超一流になるのは才能か努力か? [ K.アンダース・エリクソン ]
原題は
Peak: Secrets from the New Science of Expertise
という本です。
フロリダ州立大学心理学部教授のアンダース・エリクソンによって書かれ、
2015年の10月に英語版が出版され、2016年7月に日本語訳版が出版されています。
さて、この本で書かれている内容としましては、
序章に「絶対音感は生まれつきのものなのか?」
第八章に「生まれながらの天才はいるのか?」
という興味深いタイトルがあり、さらには、
第四章に「能力の差はどうやって生まれるのか?」
第五章に「なぜ経験は役に立たないのか?」
と興味深い項目があります。
当然ながら筆者の思っていること、考えていることが中心に述べられていますので、
それは違うんじゃないの?と思う点もありますが、
なるほどなぁ、という点も多くあります。
例えば記憶力などに関する話としては、
”適切な訓練によって向上する場合がほとんど”
ということが言われています。
これには実験の結果なども示されていますので納得いくものは多く、
練習に対する意識やフィードバックの重要性なども書かれています。
このフィードバックで取り組みの差が見られるが、
それによって伸びる人と伸びない人の差が生まれている、
などというのが考えられると。
帯には「練習を楽しいと感じていてはトッププレーヤーになれない」
というものが書かれていますが、
多くのトッププレーヤーは楽しくない練習をこなしている。
楽しい段階を飛び出して厳しいもの、難しいものに取り組んで、
それを解決しようと繰り返す人が伸びていく、
といった話も。
同じことをやっているように見えても差が生まれるのは、
やはり小さな点の気づきだと思われますが、
こうした差に関しては指導者・教師・コーチの関与などで減らすこともできるので、
指導者選びは大事である、とのこと。
指導者にも得手不得手があるし、指導者にも限界があるので、
習うことをすべて習得したら新たな指導者に習うことでさらに次の限界に挑戦できる。
この限界に挑んで常に次に進んでいくことが成長には大事である、
と筆者は述べています。
また、一万時間の法則というのは響きが良いから一万時間を目指そうとするが、
本質としてはその中身が重要であり、
ただ一万時間をこなせばよいわけではない。
とても当たり前の話ではありますが、
この辺りも意識しないと簡単に忘れてしまう。
その点を補うためには環境が大事である。
一緒に練習する相手などがいることで乗り越えられる。
チームスポーツには同じ練習をさせられるために伸びきれないという問題があるが、
その問題を認識して自分で補うようなことができる選手が成長する。
新人の医者と経験を積んだ医者ではほとんど能力に差がない。
それは新人の方が最新の知識を学んだりしていることや、
新たな知識を積極的に吸収しようとする結果、
急激に成長をして限界に挑戦していない経験を積んだ医者に並んでしまう、
などなど。
天才というのは努力をしているから天才なのだ、という話になりますが、
そうなるとスポーツ関連だと何もしていないのに走るのが速いやつは何なんだ?
と思いますよね。
彼らは身体的な特徴として生まれ持った高い能力がある可能性もありますが、
本人が自覚していない所で、遊びの中などで身体を鍛えてきた可能性などもある、
ということをこの筆者は言いたいのだろうな、
と思います。
なかなか面白い内容でしたので、
お時間ありましたらぜひどうぞ。