2021年1月10日日曜日

カフェイン摂取に関する国際スポーツ栄養学会のガイドラインを読んで

International society of sports nutrition position stand: caffeine and exercise performance

https://jissn.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12970-020-00383-4

Journal of the International Society of Sports Nutrition 

volume 18, Article number: 1 (2021

全文公開ですし、読んで面白いと思いますので、ぜひ。


どれくらいの摂取で効果が出るのかに関しては「少なくとも3mg/kg」

Dose response effects of a caffeine-containing energy drink on muscle performance: a repeated measures design

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22569090/ 

J Int Soc Sports Nutr. 2012 May 8;9(1):21


IOC Consensus Statement: Dietary Supplements and the High-Performance Athlete

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29589768/

Int J Sport Nutr Exerc Metab . 2018 Mar 1;28(2):104-125.

持久系種目、自転車や陸上競技、ボートでの使用者が多いが、2008年以降はチームスポーツやパワー系種目での効果に関しての研究が増えてきている。小腸で主に吸収されるが胃でも吸収され、30分~120分ほど血漿における濃度が上昇する。飲食物からの九州には個人間での差は無いようだが、代謝や分解においては差が見られる。平均半減期は4~6時間とされているが個人差があり、成人では1.5~10時間の範囲になることもある。

The absolute bioavailability of caffeine in man
Eur J Clin Pharmacol . 1983;24(1):93-8
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/6832208/


160mgのカフェインを含む飲料での比較では、コーヒーと紅茶が30分、コーラが2時間後に最大値となった。摂取速度、温度、摂取源での違いは小さいが、ガムからの摂取が一番速い。持久力の向上にしては中枢神経系や末梢神経系内での作用によるものと考えられる。

プラセボの可能性も考えられる
Placebo effects in competitive sport: qualitative data
J Sports Sci Med . 2007 Mar 1;6(1):21-8

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24149220/

この論文からはカフェイン以外でもプラセボはかなり大きな影響を与えていることが分かる。

使用に慣れている人では筋力や持久力が高まらなかったという例もある
The Effects of High Doses of Caffeine on Maximal Strength and Muscular Endurance in Athletes Habituated to Caffeine
Nutrients . 2019 Aug 15;11(8):1912
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31443220/

代謝や感受性に関する遺伝子によって効果が異なる
Comparisons of CYP1A2 genetic polymorphisms, enzyme activity and the genotype-phenotype relationship in Swedes and Koreans
Eur J Clin Pharmacol . 2007 Jun;63(6):537-46
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17370067/


サプリメントとコーヒーではカフェインの含有量に大きな差がある
An examination of consumer exposure to caffeine from commercial coffee and coffee-flavoured milk
Journal of Food Composition and Analysis

Volume 28, Issue 2, December 2012, Pages 114-118
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0889157512001548


Caffeine content of pre-workout supplements commonly used by Australian
consumersDrug
Test Anal . 2019 Mar;11(3):523-529
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30196576/

コーヒーは植物なので含有量にバラつきがあるのは当然ですね



痛みを感じることを抑制して持久力の向上などにつながっているなども考えられるので、何が効果的なのかというのはよく分からない点がまだまだあるということですね。 あとはガムの効果が即効性もある点からして、マラソンなどの持久的な種目における途中での給水で活用しようと思うのなら、口の中で少し溜めてから飲んだりするのが効果的になるかもしれません。10秒間のマウスリンスで効果が確認されているので。自転車種目においては競技中にガムを摂取することでパフォーマンスが上がることが確認されています。力を発揮するようなパワー系の種目、ボールを投げるといった種目には効果的である一方で、ダッシュと休憩を繰り返すような種目には大きな効果はほとんど見られないという点からすると、必ずしも摂取しない方が効果的(その後の睡眠の質の向上による回復力アップ)という場合もありそうです。実際、バスケやサッカーでの効果はあまり見られず、バレーボールも女子選手では効果が見られていないが、ラグビーや柔道においては効果が認められています。ただ、ラグビーもスプリント力の向上は見られていない。これらは遺伝子的な影響がかなり大きいようなので、効果が無いなと感じる人は使わない方が良いかもしれません。飛行機での移動による時差ボケの対策には使えるかもしれない、という点にも触れていますが、脳を覚醒させることで強制的に治すというのは有りかと思います。しかし、カフェインの摂取により不安感が増大するというものもあるため、環境が変化して憂鬱な状態での摂取は避けた方が良いかもしれません。試合前に摂取することでも不安感が増大するので、摂取するかどうかはなかなか難しいですね。暑熱環境での使用は特に悪い面が大きいわけでもなく、かといって明確にパフォーマンスを高めるわけでもないようですが、それなりに効果はある様子。また、運動後にカフェインと炭水化物を同時に摂取することでグリコーゲンの回復速度が速くなることも確認されている。ただ、これによって睡眠不足になると意味が無いので、午前中に練習をした場合は昼食にコーヒーなどでカフェインを摂取すると良いかもしれません。その他、詳しいことは原著をご覧ください。

2020年12月11日金曜日

魚油サプリメント(ω-3)の摂取は若い男性の精巣と精子の増強に効果あり

Associations of Fish Oil Supplement Use With Testicular Function in Young Men
Tina Kold Jensen  JAMA Netw Open. 2020;3(1):e1919462. 

ただし、摂取した量の調査が行われていないので、どれくらいの量で効果があるかの明確な点は不明など、タイトルの割には中身は??という論文ではあります。デンマークの人って魚をあんまり食べないのですかね。海に囲まれているのでたくさん食べていそうな気がするところですが(2019年の未発表データによると1日26g程度とかなり低めだそうです)。精巣が少し大きくなり精液の量が増えテストステロンも高まるということなので、取りあえず魚を食べない生活になっているのならば、ω-3(オメガ3)サプリメントを摂取しておくのは良さそうです。先行研究ではクルミを75g/日の摂取か、クルミ、アーモンド、ヘーゼルナッツなどのミックスを60g/日食べることで同様の効果が出ているとか。そして飽和脂肪酸の摂取が多いと精液の量が減り濃度も薄くなる、と。

2020年12月7日月曜日

男性と女性ではエネルギー制限による反応が異なる

A hypoenergetic diet with decreased protein intake does not reduce lean body mass in trained females

  European Journal of Applied Physiology (2020) 

https://link.springer.com/article/10.1007/s00421-020-04555-7

トレーニングをしている女性に高タンパク質食を摂取してもらうことで、除脂肪体重が男性と同じように増えつつ体重(脂肪)を減らせるかという研究。2週間かけて必要な食事量を推計し、そこから40%ほどのエネルギー制限をする一方でタンパク質の摂取割合を高めることで除脂肪体重はどのように変化するか。男性と女性では被験者の体脂肪率や日常的に摂取しているタンパク質量が異なるといった条件の差があるためなのか、女性の場合はタンパク質の摂取が男性に比べると除脂肪体重に与える影響が大きくない。実験では制限したカロリーのうち35%をタンパク質に15%を脂質にした群を高タンパク質(体重kg当たり1.7g)とし、タンパク質15%で脂質35%をコントロール群(1日に体重kg当たり0.9~1.6g)として、絶対的な摂取量は高タンパク質群では維持されている。

 

この論文から言えそうなことは、女性と男性の食事を同様に考えてはいけなさそう、ということ。そして被験者の女性の元々の体組成や生理による問題なども影響しているかもしれないので、短期的な研究だけで結論をつけるのは難しいということ。ただやはり、カロリーを制限してタンパク質も少なくすると明らかに除脂肪体重は減っているので、運動に応じた女性のタンパク質の摂取量は今後も注目をし続ける必要がありそうです。

2020年12月6日日曜日

ビタミンCとEの摂取は筋肥大に効果ないどころか

筋肥大にビタミンCやEは悪影響

 以上、結論でした。長々と読むのが面倒な場合、↑が全てですので。お時間ありましたら以下へどうぞ。

 

The Effects of Strength Training Combined with Vitamin C and E Supplementation on Skeletal Muscle Mass and Strength: A Systematic Review and Meta-Analysis

Maurilio T. Dutra Journal of Sports Medicine / 2020

https://www.hindawi.com/journals/jsm/2020/3505209/ 

運動により生じる活性酸素種(ROS)は身体へとダメージを与えると考えられることから、抗酸化サプリメントの摂取をする人が多く、ビタミンCとEの消費に関しての論文は多い。

しかし近年はROSがミトコンドリアの生合成、骨格筋肥大などの刺激を有することが分かってきており、その摂取に関しては議論が多い。

Role of Redox Signaling and Inflammation in Skeletal Muscle Adaptations to Training

https://www.mdpi.com/2076-3921/5/4/48

 

若年者に関しては効果が無いか弱めるという論文も出ている。

Vitamin C and E supplementation alters protein signalling after a strength training session, but not muscle growth during 10 weeks of training

https://physoc.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1113/jphysiol.2014.279950

G. Paulsen The Journal of Physiology October 2014

この論文からはプラセボ群の方が筋力向上が確認されている。理由としては活性酸素の生成を抑制してしまうことであろうと推測されており、これはかなり強固な理由であると現状推測できると思われます。
 

Effect of strength training combined with antioxidant supplementation on muscular performance

https://cdnsciencepub.com/doi/10.1139/apnm-2017-0866

Maurilio T. Dutra Applied Physiology, Nutrition, and Metabolism 25 June 2018

No effect of antioxidant supplementation on muscle performance and blood redox status adaptations to eccentric training

https://academic.oup.com/ajcn/article/93/6/1373/4597849

Anastasios A Theodorou The American Journal of Clinical Nutrition2011

Chronic Eccentric Exercise and Antioxidant Supplementation: Effects on Lipid Profile and Insulin Sensitivity

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28912655/

Christina Yfanti J Sports Sci Med . 2017

 

FREEの論文が多いので各自読んで頂ければと思いますが、そもそもに過剰な活性酸素が生成されるという論文は確認されないので、抗酸化と呼ばれるものが効果的であると言えるわけではない。高齢者は活性酸素が多いから筋肉の萎縮予防に効果的とされているが、これも使用しなかった人の方がより筋肥大したことが確認されている。といったことが言えそうです。抗酸化と呼ばれるものによって筋肉の損傷を抑制できたとして、そこでは筋肥大のために活性化させる要素も消えてしまう。p70s6kなどの経路を抑制してしまう結果から。ですので、ビタミンCやEが豊富に含まれるものを摂取すると筋肉は増えにくくなって当たり前ということです。残念ながら筋肉を増やしたい人にとっては効率が最も良い食事というのは、1食においてはビタミンなどのバランスが崩れているものであることには間違いなさそうです。というのを10年近くずっと指摘していますしボヤいているんですけど、なかなか皆様ビタミンが大好きで。尿中から出ていくから大丈夫とかいう話じゃないんですよ。摂り過ぎがそもそもにダメ、ということです。なお、ビタミンの過剰摂取をやめたことで筋肥大をしっかりとしたアスリート、ビルダーの方も見てきましたので。是非とも無駄なビタミン摂取はおやめいただければと思います。ちなみに1日にしてみかん3個くらいが一般の人の摂取目安ですので。筋肥大にビタミンCやEは悪影響

2020年12月2日水曜日

タンパク質は分解もされるんです

Assessing the Role of Muscle Protein Breakdown in Response to Nutrition and Exercise in Humans

Kevin D. Tipton Sports Med. 2018; 48(Suppl 1): 53–64

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5790854/


そのうち更新します。。。