2019年9月7日土曜日

個人的に思う論文の読み方の注意点

久々の更新となりますが、多くの人が論文を読んで情報を発信するようになった中で少々思う所がありますので簡単に。

昔の論文を使うのは良いが、そこの背景をしっかりと把握しましょう

というのが最近思う点です。過去にも触れた記憶がありますが、例えばウエイトトレーニングをすることで筋力が高まる、筋肉が増えるということが研究される中で、どのようなsetの組み方が良いのかも研究されたりしました。しかし、そうした研究において忘れられていたのが栄養補給の観点です。過去の論文においては、筋肥大をするためには成長ホルモンだ、テストステロンだ、といった分泌系の話に焦点があてられるものも多く、そうした論文においては絶食を基本としています。これは運動をする時に同じ条件にするためでありますが、じゃあ絶食にしたら本当に同じ条件なのか、となると1週間くらい同じ食事で調整しないと差はあります。睡眠やら日常生活のストレスやらでもホルモンの分泌なんかは変化を受けてしまうわけで、とにかく全く同じ条件にするというのは不可能と言ってよいと思いますが、なるべく同一にしようとするのが基本でした。この絶食による分泌をベースとして効率の良い練習を考えるということが実施されたりするわけですが、研究と違う点は食事をしているということになります。食事によって分泌は大きく変化するわけで、トレーニングの質も食事によって大きく左右されます。中長期的な実験となれば、その差はかなり広がってきます。この辺りが2週間程度の実験でもバラつきが出てくる原因であり、1か月や半年といった長期的なトレーニングににおいては、一度のトレーニングにおけるホルモン分泌を最大化するよりは、数週間、数か月後の目的とする日に最大のパフォーマンスを発揮することが出来るようになるのが大事となります。

週に2~3回のトレーニング効果を最大化
週に5~6回のトレーニング効果を最大化しさらに長期的、1年単位で強くなりたい

こう考えた時に、前者は論文においてよく見るもの、後者が日常的にトレーニングをする人が求めるものです。本当に前者が効果的なのか?という疑問はあると思います。実際、既に述べたように初日は絶食で血液を採取するという実験なんかも多く、そうした論文を活用する時には多角的に検討する必要があると思われますが、結論を見てそこだけを抜き出していることの方が多いかな、と思います。基本となるホルモンの話などが把握できたら、次は実際に食事をしている生活の中でトレーニング効果はどうなるのか、というものです。毎日ホルモン分泌を最大化し翌日は練習をしないということよりも、毎日8割程度で積み重ね食事と睡眠で回復しきれるレベルの負荷にした方が効果的であるのでは、といったことが調べられるようになってきました。この点は筋肉における合成が最大化するようにしたところで、実際に長期的に見たらそんなに大きくならなかったという話もあるわけで、合成よりも分解の抑制に意識を向けた方が良いのでは、ということも言われるようになりました。昔と今では基礎研究をしているのとそれをベースに中長期的にしたら本当にそれが起こるのか、というのを見ている違いがあるものも出ています。そうした点を考慮しながら様々な角度から見ていかないと、出されているデータを曲解してしまうことになるだろうな、と思った次第です。