2023年8月19日土曜日

男性の自慰行為とホルモン応答

Hormonal response after masturbation in young healthy men - a randomized controlled cross-over pilot study
Basic Clin Androl. 2021 Dec 23;31(1):32. doi: 10.1186/s12610-021-00148-2.
Eduard Isenmann et.al

テストステロンの話を眺めていたら出てきた論文で興味深かったので読んでみましたが、テストステロンの数値が1日で上下するけれども、それをエロ動画を見ることで抑制することが可能なので、トレーニング効果を最大限に発揮するためにはトレーニングの何時間か前に動画を見ておくのが良いかもしれないということが示されています。今回の実験では14時に動画を見て、18時頃にテストステロンとコルチゾールのバランスが最も良くなった。分解が減って合成が高まるもっともよいタイミングですね。ただこれ、普通に仕事をしている人ですと仕事中にトイレで...といったことになるので難しい気もします。電車の中で東スポなどのエロページを眺めているおじいちゃんたちは、やはり下半身が元気なんだろうな、といったことも考えたりで何とも興味深いところです。ちなみに過去にはマスターベーションによる体への負荷といったものも眺めましたが、ブログにも書いてありますが、基本的にはほとんど悪影響はありません。体勢が悪いとか時間をかけすぎといった問題点くらいです。ですので、トレーニングをしっかりと考える場合はやはり動画やらで興奮をするのは大事、日常的に見られるものなら、ですね。プレワークアウトサプリメントとしてスマホの待ち受け画像なんかにしておくのは有りなのかな、と思いました。なお女性に関しても似たような論文があった記憶がするので、そちらも探してそのうちまとめようかと思います。


・テストステロンなどのホルモンは、パフォーマンスの向上と筋成長に大きな役割を果たすとされている[1]。テストステロンはタンパク質の生合成を刺激し、繊維含量を変化させることで骨格筋の同化作用を促進することが知られている[2]
・人間では総テストステロン(TT)の98%が性ホルモン結合グロブリン(SHBG)やアルブミンなどの輸送タンパク質と結合しており[3,4,5,6]、TTの最大2%が生物学的に活性な形態(遊離テストステロン、FT)で見られる。TTとは対照的に、FTとその代謝物であるジヒドロテストステロン(DHT)のみが細胞内のアンドロゲン受容体(AR)と相互作用することができ、同化作用を促進する
・テストステロンに加えてコルチゾール(C)もヒトの代謝に決定的な役割を果たしており、これは視床下部-下垂体-副腎軸によって調節されている[7, 8]。コルチゾール濃度の上昇はTT濃度に悪影響を及ぼすと考えられているが[9,10,11]、初期の研究では運動後のFTとCレベルの間には正の相関関係があることが示されている[11]
・興味深いことに、専門家の間やソーシャルメディアにおいてレジスタンストレーニングの数時間前に性行為を行うことでFT濃度やFTとCの比率が上昇し、それによりトレーニング適応、特に筋肉量の増加が改善されるのではないかという仮説が立てられ、議論されている。しかし、この仮定を支持する科学的証拠はない
・性交やマスターベーションがホルモン反応に及ぼす影響について分析すると、それらは主にエンドルフィン、ドーパミン、オキシトシン、プロラクチンの放出と関連している[12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22]。オーガズム後、プロラクチンレベルは増加し、オキシトシンとドーパミンレベルは有意に減少することが様々な研究で示されている [12,13,14,15,16,17,18,19,23] 。性行為がテストステロン(総テストステロンおよび遊離テストステロン)、エストロゲン、コルチゾールおよび黄体形成ホルモン(LH)のホルモン濃度に及ぼす影響についての調査は不十分である
・過去数十年の初期研究では、マスターベーションまたは性行為後60分間は、TT濃度に変化がないことが観察されている[15, 24]。さらに性的な禁欲の影響と射精後のテストステロン濃度の変化に焦点を当てた研究もある[25]。初期の調査や研究では、FT濃度は性行為と性的興奮の両方によって影響を受けることが示されている [26] 。さらに、視覚刺激によってTT濃度が急性的に上昇することを示す研究もある[27,28,29,30]が、性交後またはマスターベーション後のTT、FT、C濃度の詳細な動態に関する研究は不足している
・今回の研究ではマスターベーションと視覚刺激が、TT、FT、およびC濃度の動態ならびにそれらの比(TT/C;FT/TT;FT/C)に及ぼす影響を調査した

・8名の若い男性(年齢:27.1歳、身長:181.7cm、体重:87.7kg)が本研究への参加。参加者は健康な若者でドイツ体育大学ケルンでスカウトされた身体的、心理的、性的機能障害がなく、少なくとも3年間のトレーニング経験があり、バックスクワットで体重の150%以上、ベンチプレスで体重の120%以上のパフォーマンスを有し[31]、恋人がいる。ステロイドその他の薬物は使用しておらず、健康補助食品の摂取も制限された
・視覚刺激を伴うマスターベーション(AG)、マスターベーションを伴わない視覚刺激(VG)、視覚刺激とマスターベーションを伴わない受動的設定(PG)の3つに分けてホルモン濃度の変化を観察。実験の48時間前と検査日には性行為と身体活動、アルコールの摂取を禁止。12時間の絶食後に朝の8時から実験を開始、用意された食事を2回摂取し14時から自分の好むポルノ動画を鑑賞

・マスターベーションと視覚刺激はFT濃度のみに影響を及ぼすと仮定できる。マスターベーションを伴った場合が最も数値は上昇した。概日リズムでのFTの減少を抑制することが可能
・筋力トレーニングの過程でマスターベーションを繰り返すことにも潜在的な効果がある可能性がある
・レジスタンストレーニングの前にマスターベーションという形で1回性行為を行うだけで、テストステロンによる強い適応を引き起こす可能性があるとは言えないが、筋力トレーニングと組み合わせてFTの分泌を増やすことで、筋の成長や筋線維含量の変化により強力な適応をもたらす可能性はある
・マスターベーションとは別に調査されたホルモンの概日リズム、トレーニングの時間帯は、筋成長の潜在的な調節因子と考えられるが、今回の研究結果からするとレジスタンストレーニングは、FTとCの比率が最も高くなる夕方(この研究では18:15)に行うのが最も効果的であるが、モチベーションのような他の生理学的・心理学的要因も重要な役割を果たすので、その点の考慮も必要である。特に、ストレスレベルの上昇はコルチゾール放出の増加 [7] と関連しており、テストステロン濃度とFT/C比に悪影響を及ぼす [9, 34]

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