2017年5月4日木曜日

ボディビルコンテストへ向けた準備への栄養とコンディショニングの介入(ケーススタディ)

A nutrition and conditioning intervention for natural bodybuilding contest preparation: case study

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25949233

J Int Soc Sports Nutr. 2015 May 1;12:20. doi: 10.1186/s12970-015-0083-x. eCollection 2015.

Robinson SL, Lambeth-Mansell A, Gillibrand G, Smith-Ryan A, Bannock L

ボディビルは身体的な美しさを審査する競技であるが、

そこでは筋量の多さと脂肪の少なさが重要になる。

そのため、不適切なサプリメント使用や薬物の投与、

過度な栄養摂取不足による不健康な減量などが行われてしまう。

これらは身体に様々な悪影響を及ぼす。

短気になったり摂食障害(1)、骨密度の減少(2)、代謝障害(3)、

心血管系イベントの増加(4)、その他ホルモン分泌の異常によって様々な障害が生じる(5、6)。

これらによって筋肉の機能が低下していることなどが考えられる。 

近年、プロボクシング(8)、プロジョッキー(9)、国際標準の女性サッカー選手(10)において、

体組成やパフォーマンス目標の達成のための支援としてケーススタディが用いられている。

しかし、ボディビルではまだ確認されていないので、

14週間に渡って実施されたケーススタディについて示す。

被験者は21歳の男性で2年間の競技経験があるが、

それまでは雑誌やインターネットで得た情報からトレーニングやコンディショニングを実施していた。

介入前の一日の食事はtable1にある通り。

2128 (kcal)
炭水化物 212g
脂質28g
タンパク質257g

2週に1回のチートデイがある。

(14)の式を用いて安静時の脂質と炭水化物の酸化を測定し、

(21~23)の式を用いて一日のエネルギー消費を推定した。

table3に提供された食事例(トレーニング日と休みの日)を二つ示した。

Fig1に14週間でのPFCの構成の変化を示した。

近年の研究から(35、36)絶食状態でのトレーニングが脂質の利用を増加させるわけではないことが示されているが、

選手の感覚を重視して(トレーニング後に朝食を食べたい)早朝にトレーニングを実施した。

結果、14週間での体重減少は11.7kgとなり、

これは(40)で示す一週間で1%程度の減少と一致するものである。

しかし、体脂肪が6.7kg減少したものの除脂肪体重も5kgの減少を示してしまった。

これは一日あたり800kcalほど不足する食生活の中で、

タンパク質の摂取が明らかに不足したのが原因と考えられる。

Free


細かい内容は見てもらえばという感じですが、

結論から言えば失敗例と言えるものです。

何がダメだったのかを反省しているので、

次に活かすことが出来ると思いますが。

タンパク質の摂取が明らかに少ないのはサプリなどでの摂取が不足しているからでしょう。

食事のみで身体を作ることが難しい、というのを示したとも言えそうです。

除脂肪体重がここまで減ってしまうと、

減量その他の話でもなんか違うのでは、

という面も出ますし。

健康に重視したトレーニング、減量戦略となりますし、

まぁアプローチとしては良かったのでは。

なお、被験者は19人参加した大会で7位だったそうです。

2017年5月3日水曜日

運動により筋肉へダメージが生じた際の回復期におけるタンパク質摂取の効果

The efficacy of protein supplementation during recovery from muscle-damaging concurrent exercise

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28199799

Appl Physiol Nutr Metab. 2017 Feb 15:1-9. doi: 10.1139/apnm-2016-0626. [Epub ahead of print]

Eddens L, Browne S, Stevenson EJ, Sanderson B, van Someren K, Howatson G

運動の初心者や経験したことが無い運動を行うと筋肉にダメージ(EIMD)を与える。

そのため素早く回復させることは次のトレーニングに備えるためにも大事である。

この研究では24人のwell-trainedな自転車選手を用いて実施。

500mlの水分摂取を実施し、

プラセボ
ホエイタンパク質20gと微量の炭水化物を含む90kcal
炭水化物20gほどを含む90kcal

の三つを摂取。

自転車運動と60cmほどの台からのドロップジャンプによって筋肉へダメージを与えた。

結果、回復には大きな差は見られなかった。

トレーニングを積んだ人においての実験という点もあるが、

近年明らかになってきているようなタンパク質の摂取量からすると、

摂取量が少なかったことなどが原因であろうと考えられる。


Free

筋肉にダメージが明確に与えられるような負荷を掛けてしまうと、

回復に手間取るということが言えそうですが、

一方で一日のタンパク質摂取量が体重×1g程度なので、

もっと多くの摂取を実施することで違いは出るかもしれません。

まぁなるべく普段は筋肉に過剰なダメージを与えない方が良さそう、

というのが現状では言えること、となりますかね。

2017年4月29日土曜日

トレーニングと高脂質食による酸素摂取量の変化

Increase of aerobic capacity by submaximal training and high-fat diets.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8979456

Folia Med (Plovdiv). 1996;38(1):49-59.

Boyadjiev N


1996年の論文で少々古いものですが、


動物実験を実施。


食事のカロリー摂取の8割近くを脂質にしたグループは、


最大酸素摂取量の向上が見られた。


運動を組み合わせるとさらに向上した。

これには糖の利用よりも脂質の利用が進んだことが影響していると考えられる。



最大酸素摂取量の向上には高脂質の食事も効果的である、

という話です。

運動によって向上しない場合

脂質が不足しているからということも言えるわけですね。

こうした考えから、最大酸素摂取量が持久的なパフォーマンスの指標として有用なのか、

ということへの疑問は高まっています。

まぁ現在言われているような感じでは使えないであろう、という話です。

筋内脂肪の話なども組み合わせると、

適度な脂質が存在することで持久的なパフォーマンスは高まる、

脂質を貯蔵しようと人間の身体は適応する、

となります。

糖の貯蔵量を測定する方が効果的ということが言えるかと思います。

60~70%を超える酸素摂取量の運動の場合は確実に糖が必要となります。

2017年4月6日木曜日

適切な負荷のエキセントリックトレーニング(レビュー)

Moderate Load Eccentric Exercise; A Distinct Novel Training Modality

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27899894

Front Physiol. 2016 Nov 16;7:483. eCollection 2016.

Hoppeler H

持久的なトレーニングやレジスタンストレーニングは多くの実験が行われてきているが、

負荷設定が曖昧となっている。

エキセントリックトレーニングは使用するエネルギーが少ないが、

筋肉に与えられるダメージは大きくなる。

Blazevichらの2007年の研究ではエキセントリックな負荷によって羽状角が拡大することが示された。

Brughelli と Croninの2007年の研究からは、エキセントリックなトレーニングによって最適な長さ-張力関係とするため、

筋長をより長く適応させると考えられる(ケガの予防やパフォーマンスの向上といった適応)。

Chelly と Denisの2001年の研究でのホッピングジャンプテストは高い走速度は筋腱複合体の剛性と関係があることを示している。

LaStayoらの2000年の研究で適切なエキセントリックトレーニングが筋腱複合体の剛性を変化させることが示された。


Free

その他、いろいろとエキセントリックな負荷の掛け方とコンセントリックの違いが書かれています。

速く走るには筋肉も大事ですが腱も鍛えないと、という点をつまんでおきます。

2017年4月3日月曜日

運動のパフォーマンスとサーカディアンリズム(ホルモンと筋肉の適応)、2011年レビュー

Circadian rhythms in exercise performance: implications for hormonal and muscular adaptation

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24149547

J Sports Sci Med. 2011 Dec 1;10(4):600-6.

Teo W, Newton MJ, McGuigan MR.

24時間周期に起こる変化であるサーカディアンリズム(概日リズム)は、

多くの研究がなされている。

これを司るのは視床下部に位置する視交叉上核(SCN)である。

Hastings and Herzog 2004の研究では網膜から太陽の周期の情報を受け取るとされる。

ホルモンの分泌や体温の変化、神経機能活性化などはこの影響を受けている。

Cappaertの1999年の研究では、安静時の体温が最も高くなるのは夕方であり、

この時に身体の多くの機能が最も活性化されるとしている。

Baehr らの2000年の研究やHill らの1988年の研究、Kerkhofの1985年の研究などから、

人によって日内変動は異なり、朝方や夜型など様々なタイプが存在することも確認されている。


Guignardらの1980年の研究でテストステロンは早朝にピークがあり、

その後は下がっていくことが示された。

この研究ではコルチコイドも同様の変化があることが示された。

パフォーマンスと概日リズムの影響を調べるのは難しい。

太陽が出る、気温が上昇するなどの周辺環境によって影響を受けるし、

普段の日常生活の習慣も影響を与える。

個人の生物学的なリズムはそれらに影響を受けている。

 Starkieらの1999年の研究では、体温の上昇が炭水化物の利用を脂質よりも高めると示した。

これにより筋肉の活動が高まると考えられる。 

Taylor らの2011年の研究では、

早朝のトレーニングではウォーミングアップの時間を20分長くすることで力の発揮が弱まることを防げると示した。

この体温の上昇から、筋力の発揮には体温が関係していると言える。






しかし、Atkinsonらの2005年の研究では早朝にウォーミングアップをして自転車を漕ぐ実験をしたが、

体温が高まってもパフォーマンは夕方に行ったものに比べて低かった。

この時には耳の温度が夕方の方が高いことが確認されている。

Martinらの1999年の研究やGuetteらの2005年の研究では、

筋内で起こる様々な変化(カルシウムイオンの放出など)が概日リズムで影響を受けていると示した。

運動がテストステロンやコルチコイドの概日リズムに影響を与えるかを調べた研究は少ない。

Häkkinenらの1988年の研究では8人のトレーニングを積んだリフターを被験者として実験し、

午後のトレーニングが高いテストステロンを示すことを明らかにした。

Sedliakらが2007年に報告したデータでは連続したトレーニングによりテストステロンとコルチゾールが減少することを示した(有意な変化では無かった)。

Bird and Tarpenningの2004年の研究では夕方にレジスタンストレーニングを行うことは、

テストステロンとコルチゾールの比を改善し筋肥大に効果的であると示したが、

この実験には条件の問題が見られるので不明な点も多い。

Teoらの2011年の研究ではテストステロンとコルチゾールの概日での変動は、

力とパワーの発揮に関係が無いことを示した。

これはWestらの2010年の結果にある、

成長ホルモンやIGF-1、テストステロンの変化と力の発揮や筋肥大は無関係ということと同じである。

しかし、テストステロンとコルチゾールの概日リズムによる変化と力発揮などに関して、

不明な点はまだまだある。


Free 

取りあえず、成長ホルモンやIGF-1、テストステロンなどのホルモンが筋肥大と無関係の可能性が高い、

という論文があることや、一日の変動を気にして夕方にトレーニングをしないといけない、

そう思っている人は特に気にしないでもよさそうですよ、

ということが言えると思います。