
グルコースの代謝も増加したためエネルギーの利用が増えたことで、
肝臓の脂質が減少したと考えられる。
Free
九州大大学院の川端先生が日本水産株式会社(ニッスイ)にいた時に研究されていた内容の論文ですかね。
所属がニッスイになっているので。
ということで、瞬発系のアスリート、短時間で大きな力発揮をするアスリートは、
魚をたくさん食べるのが良い、
と言えるかもしれません。
筋肉の回復のためにホエイなどと言われていますが、
筋肉のタイプを変えるためには魚のタンパク質だ、
と言われる日が来るかもしれません。
2017年3月10日金曜日
知ってる気になっている「ドーピング」
「ドーピングって何だか知っていますか?」
と質問した時に多く聞かれる答えは、
「使ってはいけない薬を使うこと」
というものでしょう。多分。きっと(私の今回のサンプル数n=10くらいです)。
では、この答えは正しいのか?
正しいと思いますという人は、ドーピングって何なのかを学んでもらいたいと思います。
「何が禁止されているかよく分からない」
と答えた人、
そうですね。そう思います。
何が禁止されているか分かりにくいというのもありますが、
現在の禁止物質リストはネガティブリストのような形式での採用となっています。
”引用”
大辞林 第三版の解説
基本的にドーピングは禁止だからね、
リストに載っていないから知らない、禁止されているような効果があったとは分からない、
2017年2月17日にスポーツ仲裁裁判所(CAS)に提訴しました。
まぁこの出来事はとても難しいわけでして、
「リストに載っていないもので禁止されている効果があるものを知っているか? 」
という質問をされて、はい知っています、と答えられる人は少ないでしょう。
それを専門で研究している人でないと難しいかと思います。
この出来事は我々の身近でも起こっておかしくない話です。
2017年からヒゲナミンが禁止物質に指定されたことで話題になりましたが、
ヒゲナミンはベータ2作用薬というものになります。
これはいきなりこのような機能を持つようになったわけではありません。
つまり、
ヒゲナミンは昔からずっと禁止されていた
ということです。
2017年からリストに掲載されただけです。昔からずっと禁止される機能を保有していたので、
禁止物質です。
今年から禁止リストに掲載されただけ
この点を理解してもらえれば。
歴史的な話を含めたまとめは日本体育協会さんの資料を見てもらっても良いと思います。
http://www.japan-sports.or.jp/Portals/0/data/ikusei/doc/k3-43.pdf
ではドーピングの禁止物質に関する話を少し詳しく。大雑把に。
まず、JADAが翻訳している日本語版の禁止表国際標準を見ますと、
http://www.playtruejapan.org/wp/wp-content/uploads/2016/12/3d0fcdb70bcf45de26a66192cd2a7dd7-2.pdf
S0.無承認物質
というのが一番最初に来ています。
”禁止表のどのセクションにも対応せず人体への治療目的使用が現在どの政府保健医療当局でも承認されていない薬物(例えば、前臨床段階、臨床開発中、あるいは臨床開発が中止になった薬物、デザイナードラッグ、動物への使用のみが承認されている物質”
これは常に使用禁止となっています。
簡単に言えば薬として市場に出回っていないもの、となりますかね。
莫大な金額を費やして政府や製薬会社がスポーツのために開発しても、
それは使用禁止です。
パフォーマンスが上がるけど死ぬ確率も高まることなどが分かりませんので。
これの問題点は検査で発覚しにくいということですかね。
新しい物質が開発されていた場合は当面は検知しにくいですし、
体内にあるものであったり排出されやすかったりした場合、
なお、検査と簡単に言いますが、全ての物質を検査できるわけでは無いので、
時間が掛かります。スイッチ一つで全ての構成成分を判別出来る、
とても便利な機械は今の所まだ無いです。
島津製作所
http://www.an.shimadzu.co.jp/topics/bridge/bridge19.htm
LSIメディエンス
http://www.medience.co.jp/doping/
だから試合前に検査をして違反のある選手は除外する、
ということが出来ないわけです。
さて、デザイナードラッグでwikipediaを見ますと、
テトラヒドロゲストリノン(THG、クリア)
アメリカ食品医薬品局(FDA)が当時はまだ認知していなかった薬ということです。
この記事の中にリガンドやアゴニストという言葉がありますが、
これがドーピングが効く理由です。
体内では様々な物質がレセプター(受容体)と結合して機能します。
このレセプターに結合する物質はリガンドと呼ばれます。
結合することで機能が発揮されるわけですが、
このリガンド(結合する物質)と似ている物質を結合させて効果を高めたり抑制させるのが、
ドーピングの狙いです。
結合して受容体を機能させるものをアゴニスト、
受容体の機能をさせなくするものがアンタゴニストと呼ばれます。
例えば、体内には筋肉を肥大させようとする刺激を出す物質がある一方で、
筋肉を肥大させないようにする物質もあります。
通常では肥大させようとする物質が決まっていますが、
これをさらに効果を高める物質を結合させてより効果的に筋肥大させるのがドーピングの効果、
となります。
筋肉を肥大させないようにする物質を働かせないようにするため、
機能を失わせるような結合をさせることで筋肉が肥大するようにしていく、
というやり方も出来るわけです。
体内で決まっている結合を無視して外部から似た物質を投与して結合させる。
これによって副作用などが生じる可能性が高いから(実際に高いことも多い)、
ドーピングは禁止されるわけです。
ここまでを理解してもらえば十分です。
お付き合いありがとうございました。
興味がある人は続きをどうぞ。
話を戻して禁止表を見ますと、
S1.蛋白同化薬
というのがありまして、さらにS1.1として蛋白同化男性かステロイド薬のリストが書いてあります。
ここを見てもらいますと、既に述べた通りに、
例としては以下の物質がある
という記載があります。さらにリストの下には
及び類似の化学構造又は類似の生物学的効果を有するもの
という文もあります。
何度も言うことになりますが、
リストに掲載されていなくても蛋白同化薬としての機能があるものはダメだからね、
何とは断定できないから例を挙げておくからね、
これは例だからね、気を付けてね、載ってなくても使ったらダメ
ということになります。
人間の身体の構造が100%解析されたわけでは無いですし、
地球上に存在する全ての物質の機能が100%解析されているわけではない現状、
ドーピングを完璧に防ぐことは不可能ということです。
規制物質を緩和しようと言う人もいるかもしれませんが、
何度も言いますが物質はリストに掲載されているだけであり、
その効果が問題になるわけです。
リストで述べた効果があるものは全部禁止、
という分かりやすい形にしていますが、その効果があるものがどれなのか未だに不明、
というのが現在の科学の状況ということも言えるかもしれません。人間の身体は複雑なので。
人体実験もしにくいので。
なお、
ドーピング規制薬物を利用したトレーニング適応の分子機構の解析
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17500421/
こういった研究も行われているわけです。
禁止物質は身体能力の向上に効果があることがほとんどだから禁止されているわけで、
じゃあどうして効果があるのか調べよう、
ドーピングとならない方法で選手を強くしよう、という研究をしている人もいます。
最新の研究を追わないとダメな理由の一つはこの辺りにあるかと思います。
S2.ペプチドホルモン、成長因子、関連物質および模倣物質
S3.ベータ2作用薬
S4.ホルモン調整薬および代謝調節薬
S5.利尿薬および隠蔽薬
以上が常に禁止されるものです。
細かく一つずつ見ても大変ですし長くなりすぎたので省略。
さらに試合においてのみ使用禁止というものが以下になります。
S6.興奮薬
S7.麻薬
S8.カンナビノイド
S9.糖質コルチコイド
先述のネスタ・カーターのメチルヘキサンアミンはS6の特定物質である興奮薬、
これに引っ掛かりました。現在はリストに記載されていますが、当時は記載なし。
さらには特定競技において禁止される物質としてアルコールとベータ遮断薬があります。
詳しくもっと知りたいという人はJADAのサイトなどを見ると良いと思います。
JADAアスリートサイト「PLAYTRUE」
http://www.realchampion.jp/
JADA(日本アンチ・ドーピング機構)
http://www.playtruejapan.org/
ということで、
ドーピングというのは人間の身体が本来持っている機能を変化させ、
より能力を高めようとする行為であり、
その効果があると考えられる物質は全て禁止されている。
副作用による死亡リスクの高まりその他の理由から禁止されているが、
その物質の効果を知ることで人間の持つ機能が分かるため、
興味深い研究対象でもある、
ということがなんとなく分かって頂ければ。
タンパク質の摂取などがドーピングとならない理由は、
人間が本来持っている機能を変化させるわけではないからですね。
筋肉増やすぞ!!というスイッチを強制的に入れるのがドーピングであり、
このスイッチが入らないと増える量の限界は決まっている
という感じで理解してもらえれば。
限界に効率よく近づけるために摂取するのたタンパク質の摂取となります。
タンパク質を摂取しても人間が本来持っている機能を活性化するだけだから、
ドーピングとはならない、と。
ただ、我々が普段食べている物の中にも強制的にスイッチを入れるものがあったりするかもしれず、
知らぬ間にドーピングしてしまっている可能性もありますよ、
だから少なくとも禁止リストくらいは知っておいて注意しましょう、
ということです。
追記
省略しましたが質問があったので追加を。
禁止方法という規定もありまして、
M1.血液および血液成分の操作
これは自己輸血などで知られているかと思います。自分の血液や他人の血液をいかなる量でも体内に入れることは禁止です。 血管内で血液成分を操作することも禁止です
M2.化学的および物理的操作
これは尿のすりかえなどを想定していますが、とにかく検体を変化させるようなことは禁止です。
また、静脈内注射や注入も6時間で50ml を超えるような投与は禁止です。救急車で運ばれている時や病院で受診している時、手術中など正当な医療手段である場合は大丈夫です。
ニンニク注射と呼ばれるもので引っ掛かるのがこれですね。
M3.遺伝子ドーピング
最近話題のやつですね。効果があるかは明確ではないが、核酸のポリマーや核酸類似物質の移入を禁じています。細胞の使用、というのも禁止されていますので、iPS細胞なんかはダメとなるのでしょう。
いつどこでドーピングに引っ掛かるのかは分かりませんので、競技者としては常に自分の身体に何が入ったかを確認しておく必要があると思います。ファンの人から手作りのお菓子を差し入れられても、検査対象となっている選手は食べると危険がある、ということになるので貰っても食べられない、そういう理解も広まってもらいたいですね。悪意のある人でなくても、知らずにドーピングに引っ掛かる物質を使ってしまっている可能性はあるので。
と質問した時に多く聞かれる答えは、
「使ってはいけない薬を使うこと」
というものでしょう。多分。きっと(私の今回のサンプル数n=10くらいです)。
では、この答えは正しいのか?
正しいと思いますという人は、ドーピングって何なのかを学んでもらいたいと思います。
「何が禁止されているかよく分からない」
と答えた人、
そうですね。そう思います。
何が禁止されているか分かりにくいというのもありますが、
現在の禁止物質リストはネガティブリストのような形式での採用となっています。
”引用”
大辞林 第三版の解説
ネガティブリスト【negative list】
①
禁止されている対象を列挙し、それ以外は許可するという方法で作成された一覧表。
基本的にドーピングは禁止だからね、
このリストに載っている薬以外でも、
以下に挙げるような効果があると思われるものは使ってはダメだからね、
となっています。
先日、陸上競技の4×100mリレーで2008年の北京オリンピックの金メダル獲得に貢献したジャマイカチームのメンバーの1人、
ネスタ・カーターからメチルヘキサンアミンが検出されたということで金メダルが剥奪されました。
このメチルヘキサンアミンが禁止リストに掲載されるようになったのが2010年です。
2008年時点ではリストに載っていませんが、先にも挙げたように
基本的にドーピングは禁止だからね、
このリストに載っている薬以外でも、
以下に挙げるような効果があると思われるものは使ってはダメだからね、
ということに引っかかります。
リストに載っていないから知らない、禁止されているような効果があったとは分からない、
このような反論をすることが出来ますので、
2017年2月17日にスポーツ仲裁裁判所(CAS)に提訴しました。
異議申し立てをして係争している間は出場停止などの処分も課されない方針のようです。
まぁこの出来事はとても難しいわけでして、
「リストに載っていないもので禁止されている効果があるものを知っているか? 」
という質問をされて、はい知っています、と答えられる人は少ないでしょう。
それを専門で研究している人でないと難しいかと思います。
この出来事は我々の身近でも起こっておかしくない話です。
2017年からヒゲナミンが禁止物質に指定されたことで話題になりましたが、
ヒゲナミンはベータ2作用薬というものになります。
これはいきなりこのような機能を持つようになったわけではありません。
つまり、
ヒゲナミンは昔からずっと禁止されていた
ということです。
2017年からリストに掲載されただけです。昔からずっと禁止される機能を保有していたので、
禁止物質です。
今年から禁止リストに掲載されただけ
この点を理解してもらえれば。
歴史的な話を含めたまとめは日本体育協会さんの資料を見てもらっても良いと思います。
http://www.japan-sports.or.jp/Portals/0/data/ikusei/doc/k3-43.pdf
ではドーピングの禁止物質に関する話を少し詳しく。大雑把に。
まず、JADAが翻訳している日本語版の禁止表国際標準を見ますと、
http://www.playtruejapan.org/wp/wp-content/uploads/2016/12/3d0fcdb70bcf45de26a66192cd2a7dd7-2.pdf
S0.無承認物質
というのが一番最初に来ています。
”禁止表のどのセクションにも対応せず人体への治療目的使用が現在どの政府保健医療当局でも承認されていない薬物(例えば、前臨床段階、臨床開発中、あるいは臨床開発が中止になった薬物、デザイナードラッグ、動物への使用のみが承認されている物質”
これは常に使用禁止となっています。
簡単に言えば薬として市場に出回っていないもの、となりますかね。
莫大な金額を費やして政府や製薬会社がスポーツのために開発しても、
それは使用禁止です。
パフォーマンスが上がるけど死ぬ確率も高まることなどが分かりませんので。
これの問題点は検査で発覚しにくいということですかね。
新しい物質が開発されていた場合は当面は検知しにくいですし、
体内にあるものであったり排出されやすかったりした場合、
チェックに引っ掛かりにくくなります。
なお、検査と簡単に言いますが、全ての物質を検査できるわけでは無いので、
時間が掛かります。スイッチ一つで全ての構成成分を判別出来る、
とても便利な機械は今の所まだ無いです。
島津製作所
http://www.an.shimadzu.co.jp/topics/bridge/bridge19.htm
LSIメディエンス
http://www.medience.co.jp/doping/
だから試合前に検査をして違反のある選手は除外する、
ということが出来ないわけです。
さて、デザイナードラッグでwikipediaを見ますと、
陸上競技のマリオン・ジョーンズの違反が出てきますね。
テトラヒドロゲストリノン(THG、クリア)
アメリカ食品医薬品局(FDA)が当時はまだ認知していなかった薬ということです。
この記事の中にリガンドやアゴニストという言葉がありますが、
これがドーピングが効く理由です。
体内では様々な物質がレセプター(受容体)と結合して機能します。
このレセプターに結合する物質はリガンドと呼ばれます。
結合することで機能が発揮されるわけですが、
このリガンド(結合する物質)と似ている物質を結合させて効果を高めたり抑制させるのが、
ドーピングの狙いです。
結合して受容体を機能させるものをアゴニスト、
受容体の機能をさせなくするものがアンタゴニストと呼ばれます。
例えば、体内には筋肉を肥大させようとする刺激を出す物質がある一方で、
筋肉を肥大させないようにする物質もあります。
通常では肥大させようとする物質が決まっていますが、
これをさらに効果を高める物質を結合させてより効果的に筋肥大させるのがドーピングの効果、
となります。
筋肉を肥大させないようにする物質を働かせないようにするため、
機能を失わせるような結合をさせることで筋肉が肥大するようにしていく、
というやり方も出来るわけです。
体内で決まっている結合を無視して外部から似た物質を投与して結合させる。
これによって副作用などが生じる可能性が高いから(実際に高いことも多い)、
ドーピングは禁止されるわけです。
ここまでを理解してもらえば十分です。
お付き合いありがとうございました。
興味がある人は続きをどうぞ。
話を戻して禁止表を見ますと、
S1.蛋白同化薬
というのがありまして、さらにS1.1として蛋白同化男性かステロイド薬のリストが書いてあります。
ここを見てもらいますと、既に述べた通りに、
例としては以下の物質がある
という記載があります。さらにリストの下には
及び類似の化学構造又は類似の生物学的効果を有するもの
という文もあります。
何度も言うことになりますが、
リストに掲載されていなくても蛋白同化薬としての機能があるものはダメだからね、
何とは断定できないから例を挙げておくからね、
これは例だからね、気を付けてね、載ってなくても使ったらダメ
ということになります。
人間の身体の構造が100%解析されたわけでは無いですし、
地球上に存在する全ての物質の機能が100%解析されているわけではない現状、
ドーピングを完璧に防ぐことは不可能ということです。
規制物質を緩和しようと言う人もいるかもしれませんが、
何度も言いますが物質はリストに掲載されているだけであり、
その効果が問題になるわけです。
リストで述べた効果があるものは全部禁止、
という分かりやすい形にしていますが、その効果があるものがどれなのか未だに不明、
というのが現在の科学の状況ということも言えるかもしれません。人間の身体は複雑なので。
人体実験もしにくいので。
なお、
ドーピング規制薬物を利用したトレーニング適応の分子機構の解析
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17500421/
こういった研究も行われているわけです。
禁止物質は身体能力の向上に効果があることがほとんどだから禁止されているわけで、
じゃあどうして効果があるのか調べよう、
ドーピングとならない方法で選手を強くしよう、という研究をしている人もいます。
最新の研究を追わないとダメな理由の一つはこの辺りにあるかと思います。
S2.ペプチドホルモン、成長因子、関連物質および模倣物質
S3.ベータ2作用薬
S4.ホルモン調整薬および代謝調節薬
S5.利尿薬および隠蔽薬
以上が常に禁止されるものです。
細かく一つずつ見ても大変ですし長くなりすぎたので省略。
さらに試合においてのみ使用禁止というものが以下になります。
S6.興奮薬
S7.麻薬
S8.カンナビノイド
S9.糖質コルチコイド
先述のネスタ・カーターのメチルヘキサンアミンはS6の特定物質である興奮薬、
これに引っ掛かりました。現在はリストに記載されていますが、当時は記載なし。
さらには特定競技において禁止される物質としてアルコールとベータ遮断薬があります。
詳しくもっと知りたいという人はJADAのサイトなどを見ると良いと思います。
JADAアスリートサイト「PLAYTRUE」
http://www.realchampion.jp/
JADA(日本アンチ・ドーピング機構)
http://www.playtruejapan.org/
ということで、
ドーピングというのは人間の身体が本来持っている機能を変化させ、
より能力を高めようとする行為であり、
その効果があると考えられる物質は全て禁止されている。
副作用による死亡リスクの高まりその他の理由から禁止されているが、
その物質の効果を知ることで人間の持つ機能が分かるため、
興味深い研究対象でもある、
ということがなんとなく分かって頂ければ。
タンパク質の摂取などがドーピングとならない理由は、
人間が本来持っている機能を変化させるわけではないからですね。
筋肉増やすぞ!!というスイッチを強制的に入れるのがドーピングであり、
このスイッチが入らないと増える量の限界は決まっている
という感じで理解してもらえれば。
限界に効率よく近づけるために摂取するのたタンパク質の摂取となります。
タンパク質を摂取しても人間が本来持っている機能を活性化するだけだから、
ドーピングとはならない、と。
ただ、我々が普段食べている物の中にも強制的にスイッチを入れるものがあったりするかもしれず、
知らぬ間にドーピングしてしまっている可能性もありますよ、
だから少なくとも禁止リストくらいは知っておいて注意しましょう、
ということです。
追記
省略しましたが質問があったので追加を。
禁止方法という規定もありまして、
M1.血液および血液成分の操作
これは自己輸血などで知られているかと思います。自分の血液や他人の血液をいかなる量でも体内に入れることは禁止です。 血管内で血液成分を操作することも禁止です
M2.化学的および物理的操作
これは尿のすりかえなどを想定していますが、とにかく検体を変化させるようなことは禁止です。
また、静脈内注射や注入も6時間で50ml を超えるような投与は禁止です。救急車で運ばれている時や病院で受診している時、手術中など正当な医療手段である場合は大丈夫です。
ニンニク注射と呼ばれるもので引っ掛かるのがこれですね。
M3.遺伝子ドーピング
最近話題のやつですね。効果があるかは明確ではないが、核酸のポリマーや核酸類似物質の移入を禁じています。細胞の使用、というのも禁止されていますので、iPS細胞なんかはダメとなるのでしょう。
いつどこでドーピングに引っ掛かるのかは分かりませんので、競技者としては常に自分の身体に何が入ったかを確認しておく必要があると思います。ファンの人から手作りのお菓子を差し入れられても、検査対象となっている選手は食べると危険がある、ということになるので貰っても食べられない、そういう理解も広まってもらいたいですね。悪意のある人でなくても、知らずにドーピングに引っ掛かる物質を使ってしまっている可能性はあるので。
アスリートの体重減少の簡単なレビュー記事(ゲータレードスポーツ科学研究所#159)
SSE #159: Protein and Exercise in Weight Loss: Considerations for Athletes
http://www.gssiweb.org/en/Article/sse-159-protein-and-exercise-in-weight-loss-considerations-for-athletes
Stuart M. Phillips, PhD
体重減少がアスリートのパフォーマンスにどのような影響を与えるかは、
まだ明確になっていないが、多くの事例から推測することが出来る。
30以上の論文のデータを提示しながら述べていますし、
簡潔に書かれているので読みやすいと思います。
他にも良い記事があるので、そちらも是非。
http://www.gssiweb.org/en/Article/sse-159-protein-and-exercise-in-weight-loss-considerations-for-athletes
Stuart M. Phillips, PhD
体重減少がアスリートのパフォーマンスにどのような影響を与えるかは、
まだ明確になっていないが、多くの事例から推測することが出来る。
30以上の論文のデータを提示しながら述べていますし、
簡潔に書かれているので読みやすいと思います。
他にも良い記事があるので、そちらも是非。
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