2020年11月4日水曜日

サッカー選手の持久力の大前提の話

 サッカー選手の持久力向上に関するご相談を頂いた時に、基本としてまず理解してもらっている話があります。それは90分動き続けられる能力は、90分の中でのペース配分によるものが大きく影響するということです。スプリント回数が多かったら途中で確実に動けなくなります。ずっと走り続けるのは無理です。この点が忘れられがちですので、まずはこの点を意識してもらいます。どれだけトレーニングを積んだところで、当然ながら限界というのはあるわけでして。無尽蔵のスタミナという言葉を試合中にずっと動ける能力だと思うのはどうかな、と。よく実況で、「この時間でもまだ動けるスタミナ」という表現が使われますが、これもその時間までほとんど動いていなかったら誰でも可能になります。時間が経つから疲れるのではなく、その時間分だけ運動をしているからエネルギー切れになっていき疲れるわけです。もちろん、何もしないで立っているだけでもエネルギーは使いますし疲れはしますが。ちなみにJリーグにおいては時速24㎞以上になるとスプリントとして記録されるわけですが、これは100mなら15秒で走るペースです。陸上競技ですとスプリントかと言われると、微妙な速度です。ちなみに1試合の90分を不動産表示での徒歩1分80mで考えると7.2㎞歩くことになります。試合中の走行距離が少ないという例によく出るメッシの距離がおよそ7~8km。つまりメッシはずっと歩いている。何なら歩きすらしない。それにより必要な時にしっかりとスプリントができています。もしこれが全力スプリントが増え、試合中にも走る距離が増えた場合、途中でガス欠になる可能性はかなりあると思われます。他の選手がカバーしてくれるから走らないで済んでいると指摘されたりもしていますが、そうした戦術が用いられているチームですので問題は無いのでしょう。なお、ボールは疲れないということも言われるわけですが、戦略としてボールを取れそうなところでパスを回して相手を走らせてエネルギーを減らせるのはかなり効果的な戦略だと思われます。サイドバックの選手を50m以上の全力スプリントを繰り返させれば、本数を重ねるうちに動きは悪くなるでしょう。スプリントの間のインターバルを短くして、とにかく一度にダッシュさせる距離を長くさせれば、よりダメージを与えられます。こうした試合中にエネルギーが減っていくという観点を忘れがちな人が多い気がします。チーム戦術もあるとは思いますが、選手個人のエネルギー量の限界はあり、持久力はどれだけスプリントをし、走り回ったかによって大きく影響されるということを忘れずにいただければ。なお、ちょっと遅めの1㎞6分ペースくらいでも90分止まらず走りまわっていれば15㎞。これであればそこまでキツくは無いと感じるくらいだと思いますので、単純に走行距離が多ければ良いかとなると、これまた話は別物になります。ですので、効果的なスプリントというのを指標として考えるのが大事だと思います。なお、スプリントにおいて、その他の走りにおいてフォームが悪くて無駄にエネルギーを消費していることもしばしば確認されます。これを改良することで持久力が向上するというのも見られます。地面をとにかく踏み込む走りをしてしまっている人が多いので、この点に関しては走りの指導を受けるのは大事かと思います。

 

繰り返しですが、どれだけ速い速度で多く走っているか、ダッシュを何本やったかも試合中の持久力の限界に大きく寄与します。食事とトレーニング、試合途中での補給により向上できる面はありますが、90分間でスプリントを繰り返し続ける限界はあります。この点をまずは理解してからトレーニングでのさらなる能力向上を考えて頂ければと思います。なお、多くのチームが90分以上の練習時間をかけているので、ほとんどの練習が持久面にフォーカスすることになっていると言えるかと思います。当たられても倒れない身体を作りたいと考えるのであれば、別でそれだけに専念した方が効果的になります。毎日練習してエネルギーが不足している中で筋肉を増やすトレーニングは効果的ではありませんので。もっとサイクルを意識して、練習時間を少なくして身体作りをやる日があっても、と思います。

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