2017年4月2日日曜日

トレーニングを積んでいる人の筋肥大に関して、巷で言われる負荷やホルモンの 影響はほとんどない

Neither load nor systemic hormones determine resistance training-mediated hypertrophy or strength gains in resistance-trained young men

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27174923

J Appl Physiol (1985). 2016 Jul 1;121(1):129-38. doi: 10.1152/japplphysiol.00154.2016. Epub 2016 May 12.

Morton RW, Oikawa SY, Wavell CG, Mazara N, McGlory C, Quadrilatero J, Baechler BL, Baker SK, Phillips SM

(4)の研究で1RMの30%~90%の負荷が筋肉のタンパク質合成を刺激する最低の負荷であると示した。

(50)や(51)の研究から、レジスタンストレーニングによって生じる循環するホルモンの量は筋肥大にほとんど影響していないことが示された。

簡単に言うと(4,28,33,50,51)の研究結果から、


負荷やホルモンは筋肥大に影響を与えていないということが言える。

しかし、(4,28,50,51)は非鍛練者での実験であるため、

レジスタンストレーニングを実施している人であればさらに影響が低いと推測される。

そこで本研究ではトレーニングを積んでいる人を被験者として実験を実施した。

少なくとも2年以上のトレーニング経験がある49人の健康で若い男性が参加。

高回数群は20~25repで3set、1RMの30~50%

低回数群は8~12repで3set、1RMの75~90%

とし、実験期間中に負荷は調整を実施した。

運動後には30gのホエイタンパク質を摂取。

結果、どちらの群でも筋肥大は認められ、大きな差は無かった。

ベンチプレスの1RMだけは低回数群の方が伸びが良かった。

循環するホルモンの分泌量は実験前後で違いは無かった。

より高負荷なレジスタンストレーニングの方が筋肥大に効果的では無いと言える。

オールアウトするような回数の継続が効果的であるということが示された。

(1,20,41)にあるような高負荷低回数と(5,28,44)にあるような低負荷高回数を組み合わせることが、

もっとも効果的であることを裏付ける実験であると言える。

(52)の研究ではトレーニング後のGHやIGF-1などは筋肥大や筋力向上と相関がほとんど無いことを示したが、

今回の実験でも同様の結果となった。

Free


筋肥大や筋力向上に成長ホルモンやIGF-1は無関係
rep数を多く繰り返すことが筋肥大や筋力向上には重要
rep数を多くすることで時間や総運動量が異なる
ネットで検索すると成長ホルモンやらIGF-1を多くするsetの組み方というのは未だに多くでますが、

残念でした

という感じですかね。

はい。

毎度ながらの広告になりますが、

既に書いた通りですがそんなものには全く触れておりません。

https://note.mu/jshira/n/n46007f6f8f73

今のところ考えられる最も適切な形になっていると思います。

あとはもっと食事に気を遣おう、

ということになっていくかと思います。

腸脳相関とかさらに研究が進みそうな気がしますね。

2017年4月1日土曜日

GI値、GL値の測定における問題と食事が起こす影響(レビュー)

Glycemic index and glycemic load: measurement issues and their effect on diet-disease relationships

http://www.nature.com/ejcn/journal/v61/n1s/full/1602942a.html

Eur J Clin Nutr. 2007 Dec;61 Suppl 1:S122-31.

Venn BJ, Green TJ.

GI値という考えはJenkinsらの1981年の論文によって発表された。

摂取してすぐに血中のグルコースを上昇させるかという指標である。

GI値は糖尿病患者の食事を考えるために用いられており、

低いGI値の食品を摂取することは高いものより良いとされている。

GI値の考えに量との組み合わせも加えてGL値というものも考え出された。

現在に至るまでに多くの研究がなされており、

肥満や糖尿病の予防などに低GI値の食品は効果的だとされるが、

疑問も多く指摘されてきた。

GIの測定方法は1998年にFAOとWHOによって示された。

55未満が低、55~69が中、70以上が高とされている。

スイカはGI値が低いものとされていないが、食品中に含まれる炭水化物の量は少ない。

GIが高いものでも摂取量が少なければGLを低くすることが出来る。

食後の血糖値の変化に影響を与える要因は様々ある。

2005年にBrounsらは糖尿病患者などの数値ではなく、

通常の糖耐性の人々での実験を用いることを主張した。

Readらの1986年の研究やSuzukiらの2005年の研究では、

どれだけ噛むかということでも数値が変化する可能性を主張した。

またテスト食品として飲料が多く用いられるが、

実際には調理された食品を摂取するのであり、

その際には保管温度、調理方法や時間、温度などによっても結果は異なると考えられる。


1998年のFAOの実験では被験者数が6人必要とされたが、

この根拠は示されていない。

Brounsは2005年の研究で10人の被験者が必要としたが、

実際にはもっと多くの人数で実験が行われるべきであろう。

同じ2005年の行われたHenryらの実験では8種類のジャガイモを用いて試したが、

GI値は56~94の幅に収まった。

より正確な値を推測するためには多くの被験者に対して複数回の実験をするのが必要であるが、

これには多くの費用がかかることから行われていない。

Sugiyamaらの2003年の研究では、米と牛乳が一緒に摂取されると、

米を単独で食べる時よりもGI値が有意に下がることを示した。

Henryらの2006年の研究では、

ジャガイモにチーズを加えると、GI値が93から39へと劇的に減少することを示した。

これらの結果から、炭水化物に脂質やタンパク質を加えるなど、

食事の組み合わせによってGI値は大きく変動すると考えられる。

Mettlerらの2007年の研究ではトレーニングの状態によってGI値が異なることを示した。

GI値の高低がインスリンの分泌に影響を与えることは示されていないが、

McAuley と Mannの2006年の研究では食物繊維がインスリン感受性に好影響を与えることを示している。

GIやGLは不明な点がとても多く、研究データが出ている場合にのみ適応が出来そうである。


Free

10年前のレビューですが、

この時点でGI値というのは何の役に立つのか分からない、

と言える状態です。

研究にも穴が多く、

古いデータに矛盾があるものを強引に使っている感じが否めません。

こうした10年前のレベルからアップデートした知識がどれだけ採用されているのか。

多分、

巷で使われている教科書などはこの10年前のレベルで止まっているはずですので、

何の役にも立たないGI値を使ってアレコレと語っているでしょう。

この10年間にどんな変化があったのか、

ここで示された役に立てるためにはもっと多くの研究が必要という点が埋められたのか。

はてさて。

2017年3月31日金曜日

筋肉のタンパク質合成とグリコーゲン合成における運動後の栄養管理の役割(2010年レビュー)

The role of post-exercise nutrient administration on muscle protein synthesis and glycogen synthesis

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24149627

J Sports Sci Med. 2010 Sep 1;9(3):354-63. eCollection 2010.

Poole C, Wilborn C, Taylor L, Kerksick C.

3/29日の記事が2015年のレビューですので、

より新しいものとなっています。

新しいレビュー記事は古いレビューで書いてある点をそのまま記載し、

最初の研究をちゃんと読んでいなかったりしますので、

レビューを読んで出てきたレビューをさらに遡る作業は大事です。

その間に考え方、捉え方が変わって理解が異なるということも起こりますので、

注意が必要です。

2017年3月30日木曜日

炭水化物とタンパク質の摂取が運動直後の筋グリコーゲンの回復を高める

Early postexercise muscle glycogen recovery is enhanced with a carbohydrate-protein supplement
http://jap.physiology.org/content/93/4/1337

J Appl Physiol (1985). 2002 Oct;93(4):1337-44.

Ivy JL, Goforth HW Jr, Damon BM, McCauley TR, Parsons EC, Price TB.

筋グリコーゲンは中~高強度の運動においては必須のエネルギー源である。

(1,2,9,11)の研究で示されているように、筋グリコーゲンが不足することは中~高強度運動の制限要因となる。

運動後の筋グリコーゲンの回復については多くの研究がなされており、

摂取タイミングを検討したもの(13,18)や摂取する頻度を検討したもの(10)、

摂取する量(3,12,14,15)、摂取するサプリの種類(6,21,24、30,32)など、

様々な角度から調査されている。

(32)の研究では炭水化物とタンパク質の同時摂取が4時間後の回復を高めることを示した。

(7,15,27,29,30)など同時摂取について調べた研究は増えている。

しかし、これらにはカロリー摂取量が一致しないなどの問題もあるので、

今回の実験では同等のカロリー摂取量として実施した。

被験者は7人のトレーニングを積んだ若い男性の自転車選手。

夕食で統一された食事を摂取して、

翌朝に何も食べない状態で2時間の自転車運動を実施。

最大酸素摂取量の65~75%になるように運動中に負荷を調整。

運動後に摂取したのは以下の3種類。

炭水化物240kcal、タンパク質84kcal、脂質54kcal
炭水化物324kcal、脂質54kcal
炭水化物240kcal、脂質54kcal


これらを472mlの液体に溶かして運動直後と2時間後の2度摂取。

結果、炭水化物とタンパク質を含んだものが他の二つよりも有意に回復が促された。

4時間後の筋グリコーゲンの回復は
46.8%
31.1%
28.0%

となった。

今回の実験では頻度が高くないため、

運動後15分毎や30分毎などより高い頻度で摂取させた過去の実験と同様にすると、

今回の結果で出たタンパク質のメリットは期待できなくなる可能性もある。

(30,32)の研究では運動後の筋グリコーゲンの回復はインスリンの分泌を促すことが重要であるとした。

しかし近年行われた(4,16,20,25)の研究ではインスリンが不要である可能性を示している。

(31)の研究ではアルギニンを炭水化物に添加することで筋グリコーゲンの貯蔵速度を高めるとしている。

今回の研究から炭水化物とタンパク質の同時摂取の有用性は認められる。


Free

過去には炭水化物を摂取することでインスリンを分泌させるのが大事とされていましたが、

この論文が出された2002年の時点で”近年”では否定される、

となっているわけですね。

そんなインスリンが分泌されることで筋グリコーゲンの回復が~、

という話が未だにしっかりと残っているというのも如何なものかな、というところです。

2017年3月29日水曜日

持久的な運動やレジスタンストレーニングにおけるグリコーゲンの利用可能量と筋肉の適応(レビュー)

Glycogen availability and skeletal muscle adaptations with endurance and resistance exercise

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26697098

Nutr Metab (Lond). 2015 Dec 21;12:59. doi: 10.1186/s12986-015-0055-9. eCollection 2015.

Knuiman P, Hopman MT, Mensink M.

運動は大まかにレジスタンスなものと持久的なものに分類される。

持久的な運動はさらに高負荷なインターバルトレーニングのようなものと、

長時間の低負荷運動に分類される。

レジスタンストレーニングは筋肥大と筋力向上を目的とし、


持久的なトレーニングは骨格筋の酸素利用量を高めて運動の継続時間を長くすることを目的とする。


運動中のエネルギー源としては炭水化物と脂肪が主に用いられる。

(9,10)の研究のように近年ではグリコーゲンが少ない状態でのトレーニングが研究されている。

(17,18) では低グリコーゲンの状態での持久的なトレーニングはパフォーマンスの向上に有効であるとしている。

(19)の研究ではレジスタンストレーニングにおける低グリコーゲン状態はミトコンドリアの生成シグナルを増やすという結果を見せているが、

(20)の研究ではグリコーゲンレベルは関係ないとしている。

(21)の研究では筋グリコーゲン量の低下がカルシウムイオンの小胞体からの放出を抑制し、

筋力の低下を引き起こすとされている。

(25)では低グリコーゲンの状態で持久的な運動を開始すると、

早期に筋小胞体からのカルシウムイオンの放出が抑制されると示した。

最大酸素摂取量の30~65%程度の段階ではエネルギー源として脂質の利用が多いが、

(28)の研究にあるようにグリコーゲンの貯蔵量が一定レベルを下回ると、

脂質などのエネルギー源があっても運動における筋肉の活動は制限されるようになる。

(30)にあるように、低グリコーゲンはアミノ酸の全身への放出を増やし、

脂質の酸化を増加させ、運動強度を低下させる。

(10)の研究にあるように、低グリコーゲンの状態は脂肪の代謝を活性化し、

ミトコンドリアを生成するための刺激を増加させるとされているが、

多くの研究がなされているわけではない。

(17)の研究ではトレーニングをしていない被験者では運動時間の増加や、

クエン酸シンターゼの活性の増加を見つけた。

(12,16)ではトレーニングをしている被験者での実験結果を示した。

その結果、大きな効果は特に認められなかった。

最大酸素摂取量の70%程度での運動中の脂肪利用の増加は、

低グリコーゲン群で認められた。

これらの結果から、低グリコーゲン状態でのトレーニングは脂肪の利用を高めることは言えそうである。

(18)の実験では1日に2回の運動の間における炭水化物の摂取は、

短時間の高強度インターバルトレーニングに大きな違いを生じさせないことを示した。


レジスタンストレーニングは筋肉の大きな収縮が行われるが、

この時に筋グリコーゲンがエネルギー源となる。

(38)にもあるように大部分のATPの産生はグリコーゲンの分解によるものである。

レジスタンストレーニングによるグリコーゲンの減少は(37、39,40,41)の研究にあるように、

およそ24~40%ほどとされるが、運動の強度や時間などの要素によって決定される。

レジスタンストレーニングにおける低グリコーゲンは、

持久的な運動における低グリコーゲンに比べると研究が少ない。


持久的な運動によってPGC-1αが活性化する。

PGC-1αはミトコンドリアのサイズや酸化能力に影響するが、

この活性化はAMPKによって調整される。

(55)にあるように持久的な運動はATPを多量に用いるためADPやAMPを増加させる。

その結果、(56,57)のようにATPを回復させる(利用を減らし産生を増やす)ためにAMPKが活性化される。

運動時に筋グリコーゲンが減少するとAMPKが活性化する。


ミトコンドリアの増加にはp53も関与していると考えられる。

(66,67)からミトコンドリアの遺伝子発現に刺激を与えるとされる。

(68)の実験から低グリコーゲンの状態での運動はp53を上方に制御すると考えられるが、

この実験はグリコーゲンだけでなくカロリーも制限しているものなので、

さらなる調査が必要である。


レジスタンストレーニングは酸素利用を高めないと過去の研究ではされていたが、

近年の研究結果からは酸素の利用もある程度高めることが示されている。

これには年齢による違いなどはない(73,74)。


持久的な運動後のグリコーゲンとタンパク質の合成に関する研究は少ない。

(80)によると筋グリコーゲンの低下はNOの利用を倍以上に減らし、

筋肉の分解とアミノ酸の酸化を増加させる。

(82)の研究では低グリコーゲン状態で運動を開始すると、

運動中の筋肉合成が減少し分解が増加することを示した。

持久的な運動にとって低グリコーゲンによってミトコンドリアの増加が期待できるが、

筋肉の分解が増加するのは問題である。

(83,84)の研究では運動中や運動後のアミノ酸やタンパク質の補給により、

筋肉の分解を抑制できるとしている。


レジスタンストレーニングにおける筋肉の合成や分解は複雑である。

Akt-mTOR-S6Kは筋肉の合成経路の一つであるが、

多くの研究がなされている(85,86)。

(87)の研究ではグリコーゲンの利用が低いと安静時や運動時のAMPK活性が高まるとしている。

(88)では低グリコーゲンが筋肥大に関する遺伝子を活性化させないとしている。

(89)の研究ではmTORの活性は示すものの筋肉合成にはグリコーゲンの貯蔵量が影響しないことを示した。

この結果は(90)の研究でエネルギーの減少が筋肉合成を最大で19%ほど弱めるという結果が出たことと比べると興味深い。


持久的な運動とレジスタンストレーニングを同時に行うことが、

両方の効果を高めるわけではないことが多くの実験で示されている(91~96)。

しかし(97,98)の研究では持久的な運動だけを行うよりも効果が高いとしている。

この辺りはまだまだ研究が必要と考えられる。

近年では多くの実験が絶食後に行われているため、

実際に運動を行う状態とは異なっているという指摘がなされている。


Free

適度につまんだので、

興味のある方は全文をどうぞ。

いくつかの論文から言えそうなことは、

筋肉を増やしたい人は筋グリコーゲンが多い状態でレジスタンストレーニングをするべきであり、

持久力を高めたい人は少ない状態でもトレーニングすると効果が高いが、

筋グリコーゲンが多い状態でもトレーニングしないとダメ、

ということでしょう。