2016年8月25日木曜日

8月メモ

Protein supplementation does not alter intramuscular anabolic signaling or endocrine response after resistance exercise in trained men.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26428621


Effect of heavy strength training on thigh muscle cross-sectional area, performance determinants, andperformance in well-trained cyclists.



MAGNITUDE AND TECHNICAL CHARACTERISTICS OF EXTERNAL FORCE PRODUCTION IN THE STARTING BLOCKS



Effect of single injection of platelet-rich plasma in comparison with corticosteroid on knee osteoarthritis: a double-blind randomized clinical trial.



Neuromuscular changes associated with superior fatigue resistance in African runners



Development of maximal speed sprinting performance with changes in vertical, leg and joint stiffness



The effect of strength training volume on satellite cells, myogenic regulatory factors, and growth factors.



Resistance training-induced changes in integrated myofibrillar protein synthesis are related to hypertrophyonly after attenuation of muscle damage.


2016年7月25日月曜日

第24回日本運動生理学会大会の感想

個人的な感想ですので参考までにお願い致します。

2016年7月23(土)と24(日)に熊本大学黒髪キャンパスにおきまして、

第24回日本運動生理学会大会が開催されました。

私は当日の朝一の飛行機にて熊本入りしましたので、

一番最初の大会長である井福裕俊先生(熊本大学教育学部生涯スポーツ福祉学科)の講演を見ておりません。

また、シンポジウムなども同時並行で別会場において実施されましたので、

興味あるものしか見られておりません。

見に行った他の人に話を聞いて把握はしておりますが、

ほぼ抄録に記載されている通りということですので、

そちらを参考にして頂ければ。

持っていないという人の方が多数と思いますが、

そこは何とも出来ません。

ご理解下さい。

さて、

初日の午前にはシンポジウム1、座長は緒方知徳先生(広島修道大学人間環境学部)で

「骨格筋の質的・量的変化を制御する分子メカニズムの探求」

が行われました。

河野史倫先生(松本大学健康科学研究科)による

「運動が引き起こすエピジェネティクスと骨格筋の適応性変化」

という題での講演です。

これも内容としましてはほぼ抄録に記載されている通りかと思います。

言葉の説明などを丁寧に進めて頂きましたが、

どれだけトレーニングしても速筋での糖利用は遅筋に勝てないといった話から、

速筋や遅筋におけるヒストン修飾の影響についてという話へ。

”1か月のover load なトレーニングで遅筋においてサイズが有意に増加”
”遅筋においては転写誘導は上昇しているのにヒストンのアセチル化は減少した”

などが示されました。

そしてこれらは胎児期の細胞が関わるのでは?

ということで再生筋での話に移っていきました。

胎児期の筋核がどうやって消失するのかという話や、

再生筋は肥大しにくいがその理由は何かといった話、

サテライト細胞が増殖していく過程で機能が無くなっていくのでは、

といったことが示されました。

2人目の小野悠介先生(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科)は

「骨格筋の修復・再生の分子メカニズム」

というテーマでのお話しでした。

3人目は小笠原理紀先生(名古屋工業大学大学院工学研究科)は

「骨格筋量調節におけるリボソーム生合成の役割」

というテーマ。

このペースで書いていくと時間が掛かりますので、

皆様が知りたいであろう話を数点挙げていきますと、

・小野先生の筋再生に関する話として
「互いに抑制して制御をしているものがある。常に量を多くしていることが良いとは限らない」

・小笠原先生のリボソーム生合成の話として
「rRNAの増加が多い人は筋の肥大も大きい」

・昼の大塚製薬によるランチョンセミナー
「ポカリスエットは薄めずにそのまま飲んでください(個人的にお伺いした質問への答え)」

・午後の教育講演 丸山敦夫先生(新潟医療福祉大学健康科学部)の話として
「筋疲労による脱抑制が運動学習の成績を高める可能性がある。疲労している中での技術トレーニングは有用である」


シンポジウム3、座長は林直亨先生(東京工業大学リベラルアーツ研究教育院)による進行。

まずは林先生から
”血液が不足すると人間には何が起こるか?何が問題か?”
という点について簡単な説明。

「脳や筋、眼では血流が不足すると意識を失ったり運動継続困難になったり、視野を失う。
これは狩猟の時代であったら狩られる」

・石井圭先生(産業技術総合研究所)
「自発的な運動をする時には運動開始前にセントラルコマンドの指令により血流は増加する」
「脚の運動を行うと上肢骨格筋のOxy・Hbが増加、上肢を行っても下肢では増えない」

・芝崎学先生(奈良女子大学研究員生活環境科学系)
「暑熱下で静脈還流量は低下するが一回拍出量は維持される」
「暑熱下では副交感神経支配が弱まることで心拍が増加する(交感神経系に関係なく)」

・池村司先生(早稲田大学スポーツ科学学術院)
「疲労困憊時では血圧が増加しても脈絡網血管の血流増加は抑制される」

・一之瀬真志先生(明治大学経営学部人間統合生理学研究室)
「運動時に生じる代謝物は血圧の低下や血管拡張の抑制に関わっている」

教育講演2は荻田太先生(鹿屋体育大学)
「運動強度という言葉がよく使われるが、どこからが高強度なのか明確ではない」
「Tabata Protocolには弱点もあるので新たなスプリントトレーニングを提案したい」

といった内容でした。

口頭発表やポスター発表で数点、私が興味深かったものを簡単にまとめますと、

・筋内脂肪が多い人に持久力が優れている傾向が見られる

・高頻度のレジスタンストレーニングはタンパク合成シグナルを活性化するが、骨格筋合成は活性化しない可能性がある(マウス実験)

・長期の高脂肪食(60%、マウス実験)摂取は速筋の筋機能低下を引き起こす(筋内脂肪は増加)

といったものです。

長時間の持久的な運動を行う人が著しく体脂肪を低くすることは、エネルギー源である(可能性がある)筋内脂肪を減らすことになるので、好ましくないことかと推測されます。また、高頻度のレジスタンストレーニングで筋肥大が引き起こしにくくなる可能性も提示されましたが、この辺りもなんとなく感覚的に理解できるものがあります。毎日やるのは筋力の向上を目的とするならば良いかもしれませんが、筋量の増加を目的とするならば止めておくべきでしょう。

以上、簡単にではありますが、まとめさせて頂きました。

2016年6月28日火曜日

メモ・クレアチン

Creatine supplementation in endurance sports


 1998 Jul;30(7):1123-9.


Resistance Training and Co-supplementation with Creatine and Protein in Older Subjects with Frailty


 2016;5(2):126-34. doi: 10.14283/jfa.2016.85.



 2016 Mar 1;7(1):e26843. doi: 10.5812/asjsm.26843. eCollection 2016.



J Physiol. 2004 Mar 1; 555(Pt 2): 409–421.
Published online 2004 Jan 9. doi:  10.1113/jphysiol.2003.056291

Creatine Supplementation Induces Alteration in Cross-Sectional Area in Skeletal Muscle Fibers of Wistar 

Creatine Supplementation Induces Alteration in Cross-Sectional Area in Skeletal Muscle Fibers of Wistar 

Creatine Supplementation Induces Alteration in Cross-Sectional Area in Skeletal Muscle Fibers of Wistar 

Creatine Supplementation Induces Alteration in Cross-Sectional Area in Skeletal Muscle Fibers of Wistar 

Creatine Supplementation Induces Alteration in Cross-Sectional Area in Skeletal Muscle Fibers of Wistar 

Creatine Supplementation Induces Alteration in Cross-Sectional Area in Skeletal Muscle Fibers of Wistar 

Creatine Supplementation Induces Alteration in Cross-Sectional Area in Skeletal Muscle Fibers of Wistar Rats Under Swimming Training

J Sports Sci Med. 2002 Sep; 1(3): 87–95.Published online 2002 Sep 1.



 2016 May 19



 2016 Apr 23



 2016 Apr 16


Creatine supplementation does not alter neuromuscular recovery after eccentric exercise


 2016 Mar 1. doi: 10.1002/mus.25091


The role of dietary creatine

 2016 Feb 13


Short-term creatine supplementation has no impact on upper-body anaerobic power in trained wrestlers


 2015 Dec 9;12:45. doi: 10.1186/s12970-015-0107-6. eCollection 2015.


2016年6月24日金曜日

陸上競技における指導言語”流れる”とは何か

陸上競技の指導において、

走っている選手に対して「脚が流れている」と声を掛ける光景はよく見られる。

では、この”脚が流れている”というものはどのように定義されているのか。

多くは個人の主観であり、定量化されたものは無い。

そこで、これだけ技術的な要素で大事と考えられているものなのだから、

きっと定量化されているのであろうと考えてインターネット上のデータを収集してみた。

以下がその一例である。

修士論文
スプリンターの疾走能力と下肢筋力および 体幹部筋形態の関係について 
-100m走の各疾走局面に着目して-

疾走速度が減速する原因は、接地時間と滞空時間の増加によるピッチの減少である。
このときの疾走動作の特徴は、離地時の大腿が身体の後方に残される
「脚が流れる状態になっていることと、支持期の脚のスイング速度が低下したことが挙げられる。」

この文中において、足が流れるという言葉はこれしか出てきておらず、何の定義も無い。

”離地時の大腿が身体の後方に残される”

とあるが、そのような状態なしに走れる人というのはいるのだろうか。

これでいくと、直立している姿勢よりも脚が後ろにある状態は流れているとなる。

つまり、直立した状態で腿上げのようなことをやらない限りは”脚が流れてる”ということになる。

次に卒業論文と思われるもの

疾走中の腕動作と速度の関連について

疾走速度と肩関節伸展最大角・肩関節屈曲最大 角との間に有意な相関がみられなかったことから, 多くの指導書で述べられている「前後に大きく振る」という一般論には結びつかないことがわかっ た。前後に大きく振るということはそれだけエネルギーを使うことになり,時間もその分長くかかる。前後に大きく振るために必要以上に時間がかかってしまうと脚を戻すのが遅くなり,その結果支持脚が後方に接地することになり,脚が流れることにつながってしまうと考えられる。脚が流れ てしまうと効率よく推進力を得られなくなってしまう。

”脚を戻すのが遅くなり,その結果支持脚が後方に接地することになり,脚が流れる ことにつながってしまうと考えられる。脚が流れてしまうと効率よく推進力を得られなくなってしまう”

これは脚が流れると効率よく推進力を得られなくなってしまう、と述べているが何の定義も無く参考文献の提示もないので完全なる主観で書かれており、参考に出来るレベルのものではない。この文から読み取れることとしては

”支持脚が後方に接地することになり,脚が流れることにつながってしまう”

というものである。脚が流れるとは何なのか分からないのに脚が流れることにつながるというのは、まったくもって文を成していない。よって、何も読み取ることが出来ない。一つ言えるとしたら、

”支持脚が後方に接地する”という点である。走っている時に支持脚が後方に接地する。これしか書いていないのでどこのなにより後ろに接地するのか不明である。上体と地面で構成される垂直な線よりも後ろなのか、前の脚より後ろなのか、頭の位置より後ろなのか、前の選手より後ろなのか。何より後ろなのかは不明である。感覚的には体幹部、上体と地面で構成される垂直な線のことだろうと思うが、そこで接地することは前方回転が強く、転倒しかねない動作であり非現実的である。もちろん、転倒を抑えるために回転数を上げるなど可能となるが。ダラダラ言っているが要するに、

何の役にも立たない、ということですね。


続きまして大学の先生が書かれた論文

短距離疾走における下肢動作の回復期について

この股関節伸筋群から股関節屈筋群の切り替えへの筋活動の遅れが,母指球鉛直最大値を高くし,いわゆる足が流れるということになるのではないかと考えられる

以上のことから,疾走速度の高い選手ほど拇 指球鉛直最大値は低い傾向がみられ,またそういった選手ほど接地中に股関節伸展動作から屈曲動作に素早く切り替わっていたことがみられた。これらのことが,必要以上に脚が流れることを防いでいると考えられる。

こちらも

”足が流れるということに”
”脚が流れることを防いで”

と触れていますが、そもそも足・脚が流れるとは何か、

という点の説明はありません。足と脚で最初と二回目で異なっていますが、別物なんでしょうかね。股関節伸筋から股関節屈曲群への切り替えの筋活動が遅れる状態は足が流れる、ということであると読み取れますが、そうなりますと筋電図を見ないと何も言えません。撮影したデータから言ってしまっていますが、まぁ推測の域を出ませんし、その足が流れるの定義は誰が決めてるんですか、と質問されると答えられません。やはり役に立たない論文です。

探した中ではこれで最後です。
これ以上、足が流れるについて書いている人は見当たっておりません。こんなにも指導言語として用いられているのに。

右足舟状骨疲労骨折を罹患した大学女子中距離ランナーの障害発生機序について

右足部を大きく後方で 踏み返す“足が流れた”動作になっていた
離地期に脚が流れる現象
離地期に脚が流れると、回復脚前半から中間において回復脚の延伸が起こり股関節の屈曲動作が大きくなる。
右足部を大きく後方で踏み返す“足が流れる”動作が観察された。これは、U 選手の「ストライド長を稼ぎたい」という意図的な骨盤の回転運動と腰椎前彎・骨盤前傾で、接地脚の後方移動距離が長くなった(足が後方へ流れる)

かなり足・脚が流れるという言葉について使用しています。足と脚がやはり混在していますが、きっと足関節部分と大腿部でちゃんと識別しているということでしょう(文中からは明確に読み取れませんので、意識が特にないのだと思いますが、分かりません)。先の大学の先生が言っている

”股関節伸筋から股関節屈曲群への切り替えの筋活動が遅れる状態は足が流れる”という点が、

”離地期に脚が流れると、回復脚前半から中間において回復脚の延伸が起こり股関節の屈曲動作が大きくなる”

という形で同じように書いてあるように見えます。ただ、屈曲筋群の筋活動が遅れることで脚が流れるという主張に対し、”脚が流れることで回復客の延伸が起こり屈曲動作が大きくなる”としていますので、何で流れるのかという点に関しては触れていません。流れるとダメなんだ、とは言っていますが、流れているとは何か、という点はこの部分ではありません。次にいきますと

”右足部を大きく後方で踏み返す“足が流れる”動作”
”接地脚の後方移動距離が長くなった(足が後方へ流れる)”

という説明がありますが、

『上体に比べて下腿が後ろに残っている=流れている』

と読み取ってよいでしょう。

ここにきてやっと足が流れるという動作を定義しているものがありました。

『地面に力を加える動作をし、脚が後ろに残り続けているのが脚が流れるということ』

なんとなく納得いくものがあります。いろいろと眺めてきましたが、ちゃんと自ら定義を行っています。この定義が良いかどうかは別として、納得はできます。ということで、ネットで適当に探した論文(ciniiを見ても無いんですよね、脚が流れるを定義しているものが)をいくつか見た中で、脚が流れるというのは

『上体に比べて下腿が後ろに残って地面に力を加えている=流れている』

ということにさせて頂きます。

では、この動作が良いのか悪いのか。結論を言えば、

「悪い」ですね。

この定義での流れているですと、理想的な力の出力点は過ぎています。下腿が伸展しており地面へと力を加えられにくくなっています。力感は得られるが、それは足関節に無理があるからと言えます。ですので、この定義における脚が流れているはダメです。

基本的に脚に関しては、

前に持ってくる動作が出来なかったらダメ
後方にあっても筋力が高くて前に持ってこれるなら問題なし

となると思います。腸腰筋と呼ばれるものが外国人選手は発達してると言われますが、これによって後方にある脚を一気に前方へとスイングすることを可能にしていると考えられます。なお、この最後まで地面に力を加える動作をすることで、足関節の背屈や底屈が行われますが、これによってケツワレと呼ばれる現象が発生することは実験室において試したことがあります(論文化せず、n数は10未満)。力を加えている感はあっても、何の役にも立っていない動作をしていることになります。

ということで、脚が流れるというものをいろいろと検証してみましたが、統一した見解は特にない、見た目を皆様が適当に流れていると言っていることがよく分かりました。納得いくものは「足首をこねて地面に力を入れ続けているのは流れていると呼ぶ動作だ」、というものですが、これ以外にも見解はあると思います。何しろ定義が無いのですから。皆さまが好きに定義してお使いになってよいと思いますが、その際には

「私の脚が流れるの定義はこうです」

という説明が大事になります。共通理解は指導において重要ですので。