2015年7月10日金曜日

件の赤入れ


すでに一度公開していましたが、

赤入れよりも解説が多いので再度。


”一昔前は、疲労の源として「悪者」扱いされていたエネルギー代謝物質である『乳酸』。その認識が見直されつつあります。”


今から20世紀の初頭や中頃の実験で、

電気を流して強制的に筋肉を動かすという実験の結果。

筋肉に乳酸が大量に蓄積していたのが乳酸疲労物質説の根拠でしたが、

これは乳酸が多いという事を認める話としては活用出来ますが、

乳酸があるから疲労しているとは言い切れません、


”美しすぎる相関性が生んだ思い込み - 乳酸と筋肉疲労

『カエルの筋肉を使って、筋肉の収縮の強さと乳酸の量の継時的な変化を調べました。彼らは、疲労による収縮力の低下と、乳酸の蓄積に、強い直線関係があることを示しました』

筋肉疲労は乳酸が原因であるとする説は研究現場で提唱されてきましたが、それが広く一般に信じられるようになったのは、1冊の書籍の影響が大きかったようです…アーサー・リディアードは、たいへん有名な長距離走コーチで、優秀な選手を数多く育てました。…リディアードが1983年に出版した書籍の中で、乳酸は運動選手のパフォーマンスにも、健康にも悪いと説明したのです。スポーツ科学や競技指導者の間では乳酸悪者説が定説になったのは、リディアードの書籍が少なからず影響していました…』”

詳細は上のリンクを読んで頂くとしまして、

筋肉に乳酸が多く溜まっているからといって、

それが疲労の原因とは断定できません、

何故なら、増えている物質が一方で減ってる物質もあるからです。

乳酸以外にも増えている物質はあります。

そうした点を無視して乳酸が取り上げられたのは、

とても説明が簡単だったからでしょう。

ということで、

乳酸と疲労が大きな関係性は無いという話が1990年代には増え、

2004年にSCIENCEに掲載された一本の論文により、

研究の現場では乳酸疲労説はなくなりました。

不勉強か専門が運動生理学ではない人にはまだ浸透していなかったりしますが。

この基本を理解した上で続きを。



”それは、糖質が代謝されエネルギーを生み出す過程(ATP回路)で産生される乳酸は、エネルギーとして再利用される(最終的に、水と二酸化炭素に分解)ことがわかってきたからです。

無酸素運動(嫌気的運動)時、つまり、速筋を大いに使う高速運動や高強度の抗重力運動をした場合に、乳酸は大量に発生します。乳酸が筋肉に蓄積されていくと組織が酸性に傾き、筋肉の働きが抑制されるという弊害が伴います。だから、悪者として見られてきたわけです。

間違ってはいけないのは、再利用されるからと言って、たくさん蓄積されると筋肉が動かなくなるという概念は変わらないということ。”



糖質が体内に増えて解糖が進むor糖質を利用するために解糖が進む、

この二つが大きな乳酸増加の原因です。

無酸素運動というのは運動中に酸素を介したエネルギー産生が行われないといった意味ですが、

運動中は必ず酸素を利用するためそのようなものは存在しませんので、

東大の八田先生は無酸素運動という用語の使用をしないことを提言されています。

呼吸を止めても運動は出来るように体内に酸素の蓄積がある、といった話も。

そして上記で間違っているのは、


”たくさん蓄積されると筋肉が動かなくなるという概念は変わらない”


この点ですね。

上記のリンクでもありましたように、水素イオンの蓄積や体温の向上、ナトリウムバランスの変化などが筋肉を動かなくする原因と考えられていますので、

この概念は既に昔のものです。

乳酸を経口摂取することで運動時間が伸びた、

そうした実験をされている方もいますので。

次。


”これら身体の反応は、脳やカラダを守るためと言われています。自分の意思で上限なく運動の強度を高めることができるとしたら、意思の強さが競技力になってきますし、カラダは破壊される一方です。身体のメカニズムは、自らの意思とは別次元で機能しているのです。「カラダの保護機能に対抗するのが、トレーニングである」と言っても過言ではないと私は思っています。”


現状、これ以上の考えはありませんし、これがベストな考えだと思われます。

乳酸が生成される事で糖の利用が進みますが、

脳は糖を多く利用するので糖の減少は運動継続の大きな制限要因になります。

もちろん、ケトン体の利用などもありますが高負荷で考えると制限要因でしょう。

保護機能に対抗するかどうかは知りませんが、

機能が働き始めるまでの閾値をトレーニングで高めるのが重要なのは間違いありません。




”— 主に中距離走に該当しますが、長距離走といえども、最初のスタートダッシュやレース途中や最後のスパートの場面では同じことが言えます—
〇LT値(乳酸閾値)〇

知っている方、多くいらっしゃると思いますが、ランニングのスピードを徐々に上げていくと乳酸が急に多く発生するポイント(走速度)があり、これをLT値と言います。

このLT値を簡単に説明すると、これ以上スピードを上げると、どんどん息が苦しくなっていくポイント(速度)のようなものです(酸素摂取量ともほぼ比例している)。


走力に関係する様々な体力や身体機能を向上させることで、LT値となる走速度を高めることができます。同じ速度で走った場合、乳酸の発生が少ないほうが断然有利というわけです。(OBLAという概念が実践的ですが、これについては、また今度、書きたいと思います)”


運動開始時のエネルギー源に関しては、

糖質というよりもクレアチンリン酸の方が大きく関わると思われますし、

その他の場面においてもクレアチンリン酸が重要であると考えられます。

日本では研究があまり進んでいませんが、

1990年代くらいまでに欧米では研究し尽された感じがする分野です。

LT値に関しては2mmol程度の数値であり会話が出来る程度に呼吸が軽く乱れるかな、

といったレベルです。ここではジワジワと上がるので、

急に多く発生するポイントはOBLA(4mmol)ですね。

なお乳酸はC3H6O3ですので、1mmolには0.09008g含まれていることになります。

計算間違ってたら後で訂正を。

分子量の話が高校の化学の授業ですね。

また、乳酸は常に解糖が行われているわけで、


”急に多く発生する”


という表現はよろしくありません。

2mmolで例にして使うと、

10作って8使う人
25作って23使う人

この二人ではどちらも数値としては2が残りますが、

発生量としては後者の方が多くなります。

この点に関しては筋中と血中の量を測定するのが難しいので何とも言えませんが、

解糖が利用を上回り始める値というのが表現としては適切でしょう。

また、


”同じ速度で走った場合、乳酸の発生が少ないほうが断然有利”


といのも書かれていますが、

ラストなどでは多い方が断然好ましいです。

これは筋量が多いことが乳酸値を高めることの一つの要因となりますので、

筋量が少ない小学生や中学生は高い数値になりません。

数年前、

スピードスケートの高木選手がオリンピック代表になった時に、

乳酸が作られない身体だから強い、

そのようにテレビ朝日が解説しておりましたが、

そうではなくて中学生で筋量が少ないから測定しても出てこない、

という話が適切でした。


”このLT値を簡単に説明すると、これ以上スピードを上げると、どんどん息が苦しくなっていくポイント(速度)のようなものです”


簡単に説明していないし間違っているし、ということがなんとなく分かって頂けるかと。

呼吸が苦しくなるのは酸素が不足するというよりは二酸化炭素の排出が多くなる方が要因としては大きいと考えられます。

それは最大酸素摂取量の測定を見て頂ければ分かりますが、

通常時の20倍程度の酸素の摂取をしている一方で、

二酸化炭素の排出はそれを上回るので。

CO2の排出が上回るほどの解糖が行われている、

とも言えるでしょう。

もちろん、酸素は筋肉以外の器官でも使われますので不足するような可能性もありますが、

運動中の筋肉で酸素不足になるようなことはありません、

ですので、運動の継続が出来なくなるのは、

酸素は十分にあるけどミトコンドリアでの利用が間に合わない出来ない状態、

という表現が適切でしょう。


”◯耐乳酸能力◯

簡単に言うと、「筋肉中や身体全体で、どれだけの乳酸を溜めることができるか?」という運動器としての貯蓄量と「乳酸が限界値まで溜まった飽和状態で、どれだけ筋肉を動かし続けることができるか?」という運動機能としての能力を指しています。つまりは、

① 自らの意思で筋肉を動かせる限界ギリギリの乳酸蓄積のキャパ(容量)を増やすこと
② 同じ乳酸蓄積量でも、速く または 力強く筋肉を動かす能力を高めること

①は、筋肉量を増やすとキャパは増えるのですが、中長距離の場合は、筋肉のいたずらな増量は不利になる場合があるので、難しいのです。だから、イメージとしては②になり、耐乳酸能力を高めるために、乳酸蓄積量限界ギリギリ、いや、それ以上の強度でトレーニングをするしかないわけです。”


簡単に言うと間違っているものが再び登場です。

まず、耐乳酸と言っている時点で乳酸が疲労物質であると思っている点を感じられますし、

先述したとおりに運動の継続低下に関しては乳酸以外のものが複数関与していますので、

しっかりと理解していればそもそもに耐乳酸能力という言葉自体が存在しない、

ということが分かるかと思います。

ですので、①も②も何を言っているのか分かりません。


”自らの意志で筋肉を動かせる限界ギリギリ”


人間の運動って全てが随意運動ですか?

違いますよね。動かそうとする意志があれば動くというものではありません。

言いたい事は何となく分かりますが、

”筋肉のいたずらな増量は不利になる場合がある”

そもそもに筋肉がそんなに簡単に増えません。

ですので、

まずは筋量を増やしてみてから言った方が良いでしょう。

定期的に問題として出していますが

体重が一か月で1kg増えたとしても、

筋肉がどれだけ増えたかは不明です。
2か月やって明確に違いが分かる程度です(成長期の若者を除く)。

筋肉が増えて体重が重くなったり関節が動きにくくなる、

本当にそういった状態になっている人を見たことは、

持久的な運動をしている人にはほとんどいないと考えられます。

むしろもっと筋量を増やして乳酸値の最大を高めた方が良いでしょう。

出力を上げた方が勝負になります。

日本人は軽自動車の車体を軽くして勝負しようとしていますけど、

世界の選手はF1の車体を空気抵抗を抑え、軽くし、燃料タンクを多くして勝負しようとしています。

エンジンがより優れたもので燃料タンクも大きい、

それでは勝てるはずがありません。

そうした点を考えてトレーニングをしていけば、

きっと世界と勝負が出来る選手は登場すると思います。

②に関しては、

”同じ乳酸蓄積量でも、速く または 力強く筋肉を動かす能力を高めること”

と言っていますが、

先ほどのLTの話はどこにいったというくらいの急展開ですので、

もう手の施しようがありません。

残念です。

技術的な能力向上、ランニングエコノミーの改善ということを言いたいのでしょうか。

だとしても改善されたら乳酸値は下がるはずなので、

言っている意味がやはり分かりません。



”◯中間筋繊維◯
ヒトの筋肉には、通称「中間筋」と言われる筋肉が何%かあります。この筋繊維は、本来は速筋なのですが、トレーニングによって遅筋にもなりえます(正しくは、性質に近づくというニュアンス)。その中間筋を速筋と遅筋のどちらの特性にするか?これもトレーニングの重要な狙いになります。これは、タイプによりますね。中距離走のようなスピードが求められる競技では、速筋が少ない選手は、中間筋を速筋寄りに傾けるしかありません。速筋が多いマラソン選手は、その逆で、遅筋寄り
に傾けることになります。「マラソン練習をするとスピードがなくなる」と言われる理由でもあります”



正しくは、~というニュアンスという表現が如何なものかと思いますが、

速筋→白筋。
遅筋→赤筋。

このような別の呼び方があることは聞いたことがあるかと思います。

これは速筋に毛細血管が少ないことが原因です。

毛細血管がエネルギーを運んだり酸素や二酸化炭素の運搬には必要ですが、

それが少ない。

また、エネルギーを作り出すミトコンドリアも少ない。

こうした点が速筋の持久力が低い大きな理由です。

筋の特性としては、

速筋→大きな力を出せるが持久力は低い
遅筋→大きな力を出せないが持久力は高い

このように分類できます。

これだけを見て速く走るためのトレーニングを考えるならば、

速筋の持久力を高めるか遅筋の出力を高めるしかありません。

しかし、遅筋の出力はほとんど高まりませんので、

速筋の持久力を高める事に狙いを絞るのがベストだと考えられます。
そうしたトレーニングを行って毛細血管が増えた結果、

中間筋(ピンク筋)と呼ばれるものが出来上がっていきます。
これはマラソンであれ何であれ、
速筋の持久力が高ければ高いほどどんな距離も速く走れるので、
どの種目においても狙いは速筋の持久力向上です。
もちろん遅筋も同時に使われるので鍛える必要はありますが、
速筋をトレーニングする負荷で鍛えれば十分に鍛えられます。

効率を考えるとLSDと呼ばれる1km6~7分程度の呼吸が一切乱れない、

乳酸値が上昇しないペースでの長時間の運動が効果的ですが、

ハーフマラソンやフルマラソン以外の種目においては、

日本のトップや世界と勝負するレベルに達するまではそこまで重視しなくても良いかと思われます。



”「マラソン練習をするとスピードがなくなる」と言われる理由でもあります”



これまでの話を理解頂ければ、

そのマラソン練習が間違っているだけでは?

という疑問が湧くのではないかと思います。



”◯乳酸再利用能力◯
乳酸をエネルギーとして再利用するのは、主に遅筋と言われています。したがって、中距離走のレース場面では、乳酸を再利用する代謝回路はあまり機能しないかもしれません(何となくの想像)。
しかし、遅筋をより働かせる長距離走では、乳酸はエネルギーとなりえます。ただし、このエネルギー代謝回路は、トレーニングしないと機能は向上しません(ミトコンドリアの増量など)。
とくに、スピードを上げて走るには、そのためのトレーニングが必要です。マラソン選手でも積極的に乳酸を発生させて、利用するというトレーニングを積んだほうが良いと思います。”



賢明なる読者の皆様はここまで来たらすでに理解されていると思いますが、



”乳酸をエネルギーとして再利用するのは、主に遅筋と言われています”


乳酸を酸素を用いてエネルギーへと変換するためのミトコンドリアが速筋には少ないので、

どうしても遅筋で使うことになるわけですが、

これはとても勿体ないことですね。

速筋に毛細血管とミトコンドリアが多数あれば、

速筋でも使えて速いスピードの維持が可能になると思われます。

また、脂質の利用も高まりますので、

やはりスピードの維持能力が向上すると思われます。

ミトコンドリアが少ないということは、脂質の利用能力が低いという事でもありますので。



”「ロング走を減らして、スピード練習をたくさん取り入れてパフォーマンスが上がった」という記事が出て話題になっています。トレーニングの詳細を知らないので、一概には言えませんが、こうした一連の「糖代謝メカニズムと筋肉の発達(ミトコンドリア増加)」に起因していると私は推察していま
す。”


適切な負荷のトレーニングを実施しただけでしょう。

ロング走でもOBLAペースでやっていれば効果的ですので。

日本では何故かLTペースでの走り込みが奨励されていますが、

週に数日練習する一般の市民ランナーの方々がマラソンをベストタイムで走る能力の向上と、

アスリートが速く走るための能力向上のトレーニングを同一で考えてしまっています。

今までのトレーニングがマラソンを完走するのが目的の練習だったと考えれば、

10000を速く走る練習を取り入れたら速くなったというのは当然でしょう。



”あるスポーツ科学の研究者から面白いデータを紹介していただきました。『BCAAを摂取すると乳酸の上昇を抑えられる』というのです。筋肉が、BCAAをエネルギー源として利用できるのが理由です。”


大塚製薬さんがアミノバリューで研究され発表しているデータですね。

商品が作られたのが12年前の2003年ですので、

疲労物質である乳酸を減らるという考えで作られたと推測されますが、

その辺りの考えが未だに残ってしまっているのでしょうかね。



”そう考えると、中長距離走のレースで「簡単な記録短縮の方法」として単純な発想が浮かんできます。中長距離のパフォーマンスを高めるためには、スピード練習を積極的に取り入れて速筋を鍛えながら、ATP回路を発達させて乳酸が出せるスピードランナーに近づけていくことが求められます。(ジュニア世代から長い距離を走る練習をする傾向にあり、乳酸を出せないスピード不足のアスリート・ランナーが増えている)”


そもそもにジュニア世代は乳酸値が高まらないというのは先述の通りです。

ですのでスピード練習をやればスピードが高まるわけでもないですので、

年齢に適した練習をやればよいだけです。

成長期を終えてから役に立つという点を考えれば、

徹底的に技術を磨くべきでしょう。

欧米では多種目のスポーツを経験させていますし。



”その際、高強度のスピード練習前と練習中にBCAAを積極的に摂取することで、乳酸の発生を抑えて速く長く走り続けることができるというものです。つまり、速筋を鍛えやすくなります。”



ミトコンドリアの発現を考えますと、

乳酸値がそこそこ高いのが理想となります。

刺激因子として考えられますので。

ただ、乳酸値が高い状態が効果的なのか、

乳酸そのものなのかは不明です。

ですので、乳酸の発生を抑えて速く長く走れば良いかとなりますと、

そうでもない、と言えます。

速筋を鍛えやすくなるかと言われると、

そうでもない。



”「BCAAを摂取しながらのトレーニングで、速筋をガンガン鍛え、レース前やレース中にもBCAAを摂取することで乳酸の発生を抑え、パファーマンスの向上が期待できる」と考えます。”


乳酸が疲労物質と思い込んでいるようなコメントですよね。

最初の文章はどこにいったのか。

乳酸値が高い方が良いというのもあるわけですが、

そうした話を知らないとこういう結論になりますね。



”単純過ぎますかね!?”


はい。



ということで、

かなりの長文となりましたが、

徹底的に赤入れをさせて頂きました。

これを書くのに要した時間が1時間半くらいなんですが、

ご質問、異論は多々あるかと思いますが、

疲れております。

元気な時でしたら返事いたします。

そこを御理解してコメント、リプライをどうぞ。

2015年6月27日土曜日

コンプレッションウェアは効果があるのでしょうか

Lower-leg compression, running mechanics, and economy in trained distance runners.


Int J Sports Physiol Perform. 2015 Jan;10(1):76-83. doi: 10.1123/ijspp.2014-0003. Epub 2014 Jun 6.

Stickford AS1, Chapman RF, Johnston JD, Stager JM.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24911991

どうなんですかね。

酸素摂取やランニングエコノミーその他に違いが出ていないので、

効果は特にないという相変わらずの結果ですね。


2015年6月26日金曜日

高負荷のトレーニングで脂肪の酸化能力は向上するか

The effect of high-intensity training on mitochondrial fat oxidation in skeletal muscle and subcutaneous adipose tissue.


Larsen S, Danielsen JH, Søndergård SD, Søgaard D, Vigelsoe A, Dybboe R, Skaaby S, Dela F, Helge JW.

Scand J Med Sci Sports. 2015 Feb;25(1):e59-69. doi: 10.1111/sms.12252. Epub 2014 May 21.


結論。ミトコンドリアは増えるし酸素摂取量は増えるけど、酸化的リン酸化も向上するけど、

mitochondrial fat oxidation はほとんど変化しない。

”酸化的リン酸化(さんかてきリンさんか、oxidative phosphorylation)とは、電子伝達系に共役して起こる一連のリン酸化(ATPの生合成)反応を指す。細胞内で起こる呼吸に関連した現象で、高エネルギー化合物のATPを産生する回路の一つ。好気性生物における、エネルギーを産生するための代謝の頂点といわれ、糖質脂質アミノ酸などの代謝がこの反応に収束する。”


アフリカの長距離選手に遺伝子の優位性はあるのか

Genetic aspects of athletic performance: the African runners phenomenon

Rodrigo Luiz Vancini, João Bosco Pesquero, Rafael Júlio Fachina,, Marília dos Santos Andrade, João Paulo Borin, Paulo César Montagner,and Claudio Andre Barbosa de Lira
J Sports Med. 2014; 5: 123–127.
Published online 2014 May 20. doi: 10.2147/OAJSM.S61361
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4037248/


結論。特に無い。

遺伝子的な特性で速いというのは、ただの言い訳でしかない現状です。

勿論、何かしら新たに発見される可能性はありますが、

現状の調査では出てきていません。

この遺伝子を持っている人は速いと言われる遺伝子が近年ありますが、

特別に多いわけでも無さそうだ、と。

2015年6月19日金曜日

酸素摂取量と貧血の話、ですかね

最大酸素摂取量の話をこの所よくしているので、少々。

話を見ていて聞いていて思うのが、

全身に取り込んだ酸素の量とかいう当たり前の話は分かっているけれども、

何で取り込めるのかという点が分かっていない傾向の人が多いことです。

肺の容量やら肺活量やらといった話をされる人も多いので、

何ともアレな話を覚えてしまわないようにしてもらうために基本的な点を。



取りあえず先に結論。

どんな負荷でもトレーニングすれば酸素摂取量は向上します。

酸素摂取量が向上しないトレーニングなどはありません。

ただ、最も向上させるようなトレーニングをしているかどうか、この違いがあるだけ。

速く走るためには細胞を増やしていく必要がありますが、

その結果として酸素摂取量が向上していきます。



以下、説明を読んで理解したい人は。



体内に酸素を取り込むというのは、

肺胞における交換の能力、

次に酸素を送る能力があり、

細胞においての取り込む能力(交換する能力)、

上記の点を理解して頂ければよろしいかと思います。

つまり、心肺機能というのは中心部にある心臓や肺も大事ではあるが、

末端の細胞の能力というのも関わっているということです。

酸素を送り込む細胞が少なければ当然ながら高まりません。

末端の細胞においては動静脈酸素較差というのが指標とされますが、

これも酸素摂取能力にはとても大事なものです。

こうした点が理解できると最大酸素摂取量のには何が必要か?

そう聞かれた際に筋肉というのが出てくるようになるかと思います。

もちろん心拍出量などの心臓の能力も大事ではありますが、

これはトレーニング初期での適応によって早い段階である程度の能力に高まります。

ですので、

次の段階に進むということを考えると筋肉における酸素の交換、

という点に焦点を当てる事になります。

ここで大事なのは運搬するためのヘモグロビンと血液、

エネルギーを生産するミトコンドリアです。

貧血で走れないというのはヘモグロビンが鉄を結合する量が減ってしまい、

細胞に酸素を送れないので運動が継続できないということです。

ヘモグロビンはタンパク質で構成されており、

その中には鉄原子で構成されるヘムがあって、これが酸素を結合します。

貧血の人には鉄が不足している場合もあれば、

ヘモグロビンそのものが少ない場合もあるというのは、このためです。

なお、肺での酸素と二酸化炭素の交換は酸素分圧の話ですので、

鍛えてどうこうといった話にはならないと思われます。

肺を鍛えるという表現はありますが、

酸素を多く取り込むためには肺の話だけではなく、

全身の細胞を増やすというのが大事なわけです。



酸素の取り込みだけでは持久力の話を全て出来るわけではありませんので、

その点もお間違えなく。

取り込む能力が高いのは有利ですが、

その数値が高いからといって持久力が高いとも言えないのです。

理由は糖質の利用といった観点からお考えください。



ミトコンドリアや毛細血管の増加に関する話はまた別の機会に。