世間での認識は未だに疲労物質という意見が多い感じはしますが、まぁ仕方がない。
取りあえずこれを読んで頂いた人からはそのような認識がなくなればよいかな、
そう思って書き記します。
まず乳酸とは何か?
簡単に言えば糖が分解された時に発生するものです。
乳酸菌というのがヨーグルトなどの発酵食品なんかに出てきますけど、
あれは糖を分解して乳酸を作り出す菌です。
で、人間の身体でも糖の分解というのが行われています。
例としては速筋というものが使われる時、食事で糖を摂取した時などがあります。
人間の筋肉は速筋と遅筋で構成されていますが、白筋とも呼ばれる速筋は、
エネルギーを作り出すためのミトコンドリアやエネルギーを輸送する毛細血管が少ないため、
分解によってエネルギーを作り出せる糖の利用がメインとなります。
遅筋の方は赤く見える事から分かるように、毛細血管が多く、
ミトコンドリアも多いために酸素を使って脂質を分解してエネルギーを作り出す能力が高いです。
人間の活動において速筋は最大で発揮出来る力の60%あたりの負荷を掛けると動員されます。
そうなると糖の分解によってエネルギーを作り出そうとします。
糖が分解されて使われる過程を解糖系と呼びますが、
この過程において糖はピルビン酸というものになってから取り込まれます。
しかし、ピルビン酸になる量は一定であるようでして、
それ以上の分解が行われた際には乳酸という形で保存されておきます。
一昔前は酸素が不足すると乳酸が作られると言われていましたが、
糖の分解が増えピルビン酸がたくさん作られる事が原因なのです。
なお、酸素が不足するという話ですが、
体内での酸素飽和度を測定すれば分かるように、
人間が運動をしている時に酸素が不足することはまず無いですね。
パルスオキシメーターで測定をしている光景なんかを現在でもたまに見かけますが、
酸素は十分にあるという結果になるかと思います。
で、一定量しか作られないピルビン酸から乳酸が出来る流れを理解してもらった所で、
この乳酸はどうなるのか。
当然ながら体内において酸素を用いてエネルギー源として利用されます。
老廃物やらなんやらと言われていた時代もありますが、
それは運動後に疲労した状態を測定すると乳酸がたくさんある、
そうした結果があったからです。
詳しくはこちらを
運動後に乳酸は安静にしていれば長くても1時間程度で利用されて通常の値に戻ります。
軽い運動で血流を高めていればもっと早く値は下がります。
激しい運動の翌日の疲労の原因は前日から溜まっている乳酸だ!!
そんな話は昔の考えです。
ということで、
「速筋を動員するような負荷の高い運動・糖質を多く含む食品の摂取」
これらが体内の乳酸を増加させます。
また、体内に乳酸があると筋肉の出力が高まるという研究結果もあります。
こうした乳酸の話が見直されていったのは
Lactic Acid--The Latest Performance-Enhancing Drug
これ以降は乳酸が疲労物質であるというのが見直され、
むしろパフォーマンス向上のために大いに役立っているという研究がたくさん発表されました。
その一方で疲労の原因とは何か?
これが大きな謎になりました。
ただ、疲労の原因というのはあまりに要因が多過ぎて、
一つのものが理由であるということを断定できないという話になっています。
運動を制限する要因としては
1.エネルギー源の不足(糖質や脂質の減少)
2.エネルギー生産が追い付かない
3.体温上昇
4.筋線維に微細な傷がつく
5.カリウムやカルシウム、ナトリウムといったイオンのバランス変化、減少
6.腱の弾性変化
7.脳での感知
8.以下略
ということで挙げればキリがありません。
これよりも多くの原因があるのに一つに断定できるとしたら、
それは限りなく怪しすぎる情報となるでしょう。
複雑に絡み合う体内の活動が原因で疲労は起こるわけです。
また、筋肉の肥大に関係するという話もありますが、
その辺りも”乳酸値が高まるような状態はトレーニング効果が出る状態である”、
といった方が適切かと思われます。
そんなわけで、
乳酸が溜まっている状態は疲れている状態の事もありますが、
そうでない場合もあるという事をご理解頂ければ。
陸上競技や水泳などでは耐乳酸トレーニングという言葉がありますが、
あれは表現としてはおかしいわけです。
乳酸をたくさん作ってたくさん利用できるのが能力の高いアスリートです。
もちろん、
マラソンのような種目では乳酸をたくさん作らない方が理想的ですので、
種目に応じて異なるという事も言えますが。
正しい理解をして適切なトレーニングをする。
そうすることで自らの可能性がより高まるかと思います。
日本の企業であるアークレイさんもあれこれ情報を出してくれていますし、
正しい情報を見つけて頂ければ