二日目の最初はシンポジウム2で
「多種目におけるスプリント能力の必要性と多種目によるスプリント能力向上の可能性」
というテーマで本田陽先生(中京大学)と大山卞圭吾先生(筑波大学)が登壇。
本田先生は10種競技の選手を例にして話をされ、
大山先生は砲丸投げを例として話をされました。
同じ動きをする部分はあるというのが両者に共通する点かと思います。
大山先生はメディシンボールを投げる練習での工夫を動画を用いて示されていました。
カラーコーンを上手く投げるというのは面白そうだな、と思いました。
特別講演2は森谷敏夫先生による「最新トレーニング科学」というテーマでしたが、
森谷先生はいつもながらの森谷先生でした。
初めて見た人は圧倒されたor頭のおかしな人が出てきた、
というどちらかの感想になるのかと思いますが、
陸上競技のみならずスポーツの指導というのは説明がつかないことをやらせていることが多い、
という点は認識すべきであろうと思います。
遅いスピードでやる練習になんか意味があるの?
何でその練習やってんの?
という森谷先生の煽りにしっかりと心の中で返せていれば良いかと思います。
運動生理学などをしっかりと学んでいない人にも分かるようなレベルになっていたかと思いますが、
ところどころは理解できないような内容もあったかと思います。
ただ、あの程度のことは知っておいて損は無いし、
あの程度を知らずに指導したり競技をするのは伸びしろを伸びしろのまま終わらせてしまうことになりますので、
何を言っていたのか分からないという場合は運動生理学をもっと学んでいただきたいと思います。
最新とはついていますが、実際には10年前頃から今に至るまで変わっていない、
そうした内容のものもありましたし。
”筋肉が増えただけではパフォーマンスは上がらない!!”
この点はしっかりと認識すべきでしょうね。
森谷先生が暴れた?後の講演は寺田新先生(東京大学)による、
「スポーツ栄養学における最近の知見」
という講演でしたが、時間が足りなくなったためにサプリメントの話が無くなりました。
残念。
詳しい話に関しては著書を読んで頂くのが良いと思います。
スポーツ栄養学 科学の基礎から「なぜ?」にこたえる
午後の一般発表に関してはこの学会ではこんなもんだろうな、
という感じのものですので省略します。
一件、終わってからお話を聞かせて頂いた発表もありましたが、
現状の広く知られているスプリント理論が正しいという前提で果たして良いのか、
という点から質問をさせて頂きました。
とても楽しい話が出来ました。
そんなわけで二日目に関しては内容が薄い感じになりますが、
二日間の感想として思いましたこととしては、
筋肥大や筋力を向上させるためのトレーニングにおいて、
正しいフォームと呼ばれているもの以外でも効果的なやり方はある、
むしろあの正しいフォームはケガ予防には効果的かもしれないが、
世界で勝負できるような突き抜けた選手になるためには、
正しいとは言えないが筋肉に対してはとにかく効果的なやり方、
というのが必要かもしれないな、
となります。
感覚として良いことが必ずしも正しいわけではなく、
理屈として正しいことが全てにおいて正しいわけではなく。
その場に応じて最適な答えというのはあるのだと思いますが、
解明されていること、知っていることなど見る人によって異なるので、
本当にやるべきことというのは実践しているかどうかは不明なのだろうと思います。
素振りも本当に効果が出るのはエネルギーが減った所からと森谷先生は言っていましたが、
技術的な所とエネルギーの面から見た話はまた別ですし。
幅広い知識をもって多角的に物事を捉えて、
ベストな答えを導いていくのが大事だという当たり前のことを再認識させて頂きました。
まだまだ知らないことはたくさんありますので、
引き続き勉強していこうと思います。
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2017年12月13日水曜日
2017年12月10日日曜日
日本スプリント学会第28回大会雑感、初日
2017年12月9(土)~10(日)の日程において、
三重県の皇學館大学を会場として行われましたスプリント学会へ参加しての感想です。
初日の最初はシンポジウム1として高野進先生(東海大)と、
河野匡監督(大塚製薬陸上部)が「リレー、駅伝はこの力を伸ばしているのか?」
というテーマでの講演をされました。
高野先生はリレーの強化によって選手個人が他者と交流するようになり、
心理的要因・技術的要因・戦略的要因に好影響を与えたという話。
しかし、4×100mリレーに関しては良い影響を与えているが、
4×400mリレーには影響が無く、
現状の選手のポテンシャルのままでは期待できないとバッサリ。
河野監督は日本陸連の強化委員会としての立場もありますが、
まずは大塚製薬の陸上部に関する話をされ、
教育ということを大事にしている、というのを図示されていました。
その後、長距離の現状という話になり、
世界記録に対して90%達成率の選手は多いが、93%になると激減し、
95%になるとほぼいないというデータを出され、
箱根駅伝により一定の層は厚いが世界と戦えるレベルがいない、
ということを示されていました。
マラソングランドチャンピンシップのシステムやオリンピックの選考の話、
今後の方針として長距離の指導者におけるライセンス制度の導入や、
3000mを強化する方向性などの話がありました。
その他、現在の長距離の指導やシステムに対する厳しいお言葉が多数。
また、質疑応答で箱根駅伝に関するものが出ましたが、
高野先生から箱根駅伝の全国化という話は学連の会議などでは出ていないガセネタと、
というお話がありました。
午後は熊本水賴先生(京都大学名誉教授)による二関節筋のお話から。
二関節筋の基本的な説明を丁寧にされながらの話で、
走っている時の姿勢、角度が少し違うだけで筋肉の力発揮が大きく変わるという点や、
主動筋と拮抗筋という言葉が使われるが、
これは昔からの用語として使われていて、そのように教えていることに問題があるが、
拮抗筋と呼ぶものも見る時によっては主動筋であるということを語られていました、
会場に人が一気に増えた記念講演では、
土江寛裕コーチ(東洋大)、柴田博之先生(洛南高等学校)が桐生祥秀選手(東洋大)に関する話をされ、
最後に三人が登壇をして質疑応答が行われました。
土江コーチは大学時代の練習のテーマやどのようなことをやったか、
という話をされていました。
コンセプトとしては”接地中の移動距離を大きくする”というものだそうです。
実際、これがストライドを大きくするにはとても大事ですので、
これを間違っていたら今年の結果は無かったのでは、
と個人的には思いました。
柴田先生は高校時代の桐生選手の話を当時の他の選手の話を交えつつ、
寝ている桐生選手に注意をして起こしつつ、
話を進められていきました。
興味深かった点としてましては、
”獲得と消失”
”プラスがあればマイナスもある”
”大きく変化をさせない”
”この練習をやっていけばこうなるだろう”
というものがあります。
練習をやったことで必ずプラスが積み重なるわけではないという、
意外と忘れがちな点をしっかりと認識させて、
病院などと連携してデータを取って、
故障をしていなくても予防のために故障として扱うなどといったものがありました。
質疑応答では桐生選手の高校時代のウォーミングアップについて聞かれ、
”私が見に行くと選手が私に見せるためのアップをするのでほとんど見ないから知らない”
と答えていました。
”「チラッと見た時もあるがやっていた記憶が無い。お前やってた?」”
”「ほぼやってません」”
というやり取りもありました。
アップに関しては土江コーチからはやらせ過ぎて失敗したので今は見守る、
というコメントがありました。
高校から大学へと移行する過程でやりたいことが出来た、
様々なことがあり多くの人に世話になるなかで上手く流れがつながった、
というのが結果につながったのかなと思いました。
招待講演1の小田俊明先生(兵庫教育大学) は、
「筋腱の力学的性質とランニングにおけるその重要性」
というテーマで中長距離のケニア人選手のデータから、
slackが少ないことで効率の良い力発揮をしているということを示し、
短距離や日本人ではどうかといった話をされました。
足関節の硬さと筋のstiffnessが高いことが競技力と相関がある、
と。
相関(決定係数)の説明も丁寧にされていたので、
とても分かりやすかったと思います。
柴田先生の話の中に”洛南高校の選手は足首が硬い子に強い子が多いが、
これが練習によるものなのか先天的なものなのかは分からない”
というものがありましたが、
足首が硬い方がパフォーマンスは高いというデータはあるということです。
トレーニングで硬くする方法もありますし、
そうした点を意識してやっていくのは大事ですね。
初日の最後は奥脇透先生(国立スポーツ科学センター)による
「疾走中に起こる肉離れについて」
というテーマでのお話でした。
どうして肉離れが起こるのかというのを解剖学的に見ていき、
肉離れというのは膜が離れているのが正しそう、
とのことでした。
重症となる肉離れが起こりやすいのはバトンパスやフィニッシュの姿勢であり、
その他にもねじる動作があったりすると起こりやすいが、
完全に予防するのは難しい、
膜がしっかりと元に戻ったことを確認してから競技に復帰して再発を防ぐ、
鍛える動作を変えるなどやれば、とのことでした。
三重県の皇學館大学を会場として行われましたスプリント学会へ参加しての感想です。
初日の最初はシンポジウム1として高野進先生(東海大)と、
河野匡監督(大塚製薬陸上部)が「リレー、駅伝はこの力を伸ばしているのか?」
というテーマでの講演をされました。
高野先生はリレーの強化によって選手個人が他者と交流するようになり、
心理的要因・技術的要因・戦略的要因に好影響を与えたという話。
しかし、4×100mリレーに関しては良い影響を与えているが、
4×400mリレーには影響が無く、
現状の選手のポテンシャルのままでは期待できないとバッサリ。
河野監督は日本陸連の強化委員会としての立場もありますが、
まずは大塚製薬の陸上部に関する話をされ、
教育ということを大事にしている、というのを図示されていました。
その後、長距離の現状という話になり、
世界記録に対して90%達成率の選手は多いが、93%になると激減し、
95%になるとほぼいないというデータを出され、
箱根駅伝により一定の層は厚いが世界と戦えるレベルがいない、
ということを示されていました。
マラソングランドチャンピンシップのシステムやオリンピックの選考の話、
今後の方針として長距離の指導者におけるライセンス制度の導入や、
3000mを強化する方向性などの話がありました。
その他、現在の長距離の指導やシステムに対する厳しいお言葉が多数。
また、質疑応答で箱根駅伝に関するものが出ましたが、
高野先生から箱根駅伝の全国化という話は学連の会議などでは出ていないガセネタと、
というお話がありました。
午後は熊本水賴先生(京都大学名誉教授)による二関節筋のお話から。
二関節筋の基本的な説明を丁寧にされながらの話で、
走っている時の姿勢、角度が少し違うだけで筋肉の力発揮が大きく変わるという点や、
主動筋と拮抗筋という言葉が使われるが、
これは昔からの用語として使われていて、そのように教えていることに問題があるが、
拮抗筋と呼ぶものも見る時によっては主動筋であるということを語られていました、
会場に人が一気に増えた記念講演では、
土江寛裕コーチ(東洋大)、柴田博之先生(洛南高等学校)が桐生祥秀選手(東洋大)に関する話をされ、
最後に三人が登壇をして質疑応答が行われました。
土江コーチは大学時代の練習のテーマやどのようなことをやったか、
という話をされていました。
コンセプトとしては”接地中の移動距離を大きくする”というものだそうです。
実際、これがストライドを大きくするにはとても大事ですので、
これを間違っていたら今年の結果は無かったのでは、
と個人的には思いました。
柴田先生は高校時代の桐生選手の話を当時の他の選手の話を交えつつ、
寝ている桐生選手に注意をして起こしつつ、
話を進められていきました。
興味深かった点としてましては、
”獲得と消失”
”プラスがあればマイナスもある”
”大きく変化をさせない”
”この練習をやっていけばこうなるだろう”
というものがあります。
練習をやったことで必ずプラスが積み重なるわけではないという、
意外と忘れがちな点をしっかりと認識させて、
病院などと連携してデータを取って、
故障をしていなくても予防のために故障として扱うなどといったものがありました。
質疑応答では桐生選手の高校時代のウォーミングアップについて聞かれ、
”私が見に行くと選手が私に見せるためのアップをするのでほとんど見ないから知らない”
と答えていました。
”「チラッと見た時もあるがやっていた記憶が無い。お前やってた?」”
”「ほぼやってません」”
というやり取りもありました。
アップに関しては土江コーチからはやらせ過ぎて失敗したので今は見守る、
というコメントがありました。
高校から大学へと移行する過程でやりたいことが出来た、
様々なことがあり多くの人に世話になるなかで上手く流れがつながった、
というのが結果につながったのかなと思いました。
招待講演1の小田俊明先生(兵庫教育大学) は、
「筋腱の力学的性質とランニングにおけるその重要性」
というテーマで中長距離のケニア人選手のデータから、
slackが少ないことで効率の良い力発揮をしているということを示し、
短距離や日本人ではどうかといった話をされました。
足関節の硬さと筋のstiffnessが高いことが競技力と相関がある、
と。
相関(決定係数)の説明も丁寧にされていたので、
とても分かりやすかったと思います。
柴田先生の話の中に”洛南高校の選手は足首が硬い子に強い子が多いが、
これが練習によるものなのか先天的なものなのかは分からない”
というものがありましたが、
足首が硬い方がパフォーマンスは高いというデータはあるということです。
トレーニングで硬くする方法もありますし、
そうした点を意識してやっていくのは大事ですね。
初日の最後は奥脇透先生(国立スポーツ科学センター)による
「疾走中に起こる肉離れについて」
というテーマでのお話でした。
どうして肉離れが起こるのかというのを解剖学的に見ていき、
肉離れというのは膜が離れているのが正しそう、
とのことでした。
重症となる肉離れが起こりやすいのはバトンパスやフィニッシュの姿勢であり、
その他にもねじる動作があったりすると起こりやすいが、
完全に予防するのは難しい、
膜がしっかりと元に戻ったことを確認してから競技に復帰して再発を防ぐ、
鍛える動作を変えるなどやれば、とのことでした。
2017年11月2日木曜日
タバコの煙による悪影響は運動によって低下させることができる
Exercise training reverses inflammation and muscle wasting after tobacco smoke exposure
http://ajpregu.physiology.org/content/early/2017/10/25/ajpregu.00316.2017
American Journal of Physiology - Regulatory, Integrative and Comparative Physiology
Published 1 November 2017 Vol. no. , DOI: 10.1152/ajpregu.00316.2017
Karsten Krüger et.al
abstractを見ただけです。
動物実験の話ですが、タバコの煙によって生じる炎症やmTORの減少は、
運動によって改善、逆転させることができる、と。
人間が喫煙したり副流煙を吸いこむ場合だとどうなるのかは不明ですが、
何もしないよりは効果的だということは言えるでしょう。
運動してもタバコ吸ったら意味ないじゃない、というコメントに対しては反論できますね。
まぁでも、喫煙しない、副流煙を吸いこまない環境が理想的だろうな、と思います。
http://ajpregu.physiology.org/content/early/2017/10/25/ajpregu.00316.2017
American Journal of Physiology - Regulatory, Integrative and Comparative Physiology
Published 1 November 2017 Vol. no. , DOI: 10.1152/ajpregu.00316.2017
Karsten Krüger et.al
abstractを見ただけです。
動物実験の話ですが、タバコの煙によって生じる炎症やmTORの減少は、
運動によって改善、逆転させることができる、と。
人間が喫煙したり副流煙を吸いこむ場合だとどうなるのかは不明ですが、
何もしないよりは効果的だということは言えるでしょう。
運動してもタバコ吸ったら意味ないじゃない、というコメントに対しては反論できますね。
まぁでも、喫煙しない、副流煙を吸いこまない環境が理想的だろうな、と思います。
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