A Review of Stature, Body Mass and Maximal Oxygen Uptake Profiles of U17, U20 and First Division Players in Brazilian Soccer
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3761896/
J Sports Sci Med. 2008 Sep 1;7(3):309–319
・ブラジルの選手は身長が低いにもかかわらず、体重は同等である。
・ブラジルではプレースタイルが技術重視であるため、選手の選抜はフィジカル(体格)よりも技術面を重視する傾向があり、これがヨーロッパと異なる点とされている(Drubsky, 2003)
・イングランド、イタリア、スペイン、ドイツなどの主要な欧州リーグでは、身長と体重が選手獲得の重要な指標とされ、ポジションごとのプレースタイルやフィジカルの要求に適合する人材が選ばれている(Bloomfield et al., 2005)
・VO₂Max測定(ml·kg⁻¹·min⁻¹)には限界があり、体重に比例して酸素消費が増えるわけではないため、軽い選手のVO₂Maxは過大評価され、重い選手は過小評価される傾向がある(Wisløff et al., 1998)
・60 ml·kg⁻¹·min⁻¹以上のVO₂Maxがトップレベルでは必要とされるが(Reilly et al., 2000)、一部のトップ選手は無酸素と呼ばれる能力が高い一方で、有酸素と呼ばれる能力が劣るケースもあるので、VO₂Maxだけでなくスピード、アジリティ、パワーなどと総合的に評価すべき(Stølen et al., 2005; Wisløff et al., 1998)
・コパ・アメリカの選手がカバーした平均距離 8638 ± 1158m は、イングランド・プレミアリーグの平均距離 10104 ± 703mよりも有意に少ない(Rienzi et al., 2000)
・ブラジルの試合ではパス数が多く、非直接的なプレースタイルが採用されており、これが有酸素と呼ばれる能力の低さと関係している可能性がある(Barros et al., 1998も同様)
・2001~2004年の55試合において、平均走行距離が 10012 ± 1024m と欧州と同程度であると報告されている(Barros et al., 2007)
・ブラジルでは、17~20歳の間にフィジカル強化の重要な時期があり、これはU-20レベルの選手がU-17やファーストディビジョンの選手よりも強度の高いトレーニングをしているため(Drubsky, 2003)
・トレーニングには、スピード、筋力、有酸素と呼ばれる能力の向上、戦術理解の強化が含まれていますが、その基盤にはU-17以前からの技術力の養成がある
・多くの研究では平均値しか報告されておらず、ピーク値や範囲を示した研究は非常に少ない
・有酸素能力では、一般にミッドフィルダーが最も高いVO₂Maxを持つとされるが、ブラジルの研究では、外側ディフェンダー(サイドバック)が最も高いVO₂Max値を示すことが多い。これはブラジルの戦術(主に4-4-2)により、サイドバックが守備だけでなく攻撃参加も求められるためと考えられる。しかし、Barrosら(1998, 2007)は、ファーストディビジョンのサイドバックとミッドフィルダーで走行距離に有意差がないことを報告している
・欧州の研究では、ミッドフィルダーが他のポジションよりも多くの距離を走行し高強度ランの距離も多いという結果が報告されている(Di Salvo et al., 2007など)
ブラジルの選手の特徴を調査した論文をまとめたものなので、実験のやり方の違いもあるため、測定手法の違いが結果の差に影響している可能性もあるといった注釈もつけられていますが、なるほどなぁという感じのデータです。2008年までのデータのため、近年との違いはあるかもしれませんが、U-20あたりまではヨーロッパへの移籍を考えてフィジカルを高めているといったことも見られるようです。大きな違いにはプレースタイル、ピッチサイズ、環境などもあると指摘している通りで、数値が低いから弱いというわけではないことが分かります。まずは徹底して技術面を向上させ、U-17あたりからトレーニングでフィジカルを向上させていく、最も高くなるのは一番の運動量を誇るSBになりがち、MFはあまり動かないので諸外国と比べるとSBよりも低い傾向にある。こうした点から考えると、SBをやる選手が最も走れる必要があるけれども、それは戦術に適応するためなのか、走れる選手がいるからその戦術を採用するのか、といった疑問が生じます。まぁ能力に応じて求める戦術レベルも異なるとは思いますが、中学生くらいまではもっと技術をベースにしつつ、様々なポジションを経験させて走ったりしながらフィジカルを鍛えて、高校生くらいである程度の成長期が終わって来てからポジションを固定する、というやり方が良いのかと思いました。ただ、U-20くらいで世界への移籍市場が最終段階になると言われたりもするので、高校を卒業する時点ではフィジカルと技術がある程度完成させたいところです。当然ながら、その世代の中でトップクラスであれば良いのであって、年上の世界のトップ選手と同等である必要はありません。この辺りを見失って世界のトップと同等を目指してしまうと、いろんなものが曖昧になってしまう気はするので、まずは成長期に合わせてフィジカルが伸びるようにする、身長が伸びなくなってから本格的にフィジカルを鍛えていく、という流れになりそうです。
U-20のワールドカップの結果を見ると、優勝したチームはその後のA代表も強いし、歴史に名を遺すような選手が複数いたりするので、足りないものはフィジカルや技術だけでなく、その世代を超えて活躍できるスターがいるかどうか、みたいな面もありますし、育成世代はあれもこれもやるよりは、まずは技術をしっかり、戦術を理解、そこから一段階上のプレーをするためにフィジカルを高め、新たな戦術や技術を身につけて、さらにフィジカルを高め、といった段階を踏んでいけると良いのではと思います。
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