年末に三か所にて毎年ながらのダラダラとして話をさせて頂きましたが、今回における振り返りというか質問や理解して頂きたかった重要なポイントを何点か。
その1.ドーピングで本当に強くなれるのか?という質問に関しては、多分、微妙というのが結論となるのでは、と思うところです。ドーピングによって簡単に強くなれると思っている人は多いかと思いますが、当然ながらそんな簡単な話ではありません。リガンドやらレセプターといった話をご理解されている皆様におかれましては、まぁ当然だよねと思う話になるかと思いますが、本当に効果があるのか疑問が多い、という具合です。短絡的にテストステロンだから筋肉の増加だ!!という話の時代は終わっていて、今回の話でもそこそこ重点を置かせて頂きましたが、時代は回復をどれだけ高めるか、というところに来ていると思います。ケアが不足することでケガをするという考えの人は多いと思いますが、実際には練習のやり過ぎが大きなケガの要素になります。ケアと呼ばれるものがそこまで回復力を高めることはなく、感覚が良くなることでさらに練習を積めるが、無理をしているからどこかでガタが来てしまう、といった具合かと思います。その点、薬を使って強制的に回復力を高めれば、同じ練習量で壊れる、疲労が蓄積するということがあまりなく、より多くの練習量を高い質で積めるようになります。この点が近年のドーピングにおいて実施されている点では、と思います。ここ数年、トレーニング関連の話をする機会におきましては、テストステロンの分泌減少、鬱の傾向が出てくるという話を含めるようにしております。大阪におきまして質問が出ましたが、高校や大学の部活動においてやる気が出ない選手の一定数には、鬱と診断される可能性がある人がいると思われます。ただ、やる気が無いならば辞めろ、ということで退部してしまう結果、その問題が見逃されてしまっているのでは、と。相談された時には心療内科へと行くことを提示する場合が多いのですが、そうした知識や経験が無いのが見逃す原因となるところだと思います。特に持久的な種目となる場合、明らかにテストステロンの分泌減少が起こるとされているので、リフレッシュする術を持たない人にとっては練習のダメージからの回復が遅れる、心がダメージをさらに受けるという悪循環でしかなく、競技をすることが苦痛でしかないと思います。環境によっては強制的に実施することになるため辛うじてキープできているが、という例は多そうですが、こうした問題にも気づいてもらえれば、と思います。この辺りの回復を促進させるための薬の使用が増えている、というのが最近の流行かな、と言えるところですし。指導者だけでなく選手も自分の心の状態、身体の状態は把握して、身体に問題があるわけじゃない、心が回復できていないんだ、というのを自覚する、そういう症状があるということを知って頂ければ幸いです。
その2.速く走るために必要なことは、多くの人が固定観念を持っている結果、間違った動作を理想だと思っている可能性が高いですよ、という話をしていきましたが、冒頭部分での話を薄めにした結果、その点をちゃんと理解してもらえなかったかな、というのがありました。踵が浮いていることなんてほとんどなく、最初の加速の段階など、どうしてもその方が効率が良い場合を除いては踵の方でも力を地面に対して加えています。地面に対して、という点が難しいところであるというのはお話させて頂きましたので、多分大丈夫かと思います。見た目で判断することはできない、横から撮影した動画、画像をもってして「ほら浮いている」なんていうのは、一瞬の切り取りか意図的な使い方の可能性があるので、しっかりと確認した方がよろしいです。勘違いをしている人にはとても使いやすい理屈はゴロゴロ転がっていますので。靴の機能などとも併せてしっかりと考えるのが重要かと思います。
3.とにかく大事なのは食事と睡眠です。食事が不十分な人は練習に対する準備が不十分であると考えるべきです。この点は私が分泌系の話を重視しているのがお分かりになったのならば、はいそうですね、とご理解頂けるかと思います。トレーニングによる効果というのは筋肉を傷つけたりすることも一つではあるが、脳その他からの分泌の話が大事です。この分泌系が弱いのならば、その練習は身体を傷つけただけであり、強くなるためのものではないですよ、と。あとは皆様の身体が筋肉だけで構成されているわけではないのに、どうにも筋肉の回復のことしか考えていない理論が幅を利かせすぎていませんか?ということも伝わっていれば。筋肉の合成を重視しした話が日本でも今年になってブームとなった感じがありましたが、2~3年遅れという感覚があります。分解も起こっているし、次の日にも練習するよね?合成だけで何を考えられるの?ということをご理解して頂ければ。
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2019年12月30日月曜日
2019年11月11日月曜日
よく頂く難しい質問のお答え
2019年9月7日土曜日
個人的に思う論文の読み方の注意点
久々の更新となりますが、多くの人が論文を読んで情報を発信するようになった中で少々思う所がありますので簡単に。
昔の論文を使うのは良いが、そこの背景をしっかりと把握しましょう
というのが最近思う点です。過去にも触れた記憶がありますが、例えばウエイトトレーニングをすることで筋力が高まる、筋肉が増えるということが研究される中で、どのようなsetの組み方が良いのかも研究されたりしました。しかし、そうした研究において忘れられていたのが栄養補給の観点です。過去の論文においては、筋肥大をするためには成長ホルモンだ、テストステロンだ、といった分泌系の話に焦点があてられるものも多く、そうした論文においては絶食を基本としています。これは運動をする時に同じ条件にするためでありますが、じゃあ絶食にしたら本当に同じ条件なのか、となると1週間くらい同じ食事で調整しないと差はあります。睡眠やら日常生活のストレスやらでもホルモンの分泌なんかは変化を受けてしまうわけで、とにかく全く同じ条件にするというのは不可能と言ってよいと思いますが、なるべく同一にしようとするのが基本でした。この絶食による分泌をベースとして効率の良い練習を考えるということが実施されたりするわけですが、研究と違う点は食事をしているということになります。食事によって分泌は大きく変化するわけで、トレーニングの質も食事によって大きく左右されます。中長期的な実験となれば、その差はかなり広がってきます。この辺りが2週間程度の実験でもバラつきが出てくる原因であり、1か月や半年といった長期的なトレーニングににおいては、一度のトレーニングにおけるホルモン分泌を最大化するよりは、数週間、数か月後の目的とする日に最大のパフォーマンスを発揮することが出来るようになるのが大事となります。
週に2~3回のトレーニング効果を最大化
週に5~6回のトレーニング効果を最大化しさらに長期的、1年単位で強くなりたい
こう考えた時に、前者は論文においてよく見るもの、後者が日常的にトレーニングをする人が求めるものです。本当に前者が効果的なのか?という疑問はあると思います。実際、既に述べたように初日は絶食で血液を採取するという実験なんかも多く、そうした論文を活用する時には多角的に検討する必要があると思われますが、結論を見てそこだけを抜き出していることの方が多いかな、と思います。基本となるホルモンの話などが把握できたら、次は実際に食事をしている生活の中でトレーニング効果はどうなるのか、というものです。毎日ホルモン分泌を最大化し翌日は練習をしないということよりも、毎日8割程度で積み重ね食事と睡眠で回復しきれるレベルの負荷にした方が効果的であるのでは、といったことが調べられるようになってきました。この点は筋肉における合成が最大化するようにしたところで、実際に長期的に見たらそんなに大きくならなかったという話もあるわけで、合成よりも分解の抑制に意識を向けた方が良いのでは、ということも言われるようになりました。昔と今では基礎研究をしているのとそれをベースに中長期的にしたら本当にそれが起こるのか、というのを見ている違いがあるものも出ています。そうした点を考慮しながら様々な角度から見ていかないと、出されているデータを曲解してしまうことになるだろうな、と思った次第です。
昔の論文を使うのは良いが、そこの背景をしっかりと把握しましょう
というのが最近思う点です。過去にも触れた記憶がありますが、例えばウエイトトレーニングをすることで筋力が高まる、筋肉が増えるということが研究される中で、どのようなsetの組み方が良いのかも研究されたりしました。しかし、そうした研究において忘れられていたのが栄養補給の観点です。過去の論文においては、筋肥大をするためには成長ホルモンだ、テストステロンだ、といった分泌系の話に焦点があてられるものも多く、そうした論文においては絶食を基本としています。これは運動をする時に同じ条件にするためでありますが、じゃあ絶食にしたら本当に同じ条件なのか、となると1週間くらい同じ食事で調整しないと差はあります。睡眠やら日常生活のストレスやらでもホルモンの分泌なんかは変化を受けてしまうわけで、とにかく全く同じ条件にするというのは不可能と言ってよいと思いますが、なるべく同一にしようとするのが基本でした。この絶食による分泌をベースとして効率の良い練習を考えるということが実施されたりするわけですが、研究と違う点は食事をしているということになります。食事によって分泌は大きく変化するわけで、トレーニングの質も食事によって大きく左右されます。中長期的な実験となれば、その差はかなり広がってきます。この辺りが2週間程度の実験でもバラつきが出てくる原因であり、1か月や半年といった長期的なトレーニングににおいては、一度のトレーニングにおけるホルモン分泌を最大化するよりは、数週間、数か月後の目的とする日に最大のパフォーマンスを発揮することが出来るようになるのが大事となります。
週に2~3回のトレーニング効果を最大化
週に5~6回のトレーニング効果を最大化しさらに長期的、1年単位で強くなりたい
こう考えた時に、前者は論文においてよく見るもの、後者が日常的にトレーニングをする人が求めるものです。本当に前者が効果的なのか?という疑問はあると思います。実際、既に述べたように初日は絶食で血液を採取するという実験なんかも多く、そうした論文を活用する時には多角的に検討する必要があると思われますが、結論を見てそこだけを抜き出していることの方が多いかな、と思います。基本となるホルモンの話などが把握できたら、次は実際に食事をしている生活の中でトレーニング効果はどうなるのか、というものです。毎日ホルモン分泌を最大化し翌日は練習をしないということよりも、毎日8割程度で積み重ね食事と睡眠で回復しきれるレベルの負荷にした方が効果的であるのでは、といったことが調べられるようになってきました。この点は筋肉における合成が最大化するようにしたところで、実際に長期的に見たらそんなに大きくならなかったという話もあるわけで、合成よりも分解の抑制に意識を向けた方が良いのでは、ということも言われるようになりました。昔と今では基礎研究をしているのとそれをベースに中長期的にしたら本当にそれが起こるのか、というのを見ている違いがあるものも出ています。そうした点を考慮しながら様々な角度から見ていかないと、出されているデータを曲解してしまうことになるだろうな、と思った次第です。
2018年4月3日火曜日
高齢者のタンパク質摂取を考える
タンパク質摂取の話でいろいろ思うところがありますして、あれこれと見直してみました。
Protein Consumption and the Elderly: What Is the Optimal Level of Intake?
上記論文で引用しているものを中心に見ていくと、
Protein Consumption and the Elderly: What Is the Optimal Level of Intake?
上記論文で引用しているものを中心に見ていくと、
「高タンパク質の摂取は虚血性心疾患のリスクを高めない」
Dietary protein and risk of ischemic heart disease in women
ただ、タンパク質を高くする食事は飽和脂肪とコレステロールの摂取を高めるので注意が必要である
「高タンパク質の食事が高血圧を引き起こすわけではない」
Dietary protein and blood pressure
Sources of Dietary Protein in Relation to Blood Pressure in a General Dutch Population
「体重(kg)×0.8gのタンパク質摂取は推奨される最低限の量であり、総カロリーのうち20%程度をタンパク質で摂取するのは有用である。適切なタンパク質の摂取量を決定する研究は不足している(というか無い)」
Optimizing Protein Intake in Adults: Interpretation and Application of the Recommended Dietary Allowance Compared with the Acceptable Macronutrient Distribution Range
「タンパク質の過剰摂取は腎臓に悪影響である」
The aging kidney: structure, function, mechanisms, and therapeutic implications
「タンパク質の摂取量と骨ミネラル濃度は相関関係がある」
Dietary protein and bone health: a systematic review and meta-analysis
「1日に体重(kg)×1.5gのタンパク質の摂取か総カロリーの15~20%をタンパク質で摂取するのは高齢者にとって妥当である」
Optimal protein intake in the elderly
「6.7gのEAAの中で26%がleucineでは高齢者の筋合成は刺激されず41%だと刺激された(若者では26%でも十分そうである)」
A high proportion of leucine is required for optimal stimulation of the rate of muscle protein synthesis by essential amino acids in the elderly
そもそもに体重(kg)×0.8gが推奨される根拠も薄く、
これは最低ラインと考えるべきであろう代物だ、と言えそうである。
つづく
2018年2月17日土曜日
第14回乳酸研究会雑感
内容
・ 乳酸測定の歴史と今 ~測定対象としての乳酸について~
上戸 潤(アークレイマーケティング株式会社)
・ 医療分野における乳酸に対する理解と利用
高橋勇貴(練馬光が丘病院)
・ 生体内乳酸シャトルのリニューアル~脳での役割~
橋本健志(立命館大学スポーツ健康科学部)
・ 糖、脂肪酸、及びアミノ酸に含まれる炭素の体内動態について
増田毅(環境科学技術研究所環境影響研究部)
・ 運動によるミトコンドリアの適応を高める栄養素
~タンパク質・ペプチド・アミノ酸の摂取効果に注目して~
松永 裕(森永乳業 健康栄養科学研究所)http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/hatta/ より
八田先生のオープニングトークは予想通り冬季オリンピックに触れ、
「スピードスケートの後半に乳酸が溜まったと言うのを”こんちくしょう”と思いながら見ていました」
というコメントが。
全部を振り返ると時間が足りないので簡単にいくつか。
高橋先生の医療分野でのアンケートから、
医師は乳酸を疲労物質と思っている人が多いというのが分かりました。
これは全国の病院でアンケートを取っても同様になるかと思います。
一方で看護師の方々ではやや少なめ、
リハビリを担当される方々も医師と同じで高めという数値の傾向から、
多分問題は授業を担当する人、教科書の内容であろうな、
と思いました。
若手の人たちの方が経験は少ないが最新の知識はある、
という指摘もされますし、ある程度の経験がある人たちの情報のアップデート不足でしょう。
10年ほど前に保健体育の教科書内容を変更して頂いたわけですが、
そうした作業を医療系の人たちの使う教科書にもハッキリと書いていく、
医療系の人たちにアップデートしてもらえるような情報の普及が大事、
ということですね。これは最後の総合討論でも少し触れられていました。
橋本先生の脳での話に関しまして、
最近は筋肉から脳へと行く人が多く、
まぁやはり脳ですよねというのを私は思っていますので、
予測されていたことが数値化されてきている、論文化されている、
というのを感じました。
筑波大の征矢先生が数年前の乳酸研究会でお話をされていますし、
興味を持って追っている人にとってはそこまで新しい話ではなかったのでは、
と思います。
松永先生の話は総合討論などでも質問が多かったと思いますが、
個人的にもカゼインペプチドの摂取+運動によってヒラメ筋(遅筋)において、
AMPKの活性が高まるというのは興味深かったです。
速筋では変化が見られない、単純投与でも変化は無いということから、
何かしらの因子が影響していると推測されますが、
その点に関しては今後論文として発表したいとのこと。
遅筋よりも速筋の方が肥大しやすいなどというのは知られていると思いますが、
変化しやすい、影響を受けやすい方が特に変わらず、
変化しにくい遅筋の方に変化が見られたというのは面白いですね。
今後の研究報告に期待です。
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