2017年2月10日金曜日

運動後の糖質とタンパク質の同時摂取が回復とその後の運動に与える影響

Influence of Post-Exercise Carbohydrate-Protein Ingestion on Muscle Glycogen Metabolism in Recovery and Subsequent Running Exercise
http://journals.humankinetics.com/doi/pdf/10.1123/ijsnem.2016-0021

International Journal of Sport Nutrition and Exercise Metabolism
Volume:26 Issue: 6 Pages:572-580 doi: 10.1123/ijsnem.2016-0021
Abdullah F. Alghannam Dawid Jedrzejewski James Bilzon
Dylan Thompson Kostas Tsintzas James A. Betts


6人の持久的なwell-trainedの人を使い、

最大酸素摂取量の70%の負荷で疲労困憊になるまで走り、

運動後には糖だけor糖+タンパク質の群を作り、

4時間での回復を見て再び70%の運動を実施。

どちらにおいても回復や疲労困憊までの時間は違いが無かった。



先行実験などから考えると、

摂取した糖の量(タンパク質群は体重あたり0.8g、糖質のみは1.2g)が少ないような気がしますね。

体重あたりで1gを超えてくるともう少し違いが出るのかな、

と思いました。

タンパク質も体重あたりで0.4gなので、

もっと多くするとどう違うのかが興味深い所です。

今後に期待。


2017年2月9日木曜日

全身冷却法のレビュー(冷水に浸かる場合との比較)

The Effectiveness of Whole Body Cryotherapy Compared to Cold Water Immersion: Implications for Sport and Exercise Recovery
http://www.journals.aiac.org.au/index.php/IJKSS/article/view/3001/2498

International Journal of Kinesiology & Sports Science
ISSN 2202-946X Vol. 4 No. 4; October 2016

Michael Holmes, Darryn S. Willoughby


全身を冷却するクライオセラピー(Whole Body Cryotherapy)は、

冷水に浸かるアイシングとの間に違いがあるかを調べたレビューです。

結論部分にありますが、

WBCはまだまだ新たな手法であり、

しっかりとした実験データは存在していないということと、

アイシングと呼ばれるものにも効果が怪しいものがある、

ということですね。

運動後の筋肉の炎症などに対して冷やすことが効果的なのか、

といった点など、まだまだ未解明な部分が多い感じです。

(Free)

2017年2月8日水曜日

スプリントの加速とスレッドトレーニング(ブログ記事)

とてもしっかりとしている記事です。

http://jbmorinsportscience.blogspot.jp/2016/12/sprint-acceleration-mechanics-and.html?spref=tw


これが万能なダッシュ力を鍛えるトレーニングではなく、

軽いものも重いものも目的に応じてトレーニングとして組み込む。

当たり前の話ではありますが忘れがちなことです。

2017年2月7日火曜日

第13回乳酸研究会雑感

2017年2月4日土曜に東京大学駒場キャンパスにおいて第13回の乳酸研究会が開催されましたので、それの内容を簡単に。

・マッカードル病から考える筋グリコーゲンの重要性
 北岡 祐(東京大学大学院総合文化研究科)

マッカードル病では筋グリコーゲンの分解ができない。
運動中は乳酸値が上昇しない。
子供の頃に運動障害が見られることで判明することが多い。
ミオグロビンが尿に出る。
CK値が高く筋損傷が起こっている。

マッカードル病以外にも垂井病など、糖を分解する機序に問題がある病気が糖原病として見つかっているが、有効な治療方法は特に無い。ポンぺ病のように薬があっても投与を継続する必要がある。運動が効果を示す例が出てきているので、医者の監督下で様々な取り組みが行われ始めている、といった感じでした。


・運動後の骨格筋グリコーゲンの回復を促進させる栄養摂取方法の探索
 高橋祐美子(東京大学大学院総合文化研究科)

JONAS BERGSTRÖM & ERIC HULTMAN
Nature 210, 309 - 310 (16 April 1966); doi:10.1038/210309a0
当日、他の演者も含めて何回か登場した図

筋肉のグリコーゲンの回復には1日かかる
減ったグリコーゲンを素早く回復させるにはとにかく食べる(多過ぎて厳しい)
タウリンの投与で動物では回復が高まった(投与量が非常に多い?)
高脂肪食がグリコーゲンの回復にどのような影響を与えるか(全部Free)
Andrew L. Careyらの実験

Frøsig Cらの実験

Yeo WKらの実験


高脂肪食に期待はあまり出来なさそうであろうと思われます。
とにかく食べて回復させる、翌日には筋グリコーゲンが少ないから高いパフォーマンス発揮は無理、というのを理解しておけば問題なかろうかと。試合の続く場合には素早く食事をして回復させる、高橋英幸先生の発表にあったように、体重あたり1gの糖質(体重60㎏の人なら60gでカロリーを考えると240kcalほどを糖質だけで摂る)をしっかり摂取、でしょうか。それ以外の手法は特に期待できなさそうな感じですので、むしろ運動中の利用を減らす方を考えるべきでしょうね。


・筋グリコーゲンの視点からの疲労予防と回復
  高橋英幸(国立スポーツ科学センター)

筋肉のグリコーゲンの減少はカルシウムの放出も低下させる
Gejl KDら
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24091991

1日に体重あたり12gの糖の摂取での変化を見る
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27231310

持久的な運動後の糖質摂取量での回復の違い
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22968309

グルコースの摂取による持久的なパフォーマンスの変化
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20299609


フルクトースとグルコースの混合物が良さそうということで。フルクトースは肝グリコーゲンの回復には効果的となると、脳・筋・肝のそれぞれでベストなものは違ってくる可能性はありますが、取りあえず多種類のものを食べれば良し、ということで。



・陸上競技選手を対象としたフィットネスチェックにおける乳酸カーブテスト  
 とMARTの活用
 松林武生(国立スポーツ科学センター)

私からは特に何もありません


・パラリンピックに向けた科学的トレーニングの実際
  平松竜司(日本スポーツ振興センター)

パラリンピックは障害の軽い重いによって区分があるが、その区分の中でも障害の軽い選手が有利である。トレーニング効果によって変化が起こるのか、運動によって機能改善が起こってパフォーマンスが上がったのかが分かりにくいので、定量化した分析がやりにくい。

パラリンピックに関しては、まぁそうですよね、という感じでした。全く同じ条件になっていることは少なさそうですし、トレーニング効果を把握しやすい人もいれば、要因が複雑すぎて分かりにくい人もいるとなると、経験として次に残しても必ず使えるとは限らないわけですし。多くの経験を何かしらの形で残しておいて、選択していくしかなさそうという、当たり前の感想になりますが、これを意識してやるのも難しいですね。背景を細かく伝えないと再現性は著しく下がりますし。



総合討論では最後に少し発言させて頂きましたが、時間を意識して短くしたので、言いたかったことに少々。

現場において論文を読んで、研究者に話を聞いて、最先端のものを取り入れている人は、それなりにいると思います。論文をどのように現場に落とし込むかは難しいですが、これは多角的に考える・見ることをしっかりすれば適応は可能だと思います。要因をしっかりと考えることが出来れば、乳酸などの数値を確認出来れば。研究を専門としている人に話を聞く限界はありますし、研究と現場を上手く橋渡しが出来れば、と思って活動を増やしつつある今日この頃でございます。その際のネックとなっているのが対価の支払いという現実ですね...知りたい知識がこれであると提示されたら、それに対して答える。でも、知りたいことが漠然とし過ぎていると、論文やら研究データを示すことは出来ません。強くなりたい!!というだけではなく、何をどうやって強くなりたい、というのが示されれば、それが最善かどうかの答えや、最善でなくても要求に沿った答えを返すことなどは出来ますし。論文をたくさん読み、先駆者の話をたくさん聞く、そうやって蓄積された多くのデータがある所にはあって、注ぎ込まれている、ということを知って頂ければ。現場の方が圧倒的に進んでいる、という面もありますので...それは根性とか経験だけでなく、データ、実験、論文を読むなど様々なことをやって先に進む努力をしている、ということです。ただ、それらが確実に正しいかとは言えない、定量化されていないし競争相手に知られたくない、出す意味も無いから外に出てこない、ということは多いです。とにかく良い結果さえ残せば現場と呼ばれる所では評価されますので。相関、有意差、エビデンス。いらないです。結果が評価の全てです。この論文によればこのやり方は正しいと言われても、結果が残せなければ科学と呼ばれたりするものが足を引っ張ったと言われるだけです。基礎研究を見て遺伝子レベルから代謝の経路を考えて、という細かいレベルから私は見ていますが、そうしないとどこに間違いがあるのか分からない、把握できないという面も多々あります。直接、単品で役に立つ研究というものはほとんどありませんから、いかにして組み合わせるか。この組み合わせのためには多くのデータが必要だと思います。そうしたデータ、経験を上手く共有しゼロから作り直さないでも済むようにしていくのが大事でしょう。持久的な能力を最大限に高める中で筋量を増やす。こうした厳しい話を最大限に効率化して実現させる。無理と思うことを細かく探って考えて結果につながるようにする。そうした作業をやっている人たちも少なからずいますよ、ということをお伝え出来れば、と思います。

まぁ研究に対する信用が低い(研究者に対する信頼が無い)、データを出す側の説明能力など様々な問題もあると思います。この数年、科学的なトレーニングの実践をやりたい、という相談は受けますが、最低限を学んでもらわないと何も出来ないこともあります。「科学的な」という言葉で何でも解決出来ると思われている、その辺の誤解も解いていかないとダメだと思います。そして現場と呼んでいる所が何も学んでいない、工夫もしていない場だと思っている人々には認識を改めて欲しいな、と思いました。何もやってない所もあれば、とても先端のことをやっている所もある。それらを一括りにしてしまうのも如何なものかな、と。

2017年2月6日月曜日

負荷の無いレジスタンストレーニング動作の効果

The acute and chronic effects of "NO LOAD" resistance training

http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S003193841630436X

Counts BR, et al. Physiol Behav. 2016.
Counts BR, Buckner SL, Dankel SJ, Jessee MB, Mattocks KT, Mouser JG, Laurentino GC, Loenneke JP
筋肥大には高い負荷が必要とされているが、

負荷をかけずに動作だけをしても肥大するのかを確認。

肥大はした。

Free


近年は低負荷でもオールアウトさせると筋肥大するという実験報告があり、

それを再確認するというものですね。

筋肉の収縮による代謝物質の生成が影響を与える、

刺激となるということが考えられますね。

この辺りはまだまだ研究途上ということで。