2017年12月9(土)~10(日)の日程において、
三重県の皇學館大学を会場として行われましたスプリント学会へ参加しての感想です。
初日の最初はシンポジウム1として高野進先生(東海大)と、
河野匡監督(大塚製薬陸上部)が「リレー、駅伝はこの力を伸ばしているのか?」
というテーマでの講演をされました。
高野先生はリレーの強化によって選手個人が他者と交流するようになり、
心理的要因・技術的要因・戦略的要因に好影響を与えたという話。
しかし、4×100mリレーに関しては良い影響を与えているが、
4×400mリレーには影響が無く、
現状の選手のポテンシャルのままでは期待できないとバッサリ。
河野監督は日本陸連の強化委員会としての立場もありますが、
まずは大塚製薬の陸上部に関する話をされ、
教育ということを大事にしている、というのを図示されていました。
その後、長距離の現状という話になり、
世界記録に対して90%達成率の選手は多いが、93%になると激減し、
95%になるとほぼいないというデータを出され、
箱根駅伝により一定の層は厚いが世界と戦えるレベルがいない、
ということを示されていました。
マラソングランドチャンピンシップのシステムやオリンピックの選考の話、
今後の方針として長距離の指導者におけるライセンス制度の導入や、
3000mを強化する方向性などの話がありました。
その他、現在の長距離の指導やシステムに対する厳しいお言葉が多数。
また、質疑応答で箱根駅伝に関するものが出ましたが、
高野先生から箱根駅伝の全国化という話は学連の会議などでは出ていないガセネタと、
というお話がありました。
午後は熊本水賴先生(京都大学名誉教授)による二関節筋のお話から。
二関節筋の基本的な説明を丁寧にされながらの話で、
走っている時の姿勢、角度が少し違うだけで筋肉の力発揮が大きく変わるという点や、
主動筋と拮抗筋という言葉が使われるが、
これは昔からの用語として使われていて、そのように教えていることに問題があるが、
拮抗筋と呼ぶものも見る時によっては主動筋であるということを語られていました、
会場に人が一気に増えた記念講演では、
土江寛裕コーチ(東洋大)、柴田博之先生(洛南高等学校)が桐生祥秀選手(東洋大)に関する話をされ、
最後に三人が登壇をして質疑応答が行われました。
土江コーチは大学時代の練習のテーマやどのようなことをやったか、
という話をされていました。
コンセプトとしては”接地中の移動距離を大きくする”というものだそうです。
実際、これがストライドを大きくするにはとても大事ですので、
これを間違っていたら今年の結果は無かったのでは、
と個人的には思いました。
柴田先生は高校時代の桐生選手の話を当時の他の選手の話を交えつつ、
寝ている桐生選手に注意をして起こしつつ、
話を進められていきました。
興味深かった点としてましては、
”獲得と消失”
”プラスがあればマイナスもある”
”大きく変化をさせない”
”この練習をやっていけばこうなるだろう”
というものがあります。
練習をやったことで必ずプラスが積み重なるわけではないという、
意外と忘れがちな点をしっかりと認識させて、
病院などと連携してデータを取って、
故障をしていなくても予防のために故障として扱うなどといったものがありました。
質疑応答では桐生選手の高校時代のウォーミングアップについて聞かれ、
”私が見に行くと選手が私に見せるためのアップをするのでほとんど見ないから知らない”
と答えていました。
”「チラッと見た時もあるがやっていた記憶が無い。お前やってた?」”
”「ほぼやってません」”
というやり取りもありました。
アップに関しては土江コーチからはやらせ過ぎて失敗したので今は見守る、
というコメントがありました。
高校から大学へと移行する過程でやりたいことが出来た、
様々なことがあり多くの人に世話になるなかで上手く流れがつながった、
というのが結果につながったのかなと思いました。
招待講演1の小田俊明先生(兵庫教育大学) は、
「筋腱の力学的性質とランニングにおけるその重要性」
というテーマで中長距離のケニア人選手のデータから、
slackが少ないことで効率の良い力発揮をしているということを示し、
短距離や日本人ではどうかといった話をされました。
足関節の硬さと筋のstiffnessが高いことが競技力と相関がある、
と。
相関(決定係数)の説明も丁寧にされていたので、
とても分かりやすかったと思います。
柴田先生の話の中に”洛南高校の選手は足首が硬い子に強い子が多いが、
これが練習によるものなのか先天的なものなのかは分からない”
というものがありましたが、
足首が硬い方がパフォーマンスは高いというデータはあるということです。
トレーニングで硬くする方法もありますし、
そうした点を意識してやっていくのは大事ですね。
初日の最後は奥脇透先生(国立スポーツ科学センター)による
「疾走中に起こる肉離れについて」
というテーマでのお話でした。
どうして肉離れが起こるのかというのを解剖学的に見ていき、
肉離れというのは膜が離れているのが正しそう、
とのことでした。
重症となる肉離れが起こりやすいのはバトンパスやフィニッシュの姿勢であり、
その他にもねじる動作があったりすると起こりやすいが、
完全に予防するのは難しい、
膜がしっかりと元に戻ったことを確認してから競技に復帰して再発を防ぐ、
鍛える動作を変えるなどやれば、とのことでした。
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2017年12月10日日曜日
2017年11月2日木曜日
タバコの煙による悪影響は運動によって低下させることができる
Exercise training reverses inflammation and muscle wasting after tobacco smoke exposure
http://ajpregu.physiology.org/content/early/2017/10/25/ajpregu.00316.2017
American Journal of Physiology - Regulatory, Integrative and Comparative Physiology
Published 1 November 2017 Vol. no. , DOI: 10.1152/ajpregu.00316.2017
Karsten Krüger et.al
abstractを見ただけです。
動物実験の話ですが、タバコの煙によって生じる炎症やmTORの減少は、
運動によって改善、逆転させることができる、と。
人間が喫煙したり副流煙を吸いこむ場合だとどうなるのかは不明ですが、
何もしないよりは効果的だということは言えるでしょう。
運動してもタバコ吸ったら意味ないじゃない、というコメントに対しては反論できますね。
まぁでも、喫煙しない、副流煙を吸いこまない環境が理想的だろうな、と思います。
http://ajpregu.physiology.org/content/early/2017/10/25/ajpregu.00316.2017
American Journal of Physiology - Regulatory, Integrative and Comparative Physiology
Published 1 November 2017 Vol. no. , DOI: 10.1152/ajpregu.00316.2017
Karsten Krüger et.al
abstractを見ただけです。
動物実験の話ですが、タバコの煙によって生じる炎症やmTORの減少は、
運動によって改善、逆転させることができる、と。
人間が喫煙したり副流煙を吸いこむ場合だとどうなるのかは不明ですが、
何もしないよりは効果的だということは言えるでしょう。
運動してもタバコ吸ったら意味ないじゃない、というコメントに対しては反論できますね。
まぁでも、喫煙しない、副流煙を吸いこまない環境が理想的だろうな、と思います。
2017年10月25日水曜日
筋原線維のタンパク質合成はレジスタンストレーニング後24時間続く
Enhanced Amino Acid Sensitivity of Myofibrillar Protein Synthesis Persists for up to 24 h after Resistance Exercise in Young Men
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21289204
J Nutr. 2011 Apr 1;141(4):568-73. doi: 10.3945/jn.110.135038. Epub 2011 Feb 2.
Burd NA, West DW, Moore DR, Atherton PJ, Staples AW, Prior T, Tang JE, Rennie MJ, Baker SK, Phillips SM.
運動後の筋肉の合成は1~4時間程度に関して多くの研究がされている(1~5)。
また、レジスタンストレーニングにおける合成も多く研究されている。
一方で、24時間での合成などに関しては不明な点も多い。
高齢者ではインスリンによる影響で20時間に渡って合成が高まると言われる(9)。
この論文の著者らは(10)や(11)において筋肉の合成効果は強度ではなく収縮活動の量に応じることを明らかにした。
しかし、強度や量がどの程度で刺激となるかは不明のままである。
この論文における研究は通常時とレジスタンストレーニング後の筋肉の合成の違いを調べた。
被験者は15人の活動的な若い男性、BMIは24。
実験プロトコルは(10) で用いたものを使用。
(10)
Low-Load High Volume Resistance Exercise Stimulates Muscle Protein Synthesis More Than High-Load Low Volume Resistance Exercise in Young Menhttp://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0012033
1RMの90%を持続出来なくなるまで(90FAIL)
1RMの30%で仕事量を90FAILと同じにしたもの(30WM)
1RMの30%を持続出来なくなるまで(30FAIL)
結果
筋原線維のタンパク質合成速度(FSR)は90FAILと30FAILにおいて、
レジスタンストレーニング後24~27時間でコントロール群より有意に高かった。
Akt on Ser473の変化は90FAILにおいて有意に高かった。
mTOR on Ser2448の変化は30FAILにおいて有意に高かった。
4E-BP1 on Thr37/46はどの群においてもレジスタンストレーニング後群が有意に高かった。
p70S6K on Thr389はどの群でも差が見られなかった。
考察
既に運動とタンパク質の摂取によって24時間のタンパク質合成の上昇は確認されており、
今回の結果は 驚くものでは無かった。
タンパク質の合成を高めるには速筋の動員が重要であると推測される。
速筋が動員された後、筋線維の動員が速筋、遅筋ともに行われることで、
24時間後のタンパク質合成を高めると考えられる。
このことから負荷に関しては質と量が大事であろうと推測される。
しかし、どういったものが最適なのかは今回の実験からは不明のままである。
Free
2011年の論文ですが、量と質の両方が筋肥大の刺激となりますよ、
という話ですね。
負荷というものが質と量の両面で考えるものというのが理解できていないと、
説明する際に勘違いして理解されそうな話でもあります。
仕事量を90FAILと同じにした30WMでは筋肉の合成が大きくないという点は大事ですね。
軽いのでやる場合は徹底的にしっかりとやる。
疲れて動かないという状態までやるのが必要である、ということで。
あとは24時間もトレーニング効果の残存がある点から、
タンパク質の摂取はそうしたところも意識してするべき、
となるかと思います。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21289204
J Nutr. 2011 Apr 1;141(4):568-73. doi: 10.3945/jn.110.135038. Epub 2011 Feb 2.
Burd NA, West DW, Moore DR, Atherton PJ, Staples AW, Prior T, Tang JE, Rennie MJ, Baker SK, Phillips SM.
運動後の筋肉の合成は1~4時間程度に関して多くの研究がされている(1~5)。
また、レジスタンストレーニングにおける合成も多く研究されている。
一方で、24時間での合成などに関しては不明な点も多い。
高齢者ではインスリンによる影響で20時間に渡って合成が高まると言われる(9)。
この論文の著者らは(10)や(11)において筋肉の合成効果は強度ではなく収縮活動の量に応じることを明らかにした。
しかし、強度や量がどの程度で刺激となるかは不明のままである。
この論文における研究は通常時とレジスタンストレーニング後の筋肉の合成の違いを調べた。
被験者は15人の活動的な若い男性、BMIは24。
実験プロトコルは(10) で用いたものを使用。
(10)
Low-Load High Volume Resistance Exercise Stimulates Muscle Protein Synthesis More Than High-Load Low Volume Resistance Exercise in Young Menhttp://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0012033
1RMの90%を持続出来なくなるまで(90FAIL)
1RMの30%で仕事量を90FAILと同じにしたもの(30WM)
1RMの30%を持続出来なくなるまで(30FAIL)
結果
筋原線維のタンパク質合成速度(FSR)は90FAILと30FAILにおいて、
レジスタンストレーニング後24~27時間でコントロール群より有意に高かった。
Akt on Ser473の変化は90FAILにおいて有意に高かった。
mTOR on Ser2448の変化は30FAILにおいて有意に高かった。
4E-BP1 on Thr37/46はどの群においてもレジスタンストレーニング後群が有意に高かった。
p70S6K on Thr389はどの群でも差が見られなかった。
考察
既に運動とタンパク質の摂取によって24時間のタンパク質合成の上昇は確認されており、
今回の結果は 驚くものでは無かった。
タンパク質の合成を高めるには速筋の動員が重要であると推測される。
速筋が動員された後、筋線維の動員が速筋、遅筋ともに行われることで、
24時間後のタンパク質合成を高めると考えられる。
このことから負荷に関しては質と量が大事であろうと推測される。
しかし、どういったものが最適なのかは今回の実験からは不明のままである。
Free
2011年の論文ですが、量と質の両方が筋肥大の刺激となりますよ、
という話ですね。
負荷というものが質と量の両面で考えるものというのが理解できていないと、
説明する際に勘違いして理解されそうな話でもあります。
仕事量を90FAILと同じにした30WMでは筋肉の合成が大きくないという点は大事ですね。
軽いのでやる場合は徹底的にしっかりとやる。
疲れて動かないという状態までやるのが必要である、ということで。
あとは24時間もトレーニング効果の残存がある点から、
タンパク質の摂取はそうしたところも意識してするべき、
となるかと思います。
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