2017年2月22日水曜日

血中へのアミノ酸注入による刺激と筋肉での影響

Disassociation between the effects of amino acids and insulin on signaling, ubiquitin ligases, and protein turnover in human muscle.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18577697

Am J Physiol Endocrinol Metab. 2008 Sep;295(3):E595-604. doi: 10.1152/ajpendo.90411.2008. Epub 2008 Jun 24.

Greenhaff PL, Karagounis LG, Peirce N, Simpson EJ, Hazell M, Layfield R, Wackerhage H, Smith K, Atherton P, Selby A, Rennie MJ.

血中へのアミノ酸の注入と、それに伴うインスリンの変化を観察。

インスリンはアミノ酸とは無関係に筋肉の分解を抑制する効果がある(10、23)ようだが、

アミノ酸が十分にある状態でインスリンが高まることによる影響はよく分からないので、

健康な若い8人の男性で実験して観察してみた。

結果として、インスリン濃度が高まってもmRNAには大きな変化がなく、

筋肉の合成の指標として使っている場合は注意が必要である。

インスリンがタンパク質分解を制御しているということは言えるかもしれないが、

アミノ酸とインスリンを見ただけでは何も言えない。



インスリンは筋肉の分解を抑制するかどうかはイマイチ分からないという感じですね。

ただ、トレーニングを翌日も行うといった観点からすると、

インスリンを分泌させてグリコーゲンの貯蔵を増やすといったことは必要ですので、

インスリンは筋肉肥大を刺激しないから不要、

という短絡的な話に持ち込まないようにした方が良いでしょうね。

2017年2月21日火曜日

PGC-1に関するレビュー

Peroxisome Proliferator-Activated Receptor γ Coactivator 1 Coactivators, Energy Homeostasis, and Metabolism
https://academic.oup.com/edrv/article-lookup/doi/10.1210/er.2006-0037

Endocr Rev (2006) 27 (7): 728-735. DOI: https://doi.org/10.1210/er.2006-0037
Published: 01 December 2006

Christoph Handschin  Bruce M. Spiegelman

2006年のものですが、

基本的な話を押さえるのには理解しやすいかと思います。

まぁ今から10年以上前のものなので、

日本語訳された教科書などもありますので、

日本が良いという方はそちらを読んだ方が。

ただ、参考文献などはどちらにせよ英語ですので、

基礎研究を見ておきたいという人はこれで良いかと思います。

フォリスタチンによる筋肥大はSmad3とmTORの影響するがミオスタチンとは別の機構で作用

Follistatin-mediated skeletal muscle hypertrophy is regulated by Smad3 and mTOR independently of myostatin.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22711699

J Cell Biol. 2012 Jun 25;197(7):997-1008. doi: 10.1083/jcb.201109091. Epub 2012 Jun 18.

Winbanks CE, Weeks KL, Thomson RE, Sepulveda PV, Beyer C, Qian H, Chen JL, Allen JM, Lancaster GI, Febbraio MA, Harrison CA, McMullen JR, Chamberlain JS, Gregorevic P.
フォリスタチンはTGF-βに結合し、TGF-βが別の物質と結合するのを防ぐ。

これにより筋肥大を抑制するとされるミオスタチンなどは機能しにくくなる。

ミオスタチンはSmadを介して情報を伝達する。

筋肥大の刺激にはmTORやAkt、S6Kなどの経路があるが、

フォリスタチンはどれに対して影響を与えるかを検討。

結果、フォリスタチンはmTORやS6Kに作用してSmadに影響を与えたが、

ミオスタチンには特に影響を与えないと考えられる。

(Free)


筋肉を肥大させる要因は多々ありますが、

その一方で筋肉を減らそうとする作用も多々あります。

運動によって遺伝子発現が起こり刺激が与えられ、

筋肉を増やしたり減らしたりするスイッチが入る。

タンパク質の摂取などはそれよりも下流ですので、

こうした上流の因子がどう変化させるかというのが筋肥大など、

トレーニング効果を最大限発揮させるには大事になります。

まぁトレーニングなどでは簡単に変化しないので、

ドーピングと呼ばれるような手法で強引に変化させてしまうわけです。

だからドーピングはダメと言われるわけです。

で、

ミオスタチンは筋肥大を抑制する因子として知られておりますが、

これをノックアウトする方法が無いものか、

ドーピングとならない方法では無いのか?

ということを探し回るわけですが、

2012年の時点ではフォリスタチンはミオスタチンに影響を与えないから別の方法を考えよう、

となったわけです。

筋肥大を抑制する因子が抑制されるから肥大するというよりも、

筋肥大を促進する因子を活発化させるから肥大する、

ということですね。

どちらを中心に狙うべきかというのは、まだまだよく分からない所です。

2017年2月20日月曜日

AMP活性化プロテインキナーゼはmTORシグナルの活性を抑制しタンパク質の合成を抑制する

AMP-activated protein kinase suppresses protein synthesis in rat skeletal muscle through down-regulated mammalian target of rapamycin (mTOR) signaling

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11997383/

J Biol Chem. 2002 Jul 5;277(27):23977-80. Epub 2002 May 7.

Bolster DR, Crozier SJ, Kimball SR, Jefferson LS.


アカデシン(AICAR)を用いたAMPK活性はの増加はmRNA翻訳を減らし、

タンパク質の合成を減らすと仮定してマウスで実験。

運動などによってATPはADP、さらにAMPへと分解されるが、

この時にAMPが増えてくるとAMPKが増加していく。



これも現在となっては当たり前の話として知られていますが、

2002年の研究ですのでよく分からない部分は多かったということで。

AMPKは筋肉合成に関して悪影響ではありますが、

脂肪酸の利用を高めることは減量や持久的な要素を狙ったトレーニングを実施している場合には良い効果がある。

何を目的としてトレーニングを実施するかによって、

AMPKは良くも悪くもなる、ということです。

この点が分かると、筋肥大を狙う場合はATPを減らさないようにするのが良い、

ということが見えてくると思います。

呼吸が乱れるような負荷設定は筋肥大を抑制するスイッチを入れることになるので。

2017年2月19日日曜日

カゼインとホエイの違いによる食後の血中アミノ酸濃度変化

Slow and fast dietary proteins differently modulate postprandial protein accretion
http://www.pnas.org/content/94/26/14930.full

PNAS December 23, 1997 vol. 94 no. 26

Yves Boirie, Martial Dangin, Pierre Gachon, Marie-Paule Vasson,
Jean-Louis Maubois, and Bernard Beaufrère

1997年の論文です。

16人の健康な男性被験者。

カゼインとホエイというタンパク質の違いは摂取後にどのような違いを生むか、

という点を調べたもの。

ホエイは摂取後にアミノ酸濃度を高める

カゼインはホエイほど高い濃度にならないが6時間経ってもやや高い状態にする。

120~180分の間でカゼインの方が血中のロイシンの濃度が上回るようになる。

この違いはカゼインは胃から腸へと排出される速度が遅いということから起こる。




睡眠中などは30g程度のカゼインを事前に摂取するのは効果的であるが、

筋肉の合成は高めないのでカタボリックな状態を抑制したい、

という点を意識する人は良いかもしれません。

近年では寝る前のホエイの摂取で筋合成が高まるとされていますし、

ホエイの摂取による刺激>カゼインによる分解の抑制

といったことが言えるかもしれません。

また、これより古い1987年の研究では

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/3316280?dopt=Abstract

インスリンの分泌も筋肉の分解を防ぐ要素とされていますし、

日常生活では食事の時間との関係なども意識しての摂取で大丈夫、

といった所かと思います。