2017年2月23日木曜日

筋肉合成とmTORのシグナルは時間経過により不一致が生じる

Muscle full effect after oral protein: time-dependent concordance and discordance between human muscle protein synthesis and mTORC1 signaling

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20844073

Am J Clin Nutr. 2010 Nov;92(5):1080-8. doi: 10.3945/ajcn.2010.29819. Epub 2010 Sep 15

Atherton PJ, Etheridge T, Watt PW, Wilkinson D, Selby A, Rankin D, Smith K, Rennie MJ.

イントロ部分は(1~8)の論文を示してタンパク質やアミノ酸による筋肉合成の歴史に触れつつ、

アミノ酸はmRNAの転写を刺激するが多くの研究はmTOR1についてなされているという前振り。

そしてホエイタンパク質を48g、EAAにして20gの摂取によってどのような変化が時間の経過とともに生じるかを調査。

健康な若い男性8名での実験。

結果としては、タンパク質の摂取によるMPS(筋合成)は45~90分でピークを迎え、

以降は180分でベースラインに戻る。

しかし、筋合成のシグナル(”ie, S6K1, 4EBP1 phosphorylation, and eIF4E•eIF4G”) は

上昇したままであった。

これに関してはアミノ酸が血中や筋中にあっても利用できないシグナルが出ている可能性がある。

小胞体ストレスなど何かしらの要因があるかもしれないが、さらなる実験が必要。

(Free)


筋肉の合成はアミノ酸の摂取によって刺激されるということが言われていますが、

その理由というのがイマイチ分かっていないということですね。

2010年の論文ですが現状もそんなに大差はないかと思います。

人間の身体は複雑に制御されているから、

ということですかね。

血中や筋中のアミノ酸濃度を高くすることが筋肉の合成には大事であり、

ある程度の状態に戻るとシグナルはあっても筋肉の合成はなされない。

この点を見ると、 一度に多くのタンパク質を摂取して刺激をし、

再び180分後に摂取して刺激をし、

というのは効率が最も良いという事実が再度認識されるかと思います。

食事での筋肉合成の刺激と運動での刺激はどちらがより強いのか、

といった視点も必要になるかと思います。

まぁアミノ酸の濃度が高くならないと食事からの刺激が不足する、

という点を理解しておけば良いかと思います。

参考までに2009年のを。日本語です。

http://www.nncj.nestle.co.jp/ja/scientificpublications/repositoryofnutritionreviews/nutritionandphysicalexercise

2017年2月22日水曜日

血中へのアミノ酸注入による刺激と筋肉での影響

Disassociation between the effects of amino acids and insulin on signaling, ubiquitin ligases, and protein turnover in human muscle.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18577697

Am J Physiol Endocrinol Metab. 2008 Sep;295(3):E595-604. doi: 10.1152/ajpendo.90411.2008. Epub 2008 Jun 24.

Greenhaff PL, Karagounis LG, Peirce N, Simpson EJ, Hazell M, Layfield R, Wackerhage H, Smith K, Atherton P, Selby A, Rennie MJ.

血中へのアミノ酸の注入と、それに伴うインスリンの変化を観察。

インスリンはアミノ酸とは無関係に筋肉の分解を抑制する効果がある(10、23)ようだが、

アミノ酸が十分にある状態でインスリンが高まることによる影響はよく分からないので、

健康な若い8人の男性で実験して観察してみた。

結果として、インスリン濃度が高まってもmRNAには大きな変化がなく、

筋肉の合成の指標として使っている場合は注意が必要である。

インスリンがタンパク質分解を制御しているということは言えるかもしれないが、

アミノ酸とインスリンを見ただけでは何も言えない。



インスリンは筋肉の分解を抑制するかどうかはイマイチ分からないという感じですね。

ただ、トレーニングを翌日も行うといった観点からすると、

インスリンを分泌させてグリコーゲンの貯蔵を増やすといったことは必要ですので、

インスリンは筋肉肥大を刺激しないから不要、

という短絡的な話に持ち込まないようにした方が良いでしょうね。

2017年2月21日火曜日

PGC-1に関するレビュー

Peroxisome Proliferator-Activated Receptor γ Coactivator 1 Coactivators, Energy Homeostasis, and Metabolism
https://academic.oup.com/edrv/article-lookup/doi/10.1210/er.2006-0037

Endocr Rev (2006) 27 (7): 728-735. DOI: https://doi.org/10.1210/er.2006-0037
Published: 01 December 2006

Christoph Handschin  Bruce M. Spiegelman

2006年のものですが、

基本的な話を押さえるのには理解しやすいかと思います。

まぁ今から10年以上前のものなので、

日本語訳された教科書などもありますので、

日本が良いという方はそちらを読んだ方が。

ただ、参考文献などはどちらにせよ英語ですので、

基礎研究を見ておきたいという人はこれで良いかと思います。

フォリスタチンによる筋肥大はSmad3とmTORの影響するがミオスタチンとは別の機構で作用

Follistatin-mediated skeletal muscle hypertrophy is regulated by Smad3 and mTOR independently of myostatin.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22711699

J Cell Biol. 2012 Jun 25;197(7):997-1008. doi: 10.1083/jcb.201109091. Epub 2012 Jun 18.

Winbanks CE, Weeks KL, Thomson RE, Sepulveda PV, Beyer C, Qian H, Chen JL, Allen JM, Lancaster GI, Febbraio MA, Harrison CA, McMullen JR, Chamberlain JS, Gregorevic P.
フォリスタチンはTGF-βに結合し、TGF-βが別の物質と結合するのを防ぐ。

これにより筋肥大を抑制するとされるミオスタチンなどは機能しにくくなる。

ミオスタチンはSmadを介して情報を伝達する。

筋肥大の刺激にはmTORやAkt、S6Kなどの経路があるが、

フォリスタチンはどれに対して影響を与えるかを検討。

結果、フォリスタチンはmTORやS6Kに作用してSmadに影響を与えたが、

ミオスタチンには特に影響を与えないと考えられる。

(Free)


筋肉を肥大させる要因は多々ありますが、

その一方で筋肉を減らそうとする作用も多々あります。

運動によって遺伝子発現が起こり刺激が与えられ、

筋肉を増やしたり減らしたりするスイッチが入る。

タンパク質の摂取などはそれよりも下流ですので、

こうした上流の因子がどう変化させるかというのが筋肥大など、

トレーニング効果を最大限発揮させるには大事になります。

まぁトレーニングなどでは簡単に変化しないので、

ドーピングと呼ばれるような手法で強引に変化させてしまうわけです。

だからドーピングはダメと言われるわけです。

で、

ミオスタチンは筋肥大を抑制する因子として知られておりますが、

これをノックアウトする方法が無いものか、

ドーピングとならない方法では無いのか?

ということを探し回るわけですが、

2012年の時点ではフォリスタチンはミオスタチンに影響を与えないから別の方法を考えよう、

となったわけです。

筋肥大を抑制する因子が抑制されるから肥大するというよりも、

筋肥大を促進する因子を活発化させるから肥大する、

ということですね。

どちらを中心に狙うべきかというのは、まだまだよく分からない所です。

2017年2月20日月曜日

AMP活性化プロテインキナーゼはmTORシグナルの活性を抑制しタンパク質の合成を抑制する

AMP-activated protein kinase suppresses protein synthesis in rat skeletal muscle through down-regulated mammalian target of rapamycin (mTOR) signaling

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11997383/

J Biol Chem. 2002 Jul 5;277(27):23977-80. Epub 2002 May 7.

Bolster DR, Crozier SJ, Kimball SR, Jefferson LS.


アカデシン(AICAR)を用いたAMPK活性はの増加はmRNA翻訳を減らし、

タンパク質の合成を減らすと仮定してマウスで実験。

運動などによってATPはADP、さらにAMPへと分解されるが、

この時にAMPが増えてくるとAMPKが増加していく。



これも現在となっては当たり前の話として知られていますが、

2002年の研究ですのでよく分からない部分は多かったということで。

AMPKは筋肉合成に関して悪影響ではありますが、

脂肪酸の利用を高めることは減量や持久的な要素を狙ったトレーニングを実施している場合には良い効果がある。

何を目的としてトレーニングを実施するかによって、

AMPKは良くも悪くもなる、ということです。

この点が分かると、筋肥大を狙う場合はATPを減らさないようにするのが良い、

ということが見えてくると思います。

呼吸が乱れるような負荷設定は筋肥大を抑制するスイッチを入れることになるので。