2023年3月16日木曜日

ゼラチンとビタミンCの摂取で腱の回復を高める

Vitamin C–enriched gelatin supplementation before intermittent activity augments collagen synthesis
Am J Clin Nutr. 2017 Jan; 105(1): 136–143.
Gregory Shaw, Ann Lee-Barthel, Megan LR Ross, Bing Wang, and Keith Baar
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5183725/


イントロ
・運動は、コラーゲン合成を増加させる(6-8)、コラーゲンの架橋に関するリシルオキシダーゼの発現を高める(9)
・ビタミンCとアミノ酸のプロリンによってコラーゲン産生が増加し力学が向上する(21)、グリシン摂取量の増加によって損傷後のアキレス腱の力学が向上する(29)。これらはコラーゲンとビタミンCを増やす栄養介入により、コラーゲン合成が向上することを示唆している

方法
・健康な成人男性8名が被験者。絶食後の朝に48mgのビタミンCを含む低カロリー飲料に0、5、15gのゼラチンを溶かしたものを摂取し、6分間の連続縄跳びを実施。運動後、実験室で4時間安静にし、その間に4回の血液サンプルを採取。4時間後の血液サンプルの後、カニューレを外し、被験者は実験室から退出。
・6分間の連続した縄跳びを3回/日を6、12時間後24、30、36時間後、48、54、60時間後に実施して再度測定

結果
・腱の太さに変化はなかったが機能の改善が見られた
・P1NP(Ⅰ型プロコラーゲン-N-プロペプチド)は15g群で大幅な増加(5gでは大きな増加は見られない。プラセボより高いくらい)

discussion
・15gのゼラチンを摂取してから1時間後に運動を開始すると、運動後の回復期にコラーゲン合成が促進されるという仮説を強く支持。プラセボ群とゼラチン15g群の運動4時間後のPINP濃度の比較で顕著に示されることから、ゼラチンが運動後のコラーゲン合成をサポートすることを明確に示している
・コラーゲン含有量はゼラチン補給群でのみ増加したが、すべての群で力学的な増加を示した。血清中のビタミンC濃度は測定していないが、80mL中に48.5mgのビタミンCを400mlに溶かしたドリンクの摂取が力学の向上に影響を与えた可能性がある
・ビタミンCはコラーゲンの合成に必要であり(41)、ビタミンCはコラーゲン架橋酵素であるリシルオキシダーゼ(42)、プロリルおよびリシルヒドロキシラーゼ(41、43)をも活性化し、これによりコラーゲン架橋を増加させる(44)


運動により骨や腱の合成・剛性が高まるが、それをさらに高めるのがビタミンCとゼラチンの摂取。15gほどのゼラチンなので通常では摂取されない量ですが、アキレス腱その他の治りがイマイチな人は行ってみると良いと思います。ただ、ビタミンCが多くなりすぎると筋肉その他の能力向上が大きく制限されてしまうので、タイミングが難しいという問題もあります。朝にしっかりと摂取して夕方に運動、寝る前にも摂取して軽く刺激、というのが良いかと思います。ヒールレイズ程度の運動でも刺激としては十分というのが先日の論文ではあった通りなので、寝る前くらいならばいけるでしょう。まぁビタミンCが50mg程度であればそこまで問題は無いと思いますが、おおよそ1日で100mgも摂取すれば十分、1日に300mgで多すぎというのがアスリートな人たちでの数値だと思われるので、1度に50㎎だと1日の半分くらいなのでなかなか多いかな、と。この点はまた後日に。とりあえずはゼラチンをしっかりと摂取して運動をしましょうね、と。なお、食品成分データベースですと、プロリンは豚で100g中に13gほど。角煮などで摂取すると考えるとカロリーが…、となりそうですので、やはりサプリメントでしょう。

2023年3月10日金曜日

アキレス腱の回復には適度な運動が効果的

Current Clinical Concepts: Conservative Management of Achilles Tendinopathy

Karin Grävare Silbernagel, PhD, PT, ATC, Shawn Hanlon, MS, ATC, CSCS, and Andrew Sprague, DPT, MS, PT
J Athl Train. 2020 May; 55(5): 438–447.doi: 10.4085/1062-6050-356-19
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7249277/

Key Points
・Achilles tendinopathy is a clinical diagnosis based on localized tendon pain and swelling and pain with activities.
・Exercise that provides mechanical loading of the Achilles tendon is the treatment with the highest level of evidence.
・Treatment should focus on activity modification and progressive tendon-loading exercises.
・Full recovery of symptoms does not ensure full recovery of function or tendon structure.
・The best prevention is to recognize early “minor” symptoms and treat with load control.

このキーポイントが大事なのは間違いないです。

Injury Mechanism
The Achilles tendon is mechanoresponsive, meaning it will adapt to the loading demands placed on the tissue.9,12 The exact cause of tendinopathy varies; however, the most common cause in athletes is excessive loading with inadequate recovery time between training sessions.13

怪我のメカニズムとしては回復時間が不十分であることが多い。

Risk Factors
The risk for developing Achilles tendinopathy is considered multifactorial, with intrinsic or extrinsic risk factors that relate to causing either decreased load tolerance of the tendon or movement patterns that overload the tendon.16 Decreased plantar-flexor strength, deficits in hip neuromuscular control, abnormal ankle dorsiflexion and subtalar-joint range of motion, increased foot pronation, and increased body weight are intrinsic risk factors that can be addressed during treatment.16

リスクファクターとしては足底屈筋力の低下、股関節の神経筋制御の障害、足関節の背屈および距骨下関節の可動域の異常、足のプロネーションの増加、体重の増加などが挙げられる

The treatment with the highest level of evidence for Achilles tendinopathy is exercise rehabilitation (Table 2).6,16,33 

”トリートメントとして大事なのは運動による負荷である”

具体的な例はtable2にあるのでご覧ください。まぁ踵を上げる運動を20~30回あたり繰り返す程度です。難しいことは特にありません。これをしっかりとやる。素早くやると負荷が上がる。踵を地面まで着けようとすると負荷が上がるので、踵に何かを置いておくと良いとのこと。

Recovery Phase
The aim of the recovery phase is to regain the strength of the calf muscles and improve the Achilles tendon's tolerance to load (Table 3). Exercises are performed daily. As symptoms subside and calf-muscle function improves, the exercises are progressed by increasing the number of repetitions, range of motion, and speed of movement.

ふくらはぎの筋肉はアキレス腱の機能をしっかりと発揮するためには必要であるということですね。

Our return-to-sport program is based on the premise that the tendon tissue requires a longer recovery from heavy loading activities (36–72 hours), whereas lighter activities can be performed more often.47

Light-level activities can be performed daily, medium-level activities need to be followed by 2 recovery days, and high-level activities need to be followed by 3 days of recovery

アキレス腱の回復には36時間から72時間という時間を要すると考えて、高負荷な練習の場合は72時間ほどを必要とするという考えに基づけば、土曜日に練習をした後に火曜日に高負荷な練習を行うのは腱の回復が間に合わなくなるので好ましくないということですね。ランナーの皆様が実施する週に2回の高負荷なポイント練習と呼ばれるものは、回復の面から見ると間に合わない。狙いを変えて腱に与える負荷の小さくなる練習をどちらかでは実施すべき、と。

PREVENTION
We therefore propose that the best prevention is to recognize the early “minor” symptoms and treat these with load control (adjusting training loads) instead of ignoring them or only addressing the symptoms.

予防としては負荷をコントロールすることで対処をする



全文を読んでもそんなに長くないので、ご覧になることをおススメします。とりあえず、足関節や股関節の辺りにも問題の原因があるという認識が大事ですね。あとは高負荷の場合は72時間が回復に必要なので、この点のコントロールということですね。ケアが足りないから痛みが出ると考えずに、負荷を調整。週に1回しか高負荷な練習はできない。もっとやりたいならば、股関節や足関節、ふくらはぎなど関わる他の部位の強化もしっかりと行うべきですね。

2022年11月13日日曜日

パワーリフティング選手の記録向上と年間試合数

Effect of Competition Frequency on Strength Performance of Powerlifting Athletes

Pearson, Joshua Spathis, Jemima G. van den Hoek, Daniel J. Owen, Patrick J. Weakley, Jonathon1, Latella, Christopher

https://journals.lww.com/nsca-jscr/Abstract/2020/05000/Effect_of_Competition_Frequency_on_Strength.3.aspx

Journal of Strength and Conditioning Research: May 2020 - Volume 34 - Issue 5 - p 1213-1219

回数をこなすほど良い記録が出やすく、2回目の試合で最も良い成績を出せる可能性が高い。しかし、年間の試合の上限は4回になるであろう。


相関が弱すぎて何とも言えないデータですが、1回目で確実に記録を出して、2回目でより高いところを狙う、3回目で少しチャレンジをしてみて、4回目で最大のピークを作る、という流れになるのかと思います。普段のトレーニングと結果がつながりやすいのがパワーリフティングですが、当然ながら体重などの調整をしていく中で記録の変化も出てしまう、トレーニング効果の増減も出てしまうので、そこまで回数を増やせないという経験通りのデータだと思います。

2022年8月1日月曜日

運動中の脂質酸化能力はインスリン感受性に関連する

Whole-body lipid oxidation during exercise is impaired with poor insulin sensitivity but not with obesity per se

Avigdor D. Arad,et.al 13 JUL 2022
American Journal of Physiology-Endocrinology and Metabolism
https://doi.org/10.1152/ajpendo.00042.2022

過体重や肥満が運動負荷に及ぼす脂質の酸化能力に関しては、
食事におけるエネルギーバランスや栄養素の問題、運動の強度や時間の問題、インスリン感受性の問題などが考えられる。この実験ではインスリン感受性と過体重・肥満の関係を調べた。

・被験者は運動を日常的にしていない正常な体重の人15人と過体重・肥満の人15人
・代謝的に健康な群と不健康な群に分類
・ガス交換閾値(GET)の70%と100%で一定の速度で自転車運動を実施
・脂質酸化能力の低下は体組成と関係なくインスリン感受性が悪いと低下する(過体重や肥満での影響はほぼない)

瘦せようと思って運動を開始しても脂質の利用能力が低くて思った以上に痩せない、そして運動を諦めてしまう人がそれなりにいると思いますが、過体重だからみんなインスリン感受性が悪いということもないと思いますが、まずは感受性を高めるための運動をするのが良さそうですね。HIITのような短時間で高負荷な運動が効果的とされたりしているので、20秒の全身運動をまずは始めてみるところからが良いのではないでしょうか。

2022年3月11日金曜日

慢性的なアキレス腱への痛みへのPRP注射の効果

Effect of Platelet-Rich Plasma Injection vs Sham Injection on Tendon Dysfunction in Patients With Chronic Midportion Achilles Tendinopathy
A Randomized Clinical Trial

Rebecca S. Kearney, PhD; Chen Ji, PhD; Jane Warwick, PhD; et al

JAMA. 2021;326(2):137-144. doi:10.1001/jama.2021.6986

・3ヶ月以上続くアキレス腱中央部の痛みを持つ成人において、多血小板血漿の単回注入PRPは、治療後6ヶ月のプラセボ注入と比較してより良い機能をもたらすかを調査
・アキレス腱の中間部に疼痛を有する240名の参加者を調査し、6ヶ月後の平均は54.4 vs 53.4で統計的に有意ではなかった
・多血小板血漿の単回注入は、プラセボの注入と比較してアキレス腱の機能障害を有意に減少させることはなかった。

無料なので詳細はお読みください。アキレス腱へのPRPは大きな効果が無さそうです。効果があったという人は、何もしないでも同じレベルまでは回復した可能性が高いということで。


https://twitter.com/Seth0Neill/status/1501863247070195712?s=20&t=r5pxf6FobA226ia_sTbjBQ