2023年4月15日土曜日

抗酸化物質の補給は若い女性の筋力トレーニングによる効果を弱める

Antioxidant Supplementation Impairs Changes in Body Composition Induced by Strength Training in Young Women
Int J Exerc Sci. 2019 Mar 1;12(2):287-296
Maurilio T Dutra et.al

 筋力トレーニングは筋肥大と身体組成の変化を促進することが知られていますが、抗酸化物質の補給を組み合わせた場合の影響については、ほとんど研究がされていませんでした。この研究の目的は、抗酸化物質の補給を組み合わせた筋力トレーニングが、若い女性の脂肪量と脂肪以外の体重に及ぼす影響を調べることでした。ダブルブラインドの設計で、33人の被験者(22.9 ± 2.5歳、57.7 ± 8.4 kg、1.6 ± 0.6 m)は、ビタミン群(n=12)、プラセボ群(n=11)およびコントロール群(n=10)に分けられました。ビタミン群とプラセボ群は、10週間にわたって筋力トレーニングプログラムに参加しました。ビタミン群はトレーニング期間中にビタミンC(1g /日)とE(400IU /日)の補給を受けました。脂肪量と脂肪以外の体重はDEXAで評価されました。従属変数の違いを調べるために、複数の3×2(群×時間)の混合要因分散分析(ANOVA)にTukey調整を施しました。有意水準はP≤.05で設定されました。プラセボ群だけが、トレーニング後に全体的な脂肪以外の体重を増加させました(34.9 ± 4.9 vs 36.3 ± 4.8 kg、P<0.05)し、全体的な脂肪量を減少させました(21.8 ± 7.8 vs 21.0 ± 8.3 kg、P<0.05)。さらに、プラセボ群だけが、コントロール群と比較してトレーニング前後の脂肪以外の体重の変化率が有意に高かった(4.0 ± 3.4 vs -0.7 ± 3.1%、それぞれ、P<0.05)。これらの結果は、慢性的な抗酸化物質の補給が、若い女性の身体組成における筋力トレーニングに関連する改善を緩和する可能性があることを示唆しています。

・強度トレーニング(ST)は筋肥大と体組成の適応を促進する。
・STに抗酸化物質サプリメント(AS)を組み合わせた場合の適応については、ほとんど研究がなされていない。
・この研究の目的は、STとASの慢性的な効果が若い女性の脂肪量(FM)と脂肪フリー量(FFM)に与える影響を調べることである。
・偽薬群とビタミン群の2つのSTプログラムを10週間行い、FMとFFMをDEXAによって評価した。
・偽薬群のみが、10週間のトレーニング後に総FFMを増加させ(34.9±4.9 vs 36.3±4.8 kg、P<0.05)、総FMを減少させた(21.8±7.8 vs 21.0±8.3 kg、P<0.05)。
・さらに、偽薬群のFFMの変化率は、コントロール群と比較して有意に大きかった(4.0±3.4 vs -0.7±3.1%、P<0.05)。
・結果から、慢性的なASは、若い女性の体組成におけるSTに関連する改善を軽減する可能性があることが示唆された。

Chat GPTでの日本語訳とまとめが秀逸なので、これを使って自分の目で確かめていくのが良さげですね。問題点はやはり、少し雑という点です。コントロール群があったりなかったりなど微妙に異なるので、とりあえず全文を翻訳させてから要点をまとめてもらうとよさげです。年齢と被験者数、プロトコルなどいくつか設定しておくと非常に便利な使い方ができそうです。こりゃぁブログを書く必要性が無くなりますね。まぁサッと見直したい時のために残しておくのが効率が良いので、随時作業をしていきたいと思うところですが。

2023年3月17日金曜日

抗酸化サプリメントの摂取はSIRT1の活性を抑制する

Antioxidant Supplementation Hinders the Role of Exercise Training as a Natural Activator of SIRT1
Carmine Sellitto et.al
Nutrients. 2022 May 17;14(10):2092
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35631233/

Introducition
SIRT1, activated during ET, can counteract aging and age-associated diseases by increasing the cellular antioxidant capacity and improving mitochondrial biogenesis [13,14,15]
However, the ET-related effects, including SIRT1 activation, strongly depend on the type, intensity, and duration of the training [16,17,18,19].
SIRT1は持久的な運動(ET)によって活性化され、ミトコンドリアの生成を促すが、トレーニングの種類、強度、期間に大きく影響される
However, these beneficial effects can be eliminated when aerobic training is performed at a greater workload [17].

※17の論文を見ると持久的なトレーニングをより大きな作業負荷で実施した場合はその効果は抑制される

Materials and Methods
One of them (MDR-S) consumed, every training day and in conjunction with meals, antioxidant supplementation (S) consisting of 240 mg vitamin C and 15 mg vitamin E, together with 861 mg sodium, 555 mg chlorine, 381 mg potassium, and 66 mg magnesium.
抗酸化物質として240mgのビタミンCと15mgのビタミンEを摂取。被験者はおよそ50歳前後の男女16人

Discussion
The main finding of this study is that aerobic ET combined with an exogenous source of antioxidants is associated with an increase in systemic antioxidant capacity but not in SIRT1 activity. 
この研究の主な発見は、抗酸化物質を摂取して持久的な運動を行うことは全身の抗酸化能を高めるが、SIRT1活性は増加させないことである

On the other hand, an accumulation of oxidative stress during ET can lead to damage of all cellular constituents and could impair athletic performance [26]. For this reason, athletes often resort to antioxidant supplementation, including vitamins E and C, to prevent or reduce possible ET-related negative effects, especially muscle damage [26,27].
持久的な運動中の酸化ストレスの蓄積は、細胞の損傷につながり運動能力を低下させる可能性がある[26]。アスリートは、持久的な運動によるある悪影響、特に筋肉の損傷を予防または軽減するために、ビタミンEやCなどの抗酸化物質の補給に頼ることが多い [26,27].

An exogenous source of antioxidants could interfere with ET-related outcomes, leading to effects that are actually detrimental rather than beneficial.
抗酸化物質の補給によって持久的な運動によるトレーニング効果を減らしてしまう。

Similarly, the effects of daily intake of vitamins C and E were investigated using muscle samples [32]. Paulsen et al., in a double-blind randomized controlled trial, observed that ET-related muscle adaptations were hindered in athletes taking 1000 mg of vitamin C and 235 mg of vitamin E daily for 11 weeks.

Paulsenらは毎日1000mgのビタミンCと235mgのビタミンEを11週間摂取したアスリートにおいて、持久的運動による筋肉の適応が阻害されることを発見した。ビタミン類の摂取はミトコンドリアの生合成マーカーの上昇を弱めることにつながった。運動能力の低下とは関連しなかったが、抗酸化物質の補給と持久的運動の併用を検討する際には注意が必要であろう[32]。

A review including crossover and controlled trials highlighted mixed results. Some studies reported that vitamin C at a dosage of more than 1 g daily could impair physical performance through a possible reduction in mitochondrial biogenesis, while others did not observe a statistically significant impact [36].
クロスオーバーや対照試験を含むレビューでは、さまざまな結果があり、1日1g以上のビタミンCを摂取すると、ミトコンドリア生合成が低下し、身体能力が低下する可能性があるとする研究もあるが、統計的に有意な影響を観察しなかった研究もある[36]



トレーニングの目的が筋肉を増やしたりミトコンドリアを増やしたりという点であるならば、ビタミンCの摂取は240mgほどでも多すぎるということになるのかな、と。ビタミンCがサプリメントで簡単に摂取できるし、健康のためには大事みたいに思っている人が多く、気軽に摂取している人が多いかと思われますが、それによってトレーニング効果を下げているよ、という点が忘れられてます。特に240mgの摂取はみかん3個程度なので、簡単にいけます。ちょっとした飲み物でも簡単にいけますし、筋肉大好きな人たちがよく食べているブロッコリーなんかもビタミンCが多く含まれています。あれは減量期の食事であれば良いかもしれませんが、筋肉を増やしたいタイミングにおいてはブロッコリーを多くした食事は好ましくないと言えます。ただ、ビタミンCを多く摂取することで体脂肪を減らす効果はあるというものもあるので、タイミングが大事ということになるかと思います。

version.3: ビタミンCとEの摂取は筋肥大に効果ないどころか (tf-ver3.blogspot.com)

まぁ何年か前に同じことを扱っているので、そちらもご覧いただければと思います。

2023年3月16日木曜日

ゼラチンとビタミンCの摂取で腱の回復を高める

Vitamin C–enriched gelatin supplementation before intermittent activity augments collagen synthesis
Am J Clin Nutr. 2017 Jan; 105(1): 136–143.
Gregory Shaw, Ann Lee-Barthel, Megan LR Ross, Bing Wang, and Keith Baar
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5183725/


イントロ
・運動は、コラーゲン合成を増加させる(6-8)、コラーゲンの架橋に関するリシルオキシダーゼの発現を高める(9)
・ビタミンCとアミノ酸のプロリンによってコラーゲン産生が増加し力学が向上する(21)、グリシン摂取量の増加によって損傷後のアキレス腱の力学が向上する(29)。これらはコラーゲンとビタミンCを増やす栄養介入により、コラーゲン合成が向上することを示唆している

方法
・健康な成人男性8名が被験者。絶食後の朝に48mgのビタミンCを含む低カロリー飲料に0、5、15gのゼラチンを溶かしたものを摂取し、6分間の連続縄跳びを実施。運動後、実験室で4時間安静にし、その間に4回の血液サンプルを採取。4時間後の血液サンプルの後、カニューレを外し、被験者は実験室から退出。
・6分間の連続した縄跳びを3回/日を6、12時間後24、30、36時間後、48、54、60時間後に実施して再度測定

結果
・腱の太さに変化はなかったが機能の改善が見られた
・P1NP(Ⅰ型プロコラーゲン-N-プロペプチド)は15g群で大幅な増加(5gでは大きな増加は見られない。プラセボより高いくらい)

discussion
・15gのゼラチンを摂取してから1時間後に運動を開始すると、運動後の回復期にコラーゲン合成が促進されるという仮説を強く支持。プラセボ群とゼラチン15g群の運動4時間後のPINP濃度の比較で顕著に示されることから、ゼラチンが運動後のコラーゲン合成をサポートすることを明確に示している
・コラーゲン含有量はゼラチン補給群でのみ増加したが、すべての群で力学的な増加を示した。血清中のビタミンC濃度は測定していないが、80mL中に48.5mgのビタミンCを400mlに溶かしたドリンクの摂取が力学の向上に影響を与えた可能性がある
・ビタミンCはコラーゲンの合成に必要であり(41)、ビタミンCはコラーゲン架橋酵素であるリシルオキシダーゼ(42)、プロリルおよびリシルヒドロキシラーゼ(41、43)をも活性化し、これによりコラーゲン架橋を増加させる(44)


運動により骨や腱の合成・剛性が高まるが、それをさらに高めるのがビタミンCとゼラチンの摂取。15gほどのゼラチンなので通常では摂取されない量ですが、アキレス腱その他の治りがイマイチな人は行ってみると良いと思います。ただ、ビタミンCが多くなりすぎると筋肉その他の能力向上が大きく制限されてしまうので、タイミングが難しいという問題もあります。朝にしっかりと摂取して夕方に運動、寝る前にも摂取して軽く刺激、というのが良いかと思います。ヒールレイズ程度の運動でも刺激としては十分というのが先日の論文ではあった通りなので、寝る前くらいならばいけるでしょう。まぁビタミンCが50mg程度であればそこまで問題は無いと思いますが、おおよそ1日で100mgも摂取すれば十分、1日に300mgで多すぎというのがアスリートな人たちでの数値だと思われるので、1度に50㎎だと1日の半分くらいなのでなかなか多いかな、と。この点はまた後日に。とりあえずはゼラチンをしっかりと摂取して運動をしましょうね、と。なお、食品成分データベースですと、プロリンは豚で100g中に13gほど。角煮などで摂取すると考えるとカロリーが…、となりそうですので、やはりサプリメントでしょう。

2023年3月10日金曜日

アキレス腱の回復には適度な運動が効果的

Current Clinical Concepts: Conservative Management of Achilles Tendinopathy

Karin Grävare Silbernagel, PhD, PT, ATC, Shawn Hanlon, MS, ATC, CSCS, and Andrew Sprague, DPT, MS, PT
J Athl Train. 2020 May; 55(5): 438–447.doi: 10.4085/1062-6050-356-19
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7249277/

Key Points
・Achilles tendinopathy is a clinical diagnosis based on localized tendon pain and swelling and pain with activities.
・Exercise that provides mechanical loading of the Achilles tendon is the treatment with the highest level of evidence.
・Treatment should focus on activity modification and progressive tendon-loading exercises.
・Full recovery of symptoms does not ensure full recovery of function or tendon structure.
・The best prevention is to recognize early “minor” symptoms and treat with load control.

このキーポイントが大事なのは間違いないです。

Injury Mechanism
The Achilles tendon is mechanoresponsive, meaning it will adapt to the loading demands placed on the tissue.9,12 The exact cause of tendinopathy varies; however, the most common cause in athletes is excessive loading with inadequate recovery time between training sessions.13

怪我のメカニズムとしては回復時間が不十分であることが多い。

Risk Factors
The risk for developing Achilles tendinopathy is considered multifactorial, with intrinsic or extrinsic risk factors that relate to causing either decreased load tolerance of the tendon or movement patterns that overload the tendon.16 Decreased plantar-flexor strength, deficits in hip neuromuscular control, abnormal ankle dorsiflexion and subtalar-joint range of motion, increased foot pronation, and increased body weight are intrinsic risk factors that can be addressed during treatment.16

リスクファクターとしては足底屈筋力の低下、股関節の神経筋制御の障害、足関節の背屈および距骨下関節の可動域の異常、足のプロネーションの増加、体重の増加などが挙げられる

The treatment with the highest level of evidence for Achilles tendinopathy is exercise rehabilitation (Table 2).6,16,33 

”トリートメントとして大事なのは運動による負荷である”

具体的な例はtable2にあるのでご覧ください。まぁ踵を上げる運動を20~30回あたり繰り返す程度です。難しいことは特にありません。これをしっかりとやる。素早くやると負荷が上がる。踵を地面まで着けようとすると負荷が上がるので、踵に何かを置いておくと良いとのこと。

Recovery Phase
The aim of the recovery phase is to regain the strength of the calf muscles and improve the Achilles tendon's tolerance to load (Table 3). Exercises are performed daily. As symptoms subside and calf-muscle function improves, the exercises are progressed by increasing the number of repetitions, range of motion, and speed of movement.

ふくらはぎの筋肉はアキレス腱の機能をしっかりと発揮するためには必要であるということですね。

Our return-to-sport program is based on the premise that the tendon tissue requires a longer recovery from heavy loading activities (36–72 hours), whereas lighter activities can be performed more often.47

Light-level activities can be performed daily, medium-level activities need to be followed by 2 recovery days, and high-level activities need to be followed by 3 days of recovery

アキレス腱の回復には36時間から72時間という時間を要すると考えて、高負荷な練習の場合は72時間ほどを必要とするという考えに基づけば、土曜日に練習をした後に火曜日に高負荷な練習を行うのは腱の回復が間に合わなくなるので好ましくないということですね。ランナーの皆様が実施する週に2回の高負荷なポイント練習と呼ばれるものは、回復の面から見ると間に合わない。狙いを変えて腱に与える負荷の小さくなる練習をどちらかでは実施すべき、と。

PREVENTION
We therefore propose that the best prevention is to recognize the early “minor” symptoms and treat these with load control (adjusting training loads) instead of ignoring them or only addressing the symptoms.

予防としては負荷をコントロールすることで対処をする



全文を読んでもそんなに長くないので、ご覧になることをおススメします。とりあえず、足関節や股関節の辺りにも問題の原因があるという認識が大事ですね。あとは高負荷の場合は72時間が回復に必要なので、この点のコントロールということですね。ケアが足りないから痛みが出ると考えずに、負荷を調整。週に1回しか高負荷な練習はできない。もっとやりたいならば、股関節や足関節、ふくらはぎなど関わる他の部位の強化もしっかりと行うべきですね。

2022年11月13日日曜日

パワーリフティング選手の記録向上と年間試合数

Effect of Competition Frequency on Strength Performance of Powerlifting Athletes

Pearson, Joshua Spathis, Jemima G. van den Hoek, Daniel J. Owen, Patrick J. Weakley, Jonathon1, Latella, Christopher

https://journals.lww.com/nsca-jscr/Abstract/2020/05000/Effect_of_Competition_Frequency_on_Strength.3.aspx

Journal of Strength and Conditioning Research: May 2020 - Volume 34 - Issue 5 - p 1213-1219

回数をこなすほど良い記録が出やすく、2回目の試合で最も良い成績を出せる可能性が高い。しかし、年間の試合の上限は4回になるであろう。


相関が弱すぎて何とも言えないデータですが、1回目で確実に記録を出して、2回目でより高いところを狙う、3回目で少しチャレンジをしてみて、4回目で最大のピークを作る、という流れになるのかと思います。普段のトレーニングと結果がつながりやすいのがパワーリフティングですが、当然ながら体重などの調整をしていく中で記録の変化も出てしまう、トレーニング効果の増減も出てしまうので、そこまで回数を増やせないという経験通りのデータだと思います。