2017年2月25日土曜日

運動中と運動後の筋肉合成と分解(レビュー)

Human muscle protein synthesis and breakdown during and after exercise

http://jap.physiology.org/content/106/6/2026



Vinod Kumar, Philip Atherton, Kenneth Smith, Michael J. Rennie

運動後には筋肉の合成が高まるが、分解の方が上回ってしまう。

これを逆転させて合成を高めるにはアミノ酸、タンパク質の摂取である(111)。

運動前にタンパク質を摂取することで運動中の筋肉合成が高まる(7)。

人の持久的な運動中にタンパク質の合成が下がるという明確なデータはほとんどないが、

自転車運動の後に筋肉合成のシグナルが高まっていることが示されている(123)

運動後のタンパク質の摂取タイミングはいつがベストなのかは様々な意見があるが、

数時間が経つよりはなるべく早い方が良い(40,53,67)

ホエイとカゼインとソイではホエイが最も良いとされる(53,124) 。

などなど。

Free


筋肉の分解と合成、食事やタイミングなど、多くの点についてまとめているレビューです。

2008年と少し古いですが、基本的な点を理解するには良いと思います。

なお、明日は2012年のレビュー「栄養と運動によるタンパク質合成」です。

2017年2月24日金曜日

インスリンによる筋肉分解の抑制は高齢者のサルコペニアの予防に貢献するかもしれない

Blunting of insulin inhibition of proteolysis in legs of older subjects may contribute to age-related sarcopenia


https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19740975

Am J Clin Nutr. 2009 Nov;90(5):1343-50. doi: 10.3945/ajcn.2009.27543. Epub 2009 Sep 9.

Wilkes EA, Selby AL, Atherton PJ, Patel R, Rankin D, Smith K, Rennie MJ.

高齢者は筋肉の合成よりも分解の方が上回る結果、サルコペニアが引き起こされる。

インスリンは筋肉の分解に効果があると言われているが、

その機序は明確でなく効果が無いというデータも示されている。

低いインスリンの分泌はどの程度筋肉の分解を抑制するか調べてみた。

男性4人、女性4人の若者と高齢者のグループで実験(BMIは若者24:高齢者26)。

結果、高齢者はインスリンが食事程度で高まるインスリンの分泌では筋肉の分解が抑制されにくい。

高齢者のインスリンを調べたデータと異なる点が出たのは、今回の実験の参加者のBMIが高いからと推測される。

高齢者になるとアミノ酸にもインスリンにも反応が悪くなる。

(Free)


肥満などによってインスリンの応答が悪くなることが将来的なサルコペニアを引き起こす原因になるかもしれない、ということですね。

まぁ運動して筋肉に刺激を入れ、食事もタンパク質量を多くしてアミノ酸濃度を高めてインスリンが分泌されるようにすることで、

健康寿命も長くなるということが考えられそうです。

食べても反応しないから若者よりも高齢者の方がサルコペニアの予防のためにも、

より多くの食事をしっかりと、となりますかね。

運動をして刺激を入れていれば防げると思いますので、

食事と運動を若い頃から実践して健康な老後を目指しましょう、と。

2009年時点ではインスリンによる予防が効果的と言われていたという点も。

2017年2月23日木曜日

筋肉合成とmTORのシグナルは時間経過により不一致が生じる

Muscle full effect after oral protein: time-dependent concordance and discordance between human muscle protein synthesis and mTORC1 signaling

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20844073

Am J Clin Nutr. 2010 Nov;92(5):1080-8. doi: 10.3945/ajcn.2010.29819. Epub 2010 Sep 15

Atherton PJ, Etheridge T, Watt PW, Wilkinson D, Selby A, Rankin D, Smith K, Rennie MJ.

イントロ部分は(1~8)の論文を示してタンパク質やアミノ酸による筋肉合成の歴史に触れつつ、

アミノ酸はmRNAの転写を刺激するが多くの研究はmTOR1についてなされているという前振り。

そしてホエイタンパク質を48g、EAAにして20gの摂取によってどのような変化が時間の経過とともに生じるかを調査。

健康な若い男性8名での実験。

結果としては、タンパク質の摂取によるMPS(筋合成)は45~90分でピークを迎え、

以降は180分でベースラインに戻る。

しかし、筋合成のシグナル(”ie, S6K1, 4EBP1 phosphorylation, and eIF4E•eIF4G”) は

上昇したままであった。

これに関してはアミノ酸が血中や筋中にあっても利用できないシグナルが出ている可能性がある。

小胞体ストレスなど何かしらの要因があるかもしれないが、さらなる実験が必要。

(Free)


筋肉の合成はアミノ酸の摂取によって刺激されるということが言われていますが、

その理由というのがイマイチ分かっていないということですね。

2010年の論文ですが現状もそんなに大差はないかと思います。

人間の身体は複雑に制御されているから、

ということですかね。

血中や筋中のアミノ酸濃度を高くすることが筋肉の合成には大事であり、

ある程度の状態に戻るとシグナルはあっても筋肉の合成はなされない。

この点を見ると、 一度に多くのタンパク質を摂取して刺激をし、

再び180分後に摂取して刺激をし、

というのは効率が最も良いという事実が再度認識されるかと思います。

食事での筋肉合成の刺激と運動での刺激はどちらがより強いのか、

といった視点も必要になるかと思います。

まぁアミノ酸の濃度が高くならないと食事からの刺激が不足する、

という点を理解しておけば良いかと思います。

参考までに2009年のを。日本語です。

http://www.nncj.nestle.co.jp/ja/scientificpublications/repositoryofnutritionreviews/nutritionandphysicalexercise

2017年2月22日水曜日

血中へのアミノ酸注入による刺激と筋肉での影響

Disassociation between the effects of amino acids and insulin on signaling, ubiquitin ligases, and protein turnover in human muscle.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18577697

Am J Physiol Endocrinol Metab. 2008 Sep;295(3):E595-604. doi: 10.1152/ajpendo.90411.2008. Epub 2008 Jun 24.

Greenhaff PL, Karagounis LG, Peirce N, Simpson EJ, Hazell M, Layfield R, Wackerhage H, Smith K, Atherton P, Selby A, Rennie MJ.

血中へのアミノ酸の注入と、それに伴うインスリンの変化を観察。

インスリンはアミノ酸とは無関係に筋肉の分解を抑制する効果がある(10、23)ようだが、

アミノ酸が十分にある状態でインスリンが高まることによる影響はよく分からないので、

健康な若い8人の男性で実験して観察してみた。

結果として、インスリン濃度が高まってもmRNAには大きな変化がなく、

筋肉の合成の指標として使っている場合は注意が必要である。

インスリンがタンパク質分解を制御しているということは言えるかもしれないが、

アミノ酸とインスリンを見ただけでは何も言えない。



インスリンは筋肉の分解を抑制するかどうかはイマイチ分からないという感じですね。

ただ、トレーニングを翌日も行うといった観点からすると、

インスリンを分泌させてグリコーゲンの貯蔵を増やすといったことは必要ですので、

インスリンは筋肉肥大を刺激しないから不要、

という短絡的な話に持ち込まないようにした方が良いでしょうね。

2017年2月21日火曜日

PGC-1に関するレビュー

Peroxisome Proliferator-Activated Receptor γ Coactivator 1 Coactivators, Energy Homeostasis, and Metabolism
https://academic.oup.com/edrv/article-lookup/doi/10.1210/er.2006-0037

Endocr Rev (2006) 27 (7): 728-735. DOI: https://doi.org/10.1210/er.2006-0037
Published: 01 December 2006

Christoph Handschin  Bruce M. Spiegelman

2006年のものですが、

基本的な話を押さえるのには理解しやすいかと思います。

まぁ今から10年以上前のものなので、

日本語訳された教科書などもありますので、

日本が良いという方はそちらを読んだ方が。

ただ、参考文献などはどちらにせよ英語ですので、

基礎研究を見ておきたいという人はこれで良いかと思います。