Muscle Androgen Receptor Content but Not Systemic Hormones Is Associated With Resistance Training-Induced Skeletal Muscle Hypertrophy in Healthy, Young Men
Robert W. Morton et.al
Front. Physiol., 09 October 2018
・骨格筋肥大には個人差が大きい。運動後の循環している同化ホルモン(T、GH、IGF-1など)の上昇がレジスタンストレーニングによる骨格筋肥大を決定すると考えられている(Kraemerら、2017;Mangineら、2017)
・しかし、筋タンパク質合成量の増加(Westら、2009年)と肥大化(Westら、2010年、WestとPhillips、2012年、Mitchellら、2013年、Mortonら、2016年、Mobleyら、2018年)において、このようなホルモンが因果関係を持つかは疑わしい
・レジスタンストレーニングによる筋肉内アンドロゲン受容体量の増加は筋肥大と有意に相関している(Ahtiainenら、2011;Mitchellら、2013)ので、筋肉内アンドロゲンや受容体の増加が重要であると考えられる。
・被験者は49名平均23歳身長186cm±6、体重86kg±5で12週間のトレーニングを実施
・筋肉内アンドロゲン受容体量は介入前と介入後で変化がなかった
・高反応者と低反応者の間では筋横断面積と徐脂肪体重に有意な変化の差が見られた
考察
・高反応者は低反応者に比べて、12週間後に5αリダクターゼ含量が増加、アンドロゲン受容体含量が有意に高い(トレーニング前後での変化はない)ことから、骨格筋の肥大には全身性ホルモンと局所性ホルモンのどちらも影響しないと考える。骨格筋肥大の大きさは、筋肉内のアンドロゲン受容体の含有量やその他の筋肉内の変数によって調節されると考える
・アンドロゲン受容体の相関関係については、トレーニングに対する反応が高かった人と低かった人のみを測定するという選択をした値である
アンドロゲン受容体を狙ったドーピングがここ5年ほどで時代になっていまして、テストステロンなどのホルモンはやはり関係はあまり大きくなさそうであると指摘されています。一方で陸上競技においてはテストステロンの値が高いとパフォーマンスが高いというデータがあるため、女子選手は基準値を超えている場合は薬物を用いて数値を下げないことには400mや800mなどに出場することができないというルールも存在しています。この辺りは研究が追い付いていない、解析がおかしいのではという指摘も当然ながら存在しています。なかなか難しいところではありますが、取り合えずはアンドロゲン受容体を増やすようなことを狙った方が明らかに筋肥大の効果は出ると期待される、と言えるかと思います。
https://sites.google.com/view/spe-gym/ 走りや身体作りの指導など、各種のご依頼はジムのサイトよりどうぞ。小田急線、千歳船橋駅から徒歩3分のパーソナルジムです。
2021年7月24日土曜日
健康な若年男性のレジスタンストレーニングによる骨格筋肥大には筋アンドロゲン受容体の含有量が関係
2021年7月22日木曜日
運動時および回復時のグリコーゲンの貯蔵量と骨格筋のタンパク質の合成、分解
Howarth KR, Phillips SM, MacDonald MJ, Richards D, Moreau NA, Gibala MJ.
J Appl Physiol (1985). 2010 Aug;109(2):431-8.
・運動により炭水化物の利用率が低下するとタンパク質の分解とアミノ酸の酸化が促進されることが示唆されている
Effect of initial muscle glycogen levels on protein catabolism during exercise
・被験者は平均年齢24±1歳、体重80±5kgの健康な適度に運動をしている男性6名
・自転車運動によって糖を枯渇させ両脚での膝伸展運動を実施
・低炭水化物条件では高炭水化物条件に比べて運動の後半にタンパク質の分解が増加し、合成が減少(運動の後半、炭水化物がより減ってくることで合成が減ることで、より分解が増したと考えられる)
・低炭水化物群は実験前の摂取カロリー条件を整えるためタンパク質摂取が多めとなっていたので、ロイシンの酸化が多かったと考えられるかもしれない
筋肉を増やすことが目的である場合、炭水化物が減った状態でのトレーニングは好ましくないということですね。特に長時間運動をする場合は、運動中に糖質の補給をすることでタンパク質の分解を減らしていくことが大事になると考えられます。マラソンなどに向けてしっかりと走り込んで脚を作るということをしたいのであれば、運動前の炭水化物の補給、運動中の炭水化物の補給をしっかりと行うことが大事であろうと思われます
2021年7月21日水曜日
タンパク質摂取のメタアナリシス(2018年)
Robert W Morton et.al
British Journal of Sports Medicine 2018;52:376-384
・食事でのタンパク質の摂取がレジスタンストレーニングによる1RMと徐脂肪体重の増加を大きくさせる(年齢が高くなるにつれて効果が減少する)
・タンパク質の総摂取量と徐脂肪体重の変化に関して、タンパク質の補給はレジスタンストレーニングを行っている人でより効果的でありるが、1.6g/kg/日を超えても増加しなかった
・タンパク質の補給は、徐脂肪体重の増加を0.30kg(27%)、横断面積を310μm2(38%)、大腿骨中央部横断面積を7.2mm2(14%)増大させた
・運動後のタンパク質投与量は、レジスタンストレーニングによる徐脂肪体重の変化に影響しなかった。レジスタンストレーニングをしている人は、筋肉の成長の可能性が小さく、運動後の筋タンパク質の代謝が弱く、筋肉量の増加を見るためのタンパク質補給の必要性が高いのではないかと推測している
・高齢者は同化への抵抗性があり若い参加者と比較して、より多くのタンパク質量を必要とする。レジスタンストレーニングによる筋横断面積の変化に年齢は影響しなかったが、徐脂肪体重の変化に年齢が負の影響を与えたことから、高齢者が徐脂肪体重を増加させるためには、より多くのタンパク質を摂取する必要性が高まると推測される
・タンパク質摂取量(g/kg/day)が多くなるとレジスタンストレーニングによる徐脂肪体重の増加にプラスの影響を与えるという理論があるが、これは高齢者を対象とした研究において、ベースラインのタンパク質摂取量の平均値および1日のタンパク質摂取量の平均値が低かったことに起因していると考えられる。調整なしのメタ回帰分析では、若年者のベースラインのタンパク質摂取量が多いほど、実際には徐脂肪体重の変化が抑制された
・レジスタンストレーニングによる徐脂肪体重の増加を最大化したい人には、約2.2gのタンパク質/kg/日を推奨するのが賢明かもしれない(このアプローチには限界があるが、合理的な証拠と理論に基づいている)
・タンパク質補給の詳細(タイミング、運動後のタンパク質投与量またはタンパク質源など)は、レジスタンストレーニングによる数週間のF徐脂肪体重や筋力の増加ほとんど影響していない。むしろ、若い人たちは、1日あたりのタンパク質摂取量が1.6g/kg/日程度、0.25g/kg程度に分割して摂取することがレジスタンストレーニングの効果により大きな影響を与える
・レジスタンストレーニングの実施が大きな影響を与える
2018年のものですが、いろいろと言われている内容を3年前の段階ではしっかりと示しております。そこからまた新たな知見なども出てきてはいますが、大事なことはしっかりとトレーニングをしろ、朝昼晩の三回の食事で体重60㎏の人なら1回につき15gのタンパク質を必ず摂取しろ、三食にプラスして50gほど摂取しろ、ということですね。結局のところ、トレーニング後はある程度の時間が経っているから摂取するタイミングとしては理想的である、という感じなのではないでしょうか。あとは話をする機会がある時には触れている、摂取しすぎてもダメという点もお忘れなく、と。人によっては摂取量を増やすことで効果が出ている人もいるので2.2g程度でも良いのではというのがありますが、ダメな人はその摂取しすぎによって逆効果が出ている可能性もありますので、摂り過ぎを注意するということをやってみるのもありかと思います。とにもかくにも、トレーニングによる刺激の方が効果的であり、タンパク質の摂取による筋肥大の刺激~なんていうのは気にする必要はそんなに無いよ、ということは言えるかと思います。ただ、触れられているようにウエイトリフティングやパワーリフティングの選手などはキッチリと意識して10%程度のプラスを取りにいかないとダメということで。そうではない、1RMの向上よりも大事なことがある人は、タンパク質の摂取を考えるよりも練習をもっと考えろ、ということは言えるかと思います。
2021年7月20日火曜日
給水不足な状態で暑い中での運動を開始した時の体温調整に関する男女差
Sex difference in initial thermoregulatory response to dehydrated exercise in the heat
Gabrielle E. W. Giersch 2021 - Physiological Reports
・脱水の影響と生殖ホルモンの状態(生物学的性別も)の影響が、暑い中での運動時の体温調節に影響するのかという点は現在のところ明らかになっていない。
・水分を補給した状態で暑い中で運動する際の男女の体温調節の違いは、体格や形態の違いに起因するとされている。(Gagnon & Kenny, 2012; Jay, 2014; Shapiro et al., 1980)。
・運動強度を相対的な最大酸素摂取量(VO2max; Gagnon et al., 2009)に基づいて決定した場合、体格が体温調節反応の違いを説明することが示されてきた。しかし、熱産生に基づいて運動強度を規定した研究(Gagnonら、2008、2009;Gagnon & Kenny、2012)では、女性は主に性ホルモン濃度が周期の中で最も低い時期であるMC(月経周期)の初期である卵胞期に調査されてきた(Owen、1975)ので、エストラジオールやプロゲステロンが男女間の違いに与える影響を評価することができない
・女性ホルモンはMCを通して大きく変動し、体温調節機能に定量的な影響を与える(Charkoudian & Stachenfeld, 2014, 2016; Kolka & Stephenson, 1989, 1997a, 1997b; Owen, 1975)
女性は、卵胞期初期に比べて黄体期中期には、安静時、運動時、運動後のTre(直腸温)が増加する(Carpenter & Nunneley, 1988; Giersch, Morrissey, et al., 2020; Kolka & Stephenson, 1997b; Kuwahara et al., 2005; Lei et al., 2017)
・Treの増加は、プロゲステロン濃度の上昇によるものと考えられる(Charkoudian & Stachenfeld, 2016; Kolka & Stephenson, 1997b)
・ホルモンの影響があるので女性は男性と比べて暑さに対して反応が異なる可能性がある。しかし、このような疑問は、水分補給の状態を変化させた場合に関しては、解決されていない(Sawka et al., 1998)。
・性、生殖ホルモン、水分補給の状態によって、暑中での運動に対する体温調節反応が変化する可能性はあるが、メカニズムは十分に解明されていない。この研究では健康な若年男女を対象に、暑熱時の運動に対する体温調節反応に対する性の影響が、水分補給状態によって変化し、さらに生理周期によっても変化するかどうかを評価することを目的とした。
・女性では脱水に伴う運動中の体温上昇が、MC期とは無関係に悪化するという仮説を立てた。
・被験者は健康な20歳前後の男性12名と女性7名
・VO2maxの30%、40%、50%、60%、70%、80%の速度でそれぞれ4分、24分間の運動を実施。地形や風の抵抗を考慮してトレッドミルで2%の勾配をつけた。環境は~33°Cで相対湿度50%
・運動試験の直前に24時間の水分制限を実施。運動前の24時間は水分を摂取せず,水分含有量の少ない食品を摂取するよう指示
・運動前の脱水刺激として24時間の水分制限をしたのは、水分摂取量が少ない人や前日に脱水症状を伴う運動をして十分に回復しなかった人と同様の低レベルの脱水症状にするため(Cheuvront & Kenefick, 2014)
・比較的軽度の脱水状態であっても、女性は男性よりも暑い中での運動開始時のTreの上昇をより高める
・ホルモン状態による体温調節反応の違いは確認できなかった
・水分補給の状態は男女ともに発汗量に影響を与える。女性でも脱水は体温調節反応を損なうことが示唆された
雑感
運動する前にしっかりと水分摂取を実施してとは言うものの、前日の運動後に十分な給水ができていない場合というのはそれなりにあり、どうして調子が悪いのかとなったら給水不足というのはよくあることかと思われます。オシッコの色がほんのりと黄色い状態になるくらいまでの摂取が必要ですが、飲んでから体内で給水されて反映されるまでにもそれなりの時間を要しますし、運動後の喉の渇きに比べると、数時間も経ってしまうと水分を摂ろうという意識は減ってしまいます。そうした状態での運動において、女性は直腸温が上がりやすくなるので、パフォーマンスがすぐに落ちてしまう可能性が高い、ということですね。もちろん、給水が不十分な状態での運動は好ましくないわけですが、気づかずに運動を開始した場合に今日は何か動きが悪いなと思ったら、脱水の可能性も疑いましょうね、というのが言えるかと思います。生理周期での違いは特に無いようなので、しっかりと運動後や日常における給水を実施して、万全な状態で練習ができるようにすれば良さそう、ということで。
2021年6月12日土曜日
高負荷なトレーニング後はミトコンドリアの呼吸が減少する
https://journals.physiology.org/doi/abs/10.1152/japplphysiol.00829.2020Journal of Applied Physiology 10 JUN 2021
Daniele A. Cardinale et.al