Hakan Claes Rundqvist et.al
introductionより
・スプリント運動の特徴の一つは、特にII型骨格筋線維における急速な筋グリコーゲン分解と大幅なATP分解である。30秒間のスプリントを3回行うと、これらの線維において筋グリコーゲンとATPの含有量は50%以上減少する可能性がある(1)
・もう一つの特徴は、全身のカテコールアミン、成長ホルモン、インスリンの増加に代表される内分泌ストレスである (1–3)
・3つ目の特徴は、運動後に30分以上持続する脚部血流の増加として現れる、運動後の過灌流反応である(4)
・2週間でわずか6回、合計5分未満の全力での30秒間自転車スプリントでも、ミトコンドリア酵素の活性が増加することが示されている(6)
・スプリント運動を先に行うことで、レジスタンス運動によって誘導されるAkt/mTORシグナルが抑制されたことが報告されている(10)
・スプリント運動は持久運動と同様に骨格筋の毛細血管新生と血管成長を刺激することが示されているが、この観察結果には異なる見解もある(11, 12)
・全力での自転車スプリントを3回、20分の回復時間を設けて実施した
・健康な20~30歳の男性7人、女性7人でたまに運動をする程度
Discussionより
・遺伝子シグネチャーの解析からは、カルシウムイオン、一酸化窒素、活性酸素種に加えて、成長ホルモン、インスリン、遊離脂肪酸といった運動誘導性の全身因子の活性化も予測された。これらの因子の血中濃度はスプリント中または直後に有意に上昇していた。
・FZD7(Akt/mTOR経路を正に制御し筋肥大に寄与する)のmRNA発現がスプリント後に増加し、mTOR経路のp70S6kのリン酸化の増加と相関した。FZD7の上流制御因子として働き、成長ホルモンにより制御される可能性のあるWNT9A mRNAの増加は、成長ホルモン濃度の上昇と関連していた
・スプリント運動により、PPARGC1A(PGC-1α)の発現は5倍に上昇
・ミトコンドリア転写因子の発現上昇は確認されなかったが、ミトコンドリア輸送体(SLC25A25A、CPT1、UCP3)は上昇
・エストロゲン応答エレメント(ERE)の活性化が予測され、エストロゲン関連受容体γ(ESRRG)およびエストロゲン自体が上流因子として推定された。これは、筋収縮とエストロゲンの両方がEREを活性化するという以前の報告と一致する(46)。
・スプリント運動により、血中遊離脂肪酸(FFA)の濃度が大幅に上昇しており、一部の代謝関連遺伝子の発現上昇にFFAの関与が示唆される
・本研究ではミオスタチンが約50%ダウンレギュレーションされた
・成長ホルモンの上昇、MYOD1やHES1の発現上昇も、ミオスタチンの抑制と関連がある。一方で、ミオスタチンを活性化させる経路も刺激されている。「ミオスタチンのmRNA減少 = 単純な筋肥大」ではないと考えられ、抑制と活性化の両シグナルが混在しており、筋の再構築(リモデリング)プロセスの一部である可能性が高い
自転車でのスプリント運動によって、スプリント運動では負荷が高いのに筋肉が肥大しにくい理由は何なのか、といった点を調べたものです。スプリント運動は”代謝的・構造的な再プログラミングを促す運動様式である”といった点が結論になるのかと思いますが、要は次に向けての準備が行われるのがスプリント運動であり、そこからどうするかが大事になる、といった話になるかと思います。筋肥大を抑制するミオスタチンを大きく抑制しているので、これが継続されていけば、筋肥大はしやすくなっていくので、スプリント運動をしているだけでは増えないけれど、スプリント運動をしなければ筋肥大はしにくくもある、といったことが言えるのかなぁ、と。なので、たまには呼吸が追い込まれるような運動も取り入れてみると、思ったような筋肥大が目指せるのでは、と思います。ただ一方で、肥大を抑制しようともするので、エネルギーの摂取などでのバランス調整も大事でしょう。運動だけでなく食事と睡眠など関連する要素も忘れずに、でしょう。