2025年10月10日金曜日

ブラジルのサッカー選手の身体的特徴

A Review of Stature, Body Mass and Maximal Oxygen Uptake Profiles of U17, U20 and First Division Players in Brazilian Soccer

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3761896/
J Sports Sci Med. 2008 Sep 1;7(3):309–319

・ブラジルの選手は身長が低いにもかかわらず、体重は同等である。
・ブラジルではプレースタイルが技術重視であるため、選手の選抜はフィジカル(体格)よりも技術面を重視する傾向があり、これがヨーロッパと異なる点とされている(Drubsky, 2003)

・イングランド、イタリア、スペイン、ドイツなどの主要な欧州リーグでは、身長と体重が選手獲得の重要な指標とされ、ポジションごとのプレースタイルやフィジカルの要求に適合する人材が選ばれている(Bloomfield et al., 2005)

・VO₂Max測定(ml·kg⁻¹·min⁻¹)には限界があり、体重に比例して酸素消費が増えるわけではないため、軽い選手のVO₂Maxは過大評価され、重い選手は過小評価される傾向がある(Wisløff et al., 1998)

・60 ml·kg⁻¹·min⁻¹以上のVO₂Maxがトップレベルでは必要とされるが(Reilly et al., 2000)、一部のトップ選手は無酸素と呼ばれる能力が高い一方で、有酸素と呼ばれる能力が劣るケースもあるので、VO₂Maxだけでなくスピード、アジリティ、パワーなどと総合的に評価すべき(Stølen et al., 2005; Wisløff et al., 1998)

・コパ・アメリカの選手がカバーした平均距離 8638 ± 1158m は、イングランド・プレミアリーグの平均距離 10104 ± 703mよりも有意に少ない(Rienzi et al., 2000)

・ブラジルの試合ではパス数が多く、非直接的なプレースタイルが採用されており、これが有酸素と呼ばれる能力の低さと関係している可能性がある(Barros et al., 1998も同様)

・2001~2004年の55試合において、平均走行距離が 10012 ± 1024m と欧州と同程度であると報告されている(Barros et al., 2007)

・ブラジルでは、17~20歳の間にフィジカル強化の重要な時期があり、これはU-20レベルの選手がU-17やファーストディビジョンの選手よりも強度の高いトレーニングをしているため(Drubsky, 2003)

・トレーニングには、スピード、筋力、有酸素と呼ばれる能力の向上、戦術理解の強化が含まれていますが、その基盤にはU-17以前からの技術力の養成がある

・多くの研究では平均値しか報告されておらず、ピーク値や範囲を示した研究は非常に少ない

・有酸素能力では、一般にミッドフィルダーが最も高いVO₂Maxを持つとされるが、ブラジルの研究では、外側ディフェンダー(サイドバック)が最も高いVO₂Max値を示すことが多い。これはブラジルの戦術(主に4-4-2)により、サイドバックが守備だけでなく攻撃参加も求められるためと考えられる。しかし、Barrosら(1998, 2007)は、ファーストディビジョンのサイドバックとミッドフィルダーで走行距離に有意差がないことを報告している

・欧州の研究では、ミッドフィルダーが他のポジションよりも多くの距離を走行し高強度ランの距離も多いという結果が報告されている(Di Salvo et al., 2007など)


ブラジルの選手の特徴を調査した論文をまとめたものなので、実験のやり方の違いもあるため、測定手法の違いが結果の差に影響している可能性もあるといった注釈もつけられていますが、なるほどなぁという感じのデータです。2008年までのデータのため、近年との違いはあるかもしれませんが、U-20あたりまではヨーロッパへの移籍を考えてフィジカルを高めているといったことも見られるようです。大きな違いにはプレースタイル、ピッチサイズ、環境などもあると指摘している通りで、数値が低いから弱いというわけではないことが分かります。まずは徹底して技術面を向上させ、U-17あたりからトレーニングでフィジカルを向上させていく、最も高くなるのは一番の運動量を誇るSBになりがち、MFはあまり動かないので諸外国と比べるとSBよりも低い傾向にある。こうした点から考えると、SBをやる選手が最も走れる必要があるけれども、それは戦術に適応するためなのか、走れる選手がいるからその戦術を採用するのか、といった疑問が生じます。まぁ能力に応じて求める戦術レベルも異なるとは思いますが、中学生くらいまではもっと技術をベースにしつつ、様々なポジションを経験させて走ったりしながらフィジカルを鍛えて、高校生くらいである程度の成長期が終わって来てからポジションを固定する、というやり方が良いのかと思いました。ただ、U-20くらいで世界への移籍市場が最終段階になると言われたりもするので、高校を卒業する時点ではフィジカルと技術がある程度完成させたいところです。当然ながら、その世代の中でトップクラスであれば良いのであって、年上の世界のトップ選手と同等である必要はありません。この辺りを見失って世界のトップと同等を目指してしまうと、いろんなものが曖昧になってしまう気はするので、まずは成長期に合わせてフィジカルが伸びるようにする、身長が伸びなくなってから本格的にフィジカルを鍛えていく、という流れになりそうです。

U-20のワールドカップの結果を見ると、優勝したチームはその後のA代表も強いし、歴史に名を遺すような選手が複数いたりするので、足りないものはフィジカルや技術だけでなく、その世代を超えて活躍できるスターがいるかどうか、みたいな面もありますし、育成世代はあれもこれもやるよりは、まずは技術をしっかり、戦術を理解、そこから一段階上のプレーをするためにフィジカルを高め、新たな戦術や技術を身につけて、さらにフィジカルを高め、といった段階を踏んでいけると良いのではと思います。

2025年9月22日月曜日

1989年のサッカー日本代表選手の酸素摂取量

 日本人一流サッ カー選手の最大酸素摂取量 ーポジショ ン及び年齢別の比較ー
kiyo_vol24_pp65.pdf
東京大学教養学部体育学紀要(1990)24,65~ 71

日本代表選手を含む国内の一流サッカー選手を対象として最大酸素摂取量を調査したら、10年間で向上が見られなかったというもの。A代表が体重当たりで55.1ml/kg・minというのは低すぎでしょう。この時代のサッカーが弱かったのは明確にフィジカルと言えそうな数値。

なお、ほぼ同じころに国見高校を測定したものを見ると
Physique, Body Composition and Maximum Oxygen Consumption of Selected Soccer Players of Kunimi High School, Nagasaki, Japan

Journal of physiological anthropology 
巻 25, 号 4, p. 291-297, 発行日 2006-07 日本生理人類学会

国見高校の選手の方が上回っています。この頃の国見高校は1987年に選手権を初優勝、1989年は準決勝まで進出、1990年度に2回目、1993年度に3回目の優勝をした頃ということで、高校のトップ選手たちと呼んでも問題無さそうなレベルと考えれば、日本代表は高校レベルのフィジカルしかなかった。後半になったら運動量が落ちるのは当然、といったことが言えるのでしょうか。ただまぁ、最大酸素摂取量だけでは何も言えないので、あくまで参考数値です。海外ではどうなのか、といったのを次は見ていきましょう。

2025年4月26日土曜日

人の骨格筋におけるスプリント運動後のトランスクリプトーム(遺伝子発現プロファイル)

Acute sprint exercise transcriptome in human skeletal muscle
Hakan Claes Rundqvist et.al

introductionより
・スプリント運動の特徴の一つは、特にII型骨格筋線維における急速な筋グリコーゲン分解と大幅なATP分解である。30秒間のスプリントを3回行うと、これらの線維において筋グリコーゲンとATPの含有量は50%以上減少する可能性がある(1)
・もう一つの特徴は、全身のカテコールアミン、成長ホルモン、インスリンの増加に代表される内分泌ストレスである (1–3)
・3つ目の特徴は、運動後に30分以上持続する脚部血流の増加として現れる、運動後の過灌流反応である(4)
・2週間でわずか6回、合計5分未満の全力での30秒間自転車スプリントでも、ミトコンドリア酵素の活性が増加することが示されている(6)
・ミトコンドリア新生に関連するAMPK、p38、PGC-1AのmRNAが上昇することが報告されているが、筋肥大を促進する経路であるmTORの活性化は確認されなかった(7)
・スプリント運動を先に行うことで、レジスタンス運動によって誘導されるAkt/mTORシグナルが抑制されたことが報告されている(10)
・スプリント運動は持久運動と同様に骨格筋の毛細血管新生と血管成長を刺激することが示されているが、この観察結果には異なる見解もある(11, 12)
・全力での自転車スプリントを3回、20分の回復時間を設けて実施した
・健康な20~30歳の男性7人、女性7人でたまに運動をする程度

Discussionより
・遺伝子シグネチャーの解析からは、カルシウムイオン、一酸化窒素、活性酸素種に加えて、成長ホルモン、インスリン、遊離脂肪酸といった運動誘導性の全身因子の活性化も予測された。これらの因子の血中濃度はスプリント中または直後に有意に上昇していた。
・下流の遺伝子発現パターンからは、脂質代謝の活性化が予測され、PGC-1A や PERM1 といった脂質代謝に関わる遺伝子が顕著にアップレギュレートされた
・FZD7(Akt/mTOR経路を正に制御し筋肥大に寄与する)のmRNA発現がスプリント後に増加し、mTOR経路のp70S6kのリン酸化の増加と相関した。FZD7の上流制御因子として働き、成長ホルモンにより制御される可能性のあるWNT9A mRNAの増加は、成長ホルモン濃度の上昇と関連していた
・スプリント運動は萎縮方向の遺伝子もいくつか調節していた。抗萎縮作用を持つ可能性のある新規遺伝子(KLHL40、OTUD1)のmRNA発現も増加していた
・スプリント運動により、PPARGC1A(PGC-1α)の発現は5倍に上昇
・ミトコンドリア転写因子の発現上昇は確認されなかったが、ミトコンドリア輸送体(SLC25A25A、CPT1、UCP3)は上昇
・エストロゲン応答エレメント(ERE)の活性化が予測され、エストロゲン関連受容体γ(ESRRG)およびエストロゲン自体が上流因子として推定された。これは、筋収縮とエストロゲンの両方がEREを活性化するという以前の報告と一致する(46)。
・スプリント運動により、血中遊離脂肪酸(FFA)の濃度が大幅に上昇しており、一部の代謝関連遺伝子の発現上昇にFFAの関与が示唆される
・本研究ではミオスタチンが約50%ダウンレギュレーションされた
・成長ホルモンの上昇、MYOD1やHES1の発現上昇も、ミオスタチンの抑制と関連がある。一方で、ミオスタチンを活性化させる経路も刺激されている。「ミオスタチンのmRNA減少 = 単純な筋肥大」ではないと考えられ、抑制と活性化の両シグナルが混在しており、筋の再構築(リモデリング)プロセスの一部である可能性が高い

自転車でのスプリント運動によって、スプリント運動では負荷が高いのに筋肉が肥大しにくい理由は何なのか、といった点を調べたものです。スプリント運動は”代謝的・構造的な再プログラミングを促す運動様式である”といった点が結論になるのかと思いますが、要は次に向けての準備が行われるのがスプリント運動であり、そこからどうするかが大事になる、といった話になるかと思います。筋肥大を抑制するミオスタチンを大きく抑制しているので、これが継続されていけば、筋肥大はしやすくなっていくので、スプリント運動をしているだけでは増えないけれど、スプリント運動をしなければ筋肥大はしにくくもある、といったことが言えるのかなぁ、と。なので、たまには呼吸が追い込まれるような運動も取り入れてみると、思ったような筋肥大が目指せるのでは、と思います。ただ一方で、肥大を抑制しようともするので、エネルギーの摂取などでのバランス調整も大事でしょう。運動だけでなく食事と睡眠など関連する要素も忘れずに、でしょう。


2025年4月19日土曜日

運動後の冷却は若い男性の筋組織へのアミノ酸の取り込みを鈍らせる

 Post-Exercise Cooling Lowers Skeletal Muscle Microvascular Perfusion and Blunts Amino Acid Incorporation into Muscle Tissue in Active Young Adults

Betz, Milan W et.al
Medicine & Science in Sports & Exercise(), April 18, 2025. 

運動後に冷たい水に浸かることは筋肉の回復を促す方法として広く利用されているが、近年の研究では長期的な適応を妨げる可能性が指摘されている。本研究では、冷却が栄養素(アミノ酸)の取り込みにどう影響するかを検討するため、若年男性を対象に超音波を用いて筋肉内微小血流とアミノ酸取り込み量を測定した。

・若年(24±4歳)の男性12名がレジスタンス運動後に片脚ずつ8°Cと30°Cの水に浸漬し、筋微小血流とアミノ酸取り込みを比較した
・運動直後と冷却後、20gのアミノ酸摂取後の時間経過に応じて血流と筋生検を実施。
・超音波により筋の微小血流(血流量・速度・容積)を定量的に測定。
・冷却脚では血流量が大きく低下し、その後も回復せず。
・アミノ酸の筋タンパク質への取り込み量は冷却脚で約30%低下。
・血流量とアミノ酸取り込みには中等度~強い相関があった。

discussion
・冷却による微小血流の低下は最大約68%で、180分後でも回復していなかった。
・血流の変化は主に微小血流量の減少によるもので、速度には影響なし。
・アミノ酸取り込み低下は、微小血流量との強い相関が示された。
・従来の冷却による回復効果は主観的・心理的要素が強く、筋適応には不利な可能性。
・トレーニング効果を最大化したい人は、冷水浸漬の利用を再考すべきである。
・女性や高齢者では皮下脂肪の影響で効果が異なる可能性もあり、今後の研究が必要。



長年指摘されていることではありますが、アイシングと呼ばれるものをやることでトレーニング効果は下がるよ、といった話です。8度で冷やすということをやっていない人も多いかと思いますが、その場合はアイシングの効果に対して疑問を持とう、となってしまうので、しっかり冷やすか、冷やさないかという点がまずは大事です。そして冷やした場合は3時間経ってもアミノ酸の取り込みは減少したままなので、トレーニング効果はほぼ期待できないといっても良いでしょう。そうなると、心理的な面では回復につながるけれど、トレーニング効果は期待が出来ないから、つらいことをやったけれど効果があるのは回復した感。強くはなりにくい。そうなってしまうので、トレーニングとアイシングの組み合わせはやめましょう、となるかと思います。痛みが出て肉離れのような状態ならばまだしも、翌日の筋肉痛を予防するためにアイシング、といった習慣はやめた方がよいでしょう。女性に関しても恐らくはそんなにデータの違いは無いと思いますので。被験者の男性群、身長が183㎝±7で体重が80.9±6.9、BMIが24.2±2.3、脂肪の量が10±2.2とそれなりにガッシリした身体ですから、違いはあるかもしれませんが、それなりに運動をしている女性であれば近い数字になってくると思いますので。

2024年2月18日日曜日

第20回乳酸研究会雑感

 第2回から参加をして今回が第20回。そして来年は八田先生の退官記念講演の会となるのかな、といった感じの第21回。長いですね。アスリートな人でも参加しやすいテーマを取り上げてくださるので、いろんな人が参加している研究会です。陸上競技の大会で遭遇した時に、次回のテーマの話を聞いたりお願いしたりといった感じのこともありましたが、来年以降はどうなるのか。そんなわけで感想です。

抄録のダウンロードはアークレイさんのサイトにありますので、
そちらをご覧ください。
【NEW!!】第20回乳酸研究会開催情報 抄録集UP | トップアスリートを支えるスポーツトレーナーのための科学的トレーニング塾 (arkrayathletesupport.com)

門口 智泰 | 東京大学 (u-tokyo.ac.jp)
最初は門口先生の酸化ストレスに関して「酸化ストレス応答の二面性、活性酸素種は善か悪か」というタイトルでの話。活性酸素種は生体の恒常性維持に必要ではあるが、それが過剰になると病気にもなっていくという話です。トレーニング効果を高めるかもとなってたくさん活性酸素種を作ろうと努力したら、病気になって運動が不能になる可能性があるわけですね。人間の身体は一定の状態を維持するようになっているわけで、一定の範囲で収まるようにするのが大事ということでしょう。

北岡 祐|神奈川大学 神大の先生 (kanagawa-u.ac.jp)
北岡先生は「健康スポーツにおける酸化ストレスの功罪」というタイトルで。活性酸素種(ROS)について、少なすぎても多過ぎてもダメといった感じの話で、門口先生と同じような感じ。いつもながらの早口でテンポがよく、聞きやすいと個人的には思う発表です。活性酸素はトレーニングにおいては必要だけれど試合の時にはいらない、バランスが大事という具合ですね。


The transcription factor NRF2 enhances melanoma malignancy by blocking differentiation and inducing COX2 expression | Oncogene (nature.com)

The effects of NRF2 modulation on the initiation and progression of chemically and genetically induced lung cancer - PubMed (nih.gov)


アークレイ株式会社 (arkray.co.jp)

商品紹介。ラクテートプロ2にはお世話になっております。

休憩

【研究者データ】小谷 鷹哉 | 日本の研究.com (research-er.jp)
小谷先生は「筋収縮による筋肥大メカニズムと抗酸化物質の摂取による影響」というタイトルで。筋タンパク質の合成量にはリボソームの増加も関係しているという話。酸化ストレスによってリボソームの翻訳活動が停止してしまうので、リボソームは増えるけれど合成が進まないという話が。1日に3回のトレーニングでリボソーム合成は最も高まったが、筋タンパク質合成は最も低かったとのこと。あとは抄録にもある通り、人間での抗酸化物質であるビタミンCの投与は筋肥大を促すことはなく、維持または減らすといったデータがあるということで。

株式会社メタジェン - 腸内環境に合ったヘルスケアをあたりまえに (metagen.co.jp)
福田先生は「腸内環境に基づく層別化医療・ヘルスケアがもたらす未来」というタイトルで腸内細菌の話を中心に。青山学院大学の駅伝部の腸内細菌のデータから、速い選手には多く存在している菌があるということ。
青学陸上部所属ランナーの腸内細菌を調査、「ある菌種」が走行タイムを改善 | カラダご医見番 | ダイヤモンド・オンライン (diamond.jp)
人によって腸内細菌のタイプがいろいろあるし、薬の効く効かないといった個人差は腸内細菌によって影響するという興味深い話でした。一度は検査をして自分の身体はどういったものを摂取するのが良いのか、というのを調べてみるのは効果的な気がします。
ニュースリリース 『Body Granola』 | カルビー株式会社 (calbee.co.jp)
カルビーとのグラノーラも興味深いところです。

そんなわけで今年もアスリートにとって重要な情報がたくさん出てきたなと思うところですが、個人的にはもう10年くらいはこの分野に興味を持って論文を眺めてきたわけです。きっかけとなったのがアスタキサンチンですね。抗酸化作用によってトレーニング後の疲労を軽減するという文句で発売されていた商品に対して、抗酸化作用によってトレーニング効果は下がらないんですか?と質問したところ、害ではあるがトレーニング効果にはならないと言われて疑問をさらに持った辺りです。

抗酸化物質の補給は若い女性の筋力トレーニングによる効果を弱める
https://tf-ver3.blogspot.com/2023/04/blog-post.html

抗酸化サプリメントの摂取はSIRT1の活性を抑制する
https://tf-ver3.blogspot.com/2023/03/supplementation-hinders-role-of.html

ビタミンCとEの摂取は筋肥大に効果ないどころか
https://tf-ver3.blogspot.com/2020/12/blog-post_6.html

ポリフェノールを豊富に含むアイスクリームは酸化的ストレスを減少させる
https://tf-ver3.blogspot.com/2017/01/blog-post_28.html

北岡先生や木谷先生、福田先生に休憩時間や懇親会でちょっと質問をしてみましたが、抗酸化のサプリメントを摂取する必要性は多分ないであろうという昔からの考えを変える必要性は特に無さげです。あとはビタミンCの摂取はどうなんですかねぇ、というのは長いこと言っていますが、これもやはりトレーニング効果を下げるからやめた方が良いと思います。多くて1日に1000mg程度でしょう。それを超える摂取はどうですかね。マイナス効果の方が大きいと思います。実際、トレーニング相談に来る人に対してビタミンCのサプリメントの使用をやめてもらうようにすると、皆様パフォーマンスが上がった、筋肉が増えたという人がほとんどでしたし、不要でしょう。ただ、仕事が忙しいとか食事が不十分であるという人にとっては大事でしょう。足りなくてもダメなので。十分に摂取出来ている場合は不要でしょう。練習直後にビタミンCを大量に摂るとかは愚の骨頂だと思うのでやめた方が良いと思いますし、トレーニーな人たちが大好きな鶏のササミとブロッコリーのセット、あれはブロッコリーを茹でてビタミンCを減らしているとは言え、食べてる量がそこそこ多かったりするのでダメでしょう。トレーニング効果を打ち消す食事ですよね、と長いこと指摘をしておりますがブームが消えません。今回の話でもブロッコリーに含まれるスルフォラファンという話がありましたが、ブロッコリーそのものを食べてビタミンCを摂取しすぎてはダメですので、難しいですね。まぁ朝食でしっかり摂取して夕方にトレーニング、といった分割ができれば良いのではと個人的には考えて説明・指導をしてきておりますが、この辺りは未だにエビデンスが出ておりませんので何とも言いきれません。腸内細菌の話に関しても、普段の食事でどれだけ整えられているかになるので、とにかくいろんなものを食べた方が良いですとのことでしたので、多分そのストイックな食事があなたのパフォーマンスを伸ばしてくれない原因ですよ、と言ってきたのは正解なのだろうと思います。なお、小谷先生は石井直方先生のところで学ばれていたので、久々に石井直方イズムを感じる話が聞けて楽しかったです。今から20年ほど前に学会の手伝いをして石井先生と一緒に電車で帰ったのが懐かしい記憶です。サプリメントの前にまずはしっかり食べろ、というのが基本ですね。それでも足りない分はサプリメントです。練習直後などで食欲が湧かないとか次の日も練習が高負荷といった場合は大事でしょうが、そうでない場合は思っている以上に不要なのがサプリメントです。まぁでも現実的には理想的な量やバランスを食べられないので、サプリメントを上手く使うのが大事になるかと思います。そんなわけで、本年はこの10年くらいの確認作業がしっかりできた、とても有意義な時間でした。また来年を楽しみにしております。