2015年6月19日金曜日

酸素摂取量と貧血の話、ですかね

最大酸素摂取量の話をこの所よくしているので、少々。

話を見ていて聞いていて思うのが、

全身に取り込んだ酸素の量とかいう当たり前の話は分かっているけれども、

何で取り込めるのかという点が分かっていない傾向の人が多いことです。

肺の容量やら肺活量やらといった話をされる人も多いので、

何ともアレな話を覚えてしまわないようにしてもらうために基本的な点を。



取りあえず先に結論。

どんな負荷でもトレーニングすれば酸素摂取量は向上します。

酸素摂取量が向上しないトレーニングなどはありません。

ただ、最も向上させるようなトレーニングをしているかどうか、この違いがあるだけ。

速く走るためには細胞を増やしていく必要がありますが、

その結果として酸素摂取量が向上していきます。



以下、説明を読んで理解したい人は。



体内に酸素を取り込むというのは、

肺胞における交換の能力、

次に酸素を送る能力があり、

細胞においての取り込む能力(交換する能力)、

上記の点を理解して頂ければよろしいかと思います。

つまり、心肺機能というのは中心部にある心臓や肺も大事ではあるが、

末端の細胞の能力というのも関わっているということです。

酸素を送り込む細胞が少なければ当然ながら高まりません。

末端の細胞においては動静脈酸素較差というのが指標とされますが、

これも酸素摂取能力にはとても大事なものです。

こうした点が理解できると最大酸素摂取量のには何が必要か?

そう聞かれた際に筋肉というのが出てくるようになるかと思います。

もちろん心拍出量などの心臓の能力も大事ではありますが、

これはトレーニング初期での適応によって早い段階である程度の能力に高まります。

ですので、

次の段階に進むということを考えると筋肉における酸素の交換、

という点に焦点を当てる事になります。

ここで大事なのは運搬するためのヘモグロビンと血液、

エネルギーを生産するミトコンドリアです。

貧血で走れないというのはヘモグロビンが鉄を結合する量が減ってしまい、

細胞に酸素を送れないので運動が継続できないということです。

ヘモグロビンはタンパク質で構成されており、

その中には鉄原子で構成されるヘムがあって、これが酸素を結合します。

貧血の人には鉄が不足している場合もあれば、

ヘモグロビンそのものが少ない場合もあるというのは、このためです。

なお、肺での酸素と二酸化炭素の交換は酸素分圧の話ですので、

鍛えてどうこうといった話にはならないと思われます。

肺を鍛えるという表現はありますが、

酸素を多く取り込むためには肺の話だけではなく、

全身の細胞を増やすというのが大事なわけです。



酸素の取り込みだけでは持久力の話を全て出来るわけではありませんので、

その点もお間違えなく。

取り込む能力が高いのは有利ですが、

その数値が高いからといって持久力が高いとも言えないのです。

理由は糖質の利用といった観点からお考えください。



ミトコンドリアや毛細血管の増加に関する話はまた別の機会に。

2015年6月13日土曜日

A Review of Resistance Training-Induced Changes in Skeletal Muscle Protein Synthesis and Their Contribution to Hypertrophy


Felipe Damas, Stuart Phillips, Felipe Cassaro Vechin, Carlos Ugrinowitsch

Volume 45Issue 6pp 801-807

http://link.springer.com/article/10.1007/s40279-015-0320-0

レジスタンストレーニングに関するレビューですが、

referenceが50近くあり、孫引きして基礎的な部分を学ぶには最適かと思います。

結局のところ、

今でも筋肉がどうして肥大するのかといった点は疑問がまだまだあるわけです。

abstの序盤に筋肉を肥大する因子はトレーニングとタンパク質の投与、

そういった事が書かれていますが、

意外とこの点を忘れている人が未だに多いわけです。

トレーニングが終わった直後にタンパク質を摂取すると言われても、

全てのセットが終わった食後ではなく、

クーリングダウンなどの一連の運動が終わってからという認識の人も多いですね。

それが良いのかどうかを深く考えたいのであれば、

referenceを参考に学んでいくのが良いでしょう。

2015年6月2日火曜日

mTOR is necessary for proper satellite cell activity and skeletal muscle regeneration

 2015 Jul 17;463(1-2):102-8. doi: 10.1016/j.bbrc.2015.05.032. Epub 2015 May 18

Zhang P, Liang X, Shan T, Jiang Q, Deng C, Zheng R, Kuang S



筋肉が肥大したりする理由は、細胞への刺激に応じて様々な物質が体内で生成されるからです。

その中で最も基礎となる重要なものがmTORであり、

これを如何にして刺激するかがトレーニング効果を高めるためには重要になります。

まぁ一般的にはそこまで深くトレーニングを考える必要も無いでしょうが、

mTORがどのようにして刺激されるのか、

何が抑制するのかという点を少し知るだけで、

現状のトレーニングにおける問題点が見つかると思います。

2015年6月1日月曜日

筋肉におけるグリコーゲンの回復にどれくらいの時間が掛かるのか

Enhanced Glycogen Storage of a Subcellular Hot Spot in Human Skeletal Muscle during Early Recovery from Eccentric Contractions.

PLoS One 2015 May 21;10(5):e0127808. doi: 10.1371/journal.pone.0127808. eCollection 2015

Nielsen JFarup JRahbek SKde Paoli FVVissing K.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25996774


運動後のグリコーゲンの回復速度というのは24~48時間というのが一般に言われていますが、

この回復というものに関して、速筋と遅筋でしっかりと考えたことがありますか?

という疑問に答えてくれているのがこちらの論文。

速筋と遅筋がどちらも同時に回復すると考えてしまっている人がほとんどですから、

前日にグリコーゲンを減らすような負荷の高い運動をしてしまう。

その結果、

翌日には回復しないのでパフォーマンスが下がる、

といった話が言えます。

2015年5月14日木曜日

説明したものはちゃんと伝わっているのか

本日は真面目に指導する際に起こるズレについての話。

選手に対して指導者が説明する、

もしくは選手が他の人から感覚の説明や練習のイメージなどを説明された時、

言葉での説明が全て正しく伝わるとは限りません。

これは話をする側と聞く側が同じ感覚を持っていない事が原因です。

例えば選手に対して今日の練習は「a+b」と説明します。

「a+b=12」これが今日の練習内容だと言われた選手は、

aにどのような数字を入れるか。

これは指導者が5と考えて5と説明しても、

4.2や5.8、

場合によっては10なんかが入ってしまうこともあります。

受け取る側の感覚が発する側とまったく同じで無ければ、

ズレは生じます。

このズレを小さくする作業が説明する側と受け取る側で必要になります。

数学なんかでは0≦a≦4といった定義をする事により、

その誤差は少なくなります。

しかし、

この範囲だけでは分数にしたりする可能性もあるので、

まだまだ範囲は広すぎます。

ですので、

aは自然数であるといった定義もさらにしないとなりません。

そんなもん選手は分かっている、

そう思う人もいるかもしれませんが、

感覚の違いというのは想像以上い大きいです。

ですので、

a+b=12という説明をして、

aは4より小さい自然数であってという定義でも不足している可能性を考え、

さらに範囲を狭める作業をする。

そこまでやって、

言いたいことがほぼ全て伝わります。

自分の感覚や知識と相手の感覚と知識は一致しない、

そこを認識してからの指導というのが大事です。

思ったように記録が伸びない場合などでは、

見た目では出来ているように思われることが、

実際には出来ていないということが原因だったりします。

自分の言っている事をイメージしているそのまま伝えるのは難しい、

そうした事が分かって頂ければ。

なお、

選手と指導者のフィーリングが一致しやすいというのはあると思います。

そうしたペアが理想的なんだろうと思いますが、

その際は指導者の能力というのが選手の伸びを大いに左右することになりますので、

選手は指導者の能力を上回るものを求めているのかな、

という疑問は持ち、

新たな技術を磨くために他の指導者に倣ったりするというのは必要だと思います。

感覚だけ磨いていれば良いというものでもありませんので。