2018年1月1日月曜日

Irisinの投与は筋ジストロフィーの改善に効果がある

Irisin treatment improves healing of dystrophic skeletal muscle.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29228710




Oncotarget. 2017 Oct 6;8(58):98553-98566. doi: 10.18632/oncotarget.21636. eCollection 2017 Nov 17.

Reza MM, Sim CM, Subramaniyam N, Ge X, Sharma M, Kambadur R, McFarlane C

筋肥大に効果的、体脂肪の減少にも効果的と言われるIrisinが筋ジストロフィーの患者にも効果がありそうです、という内容。

無料ですので過去の論文を調べるのに便利ですね。

(14)の論文はミオスタチンが減ることでIrisin濃度が高まることを報告している、

線維化にも影響があるという点を考えると、

Irisinはもっと注目されるべき話ですね。

なお、Irisinがたくさん含まれた特性ドリンクを2017年は複数人に飲んで頂きましたが、

あれの効果がどれほどあったのか。

2017年12月23日土曜日

スポーツにおける試合前の性行為

Sexual Activity before Sports Competition: A Systematic Review

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27445838

Front Physiol. 2016 Jun 21;7:246. doi: 10.3389/fphys.2016.00246. eCollection 2016.
Stefani L, Galanti G, Padulo J, Bragazzi NL, Maffulli N.

古代ギリシアやローマの時代から試合前の性行為はパフォーマンスを下げると信じられ、

大いなる犠牲は成功につながるとされてきた。

しかし、科学的な研究に関してはまだまだ不足している。

最初の研究(Anshel, 1981)は

”禁欲によって競技におけるパフォーマンスが上がるかもしれないが、 ストレスとなる可能性もある。適切な性行為はリラックスを生んでパフォーマンスを高めるかもしれない 。深夜の行動や睡眠時間の減少、飲酒などがなければ悪影響は少ないのでは”

といったことを述べている。

しかし、自慰行為(masturbation)や性的絶頂(climax)に関する管理されたデータはなく、

再現性のある研究はほとんど無い。

競技会の前夜での実験はいくつかあるが、

多くのコーチはエネルギーの無駄遣いによる影響が出ると思っている。

実際には性行為によるエネルギー消費は少ないと思われるが、

実験はほとんどない。

本研究では過去に行われた実験のシステマティック・レビューを実施。

140の研究の中から9件の研究を抽出した。

結果、対象としては男性の方が多かった。

(Johnson 1968)では24~49歳の元アスリートの女性を用いて実験を実施、

前夜に性行為をした場合と6日ほど間を空けた場合で筋力に関して差は無かった。

同様の実験で酸素摂取や心拍について調べたものが(Boone and Gilmore 1995)である。

アスリート以外も含む男性のデータで性行為の2時間後に実験を行った。

この研究の結果からは、性行為は少なくとも競技の10時間前に終わらせておけば影響はないと言える。

しかし、間が2時間程度であると心拍数が高くなった。

だが集中力や仕事量に関する差は無かった。

この点から性行為は交感神経を活性化し、テストステロンを上昇させるということが言えるかもしれない。

(Sztajzel et al. 2000)では被験者数が少ないなどの問題があるが、

持久的なトレーニングを積んだアマチュアランナーでの悪影響が無かったという実験結果を報告している。

 (McGlone and Shrier 2000)はハンドグリップでのテストにおいて、

性的行為がハンドグリップに悪影響を与えないがcoordinationや最大酸素摂取量に影響を及ぼす、という報告をしている。

1週間程度の禁欲における影響なども考えられるため、

その点を排除する方法なども考える必要がある。

また、性行為に費やされるエネルギーは25~50cal程度(階段で1階から2階に上がる程度)であり、

エネルギーの消費がパフォーマンスに影響を及ぼすことは無いであろうとしている。

競技会前などでは不安や緊張などの影響もあることが考えられるので、

そうした不安を取り除いたりするのに性行為が好影響を与えることも考えられる。

(Chidley 1996; Pupiš et al. 2010)らのデータにもあるように、

近年では性行為を我慢することの方が悪影響であると考える人も多くなっている。

本研究のデータから言えることは、

研究数が少ないのと男性でのデータが多いこと、

十分な間隔(睡眠時間)を確保し競技前に行う性行為は悪影響を及ぼさないであろう、

ということが言える。



講習会で最も多くの質問をいただく点ですので(以前からも多くの質問は頂いております)、

最新のレビュー論文を眺めてみましたが、

これといって何かを言える感じはしませんが、

無理に我慢するのは良くないし、

前日で10時間ほどの時間があり睡眠が確保(性行為後の興奮が収まる時間も必要?)すれば、

特に大きな影響は無さそうかなと思います。

いくつかの論文の中であったように、

結局は行為の時間や姿勢などによって影響は違ってきますが、

こうした所を統一してデータを取ったものが何も無いので、

何というか曖昧な感じになっています。

取りあえず言えそうな事としては、

男性はしっかりと自慰なり性行為なりをしてストレスを溜めない方が、

ということですね。

女性に関してはデータがほとんど無いので、

何とも言えません。

ホルモンの変動などから何かが言えるかもしれませんが、

そうしたデータを取っていくのが今後の研究になるかと思われます。


無理の無い体位で、疲れを感じない時間でどうぞ

というのは言えそうですかね。

なお、未公開の個人的なデータ(男性のみ)で言いますと、

男性が言う翌日に残る疲労感は性行為の時間と姿勢が明らかに関係しています。

特に自慰行為における姿勢変化の無さは、気づいていない人が多いです。

PCやスマホで動画を探すという行為に集中しすぎて、

姿勢がずっと一定で緊張を保ち続けているというのが原因であろうと推測しています。

長い人では30~1時間程度は同じ姿勢を保持していたりするみたいですので、

座ったり寝たりしている時の姿勢にも気を配る、

床に座ると膝が曲がった状態になったままでダメージが蓄積するので、

ある程度は狙いを絞っておいて立った状態や椅子に座ってリラックスして、

という感じでやると疲労感も軽減されると導き出しております(未公開データですので)。

性行為そのものに悪影響があるということでは無さそうですので、

上手く利用できるように、というところですね。

女性に関してはデータが少ないので何とも言えませんが、

男性とほぼ同様かと思います。

2017年12月13日水曜日

日本スプリント学会第28回大会雑感、二日目

二日目の最初はシンポジウム2で

「多種目におけるスプリント能力の必要性と多種目によるスプリント能力向上の可能性」

というテーマで本田陽先生(中京大学)と大山卞圭吾先生(筑波大学)が登壇。

本田先生は10種競技の選手を例にして話をされ、

大山先生は砲丸投げを例として話をされました。

同じ動きをする部分はあるというのが両者に共通する点かと思います。

大山先生はメディシンボールを投げる練習での工夫を動画を用いて示されていました。

カラーコーンを上手く投げるというのは面白そうだな、と思いました。

特別講演2は森谷敏夫先生による「最新トレーニング科学」というテーマでしたが、

森谷先生はいつもながらの森谷先生でした。

初めて見た人は圧倒されたor頭のおかしな人が出てきた、

というどちらかの感想になるのかと思いますが、

陸上競技のみならずスポーツの指導というのは説明がつかないことをやらせていることが多い、

という点は認識すべきであろうと思います。

遅いスピードでやる練習になんか意味があるの?

何でその練習やってんの?

という森谷先生の煽りにしっかりと心の中で返せていれば良いかと思います。

運動生理学などをしっかりと学んでいない人にも分かるようなレベルになっていたかと思いますが、

ところどころは理解できないような内容もあったかと思います。

ただ、あの程度のことは知っておいて損は無いし、

あの程度を知らずに指導したり競技をするのは伸びしろを伸びしろのまま終わらせてしまうことになりますので、

何を言っていたのか分からないという場合は運動生理学をもっと学んでいただきたいと思います。

最新とはついていますが、実際には10年前頃から今に至るまで変わっていない、

そうした内容のものもありましたし。

”筋肉が増えただけではパフォーマンスは上がらない!!”

この点はしっかりと認識すべきでしょうね。

森谷先生が暴れた?後の講演は寺田新先生(東京大学)による、

「スポーツ栄養学における最近の知見」

という講演でしたが、時間が足りなくなったためにサプリメントの話が無くなりました。

残念。
 詳しい話に関しては著書を読んで頂くのが良いと思います。

スポーツ栄養学 科学の基礎から「なぜ?」にこたえる


午後の一般発表に関してはこの学会ではこんなもんだろうな、

という感じのものですので省略します。

一件、終わってからお話を聞かせて頂いた発表もありましたが、

現状の広く知られているスプリント理論が正しいという前提で果たして良いのか、

という点から質問をさせて頂きました。

とても楽しい話が出来ました。




そんなわけで二日目に関しては内容が薄い感じになりますが、

二日間の感想として思いましたこととしては、

筋肥大や筋力を向上させるためのトレーニングにおいて、

正しいフォームと呼ばれているもの以外でも効果的なやり方はある、

むしろあの正しいフォームはケガ予防には効果的かもしれないが、

世界で勝負できるような突き抜けた選手になるためには、

正しいとは言えないが筋肉に対してはとにかく効果的なやり方、

というのが必要かもしれないな、

となります。

感覚として良いことが必ずしも正しいわけではなく、

理屈として正しいことが全てにおいて正しいわけではなく。

その場に応じて最適な答えというのはあるのだと思いますが、

解明されていること、知っていることなど見る人によって異なるので、

本当にやるべきことというのは実践しているかどうかは不明なのだろうと思います。

素振りも本当に効果が出るのはエネルギーが減った所からと森谷先生は言っていましたが、
技術的な所とエネルギーの面から見た話はまた別ですし。

幅広い知識をもって多角的に物事を捉えて、

ベストな答えを導いていくのが大事だという当たり前のことを再認識させて頂きました。

まだまだ知らないことはたくさんありますので、

引き続き勉強していこうと思います。